2019年3月27日(水)に東京・築地社会教育会館で、「ゲノム問題検討会議~人間の尊厳と有用性 ゲノム編集による受精胚への介入の倫理~」が行われた。
昨年11月、中国の南方科技大学・賀建奎(フー・ジェンクイ)副教授らの研究チームが、エイズウイルスに感染しないようにゲノム編集技術を受精胚に用い、双子の女児を誕生させたというニュースが世界中を震撼させた。しかし、どのような規範に背いたとされるのか、これまで明らかにされてこなかった。
3月18日―19日にスイス・ジュネーブで開催された、WHO(国連)のゲノム編集に関する委員会の、第1回会合に参加した大阪大学大学院医学系研究科・教授の加藤和人氏は、会合の様子や、ワシントンDCと香港で行われた、「ヒトゲノム編集国際サミット」の様子を語った。
加藤氏は「ゲノム編集は体細胞を対象、生殖細胞系列を対象とするもの。いずれについても、様々な科学的、倫理的、社会的課題がある。生殖細胞系列の臨床応用については、特にいろいろな意見があるが、多くの議論が進行中であり、今後の議論の方向を見通すことは難しいと感じる」と、生命の根幹に関わる問題の難しさを述べた。
また加藤氏は「WHOは重要な役割を果たせる可能性がある。課題の一つは、どこまで広い範囲のステークホルダーとの『対話』を実現できるかにあるだろう。日本の人々や組織から『直接』のアプローチも期待される。会議では、非英語圏からの意見聴取の重要性も話題になった」と、一般人の意見も受け入れるかもしれないという、WHOの窓口の広さを語った。
上智大学教授・島薗進氏は「一国で規制しても他国が進めてしまえば、規制の意味はなくなる。『倫理』を踏まえず、先駆けして研究を進め、特許を取得し、経済的利益を得る企業や国家や科学者が得をすることになる。恥ずかしいことだが、これが現代世界の現実だ。規制は国際条約によって行う他ないことになる」と述べた。