全国紙のみならず、各地方紙も含めて新聞の発行部数減少が止まらない。多くの地方紙に記事を配信している通信社も、その影響を受け、加盟料を値下げするなどして対応してきたが、経営の悪化が好転しない共同通信は、現在約1600人いる正職員のうち、2028年までに約300人「リストラ」する計画だ。
▲共同通信本社・汐留メディアタワー(Wikipediaより)
経営陣は、2022年度からのバブル入社組の定年退職による自然減や、新規採用の抑制などによる人員削減を想定。雇用延長した職員の活用により取材力・編集力の維持は可能としており、実質的な「リストラ」や早期退職の募集は行わないとしているという。
新聞の発行部数減少が加速する中、加盟社が支払う「社費」激減! 経営改善の見込みなし!?
新聞や雑誌の実売部数を調査する第三者機関・一般社団法人「日本ABC協会」によると、2019年11月の日刊紙朝刊の総販売部数は3308万部で、前年同月に比べて186万部減。
一般社団法人である共同通信の加盟社は、発行部数に応じて共同通信に「社費」を払うため、加盟社の部数が減れば社費も減る。
しかも共同通信の収入(経常収益)の4分の3程度は300億円程度の「社費」からなる。新聞の部数減とともに、このまま「社費」が減り続ければ、さらなる「リストラ」は避けられないと見られる。
共同通信へ支払う高額の社費によって経営を圧迫されている加盟社からは、社費負担の引き下げを求める声に加えて、共同通信職員の高給、取材力の低下などに不満の声があがっているという。共同通信は2020年度、「コロナ対策」の名目で加盟社が支払う社費を5%減額することに応じた。
人員削減は取材力低下に直結! 地方ニュースからの撤退となれば存在意義自体が希薄に
経営悪化に伴う記者の削減は、取材力の低下につながる。
「社費」の減少に伴って行われる記者の減少は、共同通信社内の体制の見直しに直結。共同通信は、経済部、地方報道部、生活報道部をグループ化し、取材先の重複解消により記者の人員削減を行う予定と見られる。
他方、共同通信が地方支局の人員を削減する代わりに、加盟社である地方紙から地元の記事の提供を受ける構想があるという。しかしこの構想は、共同通信が地方ニュース取材から撤退することを意味する。地方の加盟社が取材した記事を、わざわざ共同通信を介して「共有」する価値は高くないため、加盟社の地方紙が、共同通信に「社費」を支払う意義はよりいっそう損なわれる。