ニューヨーク・タイムズが香港のデジタル・ニュース部門を東京ではなくソウルへ移転! その理由は東京には「独立した報道」が存在しないから!! その理由を、日本の既存大手メディアは足並みそろえて報じず!! ~この事実こそ「独立した報道」が存在しない(独立メディアを除く)証拠! IWJは情報操作が常態化する日経新聞、NHK、共同通信など記者クラブメディアを直撃取材! さらに元外務省国際情報局長、孫崎享氏によると、ニューヨーク・タイムズの移転の背景には、より深刻な問題が! 2020.8.12

記事公開日:2020.8.12 テキスト
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(文・取材:尾内達也 文責:岩上安身)

 ニューヨーク・タイムズの香港を拠点するデジタル・ニュース部門が韓国のソウルに移転することが決まりました。その移転理由は、6月に、香港の民主勢力や反体制派への統制を強化する国家安全法が中国で成立し、香港で施行されたからである

 香港は、外国企業に対して開かれており、中国本土に近く、自由な報道の伝統があるため、英語ニュースでは、数十年に渡ってアジアの報道拠点になってきた。

▲ニューヨーク・タイムズ本社(Wikipediaより)

 ニューヨーク・タイムズは、香港からソウルにデジタル・ニュース部門を移転するにあたって、ソウルのほかに、東京、バンコク、シンガポールも検討したと述べている。その中で、韓国のソウルを選んだ理由として、3つ挙げている。

1. 外国企業に友好的である。

2. 独立した報道が存在する。

3. 複数の主要なアジアのニュースで中心的な役割を担っている。

 ところが、この記事を伝える日本の記者クラブメディアは、この3つの理由のうち、1番目と3番目を紹介して、2番目の「報道の独立性」については言及していないのである。

▲記者クラブメディアの新聞が並ぶ駅売店(Wikipediaより)

 1番目の「外国企業に友好的である」も、3番目の「複数の主要なアジアのニュースで中心的な役割を担っている」も、東京はその条件を満たしていると言える。むしろ、ほとんどの記者クラブメディアが意図的に無視した2番目の「独立した報道が存在する」という条件をソウルと比べて東京が満たしていないから、というのが決め手になったと考えるべきだろう。本質的な理由を記者クラブメディアは「保身」から隠蔽しているのである。この事実こそ、まさにニューヨーク・タイムズの指摘した通り、東京(日本)に、「独立した報道」が存在しない(独立メディアは除く)という何よりの証拠である、というべきだろう。

 たとえば、日経新聞は、「同社(ニューヨーク・タイムズ)は移転先にソウルを選んだ理由として、外国企業が活動しやすく、アジア地域の主要な報道拠点になっている点などをあげた。バンコク、シンガポール、東京も候補だったと明かした」と伝えている。

記事目次

「そういう質問は書いてあることがすべてですから、そこから推し量っていただくしかありません」!

 IWJは、日経新聞にこの点を電話で直撃取材した。最終的に、メールで質問を送ったが(8月11日現在、メールの質問への回答はない)、そこに至る日経新聞とのやり取りには驚くべきものがあった。ここにそれを紹介する。

▲日経新聞社の入る大手町カンファレンス・センター(左のビルに日経本社が入る、Wikipediaより)

 IWJ「ニューヨーク・タイムズがデジタル・ニュース部門を香港からソウルに移転するという御社の記事についておうかがいします。ニューヨーク・タイムズはソウル移転の理由を3つあげています。日経新聞の方を確認すると、2点理由としてあげられていて、あとは『など』で省略されています。一番のポイントになるのはニューヨーク・タイムズのあげた理由の『報道の独立性』、independent pressと書いてある部分だと思います。ほかの2つに関しては東京は条件を満たしていますので、東京が満たしていない理由を報道すべきではないかと常識的には考えるのですが、この点、日経新聞で報道されていない理由には何かあるのでしょうか? 」

日経新聞「いや、とくにないと思いますけれども、はい。そういう質問は書いてあることがすべてですから、そこから推し量っていただくしかありません。私どもの方としては何もお答えできませんけれども」

 耳を疑いました。「推し量っていただくしかない」とはどういうことでしょうか。基本的な情報を与えずに「忖度」せよということなのでしょうか。

IWJ「削除している理由はとくにないということですか? 」

日経新聞「削除…ま、あのう順番づけはあるかもしれませんけれども、はい。ちょっと、そのへんの、私は今日経の記事しか見ていないのでわからないんですけれども、はい。」

IWJ「そうなんですね。お答えはできないということですね」

日経新聞「特にお答えはできませんけれども、はい。記者はもちろん一人一人の判断はありますけれども、はい」

IWJ「記者の方が書いて、編集長や局の方でチェックして記事として出すわけで、記者の書いたものがすべて通るわけではないと思うんですよね。出ている記事は日経新聞として出すわけですから、日経新聞の考え方がそこに反映されるということだと思うんですが。もっとも重要な理由を書いていないということが理解できないのですよ。なので、推し量れないのですよ。なので、お尋ねしているのですけれども」

日経新聞「ああそうですか、申し訳ないのですが、電話では承れませんので、その旨書いて郵便で出していただけますでしょうか」

IWJ「メールでもいいでしょうか」

日経新聞「大丈夫です」

 日経新聞は、「順番の問題がある」と述べているが、順番なら、1番目の「外国企業に友好的」と2番目の「独立した報道の存在」を紹介して、3番目を「など」で省略するのは「順番」というものである。2番目の理由を省略するのは不自然で、非常に意図的な情報操作と言わなくてはならない。記事に書いてあることがすべてで推し量ってくださいという発言もあったが、日経新聞のすべての読者がニューヨーク・タイムズ紙を併読しているわけではないはずである。基本的な情報を提供することを怠って「推し量れ」とはあまりにも厚かましい話ではないだろうか。彼らが書いていることが「すべて」ではなく、彼らが書かないであえて落とした情報の方こそが重要なのである。取材して、よくわかっているにもかかわらず、意図的に政府と記者クラブにとって都合の悪い情報は伏せる。これこそは典型的な「情報操作」である。

 日経新聞以外にも、NHKや東京新聞(共同通信配信)がやはり2番目の理由だけを書いていない。毎日新聞(共同通信配信)に至っては、ニューヨーク・タイムズの挙げた理由を丸ごと紹介していない。

(…会員ページにつづく)

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