2021年7月13日(火)午後1時頃より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、「再稼働阻止全国ネットワーク」の主催で「院内ヒアリング集会 IAEA『深層防護第5層』の実効性を問う~規制委・内閣府は3.18水戸地裁判決をどう受けとめたか?」が開催された。
「深層防護」とは、「事態の進行段階に応じて必要な対策を準備するという考え方」のことであり、何らかの危機を回避するために講じられた対策が失敗した場合を想定し、その次の段階の対策を考え、備えるというものである。
IAEAが定める深層防護は、その目的に沿って、以下の5つの層で構成されている。
・第1層 そもそも異常を生じさせない対策
・第2層 プラント運転中に起こりうる異常が起きても事故に発展させない対策
・第3層 設計上想定すべき事故が起きても炉心損傷等に至らせない対策
・第4層 設計上の想定を超える事故(シビアアクシデント)が起きても炉心損傷や格納容器破損を防止する対策
・第5層 放射性物質の放出による外部への影響を緩和するための対策
※原子力規制委員会の取り組み(原子力規制委員会、2016年3月22日)
https://www.nsr.go.jp/data/000145528.pdf
原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省や国内外からの指摘を踏まえ、「新規制基準」を策定し、それにより、原子力施設の設置や運転等の可否を審査・判断することとしている。しかし、その審査は、地震・津波・火山対策ほか多くの問題で「緩やかに過ぎ合理性を欠く」と言われている。
2021年3月18日には、水戸地裁が、「避難計画等の第5の防護レベルについては、(中略)その安全性に欠けるところがあると認められ、人格権侵害の具体的危険がある」と判断し、「東海第二発電所の原子炉を運転してはならない」と判断を下した。
この集会では、再稼働阻止全国ネットワークの木村雅英氏、山崎久隆氏、そして、運転差し止め訴訟原告共同代表・大石光伸氏らが、日本において、IAEA(国際原子力機関)の求める深層防護、特に第5層(放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和)がどの程度達成されているかを確認するために、内閣府、原子力規制庁、経済産業省の担当官を会場に招き、一問一答の形で質疑応答を行なった。
「原子炉の立地審査指針」についての質疑応答では、木村氏、山崎氏と原子力規制庁の担当官の間で以下のようなやりとりが行われた。
木村氏「『(旧原子力安全委員会が策定した)立地審査指針は、新規制基準に取り入れなかったことから、適合性審査では用いていません』とハッキリと書かれていますが、本来、あれだけの事故を起こしたら、今までのこの立地指針は、良かったのか、悪かったのか、どういう基準が指針としてもっと改善しないといけなかったのか? そういう検討をして、立地指針を強化するということが、本来あるべき、事故を踏まえた規制行政だと思うのですが、そうはされないで、取り入れなかった理由を教えて下さい」
原子力規制庁担当官「立地指針に限らないのですが、旧規制当局が作った指針なり、基準なり、当然、新規制基準の中で引用したりする形で、もちろん使えるものもあるし、まったく役にたたないものもあるし、そういう中で最終的にこの立地審査指針は、引用される形では使われなかったと。旧規制当局が一度作った文書であるから、従って、それを必ず再検討して、改正して、我々として定める。必ずしもそういうものではないと考えます。もちろん、法律なり、法律にぶらさがる規則は、当然、それは引き継いで、改正しなければならない」
山崎氏「すみません。そこまでおっしゃるのであれば、先ず、何が使えるもので、何が使えなかったのかを、きっちりと国民に説明していただきたいですね。それともう一つ、旧原子力安全委員会なり、原子力委員会なりが許可して運転していた54基の原発は、一旦ゼロベースに運転許可を取り消して、改めて、新規制基準のもとで、規制委員会が運転して大丈夫かどうかというのを、一から、立地審査も含めて、見直してやるべきだったんじゃないですか? そう思います」
詳しくは、全編動画をご確認ください。
以上、ご確認のほどよろしくお願いします。