2020年6月30日にアップされた宇都宮けんじ氏の「コロナ対策の詳細とその財源対策について」をご紹介します! 2020.7.1

記事公開日:2020.7.1 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ編集部)

 東京都知事候補の宇都宮健児氏が、6月30日に「宇都宮けんじ コロナ対策の詳細とその財源対策について」を発表しました。

 山本太郎氏の公約であるコロナ対策の財源について、「初の地方債を15兆円実行する」という提案が論議を呼んでいます。それに対して、財源についての宇都宮氏の詳細な主張が示されたものです。6月30日の岩上安身による明石順平弁護士へのインタビューでも早速取り上げました。

 宇都宮氏の政治姿勢が表わされたものとして、以下に全文をご紹介します。

 この「コロナ対策の詳細とその財源対策について」は、山本太郎氏の「地方債」発行プランに対する明確な反論と代案ともなっています。山本候補の支持者の方でも、焦点である「地方債」活用の可能性についてご覧いただき、議論を深めていただきたいと思います。

 なお宇都宮氏は、岩上安身のインタビューに応じています。下記でぜひご覧になってください。この「コロナ対策の詳細とその財源対策について」を読んでからご覧になると、一層理解が深まるかと思います。


宇都宮けんじ コロナ対策の詳細とその財源対策について

2020.06.30

1.私のコロナ対策の提案

 私は、「コロナ禍から命を守る検査体制と医療を充実する。損害を被っている中小企業、非正規、フリーランス、学生の生活保障措置をとる。コロナ医療を弱体化させる都立公社病院の独立行政法人化を中止する。」との施策を公約しています。

2.コロナ対策の財源はもうないとする小池知事

 小池知事は、26日には、感染が拡大しているが、「財源がないので、営業自粛要請はできない。」と述べたと伝えられます。「自衛」発言に続き、損害を被っている都民を冷たく見放す言葉であると感じました。

3.コロナ対策の財源は、このようにして作ることができる

 しかし、私が提言しているような政策実現のための財源は以下に述べるように、3兆円規模の財源を十分用意できると思いますので、ご説明します。

1) 不要不急の公共事業の見直し

 外環道の計画は都の負担分だけでも兆円単位の大事業です。住民は強く反対していますし、不要不急の事業です。このような道路建設などの巨大開発を延期・中止することで1兆円規模の予算を生み出すことができます。

2) 条例による基金の目的変更

 また、残りが800億円ほどしかないとされた財政調整基金だけでなく、特定目的基金や決算剰余金などを合わせると約9000億円の基金が利用可能です。この基金は条例を改正し、特定目的を変更することによって新たに1兆円を生み出すことができ、「新型コロナ対策基金」とすることができます。

3) 国の財政支援

 また、医療機関の財政支援などは本来国が行うべき財政支出であり、その抜本的強化を国に提言していきます。

4) 公共施設の建設のための建設債の借り入れと予算の組み換え

 次のような方法をとれば地方債による資金調達も現実的に可能です。地方財政法の5条五号にもとづく「社会資本の整備」(公共施設建設など)の目的であれば、都は総務大臣の同意を得て地方債で公的資金を調達することが可能です。

 現実に予算を投じて建てる計画であった公共施設の建設のために地方債を発行するのです。この場合、自前の予算で支出する予定だった公共施設の建替のための予算をコロナ対策に置き換えて活用することが可能です。置き換え予定の公共施設の規模にもよりますが、このような対策によっても、1兆円程度の資金調達が可能です。

4. 具体的な経済支援の方法

 これだけの財源を確保すれば、コロナ対策の医療の強化ができます。

 また、これを実際にコロナ禍によって損害を受けた事業者と、非正規雇用労働者・フリーランス・学生などの個人に、損害額に応じて補償することによって、その生活と生業を守り、ひいては東京の経済を守ることができると考えます。

 どれだけの資金を補償すべきか、補償できるかは、コロナ禍の状況が現在進行中であり、被害の全体像が確定していないことからも確言することはできませんが、中小事業者の人件費などの固定費や困難な状況にある学生やひとり親家庭などに対する給付も検討します。上下水道料金の基本料金を当面無料化する、小中学校の学校給食を完全に無償化することとします。実際に市民生活と事業に生じている損害に応じて、これらの事業と個人の生活を維持するために必要な資金を、貸付ではなく、生身の資金として供与する方法で、救済を図りたいと思います。

5. コロナ対策のために地方債を借り入れるためには、法改正が必要

 一部の候補は、コロナ感染症を都が災害に指定し、災害対策のための地方債を10兆円以上発行して、対策に充てるという財源案を示されています。しかし、しかし、コロナ対策の給付のために地方債によって資金調達することは、現行法の下では実現困難だと考えます。

 また、地方自治体には通貨発行権がありませんから、結局これらの地方債は、将来の都民の税金によって返済するしかなく、未来世代に大きな負担を課すことになります。したがって、地方債の金額は他の方法がない場合に、補充的に用いるべきです。

 地方財政法5条は五号の建設債以外に四号で「災害応急事業費」「災害復旧事業費」「災害救助事業費」についての起債を認めています。

 立憲民主党や一部の弁護士が、コロナ禍を「災害救助法の災害として扱うべきだ」と主張しており、コロナ禍の深刻な実情をみれば、耳を傾けるべき見解ではあります。

 しかし、4月28日の衆院予算委員会で、野党のコロナ対策に災害救助法を使うべきではないかという質問に対して、新型コロナ担当の西村康稔経済再生相は「(内閣)法制局と早速相談したが、災害救助法の災害と読むのは難しいという判断だ」と説明しています。したがって、総務省の同意を得て、災害給付のために起債することは絶望的であり、その実現のためには法改正が必要です。したがって、この提案は直ちに実現する政策ではないのです。

 総務省が20兆円の起債を認めたと一部の候補は発言されていますが、それはあくまで東京都の財政状況からみた、起債限度のことを述べているだけであり、建設債でないコロナ対策についての起債を総務省が認めているわけではありません。

 地方公共団体が国・総務省と協議し、同意を得られなかった場合は「地方議会に報告」後に「同意のない地方債」として発行することができますが、都議会での多数の賛成が得られると思えません。

 東京都が国と議会の同意を得ないで地方債を発行するという最後の手段はあり得ます。しかし、そのような起債に全国の他の自治体や地方債を引き受ける金融機関の理解が得られるとは思えず、このような方法で、資金調達ができるか疑問です。

 私は、一部の候補が提唱されるような、実現のために大きな障害のある方法に頼らずとも、上記のような三つの確実な財源対策によって約三兆円程度の財源を生み出すことができると考えます。私たちの財源対策には、法的に何ら障害はなく、都議会や国の理解を得ることも可能であると考えています。各方面のご理解が得られれば、幸いです。

 宇都宮けんじ

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です