2022年11月1日、午後1時より、東京都千代田区の厚生労働省にて、一般社団法人社会調査支援機構チキラボによる、「『宗教二世』当事者1,131人への実態調査」結果についての記者会見が開催された。
冒頭、チキラボ代表理事の荻上チキ氏より、チキラボの活動、『宗教二世』当事者への実態調査の趣旨および概要などについての説明があった。
チキラボでは、これまで、ジャーナリスト・伊藤詩織氏に対する名誉毀損、表現の現場で横行するハラスメントの実態、そして、ストーカー規制法の改正におけるストーカー被害の実態に関するものなど、社会で論点化されていないものについてリサーチをし、公表することで、社会的議論のための素材を提供するための活動を行ってきた。
荻上氏は、「宗教二世」当事者の実態調査を行ったことの前提について、以下のとおり述べた。
「この間、皆さんもご承知のとおり、『宗教二世』、とりわけ、旧統一教会と政治の関係などに大きくフォーカスが当てられてきました。その中で、様々な宗教二世の方々がメディアに出て、発言を続けています。(中略)
それぞれ、個別の発言が行われて、そうした個別の発言をきっかけに、今、宗教二世当事者の方々がネットワーク化され、そうした方々が署名を集めたり、政府に要望を出したりというようなことを行っています。
では、はたして、宗教二世当事者の方々は、実際に、どのような経験を『しがち』なのか? そこで露出されている方に対して、時折向けられる『あくまで、それは例外的なケースだ』というような非難というのは、どの程度妥当なのか、実態の調査をしようということで、今回行ったのが、このたびの宗教二世調査ということになります」
その上で、荻上氏は、この調査について、「政府が、大規模な調査を行うまでの、暫定的な調査という形で、我々が民間で行った調査」だとする一方、この調査結果が「非常に様々な分析において役に立つ」と訴えた。
今回の実態調査に回答したのは1131人で、それぞれ、仏教系、神道系、キリスト教系、イスラム教系、あるいは山岳宗教系その他といった分類に沿って、自己申告で回答を行った。
また、それぞれの回答者が所属する教団名を入力できる自由記述欄も設けられ、入力のあった教団名のうちの上位3団体(創価学会428名、エホバ168名、旧統一教会47名)についての比較調査も実施された。
荻上氏は、全体的に得られた知見として、「どの宗教かどうかにかかわらず、二世回答者が、今、社会にどういったことを求めているのか、社会にどういった対応を求めているのか、その希望する割合というのをグラフにした」ことを挙げた。
それによると、回答者の多くが、宗教をめぐる社会的な改善を求めており、「子どもでも親から教団から安全に離れられる制度」(73.0%)、「社会問題を起こした宗教団体への解散命令や法人格の取り消し」(71.9%)、「カルト団体の定義と規制法」(67.3%)、「宗教トラブルについての法律相談」(62.5%)などが、大きな比率を占めていることがわかる。
また、「脱会した・したい信者のための自助グループ」(59.8%)、「宗教的トラウマに対する医療的支援の拡充」(55.9%)、「脱会した・したい信者に対する社会一般の理解を促すための啓発活動」(55.8%)、「献金の上限規制」、「信者・元信者に対する偏見をなくすための啓発活動」(51.2%)、「脱会した・したい信者に対する経済的支援」(50.4%)などが、回答者の5割を超えていた。
荻上氏は、宗教二世問題がクローズアップされると、「宗教二世は不幸だ」とか、「宗教は毒だ」と、宗教全体への偏見につながり、相談にのってくれなくなると述べ、「離脱したいと思っている二世当事者が生きづらくなる。苦しい状況になりかねない」と訴えた。
「『二世体験』を報じる際には、フェアで、しかし、問題のある団体などについては、適切に報じていくということが重要だ」という荻上氏は、記者会見を開催した理由を以下のように説明した。
「私にも、多くの二世当事者の友人などがいます。そうした方々から、今回の事件が起こる前から、色々な相談を受け、からいろいろな相談を受け、それぞれの背景について話を聞き、その困難というのもそれなりには聞いてきたつもりではありました。
私は二世当事者ではありません。しかしながら、自分のような人が二世ばかりを矢面に立たせるのではなく、こうした調査を伝えるというような仕方で世の中に議題設定することも重要ではないかというふうに考えて、今回は会見の場で発表をさせていただきました」
会見会場では、「『宗教二世』当事者の実態調査1131人の回答分析から見えてきたもの」と題した調査結果報告書が配布された。
- 「宗教2世」当事者の実態調査(323p・3.62㎆、PDF)
IWJ記者は、荻上氏に以下の質問をした。
「このたび行ったような宗教の当事者に関する調査、実態調査というのは、今後も、その視点とか問題系を変えて継続されていく予定なのか? それとも、このたび一回で終わりということなのでしょうか? その点をご教示下さい」
これに対して荻上氏は、以下のように答えた。
「継続調査にするのかどうかということですけども、今回の調査に関しては、まず、そのタイミングなのもありましたので、このタイミングでできる調査は一回限り。なので、この調査はひとまずこれで終了となります。
ただ、このアクションはこれで終了ではありません。このデータをもって、各政党の方々であるとか、各閣僚の方々には届けていきたいと思います。
今回の調査というのは、メディアで報じて、それを消費するのではなくて、絶対に国会で議論してほしいんですね。で、今回の調査というのが、確かに限界があるものだが、限界がある調査だけでも参考にはなるものなんです。
より確かな調査を取りたいというのであれば、政府はその調査を行う必要があるんですね。調査をしなければ、その実態把握とその対応というものが適切に行えません。
なので、『こうした調査を行いましょうよ』というような点をしっかりと政府、および、国会関係者に届けていくというアクションを今後行いたいと思います」
記者会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。