3月2日に衆議院を通過した一般会計は、過去最大の101兆4571億円にまで膨れ上がった。一方で、内閣府は3月7日、1月の景気動向指数の速報値は、前月より2.7ポイント下がって97.9となり、景気は後退局面に入ったと発表した。
一般会計が景気後退局面で最大に膨張する中、安倍政権はいくつもの信じ難い支出をもくろんでいる。そのひとつが、一機の機体に966件もの欠陥があるF35戦闘機(6機916億円および整備用機材等として475億円を計上、さらに、F35戦闘機は今後105機買い増しの方針)の購入である。
これは2019年2月15日の衆議院議員予算委員会で、共産党の宮本徹議員の追及によって明らかになった。しかも答弁した岩屋毅防衛相は、米政府監査院(GAO)が報告で示したF35の未解決の欠陥966件(2018年1月時点)の「リストは保有していない」と述べ、同機の欠陥の内容を把握していないことを認めた。
▲宮本徹衆議院議員(オフィシャルサイトより)
▲岩屋毅防衛相(Wikipediaより)
そこで、IWJ代表の岩上安身は、3月13日に、『データが語る日本財政の未来』著者の明石順平弁護士にインタビュー行った際に、この件を取り上げた。
岩上が「F35は米国の監査で966件の欠陥があります。これは国会でも追及しているんです」と切り出したところ、明石氏「えっほんとに。それにわが国の自衛官を乗せようとしてるんですか!?」と驚いた様子を見せた。
いったい、米国内ではF35の軍事的価値はどのように評価されているのだろうか。この点に関して興味深い記事が発表された。世界の投資家向けのニュースサイト「ZeroHedge(ゼロヘッジ)」に以下のような記事(2019年3月11日)が掲載されたのである。
米国の軍事シンクタンクとしては最も信頼性の高い、ランド研究所が、第三次世界大戦のシミュレーションを行い、米軍は多くのシミュレーション・シナリオで、最も深刻な敗北を喫するだけでなく、西欧軍を殲滅するという中ロの目標を阻止できないという。
▲ランド研究所本部(Wikipediaより)
その中で、F35戦闘機はどのように扱われているのだろうか。
ランド研究所のアナリスト、デイビッド・オックマネック氏によれば、中ロ軍は滑走路のF35ライトニングⅡステルス戦闘機を破壊し、複数の艦隊を撃沈し、米軍基地を破壊し、電子戦によって重要な軍事通信システムのコントロールを奪うとされている。端的に言えば、この結果は、最も近代的な米軍も一部は全滅する、ということを意味している。
宮本議員による国会質疑で明らかになったことと、ゼロヘッジが報じたランド研究所の米対中・ロの戦争シミュレーションをあわせて考えるならば、F35は高価なくせに欠陥だらけのポンコツであるのはもちろん、開戦するやいなや真っ先に標的にされる、ということになる。滑走路上のF35はまったく役に立たない。日本にF35が100機以上も配備されていたら、日本の安全保障に資するどころか、日本が自ら「わが国を戦場にしてください」と国際社会にアピールしているようなものである。
下記では、このゼロヘッジ記事の翻訳を掲載する。
米国は第三次世界大戦のシミュレーションで「完全にやっつけられた」:ランド
タイラー・ダーデン
陸上、海上、空中、宇宙、サイバースペースの5つの戦場領域すべてで激戦となり最先端を誇る複数の米軍が全滅する!
第三次世界大戦のシミュレーション・シナリオでは、米国はロシアと中国に対して負け続けていると2人のトップ戦争プランナーは先週警告した。「我々のゲームでは、米がロシア・中国と戦うと、青は完全にやっつけられるだろう」とランド研究所のアナリスト、デイビッド・オックマネックは3月7日(木)に述べた(訳注)。
※訳注 パネルディスカッション「米国の新しい戦争の方法」(2019年3月7日、新アメリカ安全保障センター、ワシントンDC)
ランド研究所の戦争ゲームは、米軍(戦争ゲーム地図では、青色に塗られている)が次々と最大の敗北を繰り返している様子を示している。ロシアや中国(当然、赤)の「西側兵力の全滅」という目的は阻止できない。
「我々は大勢の人の命を失う。たくさんの装備を失う。我々は敵対者の攻撃を阻止するという目的を常に達成できない」とオックマネックは警告した。
▲デイビッド・オックマネック氏(ランド研究所のHPより)
次の軍事衝突は、2020年代半ば起こると考える人もいるが、そのときには、陸上、海上、空中、宇宙、サイバースペースの5つの戦場領域すべてで激戦となり、米国はかつての紛争のように、優位性を示すことは困難になるかもしれない。
戦争ゲームのシミュレーションでは、「赤」の攻撃力は滑走路上で米国のF-35ライトニングIIステルス戦闘機を頻繁に破壊し、複数の艦隊を撃沈し、米国の軍事基地を破壊し、そして電子戦を通じて重要な軍事通信システムを奪取する。端的に言えば、シミュレーションで示されるのは、恐ろしいことに、最先端を誇る複数の米軍の全滅である。
F-35は空では最強の存在だが、地上では大量の犠牲者が出る!
「私の知っているどのケースでも」と長年戦争ゲームに携わってきた元国防副長官のロバート・ワークは述べる。「F-35は空では最強の存在だ。しかし、地上では大量の犠牲者が出る」
▲F35ライトニングⅡ(Wikipediaより)
そして、ロシアと中国が第5世代戦闘機と極超音速ミサイルを開発したため、「滑走路や燃料タンクのような高度基地インフラに依存するものには厳しい時代なるだろう」とオックマネックは述べている。「海面を航行するものも厳しい状況になるだろう」
「だからこそ、我々が報告したように、来週発表される2020年予算では、USSトルーマン航空母艦は耐用年数より数十年早く退役し、2隻の揚陸艦が削減されている。海兵隊が、狭く暫定的な滑走路から離着陸できるジャンプジェット型のF-35を購入しようとしているのもそのためである。ハイテク航空機をローテクな整備環境でどこまで維持できるかは未解決の問題だ」とオンライン防衛雑誌の『ブレイキング・ディフェンス』は書いている。
欧州で戦争になればロシアのミサイル集中攻撃は防げない!
一方、もちろん純粋に仮説的な話だが「もしヨーロッパで戦争になったら、パトリオット発射中隊一個が移動することになる。そして、その発射中隊は、ドイツ南西部のラムシュタイン空軍基地へ向かう。それだけなのである」とワークは不満を述べた。米国は欧州全土に58部隊の旅団戦闘チームを持っているが、ロシアからのミサイル集中攻撃に対応できる対空能力とミサイル防衛能力を持っていない。
▲パトリオットミサイル(Wikipediaより)
サイバー攻撃と電子戦で中ロは米国の通信ネットワークを無力化する!
ランドはまたシミュレーションでのサイバー攻撃と電子攻撃のウォーゲームを行った。ワークは述べている。「ロシアと中国は米国の通信ネットワークを無力化するだろう」。
「我々が訓練中に赤の兵力が我々の指揮命令系統を実際に破壊する場合はいつでも、我々は訓練を中止する」とワークは冗談抜きに述べている。北京はこれを「システム破壊戦争」と呼んでいるとワークは述べている。北京が目指しているのは「容赦なくすべてのレベルで米国の戦闘ネットワークを攻撃することで、北京は四六時中それを行う」
▲ロバート・ワーク元国防副長官(Wikipediaより)
数年前、空軍はウォーゲームの結果が米国に有利になるような改善計画の策定をランド研究所に依頼したとオックマネックは述べた。問題を解決するために「年間80億ドル以上を支出するのは不可能だとわかった」。
「それは空軍の80億ドルだ。(海兵隊を含む)海軍と陸軍をカバーするためには3倍必要となる」とオックマネックは述べた。「つまり、240億ドルが必要である」。
ワークは「自分は近い将来の戦争の危険性についてあまり心配していない」と述べている。中国とロシアは近代化に向けての取り組みが完了していないため、戦う準備ができていない。あと10年から20年間くらいは、大きな衝突は起こりそうにもないとワークは述べている。
第三次世界大戦の軍備に「今後5年間、年間240億ドルの予算であれば、良い出費だ」とワークは述べている。
米軍は将来の複数戦線戦争で敗北する!
ランド研究所は、米国は将来的に複数戦線戦争で敗北するという冷や水を浴びせるような評価を下している。この評価は、2017年の軍事支出で米国は中国のおよそ3倍であることを踏まえるといっそう衝撃的である。
トランプ大統領の残りの任期の防衛予算は年間約7,000億ドルであるにも関わらず、米国の超タカ派は、納税者に軍事費の負担増を求めるというたった1つの目的のためだけに、ウォーゲームをシミュレーションして恐怖を煽っているのである。