【岩上安身のツイ録】岩上安身が、黒川弘務東京高検検事長の「賭け麻雀常習犯」疑惑の背景を読み解く~菅官房長官に責任を押し付け安倍総理は無キズのシナリオ!? 2020.5.21

記事公開日:2020.5.21 テキスト
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 黒川検事長の検事総長就任はこれで飛んだ。が、黒川が賭博罪でお縄になったとしても、それで良しとしてはいけない。黒川と法案は別である。→黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」 | 文春オンライン

 この記事には、気になるところがある。タレコミがあっても、その情報の出所は書かないのが鉄則。なのに産経から情報がもたらされた、と、出所を明記しているのだ。

 この記事では、産経の記者2名、朝日の記者1名が黒川と4人で雀卓を囲んだとなっている。産経からのリーグであれば、自社の記者を「売った」ことになる。義憤なのか、私怨混じりなのか。そうだとしても産経発と書く必要はない。アシがつく可能性も高まるし、不自然である。

 一般の人は、なぜこんな三密で自粛の時期に賭け麻雀を、しかも新聞記者が一緒に何をしているんだと驚き、怒る人も多いことだと思う。しかし黒川の賭け麻雀好きは記者クラブ仲間にはよく知られた話だった。記者自身も賭け麻雀仲間だったのだから知られていて当たり前である。

 番記者を交えての黒川の賭け麻雀好きが、「記者クラブ内ではもともとよく知られた話だった」と語られるところが(私自身、記者クラブに属する記者からそう聞いた)、記者クラブと取材先の非常識な癒着ぶりをよく示している。ベッタリと密着して秘密の賭け事まで共有する。三密どころか五密である。

 一般の人にはにわかに信じがたいだろうが、記者クラブの記者と取材相手との非常識な密着は日常茶飯なのだ。黒川だけが特別なのではない。そして、皆、知っていても漏らさない。それが社を超えた記者クラブの掟らしい。黒川が賭け麻雀の常習犯と知っていても誰も書かない。書こうと思えば書けたのに。

 そして書こうと思えば書けたことが、ある日、外部に情報がもたらされる形で、白日のもとにさらされる。なぜ今なのか、それを詮索する必要が出てくる。「臭うのは」と語るのは、産経でも朝日でもない、別のある新聞社の記者だ。「週刊文春発売前々日19日の読売の解説記事スキャナーだ」という。

 このスキャナーという解説記事を読むと、「文春の記事が出ても安倍総理には火の粉が降りかからないように予防線を張っていると読める」という。たしかに、安倍総理自身、黒川の定年延長にこだわっていたはずなのに、「首相は「無理する必要はない」と周囲に漏らすようになった」などと記されている。

 さらに読売のスキャナーはこう続ける。「もともと官邸は改正案について、国家公務員に合わせて検察官の定年を延長するという程度の認識で、首相も強い思い入れはなかった」(政府関係者)」。おいおいおいと突っ込みたくなる。何を今さら、である。

 本当に「政府関係者」が口にした言葉なのかもしれないが、「首相に強い思い入れはなかった」というのが事実ではないことはこれまでの経過を見ていれば誰の目にも明らかだろう。人一倍こだわっていたのは、元検事総長らに刑事告発される、安倍総理本人である。

 読売のスキャナーは、検察庁法改正案にこだわっていたのは総理ではなく、菅官房長官であると露骨に矛先の向きを変え、読者を誘導する。「首相と菅官房長官の足並みの乱れも露呈しつつある。首相が改正案の成立先送りに傾いた後も、菅氏は「最後まで成立させることを主張した」(与党幹部)という。

 読売は、コロナ対策で一斉休校を決めた際、「菅氏は意思決定に参加しなかった。「首相と官房長官の溝がさらに深まった」(政府筋)との声もある」と、安倍総理と菅氏の距離を強調し、その上で、黒川氏は「菅官房長官や事務方トップの杉田和博官房副長官らがその手腕を高く評価してきた」とする。

 要するに、黒川氏という人物は、菅官房長官や杉田官房副長官らの「子飼」で、安倍総理とは特段の関係のない人物である、と強調しているのである。このスキャナーという記事が掲載されたのは、週刊文春のデジタル版が出る前日。これから黒川氏の信用が失墜することを見越しているかのように読める。

 官邸の意を最も汲む新聞と「評判」の読売が、官邸の主の意に沿わない記事を出すはずがないと、「官邸周辺」の人物たちは読む。前出の某新聞記者は、「読売は、「安倍総理が、黒川検事長を罷免」と一面で打つんじゃないかって、記者同士ではもっぱら噂しています」と語る。

 賭け麻雀に溺れる黒川は、次期検事総長どころか、東京高検検事長のポストにもふさわしくない。いや、検事として失格であり、秋霜烈日のバッジは外すべきだ。そうした国民の声を聞き入れて、泣いて馬謖を斬る役回りが安倍総理で、そんな人物を取り立てようとしていた馬鹿者は菅氏ということになる。

 だが、週刊文春自身が書いているように、黒川が番記者と癒着して賭け麻雀にのめり込んでいたのは昨日今日のことではない。そして、それは司法記者クラブ内では広く知られていた。政権が次期検事総長にゴリ押しする際に、そうした評判をまったく知らなかったわけがない。

 万が一にもありえないが、もし、安倍政権の中枢が、黒川のアキレス腱をまったく知らなかったとしたら、内閣情報調査室が怠慢なのか無能であった、ということになる。前内閣情報官の北村滋氏や現情報官の滝沢裕昭氏の責任も問われるだろう。しかし、常識的に考えてそんなことはまず考えられない。

 検事総長は、総理大臣に対しても捜査し、起訴することの可能な、絶大な権限を持つ。そんな権限を持つ人物は、懐柔できるようにしておきたい。さらにいえば、いざという時に切り捨てられる弱みをもつ人物の方が御しやすい。そうしてみると賭け麻雀の常習犯であるダメダメ男の黒川は適任である。

 誰かが、今がカードを切るときと判断して、「黒川切り」のカードを切った。黒川を切りつつ、このダメ男を寵愛していたのは安倍ではなくて、菅なのだとのアナウンスも、あらかじめ読売が用意周到とばかりに吹き回っておいた。そして文春の記事登場である。

 明日(21日)は、朝のワイドショーから、黒川叩きで一色になるだろう。週刊文春はもちろん売れる。泣いて馬謖を斬る大見得を切って、安倍総理の株は再浮上するはずである(黒川の首を切らなければもちろん安倍の首も怪しくなる)。で、肝心の法案は? 多くの人が忘れる可能性がある。

 で、例の読売のスキャナーだが、ちゃんとこう書いてある。「今回の検察庁法改正案の施行日は2022年4月1日で、黒川氏の定年延長とは関係ない」。いやいやいや、するっと滑り込ませているが、元々この法案は黒川氏の定年延長を正当化するために後出しで出してきた法案である。無関係なわけがない。

 世論誘導のためなら、昔の歴史的事実だけではなく、今現在進行中の事態についても、こんなリビジョニズムを発揮してしまうのかと驚く。まあ、読売を読んでいちいち驚いていたら、キリがないのだが。

 元へ戻って、文春にタレ込んだ産経関係者とは誰なのか、推測してみる。司法記者クラブに所属している社会部の記者が、義憤か私怨で、自分の同僚も血を流すのを覚悟の上で、タレ込んだとも考えられる。が、違うシナリオも想定できる。

 司法記者クラブ内では常識だったこのネタを、官邸に直結する政治部の関係者(現役記者かOBかどちらも可能性あり)がつかみ、官邸の主の意を忖度して、週刊文春にタレ込んだ、というシナリオである。そうだとすると、読売の地ならしのような記事といい、辻褄は合ってくる。

 いずれにせよ、ハッキリしていることは、黒川はしょうもないダメ男だった、ということであり、そんな男を検事総長に据えようと画策していた安倍政権には、安倍総理を筆頭に責任があるということであり、法案はまだ残されているという事実である。

 この法案は廃案にしなければならない。でないとまた黒川のような弱みを握られたダメ男が検事総長候補に担ぎ上げられ、悲喜劇が繰り返される。

※以上、5/21投稿された岩上安身ツイートをまとめました。

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