黒川氏「麻雀賭博」問題でIWJは「法曹記者クラブ」加盟社に質問状! 22社の回答を中間報告します!(6月2日現在) 2020.6.3

記事公開日:2020.6.3 テキスト
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 黒川弘務元東京高検検事長と新聞記者3人とによる「麻雀賭博」問題に関して、IWJは「法曹記者クラブ」加盟37社に、下記の質問状を5月23日に郵送、27日にメールで送付。5月31日(日)までに回答をお願いしました。未回答の社には6月1日に電話で問い合わせました。

 その結果、6月2日現在、22社から回答をいただきましたので、中間報告としてご紹介します。

質問状

 拝啓 コロナ禍の渦中、ご多忙のことと存じます。

 平素よりたいへんお世話になっております。  株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)代表・岩上安身です。

 さて、東京高検の黒川弘務検事長が、現金をかけて麻雀をしていたことを認め、5月22日に政府から辞職を承認されました。黒川検事長は、産経新聞記者の自宅で、同紙記者および朝日新聞元記者と2度にわたり賭け麻雀を行っただけでなく、3年前から毎月賭け麻雀を行っていたことを認めました。

 刑法に照らして、黒川氏および、ともに賭け麻雀を行った記者らは常習賭博罪に問われるべきだと考えます。また、法曹記者クラブに属する報道機関の記者が、検察庁関係者と麻雀などの賭け行為を行っていた場合は、彼らも同罪に問われるべきだと考えます。

 私たちは、こうした状況に鑑み、わが国の報道メディアのあり方をぜひ向上させたいと願っております。そのために、法曹記者クラブに加盟する報道機関である御社に、下記「公開質問状」という形で、本件に関してお問いあわせいたします。これらの質問と御社からの回答は、IWJの日刊IWJガイドほかのコンテンツで公開する予定です。お手数で恐縮ですが、ぜひ、ご協力賜れれば幸いです。

 2020年5月31日(日)まで必着で、回答をお願い致します。なお、別途、電話やメール、ファクス等でもご連絡差し上げる場合があります。

   敬具

   2020年5月22日
   株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル(IWJ)
   代表 岩上安身

   記

賭け麻雀問題への御社の対応に関する公開質問状

質問1. 御社は、黒川弘務東京高検検事長と産経新聞記者、朝日新聞元記者が賭け麻雀を行っていたことを、週刊文春の報道前に認識していましたか?

質問2. 御社の記者等社員・関係者が、黒川弘務氏または検察庁関係者、その他の官僚と麻雀などの賭け行為等の違法行為を行った事実がありますか?

質問3. 黒川氏を含めて、記者らが政治家・官僚ら取材対象者と賭け麻雀等の違法行為を行った事実があるかどうか、過去にさかのぼり、全社的な調査を行う意向はおありですか?

質問4. 黒川氏の事件は、記者が政治家・官僚等と賭け麻雀等を行うことによって「秘密」を共有し、親しい関係を作り、情報を得ようとする不適切な取材方法が招いた事件でもあり、ひいては閉鎖的で不健全な記者クラブという制度がもたらした「帰結」であると考えられます。これは法曹記者クラブだけに限らず、すべての記者クラブに共通する問題であり、「情報が取れさえすれば、その手段・過程では何でも許される」という誤った考えが、これまでも長年にわたりはびこってきたのではないか、と推察されます。黒川氏と一部の記者だけを、トカゲの尻尾切りにして、記者クラブ制度の問題を「温存」するのは、「権力との癒着と犯罪の温床」をそのままにしておくようなものでないかと考えます。御社はこのような取材方法の慣習を廃止するとともに、閉鎖的で排他的で不健全な記者クラブ制度をオープンな形に変えていくべきだというお考えはありませんか?

 以上

 

回答

〇朝日新聞社 広報部

質問1、2.3はまとめて回答いたします。

 週刊文春から、弊社社員が黒川弘務東京高検検事長(当時)らと賭けマージャンをしていたのではないかとの指摘を受け、弊社は社内調査に着手し。賭けマージャンが事実であることを確認しました。新型コロナ感染防止の緊急事態宣言中だったこととあわせて社員の行動として極めて不適切であり、5月29日付けで停職1カ月の懲戒処分といたしました。社員は編集部門を離れ、記者ではありませんが、記者時代に黒川氏と知り合っており、今回の問題は「記者活動の延長線上に起きたこと」ととらえ、報道倫理が問われる重い問題と受け止めております。今後、取材先との距離の取り方などについて整理し、改めてご報告いたします。また、社員教育にも生かしてまいります。

質問4

 記者クラブ制度については、その閉鎖性や横並び体質などへの批判や懸念を踏まえ、記者クラブが取材・報道のための自主的な組織として、公権力の監視や情報公開の促進など、本来の存在意義に沿って運営されるよう努めます。

※上記回答とともに「弊社社員の懲戒処分につきまして」という5月29日付のプレスリリースが添付されていました。内容は、以下の朝日新聞ホームページに掲載の文面とおおむね同様ですが、後者には【社内調査で聞き取った概要】が付加されています。

※賭けマージャン問題に関する懲戒処分(朝日新聞社、2020年5月29日)
https://www.asahi.com/corporate/info/13413852

〇毎日新聞社 社長室広報担当

質問1に対するご回答

 認識していません。

質問2、3に対するご回答

 通常、取材先との関係についてはご回答しませんが、今回の事案に鑑みて回答します。過去5年間、法務省または検察庁を担当した記者の中に、黒川氏とマージャンをした記者はおりません。

質問4に対するご回答

 当社の見解は以下の通り、日本新聞協会編集委員会の見解 https://www.pressnet.or.jp/statement/report/060309_15.html と同様です。以下抜粋します。

 記者クラブは「取材・報道のための自主的な組織」です。

 日本の報道界は、情報開示に消極的な公的機関に対して、記者クラブという形で結集して公開を迫ってきた歴史があります。国民の「知る権利」と密接にかかわる記者クラブの目的は、現代においても変わりはありません。

 記者クラブは、「開かれた存在」であるべきです。外国報道機関に対しても開かれております。

 記者クラブが「取材・報道のための自主的な組織」である以上、それを構成する者はまず、報道という公共的な目的を共有していなければなりません。記者クラブの運営に、一定の責任を負うことも求められます。最も重要なのは、報道倫理の厳守です。記者クラブは報道倫理を厳守する者によって構成される必要があります。

 記者会見参加者をクラブの構成員に一律に限定するのは適当ではありません。より開かれた会見を、それぞれの記者クラブの実情に合わせて追求していくべきです。

〇読売新聞グループ本社 広報部

質問1に対する回答

 認識していません。

質問2、3に対する回答

 検察取材を担当した記者について過去10年に遡り調べましたが、黒川氏ら検察庁関係者と賭け麻雀などの違法行為を行った事実はありません。

質問4に対する回答

 当社は記者行動規範で「取材にあたっては、その方法が公正かつ妥当かどうかを常に判断し、社会通念上是認される限度を超えることがないようにしなければならない」と定めており、これに違反した場合は規定に基づき処分の対象としています。記者クラブ制度については、「取材・報道は自由な競争が基本であり、記者クラブに属する記者は、クラブの目的と役割を正しく理解し、より質の高い報道を求めて切磋琢磨していかなければならない」とする日本新聞協会編集委員会の見解(2006年3月9日改定)を支持しています。

〇日本経済新聞社 広報室

 取材先との関係は、当社の取材・報道の指針に基づいて日頃から記者を指導しています。記者クラブについては、日本新聞協会が見解で示している通り、報道倫理を厳守する者によって構成される必要があると考えています。

〇産経新聞社 広報部

 産経新聞の記者2人が新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出されている中で特定の取材対象者と賭けマージャンを行っていた問題について、現在、弊社は調査を進めています。賭けマージャンは、相手や金銭の多寡に関わらず極めて不適切な行為であり、加えて不要不急の外出自粛が求められていた中で行われていた深刻な問題だと受け止めています。すでに記者2人は編集局付に異動させ記者活動を停止させていますが、調査結果が固まり次第、厳正に対処します。弊社では社員に対するコンプライアンス研修を実施してきましたが、今回の問題を踏まえ、特別研修の実施を検討しています。

〇東京新聞 編集局

)認識していませんでした。

)確認できた範囲では、黒川弘務氏と賭け麻雀をした記者はおりません。その余については、回答を差し控えます。

)全社的な調査を行うことは考えておりません。

)今回の賭け麻雀の問題が、記者クラブ制度と直接の関係があるとは考えません。記者クラブをより「オープンな形に変えていくべきだ」とのご意見については、一般にその通りだと思います。

〇共同通信社 編集局

 取材のプロセスに関するご質問であり、お答えは控えさせていただきます。日頃から取材対象者とは適切な距離を保つよう指導しています。

〇時事通信社 編集局

※電話での問い合わせに対して「『質問状は届いている』以上のこと以外は回答しないようにと上からの指示がある。回答するかどうかも答えない」と回答。

〇日本放送協会 NHKふれあいセンター(放送)

質問1について

 取材・制作に関することは、これまでもお答えしていません。

質問2、3、4について

 NHKは、放送ガイドラインで取材・制作のルールを定めています。

 取材相手との関係については、常に放送倫理や公平・公正な放送を意識し、節度ある距離を保たなければならないこと、国民の知る権利や公共の利益のために密着取材が必要な場合であっても、相手の利益を図ったり、癒着と受け止められる行動を取ったりしてはならないと明記しています。

 こうしたルールを現場で徹底しており、引き続き、放送に携わる一人ひとりが高い倫理観を持って取材にあたってまいります。

 そして、報道機関として不偏不党の立場を守り、番組編集の自由を確保した上で、何人からも干渉されず、放送の自主・自律を堅持してまいります。

〇日本テレビ放送網 報道局

※電話での問い合わせに「質問が届いたかどうか答えない方針」と回答。

〇北海道新聞社 経営管理局法務広報グループ

 お尋ねの件について、当社としては、現時点において、公表すべき事項、ご説明すべき事項等はございません。

 なお、いわゆる「賭け麻雀問題」については、当社が発効する北海道新聞でも報じ、報道機関および記者と取材対象者との間の距離感や取材を含む接触のあり方を論点の一つとして取り上げています。当社といたしましても、国民、道民、読者の皆様の知る権利に応えるための取材の方法が国民、道民、読者の皆様から疑念を持たれることがないよう、これまで以上に努めてまいります。

〇日刊工業新聞社 社会部

※電話での問い合わせに「政治関係の記事は扱っていないので関係ないです」と回答。

〇京都新聞社 編集局

(1) 認識していません。

(2) ありません。

(3)(4) 取材先との関係は適切に保つよう努めております。

〇徳島新聞社 社会部

※電話での問い合わせに「質問状は届いている。回答しない」と回答。

〇南日本新聞社 社会部

※電話での問い合わせに対して「質問状は届いている。回答しない」と回答。

〇ニッポン放送

質問1. 認識しておりませんでした。

質問2. ございません。

質問3. 弊社は司法クラブについては非常駐社であり、また、普段の取材状況を鑑みても可能性がないと考え、調査を行う意向はございません。

質問4. 現在のところ、そのようには考えておりません。

〇西日本新聞社 社会部

※電話での問い合わせに「返事をする予定はありません」と回答。

〇下野新聞社 経営管理局人事部

※電話での問い合わせに「回答できない」と回答。

〇神奈川新聞社 報道部

※電話での問い合わせに「直接関わる案件ではないので、回答はひかえさせていただきます」と回答。

〇文化放送 放送事業本部

質問1. 認識しておりません。非常に驚いています。

質問2. 全くございません。

質問3. いわゆる番記者による密着取材は行なっておらず、可能性そのものが無いと考えております。

質問4. 現時点ではそのように考えておりません。

〇山陽新聞社 社会部

※電話での問い合わせに「回答しない」と回答。

〇福島民友新聞社 社会部

※電話での問い合わせに「回答は差し控えます」と回答。

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 返事をまだいただいていないのは、以下、TBSテレビ、フジテレビジョン、テレビ朝日、テレビ東京、ジャパンタイムズ、河北新報、北國新聞社、北日本新聞社、大分合同新聞社、新潟日報、茨城新聞社、中国新聞社、静岡新聞社、福島民報社、秋田魁新報社です。

 引き続き、各社の姿勢について、問い質していきたいと思います。

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