「宇都宮健児さんとの違いは財政に関する考え方!新型コロナ対策に地方債で15兆円を準備する!」〜れいわ新選組山本太郎代表が東京都知事選出馬を表明! 2020.6.15

記事公開日:2020.6.15取材地: テキスト動画
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(取材・文:城石裕幸)

 「宇都宮(健児)さんに託せばいいじゃないか。そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、私と宇都宮さんでは、財政に関する部分か、考え方が違うということです」

 6月15日午後2時、れいわ新選組の山本太郎代表が参議院会館で記者会見を開き、東京都知事選への出馬を表明し、すでに出馬を表明している元日弁連会長の宇都宮健児氏との違いを訴えた。

 山本氏は政府や東京都の新型コロナへの対応について、社会的弱者への支援が行き届いていないと訴え、出馬した理由を次のように述べた。

 「次の衆議院選挙で私たちが議席を増やせたとしても、今、目の前にいる人たちをすぐ救えるかといったら無理ですね。そう考えたら今、1400万人いる東京都民の生活を底上げできる、餓死する寸前だった人たちに対してすぐにでも手立てを打てるんだったら、目の前の東京都知事選に出るでしょう」

 その上で山本氏は、「今できることは何か? 東京都自身で地方債を発行する以外ない」と主張し、コロナ対策として15兆円を用意すると表明した。

▲山本太郎氏(2020年6月15日IWJ撮影)

■全編動画

  • 日時 2020年 6月 15日(月)14:00~15:00
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

<ここから特別公開中>

 山本氏は、「地方債を積極的に発行する以外ないんですよ。じゃあその上限、どれくらいまでいけるんですか?という話です。地方の財政状況を表す時に実質公債費比率というものを見ますよね。1年間の収入の中で、年間のローン支払い額がどれくらいかというものですよね。

 東京都、どれくらいですか、って言ったら、29年度で1.6。30年度で1.5ですよ。全国平均は10.9。全然差があります。東京は超優良団体。つまり、東京都独自で資金を調達するという余地が、むちゃくちゃあるってことですよ。

 他の団体、どうか? たとえばですけど、緊急事態というところで指定されたような地域を見ていくと、北海道20.9ぐらいですか。大阪府は、16.8ぐらい。埼玉は11.4ぐらいですか。東京は1.5ですよ」

 立て板に水とはまさにこのことだ。

 山本氏の巧みな弁舌を聞いていると、どんどん引き込まれていくが、東京は借金の余地がまだまだあるから、もっと借金しようという話であることを忘れそうになる。

 忘れてならないのは、借金はいずれ返さなければならず、その多くは都民の税金によってまかなわれるということだ。都民の税負担の話に言及しない、という点が気にかかる。

 「つまりはいくら自分たちで資金調達できるか。総務大臣の許可ないまま、いくらまで資金調達できるかといったら、おそらく20兆円堅い。これ、総務省とやりとりしています」

 これは本当なのか? 起債制限は20兆円なのか? このあたりも確認が必要であると思われる。

 「だとするならば、今、今回のコロナ災害によって、苦しんでる方々に、金出します。当然ですよ。やるべきことはそれだ。そして、次のコロナの災害、第二波、第三波、来るんでしょう? ってことはまた、補償なき自粛、必ず行われますよ。そこに対しても迅速に出す。

 東京都としてやれる最大限のことをやっていく。当たり前の話ですよね。どうしてそれ、やろうとしないの? こっちにある予算をこっちに付け替える、無駄を省いて、それで作れるの、何兆ですか? それじゃ、間に合わないんだよって。

 この事態を見れば、もっと大胆に出さなきゃだめだってことですよ。それを東京都からやる。それ言えるの、誰かといったら、自分しかいないんです。なので、立候補を決めました」。

 山本氏は15兆円の使い道として、以下のように詳述した。

 「15兆をまず、今被害に遭っている方々、そしてこの先の備え、そういったものに東京都として金を出していく。その中身は何か。まず、全都民に10万円、すぐ給付します。

 続いて、授業料、1年間免除します。高校、大学、大学院、専門学校など。そして、中小零細個人事業主、もちろんフリーランス含みます。事業収入前年と比較して、マイナス分を補填します。他にも病院をつぶさない。災害時と同様に、前年度の診療報酬支払い額を保証します。

 続いて、次のコロナに備えた内容です。その時にも、全都民に対して10万円、コロナお見舞金として給付いたします。

 そして、全事業者に対してまずはさっさと100万円。膨大な申請、書いて審査待ちという形にはしない。それは後でいい。全事業者。おそらく都内に40万事業者くらいですか。この二つに対しておそらく5兆円ちょっとプールしておけば、いける話ではないかと考えています。水光熱費、これも1年間免除。これも1兆円少しでできる話です。

 これは緊急事態というところに集中する話なんですけど、医療従事者、他にも供給サイドに立つ方々ですね、保育、介護、バス、タクシー運転手、駅員、そしてスーパーの店員さん。そういったエッセンシャルワーカーの方々に対して危険手当、日給2万4000円。基準は自衛隊で海外に派遣されて、戦闘に巻き込まれたりだとか、そういう場合に出る手当を基準にしてます」。

 しかし、東京都の財政規模は平成30年度で一般会計7兆460億円、特別会計5兆4389億円、公営企業会計1兆9591億円、全会計合計で14兆4440億円。令和2年度の全会計合計で、15兆4522億円である。

 また、都債残高は、平成2年度で4兆7875億残っている。その上で1年間の予算に匹敵する地方債を発行としているのだ。こうしてみると、山本氏の主張する15兆円が、いかに大きな額かわかるのではないだろうか。

 前述した通り、いずれその借金は、都民が担わされることになる。都民税(住民税)は、現状でも大変重い状態にある。将来に向けて借金をするということは、いずれ都民税を増税して返済する、ということだ。そうした点までセットで議論しなければ意味がない。

 質疑応答では、フリーランス記者が「宇都宮さんと山本さんで票を食い合うんじゃないか? 結果的に小池さんを利するんじゃないかという意見が多いが、どうお考えか?」と質問。これに対し、山本氏は「私の存在は、小池さんの票を削れる存在だと思っています。それに、選挙自体どうでもいいという人たちにもリーチできる」と答えた。

 この記者が「だったら山本代表が、宇都宮さんの応援に回ることはできなかったのか」と聞くと、山本氏は驚きの回答を口にした。

 「『応援神話』的なものがあると思う。応援に入ったぐらいで、票がそんなに大きく動くことはない。覚悟を決めて立候補した人を見て票を入れる。候補者ではなく、誰かの応援をして、その人の得票を上げていくというのは、そこまで大きな結果につながらない。それは自分の経験則としてある」。

 これは山本太郎氏をずっと追いかけて、その活動を伝え続けてきたIWJとしては、少なからぬショックを受ける発言だ。安倍政権を打倒するために、野党共闘による政権交代実現のために、骨身を惜しまず、その時々に所属していた自党の候補者だけでなく、他党の候補者の応援に、「ひとり野党共闘」と称して駆け回ってきたのは、他ならぬ山本太郎氏自身ではなかったのか。

 その応援が結果につながるというのは「神話」であり、「自分の経験則」でもあるという今の山本氏の言葉を聞いて愕然とせずにはいられない。

 自身のこれまでの過去の活動の否定ともとれる発言をした山本太郎氏は、積極財政一本鎗で突き進むスタイルに変わったのか? MMTの理論は通貨発行権のある国家を前提とした理論だ。東京都の財政をMMT理論で扱うこと自体、大きな疑念がある。この点についても、都知事選とからめて議論を深める必要がある。

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