米中覇権争いの最前線は「宇宙」! 中国は、火星開発競争に参戦、独自GPSシステムを構築して米国依存から離脱! 量子衛星打ち上げ、月の背面着陸で米国に先行! 追われる立場の米国には、かつての冷戦時代のような「大人の余裕」がない!! 2021.3.5

記事公開日:2021.3.5 テキスト
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(文・六反田千恵、文責・岩上安身)

 米中が宇宙開発競争でしのぎを削っている。中国が火星探査機を火星の軌道に乗せたかと思うと、米国が火星探査車を火星に着陸させる。

旧ソ連崩壊後、宇宙開発は米国の独壇場だったが、中国は猛烈な追い上げを見せ、衛星を打ち上げて独自GPSを構築し、米国依存から脱却を果たす。

 さらには、世界で初めて月の裏側に探査機を着陸させる、世界初の量子衛星を打ち上げ、量子通信を実現するなど、米国を先行する場面も出てきた。

 宇宙開発技術は、典型的なデュアルユース技術である。民生の産業経済競争に大きなインパクトを与え、先行者に大きな利益をもたらすだけではなく、軍事面でも死活的に重要な技術となり、まさに宇宙を制する者が地上の覇権をも握るといっても過言ではない。米中覇権争いの最前線は「宇宙」、なのである。

米NASAの火星探査車「パーサビアランス」が火星着陸、中国CNSAの「天問1号(Tianwen-1)」も火星軌道に到達

▲火星探査車「パーサビアランス」(NASA)

 2021年2月19日(日本時間)、米国航空宇宙局(NASA)が2020年7月に打ち上げた火星探査車「パーサビアランス(Perseverance、忍耐の意味)」が、無事火星に着陸した。これから約2年間(680日間)、火星の岩石サンプルを採取し、微生物や生命の痕跡を探索する。

 同時に「パーサビアランス」に搭載された小型ヘリコプター「インジェニュイティ」が、地球に比べると希薄な火星の大気の中で飛行が可能かどうかといった実験も行う。この飛行実験に成功すれば、別の探査計画で探査できる範囲が大幅に広がる。

 NASAのホームページでは「パーサビアランス」と「インジェニュイティ」の精緻なCGと、着陸時、着陸後の実写映像が公開されている。

  • MARS(NASA、2021年3月3日閲覧)

 実は、「パーサビアランス」が火星に着陸する9日前の、2021年2月10日、中国が打ち上げた火星探査機「天問1号」が火星の軌道に到達していたのである。

 中国国家航天局(CNSA)によると、「天問1号」もまた、観測機材等を搭載した探査車をもち、5月には火星に着陸する予定だ。火星の地形や大気、環境、土壌に関する情報を収集し、水の痕跡を探すなど、「パーサビアランス」と類似した任務を負っている。

 現状では、宇宙開発の分野では、米国が一歩リードしてはいるが、かつての冷戦時代のように、米ソ2国だけが突出し、他の追随を許さない、というような圧倒的なリードではない。中国の「天問1号」が無事に探査車を送り込めば、米国と肩を並べることになる。

米中覇権争いは宇宙開発競争へ! 冷戦時代の米ソ宇宙開発競争の再来か!?

▲天問1号の打ち上げ(wikipedia)

 振り返れば昨年、2020年7月23日、中国は海南省の文昌航天ロケット発射場から、「天問1号」を搭載したロケット「長征5号」を打ち上げた。「天問1号」は、火星へ向かう軌道への投入に成功し、中国が自国で打ち上げに成功した初の惑星探査機となった。

 その直後、「天問1号」を追いかけるように、米国も7月30日に、フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から「アトラスV」ロケットを打ち上げた。「アトラスV」には、NASAの火星探査車「パーサビアランス(Perseverance)」が搭載されていた。パーサビアランスを格納した運搬機は分離され、無事に火星に向かった。

 米中が競い合うように火星に探査機を打ち上げるさまは、かつての冷戦時代の米ソ宇宙開発競争を彷彿とさせる。ソビエト連邦解体後、宇宙開発は米国の独壇場となっていたが、そこに中国が新しい挑戦者として登場してきた形だ。

 超大国の威信をかけた宇宙開発競争は、冷戦たけなわの頃、米ソの間で華々しく競われた。

 1957年10月4日にソ連が人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した際には、世界中に衝撃が走った。西側の自由主義・資本主義体制よりも、ソ連が革命によって樹立した社会主義・計画経済体制の方が、科学技術の進歩を促進してゆき、西側を凌駕してゆくのではないか、という動揺が、西側諸国に広まった。

 この時の驚きと、「社会主義の方が実は優れていて、科学技術の進歩において抜かれてしまうかもしれない」という深刻な懸念は、「スプートニク・ショック」と呼ばれた。

 その後、米国は、巨費を投じてアポロ計画を遂行し、1969年にアポロ11号によって有人月面着陸を成功させて、ソ連を追い抜いたことを全世界に見せつけ、西側の自由主義・資本主義体制の優位を印象付づけた。

 今、我々の眼前で起こっていることは、「スプートニク・ショック」から「アポロ計画」に至る、社会主義が先行、自由主義の資本主義体制が最終的には勝利するという、巻き返しのドラマの再現なのだろうか?

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