首都圏に偏る「フェイク景気」。地方は非常に疲弊し地方銀行も疲弊している。その原因は中央の金融政策のまずさ
岩上安身(以下、岩上)「本日は、前回もご登場いただきました、シグマ・キャピタル株式会社のチーフ・エコノミストである田代秀敏さんをお招きして、二回目のインタビューをお届けします。田代さん、よろしくお願いします」
田代秀敏氏(以下敬称略)「よろしくお願いします」
岩上「今日も暑いですね。どこも大変な暑さだし、雨は降るし、カンカン照りにはなるし、非常に気候が乱脈になっています(※1)。ご実家の福岡は大豪雨になっているそうですが、大丈夫なのですか?」
田代「九州の方は歴史的豪雨(※2)で、今の観測体制ができて以来のことです。川も近くて少し心配な所ですかね。本当にもう、『地球温暖化』っていう言葉が、ちょっと独り歩きしちゃったんで、マズかったと思うんですね。やっぱり『気候変動』(※3)と言うべきで。僕たちがもう、今まで常識としてきた気候じゃないんですよ。
問題は、どこでも高齢化が進んでいるから、災害に対処できないことですよね」
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岩上「今日のテーマでもあります」
田代「昔だったら、若い人たちがお年寄りを背負って逃げるという光景があったけれども、今はできないですよね。お年寄りがお年寄りを背負って逃げるしかないわけですよね」
岩上「高度成長期の頃、そうした若年人口が東京にも流入してきて、工場労働者などになったといわれていますけれども、地方にも若年労働力が満ち溢れていた」
田代「はい。今、地方の県庁所在地の駅前の、例えばマルイが閉店セール中になっているわけですよね。なるほどマルイというのは確かに一番高齢化に弱そうな気がしますよね。若い人が行くわけですからね」
岩上「DCブランド(※4)がブームになった時に、『月賦のマルイ』から『クレジットのマルイ』にイメージチェンジして、一躍時代の寵児になった時期もありましたね」
田代「これは本当に笑いごとではなく大変なことで、東京にいるとわかりづらいですけれども、関東でも少し地方に行くとそうですから、もっと遠くへ行ったらどうなってしまうだろうということですよね」
岩上「これはもちろん関西も同じことです。80年代のバブル(※5)の時には、双子の山のように関東が盛り上がり関西がついていって、全国が裾野を形成するというほど力がありましたけれども、今、全くそんなことはない。例えば高層マンションの建設などは、関東と関西はもう比較にならない。首都圏にしかない。もっと言えば湾岸にしかない。そのくらい異常な偏り方です」
田代「そうですよね。そして困ったことに、大手メディア、特にTVの地上波キー局の本局がある所では、不動産バブルが起きているんですね。当然彼らは、ふた言目には『景気の着実な回復に伴い』と言うのね。
なるほどと思うんですよね。自分たちの通勤通路を見ているとすごく景気がよさそうに見えるから。でも私は、それは少し違うと思うんですよね。本当に系列の地方局を訪ねてみればいいと思うんですよね」
岩上「そうですね。そういう地方が非常に疲弊しているという話を、ただ単に社会学的に、もしくはルポルタージュ的に語るというのだけではなくて、それが地方銀行を疲弊させているということ、その原因は中央の金融政策のまずさにあるということまでを話してほしいです。
昨日、ツイッター上でかなり盛り上がっていたのは、この本についてです。『大東建託の内幕』(※6)(三宅勝久著、2018年、同時代社)という暴露本。これについてはもうすでに著者に内容証明(※7)が届いているらしいんですよ。ネット上ではみんな、『これは大手メディアではできないよね』と言っているんですね。三宅さんは週刊金曜日でも頑張って大東建託のルポを書いています。すごいですよ。『窃盗、放火、ハンマーで殴打 顧客を襲った現役社員の凶行』というタイトルを見るだけで、何が起こっているのかと思います(笑)。
しかしこれがただ単に、『非常に特異なカリスマ社長がめちゃくちゃなブラックを企業作っています』という形で切り取られるのは間違いで、こういうサブリース業(※8)が、非常に荒っぽい手口で『今だけ、金だけ、自分だけ』という感じで儲けようとしている。それは儲けられるだけの地盤がアベノミクスバブルによって生まれて、弾けそうになっているという話。こういう話もこれからうかがいます。
でも本題はスクープなのです。『日銀が発表した英語論文の謎 アベノミクス(※9)・黒田バズーカ(※10)による副作用の責任を逃れようと、裏で金融緩和の出口を模索』ということです。日銀は異次元金融緩和(※11)したけれども、全然効かなかった。何度やってもデフレ脱却ができない。それを総括する論文を(日銀は)書いたけれども、なぜか日本語では論文を出さない。これは前回も話しましたけれども、いよいよその核心部分に入ります。
われわれの非常に身近なところで起こっていることですが、中央の空中戦のような話ですよ。インテリしかわからなくて、一般の人には関係ないと思われがちです。田代さんはできる方なので、お話をうかがいたいと思います。
あらためてご紹介いたします。田代さんは1957年、福岡県生まれ。私より2歳上の先輩ですね。一橋大学経済学部卒業、一橋大学大学院経済学修士号取得、一橋大学国際共同研究センター客員研究員、みずほインベスターズ証券エコノミスト、日興コーディアル証券国際調査部部長、大和総研主任研究員などを経て、現在、シグマ・キャピタル株式会社チーフ・エコノミスト。赫赫たる経歴をお持ちですけれども、政治の世界にも大変顔が広いし、何でもよく知っていらっしゃるんですよ。中国のことにもものすごくお詳しいんです。中国語はペラペラです」

▲田代秀敏氏プロフィール
田代「いえいえ、そんな。中国語は下手です。英語も留学して勉強していないから、かなりテキストブックイングリッシュですけれども、まあ相手が学者なら問題はないですね」
財務省(大蔵省)出身者が日銀総裁に連続就任するのは130年ぶり! 日銀が財務省に言いなりにお金を出していると、日本円は信認を失う!?
岩上「さて、前回のおさらいを少ししたいと思います。『日本銀行総裁人事の重要性』ということがありました」
田代「財務省あるいは大蔵省出身者が連続して日銀総裁に就任するということは、実に130年ぶりです。初代と第二代が大蔵省出身者なのですが、その後はない」

▲黒田東彦・日銀総裁(Wikipediaより)
岩上「財務省がしてはいけないという理由は何ですか?」
田代「財務省というのは予算を組むわけですよね。日本銀行はお金を発行しているわけですよね。もし日本銀行が財務省の言いなりにお金を出していると、日銀が財務省のATMであるとみんなが思った瞬間に、日本円が信認を失うわけですね」

▲財務省出身者の日銀総裁連続就任は130年ぶり
岩上「なぜ信認を失ってしまうのかというと、日銀は、お札の発行量をすごく慎重に加減しながら、通貨の供給量を調整することによって、円の価値をほかの貨幣との関係性の中で保ち続けるわけですよね。日銀の独立性が失われて、少しでも大型予算を組みたいと思っている財務省が、ストッパーをかけることなく円をATMから引き出してしまうと、発行は増え、予算も締まりのないばらまき予算になってしまう。そうなると大変だということなのですね」
田代「はい。今のお金というのは、金の担保も何もないわけですよ。本当に日本銀行の信用にもとづいて、国家権力で『このお金だけ使いなさい』と強制しているわけですね。だから英語ではそれを『fiat currency(フィアット カレンシー)』(※12)と言うわけです。
日本の金融用語では、よくこれを『非兌換通貨』(※13)と訳すんですよね。それはいかにも役人的言い方なのですよ。本質を外しているわけです。本質はフィアット、強権力でコントロールしている。そこで偽札を作れば、たった1万円作っても地の果てまで追いかけてきますよね。それはこの信認を保つためには絶対必要な仕組みなわけですよ。
財務省、大蔵省に優秀な人はたくさんいますけれども、ここの出身者が連続して日銀のトップになったら、次第に信認が危うくなってきますよね。だから明治時代でも大正時代でも、戦前戦時の昭和時代でも、それは避けたんですよ。
そして今でも、財務省に日本銀行総裁を呼び出すことはないです。それをした瞬間に、対等ではないとわかるじゃないですか」
岩上「ええ、わかります」
田代「だから、もし緊急の金融危機があったとしても、どこか中立的な場所で会うわけですよ。
宮澤喜一元総理(※14)は大蔵大臣だった時も、日本銀行総裁と会う時には、わざわざ丸の内ホテルなど地理的に中間地をとって会っていました。そのくらい抑制してきたということですよね。そういう例でもわかるように、130年間封印してきたことがぱっと解かれているわけですよね」
岩上「明治の初期は当然、この日銀、大蔵省など、いろいろなシステムがまだ近代国家として整っていませんでしたから、すごいですね。何もないところから作り上げたんですからね。
安倍総理は明治大好きですから、明治維新より150年ということで、これを持ち上げて『明治の政治に戻れ』ということを言っていますけれども(※15)、他方で、明治以来破られなかったことを、今破りつつある。
『アベノミクス』の『第一の矢』は金融緩和のことですね。金融緩和を行った主体は日銀じゃないですか。日銀をコントロール下に置いて、日銀に命じて金融緩和していることを、世界中にアナウンスしているんですね。
これからものすごく通貨がダブつくことは想像つきますから、ある種のバブルが生まれるわけですけれども、後始末はどうするんでしょうか。マーケットに対して危険なアナウンスをしているということですね」
田代「また、首相官邸、総理官邸で行われる経済財政諮問会議(※16)にも日本銀行総裁が呼ばれて、しかもテーブルの端のほうに座っていますよね。本来総理大臣の向い側に座るべきなのに」
岩上「対峙しなければいけない」
田代「そもそもああいう席に呼ぶのも変なのですよね。例えばホワイトハウスのオーバルルーム(大統領執務室)にFRB(※17)議長はいないじゃないですか。行ったら終わりなのです。それをしたら『ホワイトハウスのATMですか』とみんな思いますよね。ドルは落ちます。
それを考えると、この130年間の封印を解いたということは、歴史的には非常に重い意味を持っているはずですよね」
岩上「なるほど。『輸出企業のために円高に振れていたものを円安にするんだ』と言って、安倍政権になった途端に円安になり、それは通貨の発行、あるいは緩和によるものだと説明されていますが、一方でこういう要素も含まれていたんじゃないかと考えると、気持ち悪いですね」
田代「今、ワールドカップ(※18)を開催していて、現地取材をしている人がいるじゃないですか。ロシアでは、ランチを食べたら日本円で3000円ぐらいするそうです。普通のビジネスランチがね。つまり大手町で1000円ぐらいで食べているようなものが3000円する。もう最近、パリやニューヨークへ行くと、5000円出しても普通のランチなんかないわけですよね。それくらい円安が進んだわけですよ」
岩上「よそが高くなったんじゃない。円安なんだ。円の購買力が落ちたんだ」
田代「だから外国人が日本へ来て、『なぜこんなおいしいものがこんなに安いんだ』と言う。最近、『子ども食堂』(※19)という地域で食事の提供をする場があるじゃないですか。あそこでは、子供はただで大人は300円くらいなのですね。あんな感じですよ、彼らからすれば『300円でこんなにおいしいものが食べられるのか。日本はいい国だ』ということになります」
岩上「ああ、そうか。『日本はいい国だ』と。それはもう、インバウンド(※20)がふくらんでいく。それはまあ、この国が貧しくなったということでしょう」
田代「昔、バブル期に日本人がイタリアなどへ行って、『なぜこんなに何でも安いんだろう』と驚きましたね。あれとは逆のことが起きているわけですよね。意図的に日本円を安くしたということは、裏返せば日本円の信認を落としているわけですよね」
岩上「それが輸出企業にはプラスだということだった。一方で円安と簡単に言っていますけれども、それは全体としての円の信認を失っている。これは後々非常に効いてくる。危険だし簡単に戻せるものではないという話ですよね」
(※1)非常に気候が乱脈になっています:
2018年(平成30)の猛暑。6月から8月の平均気温は東日本で平年比+1.7度となり、1946年の統計開始以降、最も高くなった。西日本でも平年比+1.1度で、統計開始以降第2位だった。7月23日には埼玉県熊谷市で日本歴代最高気温の41.1度を記録し、気象庁は臨時記者会見を開き、「命の危険があるような暑さ。一つの災害と認識している」と発表。7月に熱中症で救急搬送された人は5万4220人、死者は133人で、統計開始以降、月別で最多となった。
(Wikipedia 【URL】https://bit.ly/2GmLEbq)
(朝日新聞デジタル2018年7月23日【URL】https://bit.ly/2ClbJ6J)
(※2)九州は歴史的豪雨:
2018年(平成30)6月28日から7月8日にかけて、台風7号と梅雨前線等の影響により、西日本を中心に広い範囲で記録的な豪雨となった。この西日本豪雨により、多くの地域で河川の氾濫や浸水、土砂災害が発生し、死者数は200人を超え、「平成最悪の水害」と報道された。
8万人に避難指示が出た7月5日夜、安倍晋三総理はじめ自民党議員50人が宴会「赤坂自民亭」を開き、酒盛りしていた。気象庁が記者会見を開いた5日午後2時から、非常災害対策本部が設置された8日午前8時までの間が、「空白の66時間」だったという指摘もあり、初動対応の遅さは猛批判を受けることとなった。
(Wikipedia 【URL】https://bit.ly/2m2jzJr)
(IWJ「西日本では豪雨災害に大阪北部で震度6、千葉でも震度5弱の地震!南海トラフ大地震が起きたら原発はどうなる!? ~7.10 岩上安身による関学大災害復興制度研究所客員研究員・青木正美氏インタビュー 2018.7.10」【URL】https://bit.ly/2B6QZ1A)
(IWJ「核燃料再処理工場のある六ヶ所村で「想定される地震はマグニチュード8クラス」!? 浜岡原発も危険すぎる!! 岩上安身による変動地形学研究者・渡辺満久東洋大教授インタビュー 2018.7.17」【URL】https://bit.ly/2MxsW0l)
(※3)気候変動:
本来は数年から数十年で変動する気候の変動を意味し、時間スケールの長い「気候変化」と同義で使われることが多い。数十年から数万年にもわたる氷河期や間氷期などの変化が対象とされ、年間の季節的変化や同時期の地域差による変化などは含まれない。
(日本大百科全書(ニッポニカ)【URL】https://bit.ly/2CAi9yY)
(※4)DCブランド:
「DC」はデザイナーズ・アンド・キャラクターの略。デザイナーズ・ブランドとキャラクター・ブランドを合わせた商品。和製ファッション用語。
(百科事典マイペディア【URL】https://bit.ly/2GsiNT1)
(※5)バブル(bubble):
英語で泡の意味。バブル経済とは、バブル(泡)のように膨張し破裂することから、投機的に高騰した株価などの資産価値の高騰が支える相場や経済の行き過ぎた活況を指す。
日本では、1980年代後半に株式や土地などの資産価格が急騰。実体経済からかけ離れて膨張した価格は、90年代になると急落し、バブル経済は崩壊した。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2ub7etj)
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2Luy6JY)
(※6)「大東建託の内幕」:
フリージャーナリスト・三宅勝久氏の著書『大東建託の内幕 “アパート経営商法”の闇を追う』(同時代社、2018年)。三宅氏によると、大東建託の問題の深刻さは取材を始めてすぐに気がついたというが、新聞やテレビなど主要メディアは批判的な報道をほとんどしていない。
三宅氏は大東建託社員や顧客に取材し続け、パワハラや相次ぐ自殺など、同社の暗部を明らかにした。
(Amazon【URL】https://amzn.to/2Ra1gDz)
(※7)内容証明:
郵便物の文書の内容を、郵便局が謄本の一通を保存し、証明するもの。法的行為の通告などに利用する。強い意思表示になり、相手に差し出した証明にもなる。また一時的な時効中断の効力もある。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2rJHjot)
(※8)サブリース:
不動産会社などが住宅を一括で借り上げ、又貸し、転貸すること。サブリース契約を結んだ場合、住宅の管理や経営は管理会社が担い、オーナーには一定の金額が家賃収入として支払われる。
サブリース会社は借り手として保護されるため、オーナーに対して容易に契約を解除することができる。そのため、悪質なサブリース会社は、利益が出ないとわかれば、契約期間中であっても契約を打ち切ることもある。
(「サブリースで大損した人」がハメられた手口 悪質なサブリース業者を見極めるには(東洋経済オンライン、2017年8月6日)【URL】https://bit.ly/2CXG0b1)
(※10)黒田バズーカ:
黒田東彦(はるひこ)日銀総裁のもとで行われる、金融緩和策のこと。株式市場や外国為替市場などに大きな影響をもたらすことから、「黒田バズーカ」とも呼ばれる。元は、2013年4月4日に黒田総裁が、インフレ率2%を目指して打ち出した金融緩和策(異次元金融緩和)が、爆発的な円安・株高をもたらしたことに由来している。
(weblio【URL】https://bit.ly/2SfKBLN)
(マネーポストウェブ2016年2月4日【URL】https://bit.ly/2EGczNM)
(※11)異次元金融緩和:
物価上昇率2%を2年程度で達成するため、日銀が2013年4月に決めた金融緩和策。国債などを大量に購入し、マネタリーベース(市場への資金供給量)を2年で2倍に増やす。黒田総裁は、「これまでとは全く次元の違う金融緩和を行う」と発表。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2USPMmI)
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2Gw5i4S)
(※12)フィアット カレンシー:
法定通貨のこと。国や中央銀行などの中央組織が発行し、流通を管理する。信用力の高い通貨。
(ベンチャータイムズ【URL】https://bit.ly/2SYijW6)
(※13)非兌換通貨:
本位貨幣(金銀など)との兌換が保障されていない法定通貨。不換紙幣。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2Lo9JgM)
(※14)宮澤喜一:
参議院議員を経て衆議院議員になり、通産相・外相・蔵相を歴任し、1991年(平成3)に第78代内閣総理大臣となった。その後、小渕恵三内閣と森喜朗内閣で大蔵大臣(財務大臣)に再任した。
(デジタル大辞泉【URL】https://bit.ly/2QFi8CE)
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2xAPMMR)
(※15)安倍総理は明治大好きですから、明治維新より150年ということで、これを持ち上げて:
2018年は明治元年(1868年)から150年の節目の年にあたる。政府は明治150年を記念して様々な施策を行った。
2018年10月23日には、政府主催の明治150年記念式典が憲政記念館で開かれた。式典で式辞を述べた安倍総理は、「我が国が近代国家に向けて歩み出した往時を思い、それを成し遂げた明治の人々に敬意と感謝を表したい」「明治の人々が、勇気と英断、たゆまぬ努力、奮闘によって、世界に向けて大きく胸を開き、新しい時代の扉を開けたことに想いをはせながら、私たちは、この難局に真正面から立ち向かい、乗り越えていかなければならない」などと、明治時代を賛美した。
IWJは、無批判に明治時代を賛美する政府を批判し、明治礼賛の風潮が拡大することに警鐘を鳴らしている。
(首相官邸ホームページ【URL】https://bit.ly/2FZ4Riu)
(IWJ「『長州レジーム』から日本を取り戻す! 歴史から消された思想家・赤松小三郎の『近代立憲主義構想』を葬った明治維新の闇~岩上安身による関良基氏インタビュー(その1) 2017.6.6」【URL】https://bit.ly/2OvMEKs)
(IWJ「関東大震災での朝鮮人虐殺は偶然ではない!王妃暗殺、日清・日露戦争を経て朝鮮を支配した近代日本の〈成功〉体験がさらなる暴力を生んだ!? ~8.28 岩上安身による明治大学・山田朗教授にインタビュー 2018.8.28」【URL】https://bit.ly/2G1jK3M)
(IWJ「【特集】明治を疑う!朝鮮半島と日本」【URL】https://bit.ly/2M4c28C)
(※16)経済財政諮問会議:
2001年の省庁再編に伴い、内閣府に新設された協議機関。首相が議長を務め、閣僚のほか、民間有識者なども参加。経済政策に関して総理大臣のリーダーシップを発揮させることが目的。森喜朗時代に発足。小泉純一郎内閣時代に「骨太の方針」を策定。07年6月、安倍内閣のもと、「経済財政改革基本方針2007」が閣議決定され、成長力の強化・21世紀型行財政システムの構築・持続的で安心できる社会の実現というシナリオを提示している。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2A67pGU)
(※17)FRB:
Federal Reserve Boardの略。米国の連邦準備制度理事会。7人の理事で構成され、議長は大統領の指名を受け、議会の承認を経て就任する。議長任期は1期4年で、現在の議長は2018年2月に就任したジェローム・パウエル氏。連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)と略称が同じだが、一般的に「FRB」と呼ばれるのは連邦準備制度理事会である。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2rMTmSd)
(※18)ワールドカップ:
2018年6月14日~7月15日、ロシアで開催された21回目のFIFAワールドカップのこと。東ヨーロッパでは初の開催となった。
(FIFA WORLD CUP RUSSIA 2018【URL】https://bit.ly/2CQtee4)
(※19)こども食堂:
家でおなかをすかせていたり、1人でごはんを食べたりしている地域の子供たちに無料または低額で食事を提供する取り組み。NPO法人や自治会、個人が運営している。最近では誰でも利用でき、地域交流や子供を見守る場としての食堂も多い。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2LsvDQ2)
(※20)インバウンド:
元々は「外から中に入り込む」という意味だが、一般に外国人の訪日旅行の意味で使われる。対義語は「アウトバウンド」で、日本からの海外旅行者のこと。2018年の訪日外客数は前年比8.7%増の119万2000人で、JNTOが1964年に統計を開始してから最多を記録した。
(知恵蔵【URL】https://bit.ly/2QMkgbN)
(訪日外客統計の集計・発表(JNTO 日本政府観光局、2019年1月16日)【URL】https://bit.ly/2HBL7D2)
金融緩和でダブついた資金は国債市場へ流れるが、民間が復調せず直接税の税収が減れば財政は悪化、政府はさらに国債を発行することになる。しかし債務超過がかさめば国債はいずれ暴落する
岩上「そして『金融緩和でダブついた資金が国債市場』に行くということですね。民間の、例えばメーカーが、低金利でもあるし、借り入れして設備投資をして、未来に向けていろいろ生産し、雇用もし、賃金も上げるということになると、結局、国内市場が分厚くなり、国内でのプロダクトも多くなって、購買力も上がって、実際消費も活性化するということですね。
だいぶ時間のかかる話ですけれども、こういうストーリーが描かれたはずなのですが、例えばベトナムなら1/10、1/20の賃金で雇えるということがあります。経済のグローバル化のために、メーカーが外へ行ってしまう、だから国内にそんなに雇用がないというような状況が続いている中、お金をだーっと流し込んで、そうかといって個々人に与えるわけでもなく、という状態の中、その資金はどこへ行ってしまったのかという話なのですよね」

▲金融緩和でダブついた資金が国債市場
田代「特にアベノミクスを賛美する人たちが『輪転機をぐるぐる回してお札を刷ったから、私は安倍政権を支持する』と言うけれども、あれは嘘ですよね。統計を見ると、日本銀行の1万円札の発行量はあまり変わらないですよね。そんなことをしたら墓穴を掘るわけですよね。
要するに、あれはマネタリーベース(※21)を増やしたということです。でも結局、マネタリーベースを増やしても、『お金を突っ込む』がないわけですよ。日本に今、そんな有力な魅力的な事業機会はないわけですよね。だから最近、一部上場大企業の非常に巨額の投資というのは、外国の企業買収じゃないですか。何兆円もかけて(※22)。
では、国内で何兆円かけて買収という話は、どこからも出てこないわけですよ。結局、民間産業の中に魅力的な投資先がない。でも金融機関は利回りを稼がなければいけない。するとどこへ行くかというと、国債だったわけですね。
それがアベノミクス前には起きたわけですよ。デフレ銀行のようになっていて、銀行は国債を買うとか、日本銀行に預金すれば0.1%の金利がつくとそれを取りにいくとか、そういう形になっていく。民間主体は民間主体で、国債を持っていれば、いざとなればそれを担保にして銀行からお金を借りる。国債を100億円担保に入れれば、だいたい銀行は100億円貸してくれるわけですよ。
それをとっておこうという形で国債は買われていたんだけれども、日本銀行がどっと買いにいってしまったということですよね」
岩上「安倍さんの信者の方々は、『安倍さんの経済政策は素晴らしいじゃない。お札の発行量増やしているんでしょ』と言います。そうではなくて、日銀が民間に供給するということは、銀行にお金が回るようにするための手段として、銀行の国債を買い取っているということで、ここが大事なのですね。これを理解しなくては仕方がないんですよ」
田代「ところが、本当にお金の回りが増えるというのは、銀行による信用創造、つまり銀行が貸し出すことで起きるわけ。これは前に『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)を書いた弁護士の明石順平さん(※23)がきちんとグラフで示していたように、M2、マネーストック(※24)の伸び率は民主党時代と全然変わっていないわけですね。

▲明石順平弁護士(IWJ撮影、2017年12月14日)

▲明石順平著『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル、2017年)
それはなぜかというと、民間側は政策でどんなに言われても、使わない金をあえて借りる人はいないわけですよ。そんなことをすればあとが恐いから。
銀行も『お金がほしい』と言っていても、調べると、『ちょっとお宅には貸せません』ということが多いわけですよね。だからそこは変わらないわけです。
それでも日本は慢性的に財政赤字が続いていますから、それを埋めるために国債がどんどん発行されています。それを日本銀行がどんどん買ってしまっているわけですよね」
岩上「日銀の国債引き受けということになるわけですね」
田代「その結果、もう今、ガバメントボンドのマーケットは、ほぼ干上がり状態になっています。三菱UFJの傘下の証券会社が、不正取引で処罰されましたよね。買うつもりもないのにわーっと買い注文を入れておいて、みんなが動き出した時には、注文を解消して逆に売っていくという市場操作をしたというので、処罰されましたよね。なぜそうしたかというと、要するに全然利益が出ないからですよね」
岩上「苦し紛れになっているんですね」
田代「一つグラフをお見せします。金融庁の資料から作られています。青い線が主要行、つまりメガバンクの債券、つまり国債や社債の運用によって得られる利益の推移ですね。これが2017年度はとうとうマイナスになっていますよね。
ところが、オレンジの線が地方銀行ですが、地方銀行が国債や社債を運用して得られる利益が、もう2016年度、17年度と続けて赤になっているわけ。今年はもっとひどくなっていますね」

▲主要銀行および地銀の「債券等関係損益」(出所:金融庁)
岩上「2008年でひどくなっているのは、リーマンショック(※25)のあとですね」
田代「世界金融危機(※26)の時ですよね。それに準じるぐらい赤字なのですよ。で、金融機関にとって最後の利益機会だった国債市場に、日本銀行は一番の大手の買い注文を入れているわけですよね。そうするともう国債が流動しないわけですね。干上がってしまっているわけですね。
岩上「国債が干上がっているというのは、国債をこれ以上発行できないという意味ですか。国債は発行限度額がありますからね」
田代「債券、ボンドというのは、借金の証文ですよね。実は、株式市場よりも債権のマーケットのほうがずっと大きいわけですよね。その中でも国債は一番大きいわけです。
だから巨額のお金、例えば100億円単位で運用している金融機関からすると、もともと国債市場というのは非常に厚みがあって、10億円100億円単位の売り買いをしても価格は変わらないわけですよ。だから安心して運用できたんだけれども、日本銀行がとにかくどんどん買ってしまうから、実際に流通している国債はどんどん減っていくじゃないですか。だから価格操作ができるようになってしまったわけですよ」
岩上「なるほど。通貨の裏づけは金であったという話が先ほどありました。そして日本に限らず世界中の国々はもう金本位制(※27)ではありません。ニクソンショック(※28)以来と言ってもいいのかもしれませんけれども、もう変動相場制に移行してずいぶんたちます。

▲リチャード・ニクソン第37代米大統領
しかし何かしらの底支えと言いますか、その国の通貨を支えているものがある。それは、何かの神話であってもいいけれども、『これが価値あるものだ』というものがある。その場合、日本の経済ではありとあらゆる場面で見られることですけれども、土地本位制ではないかということも言われていました。土地さえ持っていれば担保にして銀行からお金を借りることもできる。
だからこそ人は土地をほしがり、常に土地は値上がり傾向にあり、80年代バブル期には、株価と土地が上がったということがありました。株は通貨を支えるような力を持ちませんけれども、土地の希少性というものは、やはりそれだけの価値というものを持っていたと思うんですね。
ところがバブル崩壊して以降、まあ、土地の価値は今でもありますけれども、下がってしまった。そこで今は国債。国債を100憶持っていれば、少なくとも100憶借りることができるというように、国債本位制のようになってきた部分もあるんじゃないんですか」
田代「そうですね。1980年代までの日本では、おっしゃる通り、土地を持っていれば、それを担保に銀行はその土地の評価額以上の金を貸してくれたわけです。つまり値上がりを見越しているわけですね。だから土地の値上がりのスピードが落ちただけで、不良債権が発生したわけですよ。まして土地の価格自体が下がってしまったら、もう莫大な不良債権が起きてしまいます。それが1990年代。それがとうとう隠せなくなったのが1997年ですよね」
岩上「金融危機ですね」
田代「その後はもう、土地をいくら持っていても、銀行は『お金は貸しません』ということになったわけですね。『そんなことは怖くてできません』と。そしてどこへ行ったかというと、国債なのです。ところが、その国債の価格が下がったら、つまり金利が上昇したらどうするんですかということですよね」
岩上「『しかし、国の債務超過がかさむと、国債の信用がガタ落ちし、ある日国債が買われなくなり、国債が暴落する』ということです。これは大変なことです。国が無尽蔵に国債を発行し、それを日銀が無尽蔵に買い取ってくれるというようなことができるのか。それはできないことなのですね。やはりこれは財政に直接的に結びつく話であるということですね」

▲国債残高、国債利払い費、金利の推移
田代「そこを『当座を何とかしのげば』というのが、アベノミクスの正体ですよね。それは相当ブラックな会社がやっていることですよね。当座、とにかく契約を取ってきて、ぐるぐる回して、銀行にも待ってもらっているという状態。そういうことをしていると、そのうちえらいことが起きるわけですね。中には、従業員がサラ金から金を借りて、それを会社に入れているような会社もありますね」
岩上「大東建託のような話になるわけです」
田代「でもそれは氷山の一角なのですよ。別にこんな特定の企業を叩いても、問題は解決しない。なぜそうなってしまったかといえば、あまりにも異常な金融政策をしたからです。
最初は黒田総裁も2年と期限をお切りになったじゃないですか。その時に岩田副総裁(※29)は、『2年で2%の物価上昇が起きなかったら私は辞めます』と国会でおっしゃいましたよね。ところが5年間の任期を全うされたんですよね」

▲黒田総裁は強気から弱気へ
岩上「この期限を六度も延長した揚げ句、それももう報告書に書かなくなってしまった。だから結局アベノミクスは失敗に終わっているわけですね」
田代「2013年4月4日、黒田総裁が最初におっしゃった時の意味からすれば、これは完全に失敗していますよね。つまりオペレーションの期限がないわけですよ。目標期限がないというすごい方法ですね」
岩上「無限にこれは続けられない。『異次元』といっても、無期限金融緩和はできないわけですから」
田代「もうほとんど、結婚式か何かの宣言みたいですよね。『永遠の愛を誓います』のような」
岩上「『永遠の愛を』。政府と日銀がということです。でも政治と金融が結びついたが最後、価値が暴落してしまって、全て失ってしまう。もともと空虚なものをある種の共同幻想で支える。それが金だったり、土地だったり、国債だったりする。国債の債務超過が重なって、日本の国債の信用がガタ落ちしたら大変です。日本の信用がかかっているということですよね」
田代「そうですね。国債市場に日本銀行が金を入れたことで、銀行が国債で運用しても全く利益が出ないということになった。赤字になっています。ではどこで黒を出すか」
東京におけるオフィス建設、ホテル建設ですよね。次にシェアハウス(※30)とか、サブリースとか、退職金を少し持っている普通のサラリーマンに、『いやもう、何億円でも貸しましょう』と。今はそこまで投機的になっているわけですね。そうしないと銀行も利益が出ない」
(※21)マネタリーベース:
中央銀行が供給する通貨のこと。市中に出回っている流通現金と中央銀行当座預金(民間金融機関の中央銀行預け金)の合計値を指す。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2EFWTZU)
(※22)一部上場大企業の非常に巨額の投資というのは、外国の企業買収じゃないですか。何兆円もかけて:
2018年上半期の日本企業による外国企業の合併・買収(M&A)は、約11兆7400億円に達し、過去最高額を記録した。武田薬品工業は2018年5月、アイルランド製薬大手シャイアーを約6兆8000億円で買収することで合意したことを発表。同年12月に武田は臨時株主総会を開き、シャイアーの買収について株主の承認を得た。
一方、2018年における日本企業による日本企業の買収の最高額は、JERA(ジェラ)が東京電力FP・火力発電事業を買収した約6300億円だった。
(「日本企業、海外M&A総額最高 11.7兆円、武田で過半」東京新聞、2018年7月5日【URL】https://bit.ly/2DIQ5dd)
(「武田薬品、シャイアー買収を承認 臨時株主総会」日本経済新聞、2018年12月5日【URL】https://s.nikkei.com/2HG0v1m)
(「日立製作所によぎる、海外巨額買収で経営危機に陥った“東芝の悪夢”」ビジネスジャーナル、2019年1月9日【URL】https://bit.ly/2FYCocn)
(※23)明石順平(あかしじゅんぺい):
弁護士。1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。主に労働事件、消費者被害事件を担当している。ブラック企業被害対策弁護団所属。2017年に集英社より、『アベノミクスによろしく』を上梓した。IWJでは岩上安身が明石弁護士にインタビューを行い、実質GDPは停滞しているにもかかわらず、名目GDPは上昇しているという謎に迫った。
(BJPRESS【URL】https://bit.ly/2IVga8n)
(Amazon【URL】https://amzn.to/2V9A470)
(IWJ「『アベノミクスの成果』に隠された驚くべき『かさ上げ』トリックを暴く! このままいくと日本経済は破綻!? ~岩上安身による弁護士『アベノミクスによろしく』著者・明石順平氏インタビュー 2017.12.14」【URL】https://bit.ly/2rZemFc)
(※24)マネーストック:
金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量。企業、個人、地方公共団体などの通貨保有主体が保有する流通通貨量の残高を集計したもの。マネーストック統計には通貨の範囲に応じてM1、M2、M3、広義流動性の4つの指標がある。
(日本銀行【URL】https://bit.ly/2GHSd8M)
(※25)リーマンショック:
2008年9月、米国大手投資銀行・証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻とその副次的な影響により、世界の金融市場と経済が危機に直面した一連の出来事を指す。
(デジタル大辞泉【URL】https://bit.ly/2Gx6Ew4)
(※26)世界金融危機:
2007年、サブプライムローン問題に端を発する住宅バブルの崩壊から、2008年9月、ニューヨーク証券取引所の史上最大の株価暴落で一気に顕在化し、世界に広がった金融危機。2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻をはじめとし、AIG、メリル・リンチ、シティグループ、モルガン・スタンレーなどが次々と信用不安に陥り、米国政府は同年10月緊急経済安定化法を成立させて、巨額の公的資金を投入し、不良資産の買い取りに乗り出した。
(百科事典マイペディア【URL】https://bit.ly/2Scg1CQ)
(※27)金本位制:
金をモノの価値を表す基準として使うことを金本位制という。金本位制においては、中央銀行が発行する銀行券は、金と引き換えが保証されている兌換紙幣である。
19世紀末、イギリスのロンドンを中心とした国際金本位制が確立した。しかし、1929年に世界大恐慌が発生すると、各国が次々と金本位制から離脱し、1933年には米国も離脱したことで、金本位制が崩壊へ向かった。
(世界史の窓【URL】https://bit.ly/2DCUqyI)
(iFinance【URL】https://bit.ly/2Hwz4XL)
(※28)ニクソンショック:
ドル・ショックともいう。1971年8月15日、米国のニクソン大統領は、ドルの金交換停止を柱としたドル防衛策を発表。あわせてインフレ抑制および景気刺激を目的とした総合経済政策を打ち出した。この突然の発表は、戦後の国際通貨制度を支えてきたブレトン・ウッズ体制(アメリカ・ドルを基軸とする金本位制。金1トロイオンスが35ドルで交換できた)の崩壊を意味し、世界中に衝撃を与えた。米ドルは信用を失って大量に売却され、大暴落した。
(百科事典マイペディア【URL】https://bit.ly/2QGDXSh)
(※29)岩田副総裁:
岩田規久男(いわたきくお)氏は、1942年10月3日生まれ大阪府出身の経済学者で、専門は金融論・都市経済学。リフレ派の第一人者として知られている。2013年3月20日から2018年3月19日まで日銀副総裁をつとめた。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2Lw2oMp)
(日本銀行【URL】http://bit.ly/2Hq3B9H)
(※30)シェアハウス:一つの住宅を複数の人と共有し、生活する居住形態、またはその賃貸住宅のこと。欧米では広く普及している住居形態で、シェアドハウス(shared house)からきた和製英語。リビング、キッチン、バス、トイレは共有、寝室は各人の占有スペースとするシステムが一般的。敷金・礼金無料、保証人不要という物件が主流。
(日本大百科全書(ニッポニカ)【URL】https://bit.ly/2QNGxGa)
累積する国債残高。毎年10兆円ずつ減らしても返済に88年かかる。超低金利政策で利払い費を抑え国債を膨張させたアベノミクス!その前提が崩れ金利が上昇し始めたら、社会保障費と地方交付税が犠牲に!?
岩上「では、『国債残高、国債利払い費、金利の推移』というデータを見てみましょう」

▲財務省が公表した国債残高、国債利払い費、金利の推移
田代「国債は公的には『公債』というんですけれども、その残高は、平成30年度に、これは予算案ですけれども、883兆円になっているわけですね。これはすごいことで、年間10兆円ずつ減らすといっても、88年かかるわけですね」
岩上「その前に、これだけ積み上がると利払い費もすごいことになる」
田代「この黒い線が利払い費ですが、これが抑えられたんです。国債の残高がどんどん増えているのに、利払い費は減少して、少し頭が上がっていますが、そんなには上がらないですよね。それはなぜかというと、金利が低いからです。10年満期の金利は、資本主義では2%を割り込むことはあってはいけないはずなのですね。
前回、エコノミストのウォルター・バジョット(※31)が書いた『ロンバート街』(※32)という金融論の本の中で、『ジョンブル(※33)はたいていのことには耐えられるけれども、2%を下回る金利に耐えられない』という言葉があると紹介しましたね。ジョン・ブルというのはイングランドの荒っぽい連中ですね。あの人たちでも、2%を下回る長期金利には耐えられない」
岩上「(笑)すごいスケールですね」
田代「大和男児はすごいですね。それを耐え切っているわけですね。だから国債の利払い費は抑えられているわけですよ」
岩上「でもこれが、ジョン・ブルでも我慢できるレベルまで戻ったら、ガーンと上がりますね」
田代「利払い費は、例えば1%が2%になれば、倍になってしまうわけですね。それを考えたら恐るべきことになっているわけです。
今の段階で、利払い費は9兆円ですよね。国家予算のうち9兆円は、借金を維持するための利払いに使っているわけでしょう。これが増えたら、ほかを削るしかないわけですね。たぶんターゲットになるのは社会保障費ですよね」
岩上「でも社会保障費全てをターゲットにして、全てを解決できるのか。そんなわけはないですね」
田代「次は地方交付税ですよね。地方自治体に配っているお金をカットしますよね。
見てください。平成29年度から30年度にかけて、利払い費が少し跳ね上がっていますよね。公債残高は予算案で900億円に増えていますよね。これはもう金利上昇を見込んでいるわけですよね」
岩上「金利上昇というのはふとしたことで上がる。内部要因だけではなく、外部要因もあるということですよね」
田代「そういうこともあるし、国債の価格も需要供給で決まっているわけですよね。それが、買い手がいなくなった時どうするのかということですね」
岩上「なるほど。プレミアムをつけなければいけないということですね」
田代「そうしたら国債を今よりも安い価格でないと買ってくれないわけでしょう。それは裏返すと、それより高い金利をつけているわけですね」
岩上「安い価格=金利をつけるということですか」
田代「金利が高くなる。つまり、国債の価格が下がるということは、金利が上昇するということと、数学的には1枚のコインの裏表の関係だから、切り離せないわけですよ」
岩上「信用の低い国の国債を買うと、非常に金利が高い。ジャンクボンドとか何とかいわれている。6%、7%、8%、9%する。これは、それだけリスクがあるということ」
田代「安い価格で売っているんだから、裏返すと金利が高いわけですね。そういうふうに日本国債がだんだんジャンクボンド化していけば、『その価格ではうちは買えません』、『ではもう少し安くします』ということになるので、それは金利を上げるということですよね」
岩上「すごいことなのですね」
田代「前回お見せした、内閣総理大臣が議長である経済財政諮問会議に提出した中長期見通しでは、金利は2019年から上昇して、2025年には4%に近い数字になるわけですよね。『アベノミクスが成功すればこうなります』と。金利上昇は不可避だということですよね」
岩上「金利上昇が不可避だということは、ミクロでも大変な意味を持ちます。個々人にもものすごい影響が出ます。例えば人生で一番大きな買い物は、家ですよね。家の買い方を一つ間違えると、本当に一生を棒に振る場合もあり得るわけです。安いから変動金利でローンを組みましたといっても……」
田代「変動金利を享受して家を買っても、今は古代バビロニア以来の人類が経験したことのないような超低金利だから、今はよくても、将来、金利が上昇した時どうするんですか」
岩上「しかも将来が見越されている現代で4%と言っているんですから、もちろんそれに住宅ローンは上乗せされますね」
田代「それは、一番信用度が高い主力の国債、しかも10年物の金利なんですね。ですからもちろん住宅ローンなら個々の土地に関するローンですから、例えば角地じゃないとか、区画の中の奥まった土地であるとか、そうなると、どんどん安くなってしまうわけですね。その分ローン金利は上昇しますよね」
岩上「皆さんも、そういうことになる可能性があるということです。人生を棒に振るか否かの分かれ道ですから、この話は真剣に聞いてもらいたいと思います。『いやいや、私はそんなもの、そもそも買いません』という人でも、誰しもどんな所にいても、頭の上から降ってくる。親の家で一緒に暮らしていて、親と一緒に耕している畑もあるというような人の頭の上にも、この問題は降りかかってきます。大変なことになります」
(※31)ウォルター・バジョット:
(Walter Bagehot)1826年2月23日~1877年3月24日、イギリスの政治学者、経済学者、社会評論家。1852年から家の銀行業にたずさわる。60年「エコノミスト」の主筆として経済、社会、政治、法律、文学から生物学にいたるまで、広範な執筆を行った。「イギリス憲政論」(1867)は政治学の古典として有名。「ロンバート街」は銀行家としての経験に基づいて銀行の役割を実証的に解明したもの。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2Adxhk9)
(※32)「ロンバード・ストリート」:
「ロンバード街 ロンドンの金融市場」ウォルター・バジョット著。金融危機時の中央銀行の役割を明らかにした19世紀の傑作。1873年初版。ロンドンの金融街の構造を詳細に分析した金融史の古典。
(Amazon【URL】https://amzn.to/2rPrTPF)
(※33)ジョン・ブル:
(Jhon Bull)イギリス人に対するあだ名。元は評論家ジョン・アーバスノットの「ジョン・ブルの歴史」(1712年)に始まる。19世紀の中頃から後半に「パンチ」誌の漫画で広がり、J.リーチ、J.テニエルの筆でイメージが定着した。ブル(雄牛)のように強くて頑固で、多少田舎風で、自由を愛好するイギリス人の型。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2LywQ8p)
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2VeYZpv)
現代日本の財政赤字は、軍部が暴走した異常時を超えるほど水準に! 戦中派が守り続けた財政規律のタガが外れたのは、1965年オリンピック反動不況を乗り越えるための赤字国債!
岩上「今、日本がどれほど異常かというと、『戦時(異常時)を超える勢いで債務が累積している』ということなんですね」
田代「そうですね。『我が国の政府債務残高の名目GDP等に対する推移』というグラフを見てください。経済の規模が違うので、ただ債務水準だけを見ても歴史を通じては比較できないので、1年の間に新たに作り出された経済的価値、付加価値の合計であるGDPの合計に対して、政府の債務がその何%分になっているかということを計算してみたわけです。もちろん戦前のGDPは推計値です。GDP統計というのは、そもそも戦後になってできたものですから、そのシステムを戦前に当てはめたわけですね。だから概算値ですけれども、戦争直前にすでに日本は、200%超えていたんですね」

▲我が国の政府債務残高の名目GDP等に対する推移
岩上「すごいですよね。太平洋戦争の直前ということですよね。日中戦争が1937年ですから、その辺から上がっているわけですよね」
田代「そう。日中戦争の時から、簡単に言えば、高橋是清(※34)が殺されてからですね。高橋是清が何とかこの財政危機を収めようとして、陸軍費も海軍費もゼロベース査定をすると言ったら、たちまち反乱将校によって殺されたでしょう」
岩上「ダルマ宰相と呼ばれた人ですね。あの人はデフレ脱却にものすごく力を尽くしたんですけれどもね。戦前にもデフレがあったわけですね」
田代「東京の青山一丁目に今でも高橋是清の邸宅跡があって、碑が建っていますよね。何の武装もしていない老人に、弾丸を雨あられと撃ち込んで殺したわけですね。その結果、陸軍と海軍を抑えようとは、もう怖くて誰も言えなくなった。その結果こんなに上がっていくわけですね」
岩上「今、誰も暗殺されていないのに、これを許しているんですよ。安倍政権になってからずっと続いてきたことではあるんですけれども、ここへ来て、政府債務残高の伸びはすさまじいものがありますね」
田代「前回も申し上げたように、まだ戦中派が生きていた時は、戦争までの大失敗を踏まえてものすごく頑張って、政府債務比率をどんどん下げたわけですね。ところが、1965年、オリンピック反動不況を乗り越えるために、戦後、財政法で封印していた赤字国債を補正予算で出してしまったんですね」
岩上「建設国債はいいんですね。インフラが残るから。でもそうではない」
田代「純粋に財政の赤字を埋めるために国債を発行するということは、財政法第四条で厳禁(※35)したはずなのですね。それによって日本は破綻したんですから。その封印が、戦後20年たった1965年に解かれてしまったんですよ」
岩上「戦争でアメリカの物量に負けたと同時に、日本は財政的にも破綻したということですよね」
田代「戦争前にすでに破綻しています」
岩上「それを原子爆弾の投下のショックでごまかしたともいえるような状態にあるわけですね」

▲我が国の政府債務残高の名目GDP等に対する推移
田代「それもあるけれども、もっと大きかったのは東京大空襲で東京が焼け野原にされたことですね。
そもそもパールハーバー奇襲が、イギリスにもアメリカにも『もう借金は返せません』というデフォルト宣言だったわけですね」
岩上「この説明をしていただくために、一つ前の話をしていただかなければいけません。日本は日露戦争(※36)に勝ちました。日露戦争には、明るい面と暗い面がある。私は明るい面があるかどうかわからないんですけれども、少なくとも日清、日露戦争は明治の最大の成功でした。
明治150年を祝おうという人は、この赫赫たる成果で国が興隆した、大日本帝国が文字通りの帝国になったと言います。他国を従えていないと帝国ではないですから、植民地、属国、保護領(※37)があるという状態ですよね。そこで、台湾、樺太、沖縄よりも日本にとって重要な朝鮮半島を併合し得た。併合したから朝鮮半島の利権を巡って、日清、日露戦争があったわけだけれども、日露で決定的になったわけですよね。
白人の列強大国ロシアに勝って、もう舞い上がりまくりでしたけれども、その戦費を貸してくれたのがユダヤ人のジェイコブ・シフ(※38)です」
田代「シフを中心とする投機的投資家たちからお金を調達したわけですね。問題はその時に、ポンド建てで発行した日本国債を売っているわけですよね。それがずっと流通しているんですよ。その利払いをしなければいけない」
岩上「ポンド建ての日本国債というのは、言わば戦時国債なのですね。戦費調達のための国債なのですね」
田代「それを外国の金融投資家たちに買ってもらって戦費を調達した。問題はそれを返さなければいけないということですね。しかし返せないから、どんどん借り換えるしかないじゃないですか」
岩上「借り換え、借り換えで来たわけですね」
田代「そうなんですね。ところがその借り換えがとうとう効かなくなってきた」
岩上「日露のあとは、戦線が拡大してしまいます。満州事変を起こし、そのあとは北支分離、華北分離と、隣接する北部中国を併呑しようと切り込んでいく。それから北京まで行く、南京まで行く。もうどんどん南下して切りがないんですよ。戦費がかかることばかりするわけです。
そういう行動は全部経済行動として考えなくてはいけない部分があるんだけれども、歴史を語る人たちも、経済の面から分析するということはほとんどないんですよね」
田代「嫌いますよね。お金のことは嫌いだから歴史を研究している人もいるし(笑)。
例えば国民的作家の司馬遼太郎が書いた、坂本龍馬の評伝のような小説の中で、坂本龍馬の仲介で薩摩藩がトーマス・グラバー(※39)から大量の最新兵器を買って、長州藩に貸し出すというシーンがあるじゃないですか。あれ、『お金はどう払ったんですか』と聞きたいですよね。そういう肝心なことは書いていないわけです。

▲坂本龍馬(Wikipediaより)

▲トーマス・ブレーク・グラバー(Wikipediaより)
実はあのお金は、グラバーが貸したんです。グラバーは香港上海銀行の日本支店長でもあったから、『では、そのお金は私たちがお貸ししましょう』と。すごく悪辣なリース産業ですよね。もちろんそれには高い金利がついているわけですよ。それを背負って明治政府はできているわけですよね。最初の段階から借金漬けなんですよね」

▲第二次世界大戦前まで営業していた旧香港上海銀行長崎支店(Wikipediaより)
岩上「借金漬けになって、『お前やれよ。最後まで公武合体(※40)なんかするんじゃない』と吹き込まれて、最後はもう心を変えて薩長同盟ができる。この辺りをきちんと分析しないといけないですね」
田代「ではまた戦前に戻ります。1930年に金解禁が起きますよね。外国に売った日本国債の借り換えをするためには、一時的にでも金本位制に復帰しないと、日本の信用がないからできなかったわけです。そのために無理に無理を重ねて、その結果昭和恐慌(※41)が起きるわけですよ。ものすごい大不況が起きた。
それで大蔵大臣の井上準之助(※42)が殺されるし、濱口雄幸(※43)総理もその場ではないけれども、すぐに亡くなりましたよね。あの二人のお墓は、青山霊園に並んで建っているじゃないですか。濱口が井上に『俺と一緒に死んでくれ』と言ったわけですね。金解禁をして、確かに二人とも殺されたわけですよ。

▲井上準之助(Wikipediaより)

▲濱口雄幸(Wikipediaより)
そこまでの犠牲を払って金解禁を行ったあと、高橋是清が必死になって財政を立て直そうとした。彼は日本銀行に国債を買わせても、それをすぐに民間銀行に転売させたんですよ。だから日本銀行の国債保有額は増えないという非常に慎重なことをしたんです。その結果がこのグラフに現れています」

▲我が国の政府債務残高の名目GDP等に対する推移
岩上「国土強靭化のための公共事業も入りますよね」
田代「土木学会(※44)などというところが、『南海トラフ地震が起きたら、何百兆円の何とかだ』とぶつぶつ言っていますよね。土建屋さんからすれば、そういった空前の災害が起きたら、日本の富を全て土木事業に突っ込もうと、もう外国から借金してでもやろうということなんだろうけれども、そういうことは戦前の歴史の繰り返しでしかないと思うんですよね。

▲満州事変で瀋陽に入る日本軍(Wikipediaより)
1930年に金解禁を行って、その翌年の1931年には満州事変が起きました。もっと金のかかる大戦争を始めたわけですよね。その揚げ句は日中戦争でしょう。大陸に100万人の軍勢を送るわけですから、もうそれは財政破綻しますよね。しかも終わりがないじゃないですか。
蒋介石(※45)がどんどん後退して重慶まで行ってしまった。重慶まで追撃する力は日本軍にはないですから」
岩上「仕方がないから、世界最初の無差別空爆をしたんです」
田代「戦略爆撃(※46)をやって、民間人の上に焼夷弾を雨あられと降らせたわけですよね」
岩上「その報いが東京大空襲でもあるわけですからね」
田代「そこで米軍は無差別空爆を学んだわけですね。それを日本に対して何百倍のボリュームでやったのが東京大空襲ですよね。その結果、東京が焼け野原になったわけですよ。その歴史を踏まえて、どんなに苦しくてもとにかく赤字国債は発行しなかったけれども、1964年の東京オリンピックの反動不況で20年目に封印が解かれてしまった。その後、1970年代の不況(オイルショック(※47))になってから赤字国債がどんどん発行されて、今に至っているわけですね。
現状も、政府債務の累積額が、GDPの2倍を超えるという異常事態ですね。黒田総裁は、2013年に就任なさった直後の参議院の会議では、一回だけですがはっきりと『持続不能だ』(※48)とおっしゃっています。ちゃんと国会の議事録に残っています。どう考えても持続不能ですよね」
岩上「この話に時間をかけていると終わらなくなってしまうので、特に戦争との絡みの話は、また回を改めてぜひうかがいたいんですけれども、二つだけお話しいただきたいと思います」
(※34)高橋是清:
第7代日本銀行総裁。1911年に就任、1年8か月務めた後、政界に転身。総理大臣を1回、大蔵大臣を7回務め(内1回は総理大臣と兼務)、1936年の2.26事件で殺害された。
(「第7代総裁:高橋是清 日本銀行【URL】https://bit.ly/2CJNRsq)
(※35)財政の赤字を埋めるために国債を発行するということは、財政法第四条で厳禁:
日本では、財政法第4条「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と、国債発行を原則禁止している。しかし、同条文の但し書きに「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と、例外的に建設国債の発行は認めている。
(Wikipedia赤字国債【URL】https://bit.ly/2HFj2uw)
(※36)日露戦争:
1904年(明治37年)2月8日から1905年(明治38年)9月5日にかけて大日本帝国とロシア帝国との間で行われた戦争である。朝鮮半島と満州の権益を巡る争いが原因となって引き起こされ、満州南部と遼東半島が主な戦場となった他、日本近海でも大規模な艦隊戦が繰り広げられた。最終的に両国はアメリカ合衆国の仲介の下で調印されたポーツマス条約により講和した。
講和条約の中で日本は、朝鮮半島における権益を全面的に承認された他、ロシア領であった樺太の南半分を割譲され、またロシアが清国から受領していた大連と旅順の租借権を移譲された。同様に東清鉄道の旅順-長春間支線の租借権も譲渡された。なお、賠償金については一切の要求を認められなかった。
(Wikipedia 日露戦争【URL】https://bit.ly/1UJoZTM)
(※37)植民地、属国、保護領:
植民地は侵略によって獲得した海外領土。本国の法令は通用せず、本国から総督や長官が派遣され支配する。
属国は従属国ともいう。主権の一部を他国に委ね、支配を受けている国。政治的、経済的に従属関係にある国。保護国を意味することもある。
保護国は条約により、外交や国防を他国に委ねる。条約のみにより拘束される。
(Wikipedia 植民地【URL】https://bit.ly/2TgoN3p)
(Wikipedia 従属国【URL】https://bit.ly/2UhzHWA)
(Wikipedia 保護国【URL】https://bit.ly/2DzTT0g)
(※38)ジェイコブ・シフ:
ドイツ生まれのアメリカ人銀行家。1847年〜1920年。
高橋是清の求めに応じて日露戦争の戦時国債を購入した。明治天皇より勲一等旭日大綬章を送られる。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2bRAvz8)
(※39)トーマス・グラバー:
1838年〜1911年。英国スコットランド出身の貿易商。鎖国が終わった長崎に住居を構え、「グラバー商会」を設立し貿易を営む。茶や生糸その他の産物から武器、艦船も扱い、1963年に起きた「8月18日の政変」の際には、佐幕・討幕、幕府を問わず、武器や弾薬を販売した。長崎にあった宅亭は「グラバー園」として現在公開されている。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/1qjfz79)
(※40)公武合体:
江戸時代末期の政治運動。朝廷と幕府が一致することによって、幕府を立て直そうという運動。大老井伊直之が1860年の「桜田門外の変」で暗殺された後、老中安藤信正は、朝廷との融和、結合をはかることによって、幕府の統治能力を回復しようと考え、孝明天皇の妹和宮を、将軍家茂に降嫁させることに尽力した。また薩摩藩、長州藩のなかにも、公武合体に向けての動きがでた。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2ycfED0)
(※41)昭和恐慌:
1927年の金融恐慌にはじまり、29年の世界恐慌によって深刻化して、30年から31年にかけてピークに達した、昭和初期におきた一連の恐慌。当時の濱口雄幸内閣は、30年に金解禁に踏み切る。しかし前年に勃発した世界恐慌が日本に波及する。それが金解禁によるデフレーション政策と相まって、日本経済は深刻な不況に見舞われた。32年に恐慌が収束して以降、日本経済は戦時経済体制へと移行していった。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2sO7oDk)
(※42)井上準之助:
1869年〜1932年。銀行家・政治家として、横浜正金銀行頭取。日本銀行総裁・大蔵大臣などを歴任する。浜口雄幸内閣に大蔵大臣として入閣し、金解禁を実現させるが、世界恐慌も相まって、日本経済は昭和恐慌に陥った。そのために血盟団による暗殺の対象となり、1932年に殺害された(血盟団事件)。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2RSrc7F)
(※43)濱口雄幸:
1870年〜1931年。大蔵官僚を経て、1913年に立憲同志会の結成に参加し、政界入りをはたす。27年の立憲民政党の結成の際に、初代総裁に就任する。1929年には、田中義一の政友会内閣が総辞職したことに伴い、民政党内閣を組織する。井上準之助・大蔵大臣のもと金解禁を断行し、昭和恐慌を深刻化させた。総理任期中の30年11月に右翼青年に銃撃され、その傷が原因となり。1931年8月に死去。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2G9EZ2P)
(※44)土木学会:
土木工学の進歩、土木事業の発達、土木技術者の資質の向上のため設立された学術研究団体。2017年8月の時点での会員数は約3万9千人。
(公益社団法人土木学会【URL】http://www.jsce.or.jp/)
(※45)蒋介石:
1887年~1975年中国浙江省生まれ。中国の政治家。中華民国総統。字(あざな)は中正。日本留学後、孫文の革命運動に加わり、中国国民党の軍事指導者として頭角を現す。
抗日戦勝利後、中華民国憲法を制定して総統に選出されたが、中国共産党との内戦に敗れ、49年、台湾に逃れた。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2RcDFlv)
(※46)戦略爆撃:
直接敵の戦闘部隊を爆撃(戦術爆撃)するのではなく、敵国の生産施設や交通、都市機能など、戦争遂行能力そのものを破壊する爆撃。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2V7PfNW)
なお、日中戦争中の1938年から218回に渡って、日本軍は中国内陸部の都市・重慶に対する戦略爆撃を行なった。この重慶無差別爆撃が持つ歴史的意味については、岩上安身が2013年10月に、軍事評論家・前田哲男氏にインタビューを行なっている。
【IWJブログ】戦略なき戦争へと突き進む軍事国家・日本の真実~岩上安身による軍事評論家・前田哲男氏インタビュー 2013.10.5
(【URL】https://bit.ly/2EWgWEG)
(※47)オイルショック:
石油ショック、石油危機などともいう。73年と79年に石油輸出国機構OPEC諸国が石油価格を大幅に引き上げ、世界経済全体がきたした大きな混乱をさす。73年10月に勃発した第4次中東戦争により、アラブ諸国が石油価格を4倍に引き上げたのが第1次石油危機。78年12月、イラン革命を機に、再び石油価格が約2倍に上がったのが第2次石油危機である。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/1tY3dBf)
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2SdSNfv)
(※48)政府債務の累積額が、GDPの2倍を超えるという異常事態について黒田総裁が2013年に『持続不能だ』と明言:
2013年3月28日、参院財政金融委員会に出席した日銀の黒田東彦総裁は、民主党(当時)の大塚耕平氏の質問に答え、日本の財政状況について「債務残高の名目国内総生産(GDP)比率が200%を超えるような異常な状況は持続不能である」と指摘した。そのうえで、「財政や国債に対する信認を維持することは極めて重要だ。中長期的な財政健全化の道筋を示すことを期待する」と述べた。
※日銀総裁「財政・国債に対する信認を維持することは極めて重要
(日本経済新聞、2013年3月28日 【URL】https://s.nikkei.com/2sZrL0F)
日本には本当に資産があるのか? 売れないインフラ資産をいくら持っていても債務返済はできない!国債の利払いが遅れれば日本はデフォルトしてしまう! 実は財務省がそうした事態を警告するグラフを発表している!
岩上「一つは、『日本には純債務だけではなくて債権がある。かつてと違って日本は金持ちなんだ。それで見ると実はプラマイでプラスがある』という意見について。もう一つは、純債務と純債権は海外にもあるし、国内にもあって、その内訳を見ると、インフラや何かがあってそれは売れるものではないと、『アベノミクスによろしく』の著者の明石さんは言っているんですね。では米国債などのほかの債券をどうにか売り払って、充てることができるのかという問題です。
田代「まず一般政府、つまり政府も日本銀行も全部足してしまったバランスシート(※49)を考えてみますと、日本政府はこんなにたくさん資産があるから大丈夫だという意見があります。その多くは、財務省の資料に書いてありますが、例えば堤防や護岸壁を作った時のコストを単に計上しているだけで、そんなに価値があるというわけではない。『ありません』とちゃんと注記がついていますよね。それはそうですよね。いくら『この護岸壁に10兆円かけました』といっても、誰が10兆円で買ってくれます?」
岩上「そうですね。『持っていってください』と言ってもね。使用価値はあるけれども、交換価値はない」
田代「それは会計上作った費用に計上しているだけですよね。そのほとんどは何の意味もないわけです。
金融資産のうち、一番大きいものは国債が背負っているわけですよね。だからその国債が持続可能かどうかということを、今、議論しているのに、その国債を中心とする金融資産が『たくさんあるから大丈夫です』と言われても。『いったい何をお考えになっているんですか』と言いたいです」
岩上「結局、金融資産を買っているのは国民だということですね。だから国民が豊かだということの裏返しだと」
田代「今、日本銀行が一番の買い手ですけれども、それは元をたどれば国民の預金ですよね」
岩上「だから、『国民の預金が豊かである限り、国債市場を安定させるんだ。実際、一気に上がらないじゃないか』と言う人もいます」
田代「それは、かつて貯蓄大国だった日本の話です。今は貯蓄率は非常に低いんですね。マクロ経済(※50)全体を考えれば、若い人たちはものすごく貯蓄好きですよね。将来が怖いからですね。
でもすでにリタイアした世代は、取り崩すしかないわけですから、この人たちのボリュームがすごく大きいわけですよ。特に団塊世代のボリュームが大きいです。彼ら、若い人が積み立てた分を取り崩している形になっているわけです。
そうするとトータルで見れば、日本は貯蓄されるよりも取り崩されるほうが大きいわけです。特に団塊世代が全員後期高齢者(※51)になる2025年になれば、莫大な預金が引き出されますよね」
岩上「のちのち、この人たちの晩年の療養費、医療費、介護、またターミナルケア(※52)、最終的には高齢者施設に、ほとんど費やされていく」
田代「そういういろいろなジェネレーションが積み重なっているという経済のリアルな姿を無視した非常に素人じみた議論ですよね。それならばなぜ黒田総裁は、2013年の時点で『持続不能だ』とおっしゃったんですか。あれほどの大秀才が。
少子高齢化になれば、若い人が貯蓄しているものを年寄りが取り崩すのは当たり前ですよね。結果は見えているじゃないですか」
岩上「貯蓄が背景にあっての国債ですから、国民全体の家計が衰弱する、生産年齢人口が減る、従属人口が増える、そして貯蓄を削らざるを得なくなると、最終的には、国債の信認が落ちて金利が上がってくる。揚げ句、円の信認が落ちる。ぐるぐる回って、すごくミクロな話とマクロの話がつながってくるわけですね」
田代「もう一つの問題は、日本は対外的な純資産国(※53)で、しかも一番大きい資産を持っていて、それは冷静に考えれば、今の時点でも外国の人が日本に投資する気があまりないということなんですよ。日本から外国に投資するばかりだから」
岩上「要するに、ここ日本からハイリターンは生まれそうもないということですか」
田代「そう。資産をたくさん持っている。一方、外国の人は日本の資産をあまり買ってくれない。だからその差額である対外純資産はふくらむばかりですよね。それを自慢していいのかと思うんですね」
岩上「なるほど。個人で言うと、もう自分は現役をリタイアしたけれども貯金はある。でも自分の子供には伸びしろはないから、別の有能な、成長しそうな若者に投資しようとしている老人のようなイメージですよね。それが伸びているけれども喜べないというのはどういうことですか。リターンがあるんだから、お金が貯まるんだからいいんじゃないかと思うんですけれども」
田代「でもそれは、お金持ちの年寄りの発想ですよね」
岩上「そうですよね。未来はない」
田代「でも結局取り崩しているわけですね。私の友人のコンサルタントが面白いことを書いていました。最近、外国へ行くと、『日本はすごい』という言われ方をされるんだけれども、よく聞いてみると、往年のゴールドメダリストのようです。現役扱いされていないわけね。『かつてすごかったね』ということ(笑)」
岩上「なるほど。日本経済も」
田代「日本に対してのイメージはそうです。やはり事業を起こすのなら、中国南部の深圳なりシンガポールなりシリコンバレーなり、ということになってしまって、決して日本には来ないわけですね。そうでなければ、なぜ優秀な日本の町工場がたくさんある大田区や東大阪で、4日に一つ工場が閉鎖するんですか。本当なら後継者がいなくても買ってくれますよね。『おお、素晴らしい』とね。でもそうではないわけですよね」
岩上「素晴らしくなくなってしまっている」
田代「『ノウハウはください。それで深圳でやってみます』と言われちゃうわけですよね。金利が低い理由は、国債の信認が高いということと、もう一つ、そもそも日本で儲かる事業がないからですよ。
10年かけての平均利回りが1%あるかないかだから。10年国債の利回りが1%未満なんですよ。ほかにもっといい事業機会があったら、10年国債がもっと価格を下げなければいけない。つまりそれだけ金利を上げなければ買ってくれないわけですね。今、回っているということはそういうことですよ。だから2%を下回る長期金利というのは、経済のゾンビ状態なわけですね。10年かけても年平均2%以上の利益が見込めないということでしょう」

▲安倍晋三総理(2017年10月7日、IWJ撮影)
岩上「国策として安倍政権が選択しているのは、さまざまな社会保障費その他を削って、挙げ句の果てに、非常に財政が厳しいのにふくらませているのは防衛費ですよ。防衛産業に手厚くして、『国防国家を目指すんだ』と言って。国防国家で飯食えるんですか。
その後、もし戦争になったら、その戦費はばかにならないものです。少なくとも日露戦争の時代は領土簒奪してその国を植民地化して、その国民を臣民(※54)にして、名前から言葉から奪い取った。日清戦争の時は賠償金も取りました。
でも今は、1ミリも土地を取ることはできないです。戦後以降ね。これは許されないことになった。この許されない時代の、ただの乱費としての戦争をアメリカが続けているのはなぜか。シリアに対してアメリカを中心とした有志軍は、4年間で3万回に及ぶ出撃をしているんですね。ほかの国にですよ。あそこに強盗がいるから、テロリストがいるからといって。シリア政府は頼んでいないのに」
田代「そう。頼んでいないね」
岩上「日本が経済を全く考えずに防衛費を上げて軍事国家にし、北朝鮮、中国を相手に戦争したが最後、すっ飛んじゃうじゃないですか」
田代「国の実力を超えた軍事力を維持しようとして破綻した国は、岩上さんが目撃したソ連ですよ。もう国民の生活がふらふらだったのに、アメリカと正面から対抗する軍事力を維持しようとしてきたわけでしょう」
岩上「競い合い、『でも戦争は無理でした』という結果になったんですよね」
田代「それはなりますよね。高橋是清は、何のために命を懸けて陸軍費と海軍費を抑えようとしたか。それはもう、それらがとんでもない金食い虫だとわかっていたからですよ。だから何とかして国際協調路線をとって、『軍事費を減らさないと資本主義はもたないでしょう』と、彼は非常にまともなことを考えていました。その人を殺して、今、こうなっていますね(二・二六事件(※55))。

▲高橋是清大蔵大臣(Wikipediaより)
でも不思議ですよね。高橋是清を気取る人は戦後もたくさんいるんだけれども、まともなことを気取る人はあまりいない。そこを気取ってほしいんですよね。とにかく『そんなに軍事予算を増やすと言うのなら、私を殺してからやってください』と言うべきです。現状はとっくに高橋是清が殺された時代に戻っています。
日本の場合、社会保障費に関わる少子高齢化を放置してきたことが問題です。1955年が日本の年少人口15歳未満人口のピークでした。自民党が結党して以来、ずっと15歳未満人口は減っているわけですよ。将来何が起きるかわかっているのに、それをずっと放置して、今頃になって少子化を止めようとしても、もう止まらないですよ。これだけ長い間モメンタム(※56)がついているわけですから。
だからその上でどうするかということですね。では今、金利が上昇したらどうなるか。これははっきりと財務省の公式サイトに書いてあります。『公債利払費が増加します』、『一気に増加に転じることが考えられます』と」

▲もし金利が上昇したら→公債利払い費の増加
岩上「これ、すごいですよ。こう書いたのは、私でも田代さんでもありません。財務省です。『出典:財務省公式サイト:財務省NOW!』(※57)というところにちゃんと出ています。『一気』ですよ。パンクするとどうなるんですか」
田代「もう日本国政府はデフォルト」
岩上「南米の国家でありましたね、デフォルト」
田代「国債は最高の信認を持っています。ということは、例えば『利払いを遅らせてください』『少し待ってください』、『少し負けてください』も言えないんですよ。『8割は入るから2割は我慢してください』などと、絶対言ってはいけないんです。1円たりとも1秒たりとも遅れたら最後です。その時は、ウォールストリートジャーナルの見出しに、『ジャパンデフォルト』と出るわけですね」
岩上「その時はどんな感じになるんでしょうね」
田代「もう日本売りですよね。国債が売られて、株式が売られて、日本円が売られて」
岩上「間違いなく日本企業の株は売られるわけですね。経団連の皆さんも全員聞いておいてもらいたい。自分たちが安倍政権を支持してこの路線をやってきたから、この結末が見えているという話ですよね」
田代「はい。しかもその国債の金利が上昇に転じるマグマは、着々と溜まっているわけですね。そうでなければなぜ財務省がわざわざ書いているんですか。『もう私たちは警告しましたよ』と言っているわけですよね」
岩上「うわあ。国債に投資していた個人も法人も、持っているものがみんな紙くずになってしまうわけですね」
田代「戦時国債がどうなったかを考えればいいですね」
岩上「パーですよね。これは大前提なので、一回復習しておかなければいけないと思います」
(※49)バランスシート:
貸借対照表。企業の「資産」と「負債」「資本」を対照表示することで企業の財政状態を明らかにする報告書。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2T6uFvB)
(※50)マクロ経済:
一国の経済全体を見るもの。経済の三態(政府・企業・家計)を総体としてみる。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2ShxR7r)
(※51)後期高齢者:
75歳以上の高齢者。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2Gz81KO)
(※52)ターミナルケア:
末期癌の患者など、治療の可能性がない患者を援助する(ケアする)ことをいう。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2PXo2tn)
(※53)対外純資産:
国が海外に保有している資産から負債を除いたもの。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2GFVwx8)
(※54)臣民:
一般的に君主国で、君主に支配されている国民を指す。明治憲法下においては天皇・皇族以外の国民。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2KdMQun)
(※55)二・二六事件:
1936年2月26~29日、東京で国家改造を目指す陸軍青年将校が陸軍部隊を率いて反乱、クーデターを起こした事件。高橋是清蔵相、斎藤実内大臣を殺害し、永田町一帯を占拠。26日早朝蜂起後、27日東京に戒厳令がしかれ、28日反乱部隊は「騒擾部隊」とされ、原隊復帰の奉勅命令が出された。29日に反乱は終わり、首謀者19人は銃殺された。統制派は事件を利用し、皇道派指導者を追放、発言権を強めた。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2V714UA)
(※56)モメンタム:
momentum 1.勢い。はずみ。2.運動量。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2rV1qjy)
(※57)「出典:財務省公式サイト:財務省NOW!>もし金利が上昇したら?」
(財務省NOW!【URL】https://bit.ly/2BBChiC)
人口は勝手に増え、戦争をすれば植民地も賠償金も取れ、切羽詰まれば「経済なんて金利次第、貨幣供給量でどうにでもなる」とうそぶく人々の頭の中はどれだけ時代に取り残されているのか!?
岩上「日本の人口のピークは、2004年の1憶2784万人。2050年には9515万人、25%減少するといわれていたんですけれども、年齢のことを考えない人口論は、ほとんど何の意味もないですね。日本の人口グラフを見ると、1930年代はピラミッド型だったんですね。高齢者が少なくて生産年齢人口が多い。医療水準が低かったから多産多死で、子供は成人になる前に死んでしまうことが多かった。
しかし自立は早く、子供のうちに労働力に組み込んだ。あるいは家事を手伝わせた。だからお爺ちゃんお婆ちゃん、お母さんは田畑の仕事をして、お父さんは外で賃労働に行くなど、みんなが家計を支えていた。
当時は『産めよ増やせよ』と推奨していて、知らない人も多いと思いますけれども、人工妊娠中絶は罪でした。避妊も許さなかった。一方、今のように性を謳歌できるような時代ではないですから、1カ所だけに公認の街娼を置いて捌け口にする。それ以外の男女交際はいけないというモラルだったわけですよね。
今と全く違う社会だったわけですけれども、当然、次男三男は飯を食えないから、ヨーロッパもそうですけれども、長男は相続するけれども次男三男は行き場がなくなって、よそを取りにいくという話になる。それが終わったあとベビーブームが起きて3年、ドカーンと子供が増える」

▲国立社会保障・人口問題研究所による人口動態の調査・推計
田代「団塊世代ですよね。そのあと団塊ジュニアの世代が来る。しかし団塊ジュニアの次がないんですよね」
岩上「ないんです。そしてその後いきなり減ってしまったのは、優生保護法(※58)が変わったからですね」
田代「恐ろしくなったわけですよね。日本は敗戦国で焼け野原なのに、このまま人口爆発が起きて子供ばかり増えてしまったらどうなるのかということで、たぶん優生保護法ができた」
岩上「人工妊娠中絶が経済的な理由でのみ認められるということになった。でもこれは非常に大きかったですね」

▲鉄道でブラジル各地へと向かう日本人移民(Wikipediaより)
田代「でも何年かたったら見直すということは考えなかったわけですね。日本は人口過剰だというセンスが強くて。だからブラジルへの移民が起こったんですね。最後は確か1970年代ですよね。ずいぶんあとまで行っていたんですよね」
岩上「やはり子供、従属人口の負担を重く感じていた。急には変わりませんからね」
田代「その結果は功を奏したと言うべきか、人口分布はピラミッド状から釣鐘状になりました」
岩上「これは人口ボーナス状態というものですよね。従属人口というのは、若年人口と高齢者人口だから、ここが両方減っている」
田代「一番それに寄与したのは、このタイミング(1950~60年代)ですよね。それから今の趨勢をそのまま延長してみると、2050年に最も穏当な予測として3種類出ていますよね。棺桶型になってしまうんですよ。多少違いはあるけれども、西洋型の棺桶型ですよね。そしてこの赤い部分の後期高齢者の人たちをどう支えるかという問題が発生するわけですね」
岩上「今後、後期高齢者を何とか無事に社会が支えて、『看取り終えた時には人口動態はスリムに戻っているだろう』と言う人がいるんですけれども、大勘違いで、その時には団塊ジュニアがリタイアの歳になっているんです。それは非常に重い負荷になるわけですね」
田代「その下は非常に細っている」
岩上「そのリプロダクションのサイクルが縮小均衡の方向だから、どんどん細ってしまう。これが一回反転してくれれば望みはあるんですけれどもね」
田代「この団塊ジュニアがもう一度ベビーブームを起こすかと思ったら、起こさなかった。なぜかというと、彼らの出産適齢期は2000年辺りですよね、団塊ジュニアが20代後半ですよね。この前の1990年代の長期不況を考えると、彼らがここで子供を作るということはあまり選択できなかったんですね」
岩上「そしてこの時にはまだ豊かさの名残というか、昔の価値観があって、人口政策をする必要があるとか、少子化対策が必要だとか、人口こそが重要だとか、そういうことがそもそも経済学の中に組み込んで考えることができてなかったので、いくら言っても素人の議論というような話ではね返されてきました。
これがずっと、厚労省のマターのところでは観察されているんだけれども、財務省や日銀は、『いやいや、経済なんてのはね、金利次第でどうにでもなるんだから、貨幣供給量でどうにもなるんだよ』というようなマネタリスト(※59)的な議論で、現実を全く見ないような議論が続き、今日に至っています。崩壊時になって『大変だ』と騒いでいるというわけですね」
田代「まあ、そこまで手厳しく言わなくても。人間はやはり20歳前後の若い頃に勉強したこと、読んだこと、経験したことに、すごく影響されていますよね。
今、意思決定している人たちが若い時は、日本の人口はどんどん増えて、経済は右肩上がりだった。それがノーマルな状態で、そこをもとに発想しているんですね。基盤が失われているといってもピンとこない。もっと言えば『若い人たちがいけない』と言いかねない。
だから最近、年寄りの政治家が、わざわざ名前は言いませんが(笑)、『子供を作らないのが悪い』などと言いますね(※60)。私は、子供が作れないような状況を作ったのが悪いと思うんですよね」
岩上「まさにその通りです。70、80歳の人たちが政界や財界を牛耳って、子供は公的なバックアップもなしに自然に生まれて育つ、自然現象や環境と同じで、その維持のために金をかける必要はないというのはどうでしょうか。民草は生えてくると思っているんでしょうか。日本書紀では、民衆は『青人草』と呼ばれて草扱いですからね」
田代「民草の字がそうですからね」
岩上「支配層は神々の子孫で、民衆は『青人草』。『どうせ勝手に生えてくるんだろう』という調子ですから、生えてこなくなることを全く念頭に置いていないし、『生えないお前が悪い』とまで言っているわけです。このトンチンカンな人たちに早くリタイアしてもらいたいです。

▲市場原理主義的な「第2世代のシカゴ学派」を代表するミルトン・フリードマン(Wikipediaより)
それからこの宗派だと言っている上の人たちの影響を受けて、40代、30代、私よりもずっと若い人たちの中でも、こういうかつて異端だった新自由主義(※61)の経済学に染まってしまっている人たちがいます。こんな再生産が続いていくと、本当に打つべき手を過つという気がして仕方がないんですよね」
田代「やはり戦後の1950年代、60年代というのが、今考えれば異常な事態なんですね。世界中で第二次世界大戦後の復興需要があり、人口が急増して。そういうものによって経済がずいぶん上げ底されていたということを、みんな忘れています。あそこに戻るにはあの時と同じ政策を行えばいいというのは、勘違いです。人口構造が全然違っているわけですから。
まして2050年に至ることを考えたら、どうするんですか。その時は人口も急速に減少していくわけですよね。
司馬遼太郎の明治時代を題材にした小説『坂の上の雲』(※62)の世界のように、雲を目指したような時代とは違います。坂の下のドブに突っ込んでいくような世界になっているわけですよね(笑)。それを全く認識しないで勇ましいことを言うのは、一番深刻な事態から目をそらしているように思いますよね」
岩上「いや、大変ですよ。戦争に勝っても植民地も賠償金も取れない。ただ浪費して財政破綻するしかない戦争のために金を使うなんて。そのことによって、若年人口が増えるわけでも、ふくらんだ債務が解消するわけでもない。そういうごまかしファンタジーです。自衛隊員勧誘のポスターを見ると、完全なファンタジーの絵でできているんですよ。

▲防衛省ウェブサイトの自衛官募集ページより
女子高生のような恰好ではなくて、もはや完全なファンタジーアニメの絵なんですね。女の子が騎士の格好をしていて、自衛官の制服は一切関係ないようなものです。このまま脳内妄想に突っ込んでいき、財政も人口も何も考えないなら、国が、民族が全部崩壊するようなことになるんじゃないですか。しかも原発があってですよ」
田代「そうです。原発を今の状態で維持するのであれば、莫大なお金かかるわけですよね。再稼働すればもっとお金がかかるんですよ。使用済み核燃料はどこに保管するのかということですね」
岩上「プルトニウムの問題もありますしね」
田代「アメリカもとうとう信用しなくなって、『プルトニウムを返せ』と言い出しましたよね」
岩上「こういうことを考えていくと、人口は最低限の大前提なんですね。人口のピークは2004年だった。みんな、今になって何をあわてているんだろうと思います。もっと前にあわてろよという話なんですよね」
田代「経済学でもう一つ大事なのは、比率なんですね。総人口の中に占める15歳から64歳の生産年齢人口の比率。そのピークは、1995年なんです。実はバブル崩壊というのは、それが効いているわけですね。
その頃、六本木などへ行くと、男性はみんな『社長さん、社長さん』と言われたじゃないですか。キャバ嬢たちから。最近は一言も言わないですよね。その絶対数は、1995年から減り出した。とうとう総人口そのものまで減り出して、一方で65歳以上人口の比率は増えてきた。そういうふうに、次々とピークアウト、頂点を過ぎるという現象が起きて、それが次々と日本経済に効いているわけですよね。こうなると結論は見えてしまっているわけですよね。現状のままでは持続不能なのですよ」
岩上「もっと早い段階で家計を温めるしかなかったんですね。家計を温めて、子供が生まれるようにして、子供というのは裸の需要ですから、ここにお金が回るようにすれば、どんどん消費が増える。将来のことを考えても、若年人口を育てていくことが大事だったんですね。子供を産めない人もいますから。安倍総理夫妻もお子さんがいらっしゃらない。それをなじる必要はないと思いますが、二階さんは『子供を産まないのは身勝手だ』と言いました(※63)」

▲二階俊博(Wikipediaより)
田代「誰の口だということですよね。幹事長が総裁に対して何を言っているんだと思いましたね」
岩上「ものすごく失礼な話ですよね。そういうことを言ってはいけない。ただ、だいたい希望子供数というのは3人で、でも2人いれば、人口水準は維持できる。置換水準(※64)ですね」
田代「現在はもう少し必要なんですけれども」
岩上「そうですね。2.08ですか」
田代「でもいわゆる2ですよ。一組の夫婦から、あるいは一人の女性から、生涯2人子供が産まれてくれれば、人口は一定になるわけですよね、理論的には」
岩上「ところが、安定したカップルが全体の中で必ずしも90%を占めているような時代ではなくなっている。安定的なカップルの希望子供数は3ですね。2をはるかに上回る。でも実際は、残念なことですけれどもそうはならない。統計を見ると中絶が行われているのは、なさぬ仲というわけではなくて、実は合法的なご夫婦の間なんですね」
田代「そう。経済的理由になってしまっていますね。それはもう、あれだけ育児が大変なわけですから。保育園も連れていかなければいけないしね。14歳以下人口は1955年がピークなんですね。時々は増えるんだけれども、去年はこの水準を上回ることなく、ずっと下がっているわけですよ。これだけ放置してきて、今さら増やせと言ってもね」
岩上「安定的なカップルに支援をすれば、泣く泣く『3番目の子供は我慢しよう』と中絶しなくてもよかった。そういう子供たちが生まれていたら、人口も増えたし各家庭の幸せも増えたと思うんです。
いろいろな理由があって、子供ができたけれども離婚したという人もいます。私もシングルファーザーで、二人の娘を私が引き取って、子育てが終わっているんですけれども、シングルファーザーに対しての冷たさは感じました。シングルマザーはまだほんの少しは公的支援があるんだけれども、シングルファーザーには全く公的支援がなかったんですよ。今は少しはあるようになったんですけれども、依然シングルファーザー、マザーに対する冷たさがすごい。
これを、もっときちんと応援することができればと思います。やはり女性は離婚リスクが高いですから。今、三組に一組が離婚(※65)していますからね。やはり子供を産んでから離婚されたら怖いと思うんですね。そのリスクは女性だけではなくて男性もそうですけれども。
そういう先行世代のリスクに関して『大丈夫だよ。リスタートできるよ』と、公的サービスや資金的な支援もし、教育費も下げるというように、国が取り組んでいたら、全然違っていると思うんですよ。ヨーロッパでは実現していますよ」
(※58)優生保護法:
1948年(昭和23)施行。
「第一条 この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」(原文ママ)
優生手術・人工妊娠中絶・受胎調節の実地指導などについて規定していた法律。人口急増対策と危険な闇堕胎の防止のため、人工妊娠中絶の一部を合法化したものであり、内容の是非については常に議論があった。さらに優生思想にもとづく部分は障害者差別であり、改正を求める声があがっていた。このため1996年(平成8)優生思想にもとづく部分を削除し「母体保護法」へと改正された。
(衆議院法律 第百五十六号 優生保護法【URL】https://bit.ly/2MHMgbb)
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2CA14oZ)
(※59)マネタリスト:
日本語では通貨主義者とも呼ばれる。経済の貨幣的な側面を重視する経済的立場。おもに通貨供給や金利操作といった金融政策の重要性を主張している。アメリカの経済学者、ミルトン・フリードマンによって提唱された。
マネタリストの理論は「新貨幣数量説」とも呼ばれている。これは貨幣の数量をコントロールすることによって、インフレーションを管理し経済成長を促進できるとする考え方である。政府の裁量により財政政策を進めるべきだとするケインズ学派とは立場を異にする。1980年代の金融政策に大きな影響を与えた。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2AeixBQ)
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2Td8WCB)
(※60)「子供を作らないのが悪い」などと言いますね:
自民党の加藤寛治衆院議員(72)は、5月10日、細田派の会合で「私は結婚式では『ぜひとも3人以上、子供を産み育ててほしい』という話をする。努力しても子供に恵まれない方に無理を言うのは酷だから、そういう方々のために必要なんですよ、と」と発言。
(毎日新聞「自民 加藤衆院議員『子供は3人以上を』 数時間後に撤回」2018年5月10日【URL】https://bit.ly/2G7IEdI)
(※61)新自由主義:
ネオリベラリズムともいう。政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方。ハイエクやフリードマンの理論にもとづく。1980年代に入ってケインズ主義的な経済政策は、財政赤字の累積、官僚主義的な非能率、スタグフレーション(雇用や賃金の減少と物価上昇の同時発生)などにより、行き詰まりを見せていた。それに対して、イギリスのサッチャー政権、アメリカのレーガン政権は、減税、規制緩和、民営化などによる小さな政府への改革を開始した。日本では、小泉純一郎による郵政民営化などが、新自由主義にもとづく政策として知られている。また世界的な経済格差をもたらした政策として批判されている。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2CvyIMk)
(※62)「坂の上の雲」:
司馬遼太郎の長編小説。1968年(昭和43)‐72年(昭和47)にかけて産経新聞に連載。開国後の近代化への道のりと日露戦争終結までの歴史を、秋山好古・真之兄弟と正岡子規を中心に描く。タイトルは、日本の近代化に向けて奮闘する明治の人達を、作者が「のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、それをのみ見つめて坂をのぼってゆくであろう」と例えたことに由来する。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2CzFFw1)
(※63)二階さんは『子供を産まないのは身勝手だ』と言いました:
自民党の二階俊博幹事長は(79)6月26日、東京都内の講演で「子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考えて(いる人がいる)」、「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」などと発言した。
(朝日新聞デジタル「「子ども産まない方が幸せ、勝手なこと」自民・二階氏」2018年6月26日【URL】https://bit.ly/2GdMt4S)
(※64)人口置換水準:
合計特殊出生率(一人の女性が平均して一生の間に何人の子供を産むかを表すため、15歳から49歳の女性の、年齢別出生率を合計した指標)を純再生産率(女児に限定した合計特殊出生率)で割った数値。出生、死亡、人口移動の中で、人口移動を除外し、人口が長期的に増えも減りもしない出生の水準。現在の日本はおおむね2.07。
(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」【URL】https://bit.ly/2HHX3n3)
(※65)3組に1組が離婚:
厚生労働省の人口動態調査によると、2017年の婚姻届は60万6863件、離婚届は21万2262件。ただし、離婚した人のうち男性で約27%、女性で約23%が再婚している。
また、2017年に出された婚姻届約60万件に対し、離婚届は2017年以前に結婚していた全ての夫婦の中から2017年に出された届けの件数であるため、実感としては人口1000人あたりの離婚件数で表す「離婚率」の方が近い。
日本の2015年の離婚率は人口1000人あたり1.8。婚姻率は5.1である。
(厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計の年間推計【URL】https://bit.ly/2BbUB29)
(総務省統計局「世界の統計2017」【URL】https://bit.ly/2DKugKq)
労働力への期待、税収、社会福祉も人口増加があってこそ。思考回路の大転換もなく、少子化は傍観、なし崩しの移民国家を認めつつある理解しがたい国が今の日本!
田代「北一輝が日本国改造法案大綱の条文に書いている通り、当時は日本は人口は急増していて、『このまま行くと、将来、日本の人口は2億を超える』とすごく危惧しているわけですよ。『どうすれば食べていけるんだろうか』と。するともう、対外進出できるだけの強力な国家が必要だというロジックになったわけですね。
ああいう本を熱狂して読んだ岸信介(※66)のような世代の人たちが1955年に自民党を結党しました。当時の彼らからすると、いいことだと思ったんでしょうね。日本は敗戦国で、もはや対外進出できないんだから、人口が減少するような仕組みを作ったということで、自分たちが誇らしかったんでしょう。

▲岸信介(Wikipediaより)
でも1975年から日本の社会福祉が始まりますよね。これは、日本の税収が増え続けることを前提にしてしまったんですよね。税収が増えるということは、要するに人口が増え続けるということですよね。そうではなくなった時に、それは大転換しなければいけなかったわけですね。でもしていないわけですよ」
岩上「少なくともこれを均衡するような案をとるべきだったと思うんですね。人口に対して減り続けるのをまかせていくのは、将来においてやはりマイナスなので。人口が均衡点を目指す。そして社会保障も、人口増を前提としてどこまでも伸びるというような形ではない。そういうモデルを作るべきだったのに、どっちつかずで、『えい、このまま行け。どこかで破綻だ』とやり越してやり越して、ずっと続けているんですよね」
田代「そうなんですよね。本当に思考回路を変えない限り、問題は解決しないわけですね。やはりこういう番組をご覧になった方々が、周りの方に伝えてもらいたいです。物事は、まず現実を直視して、そこから考え直すということをしなければいけないです。遅れれば遅れるほどコストは巨額になっていくわけですよ」
岩上「そうですよね。極右の人たちや自民党自体の性行動を見ていると、性的に潔癖とは到底思えないのに、『性教育をするな』と言うんですね。それは非常に問題ではないかと思います。
お節介かもしれないけれど、エマニエル・トッドという人口学者は言っています。『日本は移民も受け入れない。少子化対策も行わない。どうやらあきらめてしまったらしい』と。
フランスは、少子化を世界で最初に始めた国ですね。世界で最初に近代化したから、子供を少なくするということを考えついた国で、100年かけて少子化を進めていった。日本は20年のスピードで追いかけている。フランスはいろいろな手を打っているけれども、人口が少なくなっていることを危惧しています。ヨーロッパ各国、みんなそうです。
一方、日本はどこへ行っても外国人がびっくりするぐらいきれいにゴミを拾って、清潔だということを自慢していますけれども、実は1960年代の日本はめちゃくちゃに汚かったですよ。マナーなんてなっていなかったですよ」

▲1960年頃の新宿(Wikipediaより)
田代「日本の観光団が世界を震撼させたじゃないですか。私は子供だったけれども覚えていますよ。それを考えれば、『街をきれいにするよりも先に、子供を増やすことを考えたらどうか。そういうことにエネルギーを費やし切っているんじゃないか』と」
岩上「そうですね。トッドは、『非常に顰蹙を買うような言い方かもしれないけれど、実は子供は、こんなきれいな国から生まれない。ルーズな所でルーズに子供はできるんだ』とも言っています」
田代「彼は世界中の人口構造を見ているから、あの的確な指摘は非常に重く考えるべきなんですよね」
岩上「そうですね。ルーズに恋愛をし、ルーズにセックスをしてしまい、ルーズに生まれてしまった子供を、『では子供を締め殺さなければ』などと思う必要はなくて、『ルーズに産んじゃったけれども、まあ、生まれてしまったものは生まれてしまった命なんだから、大事に、とにかくまずは赤ちゃんを大切にしよう』とならないと。

▲ドイツの赤ちゃんポスト(Wikipediaより)
未熟な人が産んでしまった、なさぬ恋から産まれてしまった、でも、『ケアしようよ』と。その子はその子。何も悪くないという体制が望ましいですね。
今、フランスの多くの子供が婚外子なんですよね。男女関係から言えばルーズだけれども、そのルーズさの中から人口が増えている。ここをもしカットしてしまったら、フランスはもう大変なことになってしまうから、あまり厳しいことは言わないで、とにかく子供を育て上げようという社会体制を作って、そこに社会保障費もつぎ込んでいる。日本は老人向けばかりで、(子育て予算は)社会保障全体の3%ぐらいしか入れていないわけですよね。そこを充実させようというのは、私はすごく正しいと思うんですよ」
田代「まあ、カトリック教国でよくあそこまでできると思います」
岩上「そうですね。カトリックはモラルが厳しいですからね」

▲アヴィニョン教皇庁の正面(Wikipediaより)
田代「もうとにかく、『正式にカトリック教会で結婚した人以外でもいい。生まれてきた子供はみんな大事にしよう』というのは、日本以上に抵抗があったはずですよね。それを押しのけて頑張っている。日本はそんなに厳しい倫理規定がないのに、記録を見るとこうですものね、ずっと減っているわけでしょう」
岩上「ルーズな行動をとっているくせに、他人に向かっては『ルーズにするな』と平気で言える、人格が分裂しているんじゃないかと思えるような政治家が、自民党に極端に多いと思います。
たとえルーズな性行動をとった揚げ句生まれた子供に対しても、子供には罪はないんだから、庶子扱いするのではなく、一人前の福利というものを与えて、きちんと成人させるということを、当事者だけではなくて、国や社会が責任をもって面倒見ようという体制を作ることがすごく大事なんじゃないかと思います」
田代「どんな体制を作るか、いろいろあるかもしれないけれど、とりあえず一刻でも早く何かしないといけない。今の予測は楽観的予測なんですよ」
岩上「そうですね。高位推計、中位推計、低位推計がありますから。実際には厳しい方向へどんどん行っていますからね」
田代「だいたい日本の人口推計は、ずっと低位推計が当たってきているんですよね。実は中位推計ですらも、相当に強気の楽観的な展望になっていて、それを考えればもっと子供の人口は減るはずですよね」
岩上「私は1990年代に、国立社会保障・人口問題研究所に通って、いろいろ教えてもらったんですけれども、『うちのこと悪く書かないでよ』『将来マイナスの感じを出さないでくれ』と言うんですよ。ほかにもいくつか言われたな。とにかく数字のソースに関しては、自民党、与野党、財界からものすごく圧力がかかると言っていました。『えっ、これだけひどく出ているのに。それじゃ操作しているんですか』と聞いたら、『いや、それだけは内緒にしてね』と言われた。あ、言っちゃった。偉い人が言っていました」
田代「いや、それは、なぜああいった高位推計、中位推計、低位推計があるかということですよね。高位推計は一番薔薇色の未来を描いていて、低位推計は実はほどほどなんですよ。実はもっと下がある」
岩上「リアルなのは低位推計なんですよね」
田代「低位推計よりもっと悪いものがあるはずですよね」
岩上「そういうことを実際にやりながら、圧力をかけられながら、それでも提示してきたんだけれども、結局政策に反映せず、子供手当も潰し、軍事費を増大させて、この未来、どうなるんだという話でもあるわけですよね。
先ほどもお話ししたように、トッドは『もう日本は移民国家になることをあきらめ、清潔な滅びる国家を選んでいるらしいんだ』と言っているんですけれども、移民国家を選ぶということを安倍さんはなし崩しにやろうとしているじゃないですか(※67)。急に外国人労働者を入れようとしている。
これはトランプの政策でも問題になっていますけれども、家族と引き離すのかということが大騒ぎになったじゃないですか。出稼ぎで単身で来て、稼いだら帰って、家族は国元に置いておけというやり方。研修生制度という名の下に。いつまでもこんなやり方が通用するのかと思います。
それに非常に劣悪な環境下で働いている。それでいじめられて逃げ出した人を、なんと官憲が捕まえたわけですよ。違法行為をしたと。逮捕したんですよ。これは奴隷労働じゃないですか」

▲外国人技能実習生が置かれた過酷な環境
田代「ここ最近はもう、そう指摘されていますよね。国の最低賃金よりも低い賃金で、研修だという名目で雇っていますから。もう今、コンビニエンスストアでもキオスクでも、従業員はほとんど外国の人じゃないですか。でもそうでなければ、あの商売はすごく利幅が低いから、もたないんでしょうね。
それを考えると、もう日本はなし崩しに移民国家になりつつある。『なし崩し』と怖いことをおっしゃいますけれども、その通り、すごい不安分子がたくさん作られていくわけですよ」
岩上「『家族を呼び寄せたい』、あるいは『国籍を持ちたい』、ここで自分の働き盛りを終えて母国へ帰るのではなくて『日本で定住したい』と言った時に、『いや、そんなつもりは全くなかったから帰ってくれ』と言われてしまう」
田代「『5年経ったら帰るはずだ』とね」
岩上「日本で働いてきて、税金も取られて、母国に年金も積んでいないと言っても、『それは知りません』となると、送り出し国との間の、国際的な緊張関係も非常に高まりますし、大問題になると思うんですよ。しかも、ものすごい量を入れないとだめなんですよね。
生産年齢人口の毎年の減少額は数十万人ですよ。日本で最大の少数民族集団といえば、在日コリアンですよね。帰化した人もそうではない人もいますから、確実な数は言えないけれども、7、80万から60万ぐらいですよね。(移民だけで日本の生産年齢人口の減少を補うとすると)毎年この数を入れないとだめだということですね。毎年60万70万入れていくんですよ。10年間で1千万人ぐらい入れないと、日本は維持できないんですね」
田代「少なくとも一定、あるいは人口が増えることを前提にした日本の財政構造ももたないということですね」
岩上「破綻するということですよ。そうなるのなら、腹くくって、人口の2割ぐらい日本民族ではない人を入れて、多国籍国家にならないといけない。今からレイシストは一掃するとか、大和民族第一というような考えは一掃するとか、そういうことをしないと、日本は完全に破綻しますよね」
田代「そうです。人口が減ることを選ぶのなら、財政を根本的に作り変えないといけないわけですよ」
岩上「私は以前、『日本人が消滅する日』『正論』第362―364、366-368号(2002年10月―2003年3月)を書いた時に……」
田代「お忙しいところありがとうございました」
岩上「お読みいただきましてありがとうございます。永井豪という天才漫画家は、『赤いちゃんちゃんこ』という短編を描きました」
田代「あれは本当に素晴らしい。彼はやはり天才です。今描いたら単なる社会派漫画に過ぎないけれども」

▲永井豪(Wikipediaより)
岩上「還暦だから赤いちゃんちゃんこを着て家族に祝われるんだけれども、その翌日にはガソリンかぶらされて焼かれて殺される。60歳定命制ということで。これで年金財政問題から何から何まで解決してしまうという話です」
田代「あれは福祉元年といわれた1975年に描かれていますよね。その時点で今の未来を見据えているんですよね」
岩上「そうです。福祉の果てに長寿になった揚げ句、60歳以上の人はみんな殺してしまうしかないとイメージできたということがすごいと思います。でも、あの漫画の通りに今やなりつつある。このくらいは、みんな、常識として理解しましょう。ありとあらゆる問題がこの中にある」

▲厚労省公表の「人口の年次推移」
田代「もうこれは、すでにファクトだと思うんですね。そのファクトの延長として見えている未来なのですよ。未来は変えられるかもしれないけれども、このモメンタムは相当すごいんですよね。このモメンタムをどう変えるためには、フランス以上に何かをしない限り無理ですよね。子供を産んだら、お母さんに無制限に無条件に1千万円あげるとか、非課税でとかね」
岩上「こういうことは、私たちが言っても誰も聞いてくれないんです。私は20何年前から少子化の問題を書いたり言ったりしていたんですけれども、まあ、反響の薄いこと。もう全然世の中に影響しないんだなと思いました。
今の政府など、非常に大きなエスタブリッシュメントが、固定的なものの考え方をしていて、全然耳に入れる気はない。民主党がスタートした時には、最初から『子供手当は大事、少子化対策は大事』とビルトインされていた。でもこのリベラルな勢力は、弱々しくて結局潰されてしまった。非常に絶望的な状態になって、あとは爆発的に逆行することを安倍政権が猛烈な勢いで破滅に向かって加速するような政策をやっているわけじゃないですか」
田代「あの政策で、日本の子供人口が爆発的に増えるのならいいんですよ。でも現状は違います。今、年間に新生児が生まれる数は、とうとう100万人を割ったんです。1955年に自由民主党が結党して以来、なだらかに落ちています。14歳以下人口の減少が止まらない」
岩上「下げ止まらない。それなのにあろうことか、安倍総理は、国家基本問題研究所(※68)での挨拶で、『安倍政権は人口減少問題を直視して、本格的に取り組む史上初の内閣です』と言っていて、仰天しました。そのあと少子化対策は一切言わないで、ほかの話をし出しました」
田代「でも一つ正直なのは、本当に自由民主党結党以来、少子化問題はいかなる政治的イシューでもなかったんですよ。それを言ったら選挙で負けると思ったんでしょうね」
岩上「そうですね。だから選挙を考えたら少子化対策が争点にならない。誰がどう考えても、これではだめだとならないかな」
田代「不思議ですよね。優秀な官僚がたくさんいるのに。実際には、国立社会保障・人口問題研究所(※69)があるわけですから、将来は見えるわけですけれども、次の選挙のことを考えて、少子化は先延ばししてずっとやってきた結果ですよね。
岩上「理解しがたいと思います。この問題は、まだこれからも話すので、次のテーマに行きたいと思います」
(※66)岸信介(きしのぶすけ):
1896年‐1987年。政治家。山口県生まれ。佐藤栄作の実兄。1941年東条英機内閣の商工大臣。戦後A級戦犯容疑で逮捕され、3年半勾留されるが不起訴となる。保守合同により自由民主党が結成されると、幹事長となる。石橋湛山内閣では外務大臣を務める。1957年には、石橋内閣の総辞職にともない内閣総理大臣に指名される。1960年には、日米安全保障条約改定を強行して退陣する(安保闘争)。引退後も、反共・新台湾、憲法改正論者として大きな力を保持した。
(Wikipedia【URL】http://bit.ly/2DphsZS)
(※67)移民国家を選ぶということを安倍さんはなし崩しにやろうとしているじゃないですか:
政府は2018年の臨時国会で「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」を、具体的な業種など詳細は政省令で定めるとして、十分な審議もないまま強硬に成立させた。政府は5年目までの累計で、最大34万5000人の受け入れを見込んでいる。
(IWJ「最重要ポイントは『ブローカー規制』!! ~11.28日本外国特派員協会主催 『外国人労働者受入れ問題について』 ―外国人技能実習生問題弁護士連絡会 共同代表・指宿昭一弁護士 記者会見 2018.11.28」【URL】https://bit.ly/2MHORBX)
(IWJ「外国人技能実習生との面会を促す国会質問に安倍総理『所管の法務省が対応』と答弁!? 『技能実習生の生の声を聞いて実態を知ってほしい』と当事者・支援者も熱望! ~外国人労働者 野党合同ヒアリング 2018.11.13」【URL】https://iwj.co.jp/wj/open/archives/435615)
(入国管理局「入管法及び法務省設置法改正について」【URL】https://bit.ly/2Tpq8Vp)
(※68)国家基本問題研究所:
公益財団法人国家基本問題研究所(Japan Institute for National Fundamentals)略称「国基研(JINF)」。櫻井よしこが理事長を務める民間シンクタンク。日本国家が直面する基本問題を見つめ直そうとの見地から、設立されたとする。
(国家基本問題研究所【URL】https://jinf.jp/)
(※12)国立社会保障・人口問題研究所:
国立社会保障人口問題研究所。厚生省の人口問題研究所と特殊法人社会保障研究所が統合されて、1996年に設立された。現在は厚生労働省の付属機関。人口・経済・社会保障の関連等について調査研究を行い、福祉国家に関する研究を具体的な政策に結びつけることを目的としている。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2LzEwr8)
異次元金融緩和の失敗については、すでに国立国会図書館の研究者が指摘済み。ということは、すでに日銀もこの政策の失敗に気づいている。小出しにメッセージを送っているのは国民の目くらましのため!?
岩上「『金融緩和の副作用、マイナス金利の結果、本業で行き詰った地方銀行が不正に手を染めている』という話です。不正と言いますか、苦しまぎれに危ないビジネスを始めているということです」
田代「もう危ないところに行かない限り、銀行がもたないわけですよね。国債で回しても利益が出なくなって赤字が出ているわけですよ。どうカバーしようかという問題です」
岩上「赤字が出て収支が悪化している地銀が悲鳴を上げつつある。一つの実例としてサブリースの実態と悲劇ということを挙げます。『うちがお客さんを連れてきますから、お宅の土地で造ったアパートのその後は心配しなくていいですよ。全部面倒を見てあげますから』という商売。ものすごい営業をかけて、土地や金融資産を少し持っている人に『その土地に投資しませんか』と持ちかけて、ローンを組んでしまう」
田代「TVコマーシャルでもあるじゃないですか。『私、土地を持っていないけれども家主になりました』などとね。さすがに最近はそういうCMはなくなったけれども、前はありましたね。あれは背筋が凍りましたよね。そんなことをTVのCMで流していいのかと思いますよね」
岩上「恐ろしい。それはサラ金のCMと変わらないぐらいの話ですね。それで告発本が出ています。先ほど紹介した『大東建託の内幕』ですね。
みんな、やはり老後が心配だから、自分の家は一つ持ちたいけれども、それにプラスしてアパートを持ちたい、賃貸収入で食いたいという気持ちはわかります。内部情報が暴露された大東建託が、こういうアパート経営商法やサブリース商法の代表例で、凄まじいブラック企業と話題になっています。
さらには米国債の運用で巨額の損失も出るんじゃないか。そこに土地バブル崩壊の衝撃が加わるのではないか」
田代「加わったらどうするかですよね」
岩上「前回お話をうかがった時に、その全体像は資料として作ってありましたが、時間がなくて詳しくはうかがえませんでした。その後、田代さんから資料をいただき、われわれも勉強して新たに資料を用意しましたが、金利が上がるということはもうアナウンスされているんですね」
田代「そうです。ペースは隠しているけれども、とにかく金利は上げていくということは、はっきり言っているわけですよね」
岩上「各国も金利を上げるということに追随する方向だということも、もう報じられつつありますよね」
田代「それは、次の金融危機の時に、金利を引き下げる余地を持っていなければならないですから。その時に備えるために、金利をまず上げておかなければならない。そうでないと、下げることはできないわけですよね。
でもアメリカの金利が上がるということは、アメリカ国債の価格は下がっているわけだから、そこで稼ごうと思った日本の銀行、特に地方銀行は、今、ものすごい損失を被っているわけですよね。さらにその上に東京オリンピックバブルがやってくる。前回申し上げたように、今年がピークで、今年の後半はそれが崩れ出して、来年はかなり落ちます。1964年東京オリンピックのデータを見ても、相当に厳しいですよね」
岩上「土地バブルは、1980年代末から90年代頭までに、東京都心部から始まって、それが周辺部に広がり、大阪でも広がり、名古屋でも大都市圏でも広がり、日本全国の地方でも上がったんですよ。うちの親はそれを投資してしまい、大失敗して、人生が破滅しかけたんですけれども、ああいう状態になっていないから、みんな、ピンとこないんじゃないでしょうか。
でも東京の都心だけ見ると、新築物件も中古物件も、あり得ないぐらいの不動産価格になっています。銀座の鳩居堂がよく指標にされますけれども、バブル期のピークを越えたんですね。でも一歩裏側に入ると、そこまで上がっていないんです。一極集中的に上げられている状態。先ほど言ったタワーマンションも、関西ではほとんどないですよ。東京の湾岸部にはもう異常に集中しています」
田代「湾岸と大きな河川に沿って建てられていますよね。どう見ても墓標に見える。あれが墓標に見えないとすると、相当経済学のセンスが悪い人ですよね」
岩上「災害の危険性もあります」
田代「それもあるけれども、あそこに入ったお金はどうなってしまうんだろうかと考えればね」
岩上「早いうちに抜けたほうがいいんじゃないかという気がします」
田代「それに、あんな巨大な超高層の建物を、どう修理するのかと聞きたくなりますね。何十年後にはそういう必要が出てくるわけでしょう」
岩上「ババ抜きのようなものでしょう。マンションの寿命が来て、建て替えという時には価値が暴落してしまうから、その前に転売をしてしまうということ」
田代「そういうことになりますよね。いっせいに転売しようとする時がきますよね」
岩上「みんなが気づいてしまったら遅いから、一部から始まるんですね」
田代「『俺はババを引きたくないから、他人よりも先に売り抜ける』とみんなが思うと、みんなが売り手に回っているから、買い手がいなくなってしまうわけですね」
岩上「そういうことですよ。でもまだ新築ですからね。まだ大丈夫でしょう。あと5年ぐらいは住める。その5年ぐらいの間、ずっと安心していていいのかということは重要ですよね」
田代「日本銀行はさすがに優秀で、表向き、金融緩和は『もう絶対死守します』とおっしゃっているんだけれども、こっそりやっていることが見えてしまうわけですね」

▲出口をコッソリ検討!?
岩上「『出口を検討』。これですよ」
田代「それが冒頭言われたスクープの英語論文です。最初は英語だけで発表して、私も含めてみんながあまりにもわーわー言ったので、あとでこっそり日本語版も出しましたけれども、もう一つの論文は相変わらず英語だけです。それを読み解くと、なるほどと気づくことがある」
岩上「田代さんは、このインタビューの前回と今回の間に、『見つけちゃいましたよ』と教えてくださいました。なんと国立国会図書館の研究者が、堂々と異次元金融緩和の失敗を指摘(※70)しているんですね。これは、国会議員か何かが、いろいろ調べものをしていった上でのことですか」
田代「問い合わせられて答えるのは、ここ(国立国会図書館)の大事な仕事ですよね。見せてもらうと、ものすごいレポートです。たぶん、相次いで同じ質問が来るから、これはもうきちんとレポートして公開しようということになったんですね。非常に立派なことですよね。それでもこれは全部国民の税金で運営しているわけですよ。
先ほど言った『アベノミクスによろしく』は、明石順平さんがこつこつ手作りしたものですが、こちらはきちんと公的機関がしただけあって、非常に素晴らしい内容・文章になっていますね」
岩上「明石さんの仕事の上に田代さんの仕事があり、さらにこの国立国会図書館の調査員の仕事があった」
田代「これは本当に決定版ですよね。しかもこれは日本国が続く限り保存される」

▲国立国会図書館(Wikipediaより)
岩上「日本が続くのかどうかわかりませんけれども。日銀もこのままではアウトだということを言っているんです。皆さん、わかりましたか。アウトなんですよ。皆さんの人生に影響しますからね。
『少子高齢化という人口動態から目を背け続け、金利操作の「リフレ理論」(※71)』をもてあそぶ日銀の詭弁』に迫らなければいけない。日銀も詭弁が続かないと気づいているということですよね」
田代「日本の中でも最高のエリート集団ですから、彼らのしていることを周到に見ると、実はきちんとメッセージになっているわけですね。ただそれを、本当は立派な新聞社が伝えるべきなんですよ。それをしてくれないので、ここで手作りしようということですよね」
岩上「新聞社はするわけがないですね。今や日本に三権分立がなくなって、融解して3本の蝋燭が1本に溶け落ちてしまっている。権力分立していなくても、独裁政権でも、間違った政策でなければいいんですけれども、現実は間違いだらけで、日本は破綻する方向へひた走っている。
そして第四の権力だったはずのマスコミもどろどろと溶けてしまって。何しろ『高プロ』(※72)が通ったあと、安倍総理を囲んで大新聞、大マスコミの幹部と慰労会を行っているんですよ。
『今だけよければいい』という破綻加速政策をしている独裁政権を慰労しているのが日本のマスコミなんですね。真面目に新聞を買ったり、NHKや民放のニュースを信じて見るというほうが本当におかしいです」
(※70)国立国会図書館の研究者が、堂々と異次元金融緩和の失敗を指摘:
近年の日本銀行の金融政策を各種の経済指標等の動きから振り返る。
異次元金融緩和の下では、長期国債や ETF が大規模に買い入れられ、マネタリーベースが大幅に拡大したが、2%の物価目標は実現されていない。
アベノミクスの下での長期にわたる景気回復については、株価の上昇等は見られるものの、好景気の実感に乏しいとの声があり、賃金の引上げ等を通じた消費の拡大や生産性の向上などが必要であると指摘される。
異次元金融緩和は、我が国の財政や金融市場に様々な副作用をもたらしていることが指摘される。今後、金融緩和の出口に向けて、日本銀行の政策運営に対する市場からの信頼を高めていく必要があると考えられる。
(国立国会図書館「No.1007 調査と情報 目で見る異次元金融緩和の成果と課題」2018年5月24日【URL】https://bit.ly/2Badjr4)
(※71)リフレ理論:
緩慢なインフレを継続させることにより、経済の安定成長を図ることができるとするマクロ経済学の理論。リフレ(リフレーション)とは再膨張の意。景気の循環において、デフレーションから抜け出して、通貨供給量(マネーサプライ)を再膨張させることで、深刻なインフレーションになる前段階の安定した景気拡大気をめざす理論である。第2次安倍内閣が掲げる経済政策「アベノミクス」に採用されたことで知られる。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/1UV0DJN)
(※72)高プロ:
高度プロフェッショナル制度。専門職で年収の高い人を労働時間の規制の対象から外す新たな仕組み。年収1075万円以上のアナリスト・研究開発職などの専門職が対象とされる。この制度が適応されると、働き手は残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が一切支払われなくなる。一部からは「残業代ゼロ制度」と批判されている。2019年に施行予定。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2rUbxFA)
40年で人口が50%以上減少する地域が続出するのに、住宅ローン市場が過熱する不思議。不況下で過酷化するローン取り立て!!
岩上「地方銀行が超低金利に苦しんでいるということはあまり伝わっていません。地方の方々の苦しみを、われわれは東京にいて聞いていないのか、それとも『苦しい』と声を上げてはいけないと思って、小声で『苦しい』と言いながらおかしなことに手を出してしまっている状態なのか。そこで、『サブリースをめぐる不正と地獄』という話をしたいと思います。

▲2040年には、ほとんどの地域で人口減少
先ほど、大前提中の大前提で、人口減少になるということを言いました。2040年には、ほとんどの地域で人口減少になります。これは『国土交通省「国土のグランドデザイン2050」(※73)』という資料から引いてきた図です。だからどうせ甘いんですよね。基本は国立社会保障・人口問題研究所が全部出していますから、それを地域別に落とし込んだ図です」
田代「本当はきちんとすべきだと思います。都道府県、市町レベルまで出すべきなんです。でも官庁側は持っているはずです。そうでなければこの地図は作れないですよね」
岩上「ブルーの部分が50%以上減少する地域ですね」
田代「はい。2010年から考えると、40年間で人口が半分以下になるのがブルーですよね」
岩上「すごいですよ。それから黄色が0%以上50%未満減少する地域」
田代「山口県ですね。0%以上50%未満。これも本当はもう一つ正確に言ってほしいんですよね。この前プーチンを接待した温泉の辺りも、もう人口が半分以下になっていますよね」
岩上「そうでしょうね。あとは岩国ぐらいしか人がいない。九州は、福岡の一部」
田代「一部ですね。ここは赤。増加するところです。福岡、熊本の周辺、あとは東京ですよね。でも増えるといっても、高齢者人口がすごく増えるんですね。特に東京はそうですね。ものすごく集中します。
関東、名古屋、大阪は黄色なんですけれども、ここも本当はもっと中身のグラデーションを見せてほしい。特に年齢構成がどうなっているのかということをね。でも言えるのはこれですよね」
岩上「『大都市を除くほとんどの地域で人口が減少する』ということ。そして大都市も老人だらけになってしまう。すると『空き家が増え、住宅建設需要は減少するはず』」
田代「減少するはずですよね。どう考えてもそうですよね。世帯数が増えないですよね」
岩上「ところが、少子化で若年人口が減少しているのに、住宅ローン市場が過熱している。安倍政権下はいろいろな不思議があるんですけれども、七不思議の一つです」
田代「かつては住宅や土地を担保にすれば、銀行は値上がりを見越してその価値以上の金を貸してくれたんですね。でも今は、1990年代の失敗に懲りて、こういうものでは貸したくないというわけですね。一方で銀行の資金調達も苦しくなっている。先ほど言ったように、新しく預金されるよりも、たくさんの預金が引き出されている状態なわけですよね。それで目をつけたのがローン市場なんですよね」
岩上「以前は地方の地場産業、商店、工場など、生産に向かうようなところに融資していた。そうした産業がもうどこにもない。消えてしまっている。そういう中で、貸出先が見つからない。個人といっても人口減少しているし、土地や家はみんな持っているし、苦しい人は外へ出ていってしまうし。子育て世帯が家を持つということもないのに、無理やり貸すということ」
田代「地方銀行がわざわざ東京までやってきて、住宅ローンを販売する。それは長期で借りますよね」
岩上「地方銀行が東京まで来て住宅を貸すんですか!?」
田代「そうですよ。まず、20年、25年、30年というすごい長期ですよね。しかも、当然、貸す相手は、定期的に毎月所得があると見なされている人たちですね。正規雇用に限りますけれどもね」
岩上「非正規は相手にされないという形になるから、数はどんどん絞られていくんですよね」
田代「しかし竹中平蔵先生は『もう正規はやめましょう。全部非正規にしましょう』とおっしゃっているんだから、その時、銀行はどう査定するかですよね」
岩上「できないと思いますけれどもね」
田代「とにかくそういった、かぎカッコつきの『安定』を、もう魅力というよりもそういうシナリオを描かざるを得なくなったわけですよね」
岩上「担保は『その人の人生』というような形ですよね」
田代「資本主義の原則に反していると思うのですが、多くの場合、昔から住宅ローンを組む時に、生命保険に入ることを前提としますよね。あれは要するに、たとえ途中で不幸なことがあって死んでも、絶対にローンは回収するということですよね。だから日本の場合、論理構成がないわけですね。
アメリカだと、例えば失業するとか、勤め先が破綻するとか、そういうことで『住宅ローンの金利も払えなくなりました。どうしましょうか』と言ったら、『家を返してください』ということになります。家を銀行に差し出せば、それ以上借金の催促はないんです。これが論理構成。
日本は完全に履行するんですよ。もう地の果てまでも追いかける。もっとひどいのは、例えば地震や大津波で、家も土地もなくなったのに、それでもローンだけは残るんですね。そういう形にしてしまったんです」
岩上「してしまったというか、なっているんですよね」
田代「銀行には極力リスクはなくて、借りた側にリスクを押しつける。サラリーマンが背負って、人生をかけて返す。

▲建設中の「瑞穂の國記念小學院」(2017年2月15日、IWJ撮影)
やはりこの人たちは、森友問題に納得がいかないはずですよね。自分たちはこんなに命、人生をかけて、何千万円の住宅ローンを返しているのに、ちょっとうまいことすると、何億円という値引きがあるということがね」
岩上「8憶円の値引きで10憶円の土地が手に入って」
田代「しかも実質0円だったということでしょう。それはみんな納得いかない。安倍政権を支持する人の中でも、ほとんどは納得がいかない。
それはさておき、個々の銀行員も業績ノルマがありますから、それを達成するために住宅ローンの営業に行く。昔は、小さい会社へ行って、『御社の技術があれば、こういうビジネスができますよ』とか何とか知恵までつけて、それで『うちが融資しますから、工場を拡張しましょう』ということをしたけれども、今はどこもそんなことに乗ってくれないわけですね。
乗ってくるのは、生産拠点を中国に移したいというような融資です。外国のことになると最近になってようやく動きがあるというけれども、やはりそもそもその事業を評価する能力がないですよ。だから住宅ローン市場に集中せざるを得なくなるんですね。
あとはホテル建設ね。特定のホテル会社に集中しています」
岩上「アパホテルですね。安倍友ばかりということですね」
田代「そうは申しませんが(笑)。そう言っては失礼ですが、あんな非上場の会社にあれほど貸し込むというのも非常に不思議ですよね」
岩上「ものすごい借入金なんじゃないですか?」
田代「うん。でも非上場だからよくわからない。上場企業ではないから開示する義務もないし」
(※73)国土交通省「国土のグランドデザイン」:
国土のグランドデザイン2050。人口減少社会や、巨大災害に対する危機意識を共有し、2050年を見据えた国土づくりの理念・考え方を示すもの。スライドに使用したのは、この資料の冒頭部分の画像。
(国土交通省【URL】https://bit.ly/2CKRCPI (pdf))
人口減少へ向かうことが明らかなのに相続税対策で乱立するアパート!気軽に「サブリース契約」に手を出すと取り返しのつかない事態に追い込まれる危険が!!
田代「とにかくそういうふうに、地方銀行の貸出先が地元ではどんどん減っていきますから、東京に出てきて不動産投資ローンの勧誘を増やす」
岩上「なるほど。(地方銀行の)皆さん、上京しているんですね。個人の住宅ローンが特別に担保なしでも借りられる。人生を、生涯賃金を担保にするというローンですよね、特殊なローン。
しかし二件目からは住宅ローンのようにはならなくて、審査が急に厳しくなるんですよ。うちもここを会社として借りようと思ったら全然だめで、『岩上さんの人生をかけてください』と言われました。だから私は自分の持っている自宅と実家まで担保に入れて、それでどうにか組むことができたんです。『会社として見てください。会社といっても自営業として私がやってきたこともプラスして見てください』と言っても、一切だめなんですよ。事業は全く評価しない」
田代「別段、岩上さんに限ったことではなくて、今、ほとんどの会社がそういう問題に直面していますよね。それくらい日本の銀行が、ある意味では日本経済の見通しに関して、むちゃくちゃに悲観的なわけですよ」
岩上「事業投資ということに関して、『こんな先行き暗い国に事業投資しようとするのはちょっとむちゃなんじゃないの』という感じなんですよね。で、土地、担保があれば、前だったら同額は貸してくれた。あるいはバブル期だったらもっと高かった。倍額、3倍額は貸した。ところが今は、それを割り込んだ額、『あれば一応見るけれども』という形ですね」
田代「でもほとんど貸してくれない」
岩上「担保がなかったらまず話にならない。ところがなぜか、アパート融資で貸出残高(※74)を積み増ししてきた実態が透けて見える。これが不思議なんですけれども」

▲アパート融資に走る地方の金融機関
田代「この不動産コンサルタントの長嶋修(※75)さんがおっしゃっている通りですよね。ところが融資先がなくなったから、このアパート融資に手を出すということになる。そういう不動産業を営んだ経験もない、あるいは不動産業に投資した経験もない地方のお金持ち、だいたい地主ですよね。そういう人を狙う。
この前、実家がある福岡のTV番組に出演した時、(このアパート経営問題が)テーマだったんですね。けっこう福岡市から離れた、私鉄の駅から20分か25分ぐらい歩かないといけない所に、こういうアパート経営があるわけですよ。それは採算が取れないわけですよね。こういう駅から遠くて需要があるとは思えない所でも、アパート建設の営業をしている事例がすぐ見つかりますよ。
もちろん福岡市のど真ん中、特に大濠(おおほり)公園の辺りの価格はすごいです。豪華なマンションもある。それはまだちょっと合理的だけれども、こっち(駅から徒歩20~25分のほう)になってくると、もうわけがわからない」
岩上「そうなんですよ。本当にトラウマが蘇ってくると言いますか、私が90年代のバブル期にソ連へ行ったり帰ったりしていた時、親が銀行に乗せられてしまいまいました。不動産経営をしたいから保証人になってくれないかと言ってきた。
聞いたら、大分の人里離れた不見転(※76)の物件でした。劣化していて。私は見にいかなかったんですけれども、親が半べそで言うし、最後の親孝行と思ってサインしてしまったのが運のつきでした。賃収入で全部賄えるはずだったのが、人が入らなくなって、しかし毎月毎月借金は返さなければいけない。悪名高き住専(※77)の手がけたもので、その後、整理回収機構ですから、鬼のような取り立てだったんですね。それと同じことが、この不況期に行われているというので、驚きます」
田代「そうですよね。地方銀行はもう本当にそういうところに来ています。さらに外国の国債を買うというところまで来てしまっているんです。借り手は能力を超えている上に、貸す側は本当は実情を知っているはずですよね。どこに需要があるかないかということを。そういうことを度外視してやらざるを得なくなっているわけですよね」
岩上「89年、90年は、人口減少も地方の疲弊もピンとこなかったり、そもそも経済全体が上がっていってダーンと落ちるということも想定できなかったり、バブルの崩壊も想定できなかった」
田代「いずれまたV字回復すると思っていたんですね。銀行も地主もそう思っていたのかもしれない」
岩上「94年くらいまでそう言い続けましたからね。ずっと言い続けて、『あ、無理だ』と気がついて、『不良債権処理』と言い始めたのが94年頃ですから」
田代「95年になると住専の問題が出てきて、結局その解決をずっと先延ばししている間に、97年の金融危機が来るわけですよね」
岩上「そういう時代でした。今は時代背景が全然違うのに、同じようなことが起きているということですよね。さらに相続税対策で不動産に手を出すというパターンもあるということですよね。これは、実は政策的に誘導された面もなきにしもあらずですね」
田代「それもあります。相続税に関しては、少し都市仕様的なところがあって、相続税で財産を全部取られるということがある。そういうことでコンサルティングをかけたいという営業もあるわけですよ。
厳密に言うと、日本の場合、自分が住む家は親が建てた家でも、自分がそこに住むのならほとんど税金がかからないですよね。かかるにはかかりますけれども、元の金額からすればあり得ないくらい安いような気がする。もっと取ってもいいような気がするけれども、一方で住まない所に関しては出てくるわけですね」
岩上「不労所得となるようなアパート経営や不動産には厳しい」
田代「問題は、日本の銀行は上物がある土地には融資してくれないということですよね。本当に何もない更地にならないといけない。それが日本で家が残らない理由になっています。更地にすると経済価値が発生するわけですね。『アパートを建ててしまえば、そのほうが相続税が安くなるというスキームがあります』という形で売り込んだということがありますよね」

▲相続税対策でアパートに手を出すと…
岩上「なるほど。『アパートを建設すれば相続税は安くなる』というと、相続する人ではなく、『息子、娘のことが心配だ』と思っている人が、土地が余っていればアパートを作ってしまったほうがいいと思うということなんですよね」
田代「さらに、非正規の従業員に対しては、住宅ローンは出てこないですね。そういう人は今、どんどん増えているわけだけれども。
そうすると、すでに自宅を持っていて、どこかに勤めていて安定した収入を持っている人に対して持ちかけるんですね。住んでいるところがあるんだから、住宅ローンは難しいじゃないですか。そこで、『アパート経営で、将来も長期にわたって安定的な利益を追及しませんか』と。
でも、実はそういう営業をあちこちでかけているから、次々とアパートができてしまうわけですね。
銀行は当然、一番条件のいい案件から進めていきますよね。駅から近いとか、陽当たりがいいとか、いろいろな条件が揃っていて確かに儲かるかもしれない一等地がだんだん消えていって、二等地、三等地に行きますよね。そこではどうするんだろうかということですよね。しかも総人口が減っていく。特に若年人口が減っていくんだから」
岩上「住む人がいないから顧客の取り合いになる」
田代「そう。本当にカニバリズム(※78)で、食い合いになってしまうわけですね」
岩上「本当に経済カニバリズムですね。IWJのスタッフは、いろいろな区内に住んでいる人間が出勤してきますけれども、足立区に住んでいる人が、自分が住んでいるアパートの周り中で、アパートが次から次へとできているそうです。
足立区の私鉄の駅ですから、小ぶりの小さな町。巨大なマンションが建つこともあるけれども、どちらかというと低層の住宅地ですよ。そのあちこちでアパートができている。足立区は23区内では比較的緑が残っているんですね。それが潰されて。『どうしてこんなにアパートが多いんだろう。景気がいいんだろうか』と思っていたそうです。『いやいや、それは過当競争(※79)になって、これから大変なことになるよ』という話をしたんですけれども」
田代「もう一つの問題は、建築資材の高騰があったことです。今、家を鉄筋で建てても、建設会社は儲からないですね。木造の家を建てて売ればまだ儲かる。その話はかなりそれに近いですね。鉄筋ではないでしょう」
岩上「そうですね」
田代「木造とまではいかないけれども、けっこう安い。『これなら利益が出るかもしれない』といいう思惑も入ってきますよね。でも、建設会社は建てて売ってしまえば終わりですけれども、問題は、ローンを貸している人と借りた人ですよね。これはすごく長期の話ですよね。
岩上「はい。大変なことになりますよ。まさに『入り口はお手頃に見えて、実は負担の大きいサブリース契約』。親の代からアパート経営をしていたのなら、『店子との関係はこういうことに気をつけなければいけない』など、いろいろノウハウがある。
ところがアパート経営などしたことがない人は、本当にうまく経営できるかどうか、自分の持っている土地が人を呼び込める土地かどうか、わからないから、少し怖いと思って慎重になっている。もしくは、何もわからないから乗りやすい。そんな状況の中、『大丈夫ですよ』と声をかける人たちがいる。それが『サブリース』という奴なのですね」
田代「土地を持っている人、あるいはお金を借りて土地を買う人でも、とにかく問題なのは、『オーナーはアパート経営の現場には関わらなくてけっこうです。それは全部会社が代行します』ともちかけることです。さらに入居者が減った時も、『家賃収入はちゃんと補填します』と言う。『何もしなくていい。毎月毎月一定額の家賃収入が入ってくる。お客さんを呼び込むのも会社がします』と言われて、『だったらやってみよう。個人でも簡単に始められる』と思ってしまう」
岩上「サラリーマンしながらでもできますものね。管理のことで追われて、店子がトラブル起こすというようなこともたくさんあるわけですよ。そういうことが起こっても大丈夫」

▲エイブル保証 TVCM 2014
田代「最近見なくなったけれども、ちょっと前にTVCMがありましたよね。金持ちそうな二人の男が座って話をしていて、片方は直接アパート経営をしている。雨漏りしているなどと電話が次々入ってきて、もうぐったりしていると、もう片方はサブリースしているから、何もせずに家でコーヒーを飲んで本を読んでいるという。そういう対照を見せて、『サブリースやりましょう』というCMです。
今流していないところを見ると、たぶん、役所かどこかが『ちょっと……』と言ったかもしれない。あのCMは確かに『ほら、こんなに楽でしょう』と言っていました。
でもよく考えてみれば、それでは会社が無限大のリスクを抱えて商売するわけじゃないですか。そんなことはしないですよ。資本主義的企業なんですから。そういったアパート管理会社は、建物の賃貸借契約とサブリース保証の契約期間を別にしているんですね。つまり、賃貸借期間は30年で、保証期間は10年なんですよ。
10年過ぎると、『家賃はそんなに高く取れませんよ』とか、『この辺もたくさんマンションやアパートがあるじゃないですか』とか、『ここはもう10年たって古くなっているけれども、あっちは新築ですよ』とか、そういうことを言い出します。そして『おたくの家賃、下げましょう』と。そうしたら保証する金額も減っていくわけだし、だいたい10年たてば当然老朽化しているわけですから、リフォームなどをしなければいけない。
すると管理業者のほうが強気に出ますよね。『それならいっそのこと、契約をなしにしましょうか』と。『そんなふうにおっしゃるならご自分でしたらどうですか』とね。さらに保証金を変更していく。『もっと大きい保証金を入れてくださいよ。そうでないと、とてもこんな老朽化したものは無理です』と。時間がたてばたつほどそうですよね。20年30年たっていけば」
岩上「アパート経営にはいろいろなトラブルがありますよ。昭和時代に自分で泥臭いアパート経営をしていた大家は、細々とした人間関係を解決するノウハウを蓄積していましたよね。
うちも親が家を建てたあと、まあ日々、すったもんだがあったんですよ。その究極は、火を出されたんです。庭に建てた離れのような木造で、うちも焼失するかもしれないという状態でした。出火元の住人は一人暮らしの男性で、普段から酒癖が悪くてね。当人は死んじゃったんですよ。そうなるともう責任を問えないんです。賠償請求しようにもできなくて、なんと火災保険にも入っていなかったんです。全部丸損です。これは究極に痛い思いですけれども、家賃を溜めた上に夜逃げをされたこともありますし、その汚された部屋を掃除するのも大家です」
田代「しかもご自身がどんどん高齢化していくということを考えれば、向こうは強気になりますよね。だいたい契約更改をする時に、『リニューアルしてください』となりますよね。多くの場合、ここが問題なんです。管理業者が指定する業者でないと、リニューアル工事をしてはいけないんです」
岩上「これがまた一体なんですね」
田代「最初から契約に入っているんですね。そもそも『店子を探すのは大変でしょう』と言っているんだけれども、要するに選択の余地をなくすわけですよね。言い値でするしかなくなってしまうじゃないですか」
岩上「本当は見積もりを相みつで取って、『もう少し安くしなければ』というようになるものですよね」
田代「それはできないわけですよ。簡単に言えば、アパート管理業者が長期的には損をしないという仕組みを作っている。それはそうですよね。そう決まっているわけですよね。別におかしくはないと思う。資本主義ですから」
岩上「徹底的に食いものにする。まあだから、楽をして儲けるということはできないですよ。地主さんも汗水垂らして、アパートを建てたら自分が管理しなければいけないという話ですよね」
田代「そうです。個人経営のマンションなどは、入居する時に必ず大家さんの面接をパスしなければいけないというところがあるじゃないですか。いくら不動産屋が『この人はいい』と言っても、大家さんが『気に入らん』と言って断ってしまうという話がありました。ご自分が管理すればそうなりますよね。『ちょっとこの人怪しいな』とか、『何か受け答えが変だな』とか、そう思ったらもうだめだと言う人もいますよね。
でも、そういうことが面倒くさいから、アパート管理会社が『代行します』と言えば楽ですよね。でも当然その分のコストがかかっていて、管理会社も大変なわけですよ。それをどこかで回収しなければいけないんだから。こういう仕組みになるのは当たり前ですよね」
岩上「だから儲からないようにできているんですよ」
(※74)貸出残高:
貸出金残高のこと。銀行などの機関が、個人や他の機関に貸し出した金銭の総額。一般的には返済された分も含まれる。
(weblio【URL】https://bit.ly/2QjOKfW)
(※75)長嶋修(ながしまおさむ):
1967年(昭和42)東京都生まれ。不動産コンサルタント。(株)さくら事務所会長。国交省・経産省など委員歴任。日本ホームインスペクターズ協会理事長。著書に「不動産格差」など多数。メディア出演、講演実績多数。東洋経済などでコラム連載。業界・政策提言や社会問題全般にも言及するなど、精力的に活動中。IWJでも2017年7月27日岩上安身によるインタビューを行っている。
(Amazon【URL】https://amzn.to/2s550Yu)
(長嶋修公式ホームページ【URL】https://bit.ly/2As17RY)
(IWJ「都心湾岸地域の地価がバブル期以上の上昇を見せる裏で、日本全体はアベノミクスの『異次元緩和』で空き家が急増!? 岩上安身による『不動産格差』著者・長嶋修氏インタビュー 2017.7.27」【URL】https://bit.ly/2R8ZaEM)
(※76)不見転(みずてん):
花札において状況もよく考えずに、手当たり次第に札を出すこと。転じて、後先考えずに物事を行うこと。この発言場合は、物件を自分の目で確認せず、契約してしまうことを指す。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2R2ME9D)
(※77)住専:
住宅金融専門会社の略。1970年代、大手銀行などが出資して相次いで設立した貸金事業。主に個人向けの住宅ローンを手がけた。バブル期に不動産融資に失敗し、8社のうち7社が96年に破綻。6.4兆円の損失の穴埋めとして、母体銀行と住専への貸し手である一般銀行が、それぞれの債権放棄により分担して、農林圭金融機関国の負担能力を超える6850億円の税金を投入した。また回収する見込みのない融資をしたとして、住専大手の幹部が特別背任の疑いで逮捕された。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2s9hi2h)
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2S6N3HX)
(※78)カニバリズム(cannibalism):
人間が人間の肉を食べる行動、または習慣。その語源は、かつて西インド諸島でスペイン人が出会った「カリブ人(Caribs)」という名称に由来する。狭義におけるカニバリズムは、特定の共同体において容認された慣習としての食人をさす。またここから派生したカニバリゼーションという語は、自社の製品やブランド同士が同一市場で競合する状況や、航空機や自動車で、部品を同型機から外して修理に充てることを意味する。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2CQWGAy)
(※79)過当競争:
一般に市場における競争が度を超している状態のこと。特に企業間競争について言われることが多い。また経済学の概念として過当競争を定義することは、いかなる状態が「過当」とするか定かでないため困難となる。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2SzZsAS)
シェアハウス「かぼちゃの馬車」運営会社の破綻した問題で、金融庁は資金を融資していたスルガ銀行に、書類改竄の上融資した疑いで立ち入り検査を実施した。健全名門銀行でさえ逃れられなかった蹉跌
岩上「次は、『サブリースの闇~シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社の破綻とスルガ銀行(※80)の蹉跌』という話をうかがいたいと思います」
田代「これは驚きましたね。名前がすごいですよね。『かぼちゃの馬車』。童話の『シンデレラ』の馬車でしょう。豪華な馬車になっているけれども、魔法がとければただのかぼちゃだったという話ですね。『こういう名前をつけるか』と思いますよね。最初から手のうちを明かしているようなものじゃないですか。
運営会社の『スマートデイズ』が破綻したんですね。賢いね(笑)。シェアハウスを建てるためのお金をどこから出したかというと、スルガ銀行です。こんな金融庁が太鼓判を押した立派な銀行がこういうことをしていた。これは驚きましたね」

▲サブリースの闇~ シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社の破綻とスルガ銀行の蹉跌
岩上「スルガ銀行といえば、80年から90年のバブル期に、財テクに一切手を出さなかった、不良債権を抱えなかった、健全系の銀行です」
田代「そこでさえもこういうことをしてしまったわけです。しかも内部文書を改竄した。預金通帳の残額を改竄した。びっくりしますよね。そして無理矢理、ただのサラリーマンに億円単位のお金を貸してしまったわけですね」
岩上「シェアハウスというぐらいですから、複数の人と住めるということなんですか?」
田代「アパートとは違うんです。アパートだと個室になっているわけでしょう。そうではなくて、一つの家をシェアして住むという形ですよね。建てて儲かる場合もあります。駅に近いなどの条件があれば。
当然、おいしいところは最初にやってしまうんです。あとでそうでもない所もこの仕組みでどんどん増やしていったわけですね。貸し込んだわけですよ。これは驚きですね。あの狂乱バブル期でさえ、財テクに手を出さずに健全経営を続けたスルガ銀行も、ここに行かざるを得なかったというぐらい、今、地方銀行の経営は苦しいわけですね」
スルガ銀行事件の背景〜安倍政権が誕生し、アベノミクスによる異次元金融緩和以降、劇的に悪化した金融機関の経営現状!預金通帳の数字の操作は偽金作りに等しい!
岩上「IWJの本社の建物は、城南信用金庫ですら(※81)貸してくれなかったですからね。最後の最後、担保を二つ入れてスルガ銀行に貸してもらったんです。でもすごく高い金利で、それでも感謝しているんです。借りられなかったらスタートできなかったから」
田代「その時期にはまだ、『展望のある事業であれば貸しましょう』という状態だったんですね。今はもう展望はない」
岩上「数年の間に、奈落に向かって転げ落ちているという感じですよね」
田代「だから、この数年に何が起きたかということを考えればいいわけですよ」
岩上「数年前というと、民主党政権がひっくり返って安倍政権になったじゃないですか」
田代「何ごとも作用と副作用があるから、異次元金融緩和をした以上、今までなかったような副作用が生ずるはずなんです。こんな名門銀行がこういうことをした。別にスルガ銀行を個別に批判する気持ちもないし、勤めている人たちをどうこう言うのではなくて、そうしないと生き延びられないということにしてしまったわけですね。異次元金融緩和という激烈なことをすれば、どこかに副作用が生じますよね」
岩上「もう一度復習として聞きたいんですけれども、異次元金融緩和、超低金利、マイナス金利まで行った。これは普通の金融業では儲けられませんよね?」
田代「預金を集めて、預金金利も高くして事業に貸して、その差額で利益を出すということができなくなった。先ほどお見せしたグラフの通りですよね。これだけ低金利になってしまうと、本業で稼ぐ余地というのはほとんどないわけですよ。そうはいっても、国債で運用しても全く利益が出ない。赤が出てしまう。何か別のことをしなければいけないというので、ここまで来てしまったわけですよね。
毎日新聞の記事によると、スマートデイズは販売代理店を介し、ほとんどの購入者に横浜市内のスルガ銀行支店で融資を受けるように指示していた。だから金融庁は、スルガ銀行の誰かが作った仕組みだと見ていた。
怖いのは、預金残高を水増しした書類が行内で使われたということですよ。実は預金通帳の残高はお金そのものなんですよね。世の中で流通しているお金のうち、キャッシュはほんの一部で、ほとんどは預金なんですよ。企業間の取引もそうでしょう。預金通帳で金額が動いているだけですね。だからこれを改竄してしまったら、それは偽金作りになってしまうんですよ」

▲預金残高を水増しして審査を通していた!?
岩上「なるほど。これは偽金作りに等しいんだ」
田代「論理的には一緒ですよ。それを絶対しないというのが銀行の銀行たる所以です。そうでなければ、銀行は自分の首を締めてしまうわけですよ」
岩上「で、これ、預金残高を水増ししなければいけなかったのは、その人の信用を大きく見せるためということですよね」
田代「例えば留学する時に、『預金残高証明見せろ』と言われたら、家族の預金をいったん全部集めてふくらませて預金残高証明を取るじゃないですか。
なぜかというと預金残高を改竄できないからでしょう。だからそういう苦肉の策があるわけですよね。でも改竄した。どうしてもこの審査を通したかったわけですよね」
岩上「モラルハザードがもうここまできてしまったということですね」
田代「でもそれは、もう名門の銀行でさえ利益が出ないということですよね。この異常なまでの超低金利を続けていれば」
岩上「あのバブルを耐え切ったスルガですら、生き残れない状態なんですね。すごいな」
田代「やはり2年と限ったものを5年やればこうなりますよね」
岩上「やはり異次元金融緩和の副作用はすごいものなんですね」
田代「さらに言うと、スルガ銀行のような極めて著名な名門銀行だから記事になっているわけでしょう。もっと名もない地方銀行に関しては、何が起きているかもわからないですよ。
シェアハウスのオーナーらの年収は約700万円程度だったんですね。そういうサラリーマンに1億円を融資していた。年収の何倍ですか、何年分ですかと聞きたくなりますよね」

▲年収700万円の顧客に1億円融資
岩上「すごい。これはバブル期でもなかったんじゃないかな。バブル期はやはり担保で取っていた。土地は上がりましたし、土地を持っていなかったら貸し込みませんでしたよ。今や土地はもうデフレ状態だしね」
田代「そうですよね。14年分の年収を貸すなんてあり得ないですよね」
岩上「あり得ないですよ。しかもあの頃はまだ終身雇用制で守られていたんですよ」
田代「今はそれも怪しい」
岩上「年功賃金で上がっていったんですよ。怪しいどころか事実上ないじゃないですか。それに巨大な会社が60年定年制だったのが、今、どんどん定年が繰り上がっていて、私の身近な人が勤めていた日本を代表する有名なメーカーでは、60歳定年制だったのが55歳になって、今度47歳になるらしいですよ」
田代「でも見かけ上は60歳までいられたとしても、要するに役職定年ですね。まず役職を全部外されていく」
岩上「そうです。そして一回清算して、『あとは契約社員になってもいいよ。その代わり給料は1/3でね』というような状態になるわけですね。まあ出世組は役員か何かになるかもしれないけれども」
田代「また、勤め先の企業そのものが消滅するかもしれない。あるいは買収されて外国企業の傘下に入ってしまうなど。例えばワールドカップでも、フィールドから日本企業の広告が消えたといわれています。
でも日本vsポーランド戦で、突然、『レグザ』の看板が出たんです。それで一部の人は『やはり日本はすごいぞ』と言っていた。それは違うんです。中国のハイセンス(※3)が東芝のレグザブランドを買い取ってしまったんですよ。160億円ぐらいで。でも日本人が見る時には、ちゃんと日本語で『レグザ』と書いてあるんです」
岩上「すごいな。そこまで配慮している。でも実はもう中国企業になってしまった。ハイセンスというのは中国名ですよね」
田代「中国の有名なTV会社です」
岩上「ワールドカップというのは、大きなスポンサーがつくスポーツの1位であることは間違いないですけれども、出場国ではない中国が圧倒的なスポンサーなんですよね」
田代「東芝の白物家電も、とっくに中国のメーデー(※83)が買収しています。『美的』と書く会社です。そんなことになっているから、もう終身雇用は『一睡の夢』だったわけですよ。それを前提にしているわけでしょう。
通帳や残高証明の改竄を黙認したということは、金融論的にはあり得ないことです。しかも高額融資と抱き合わせで行った。ここがポイントですよね。無担保ローンとか定期預金とか、金融商品をばっと売りつけたわけですね。
シェアハウス業者のスキームに乗っているようで、やはり銀行のほうが知恵も力もあって、そこに自分がもともと売り込みたかったものも乗せていく」
岩上「何重にも食い物にする感じですね」
「ノルマ」は元々はロシア語!計画経済のソ連で用いられていた!ソ連崩壊のミニミニ版が日本各地で起きつつある!?会社の承諾なしに死んだら損害賠償請求されるかもしれない鬼過ぎる未来!?
田代「個人に1億円を貸し付け、プラスαで抱き合わせ販売可能なシェアハウス案件。これでノルマ達成ですよね。『ノルマ』はロシア語じゃないですか」
岩上「そうらしいですね。シベリア抑留の時ですね」
田代「抑留組の人が帰ってきて、日本企業に植え込んだらしいんですよね」
岩上「計画経済化の下できちんとノルマを達成しなければいけないので、『ノルマ、ノルマ』と兵隊レベルで頭に叩き込まれて強制労働させられていましたからね」
田代「そうです。でも、そのノルマ制を貫いたソ連がどうなったかを見ればわかります。あちこちでソ連崩壊のミニミニ版が起きるわけですよ。マーケットの状況とは無関係にノルマを決めて、『絶対達成してこい』と言うわけでしょう。場合によっては、従業員個人がサラ金から金を借りてきて、自分で契約を作るということも起きるじゃないですか」
岩上「しかも高プロなんてものが通ってしまったあとには、労働時間の制限なく、残業代が支払われない、そういう社会になっていく。それが違法ではなくなる」
田代「そもそも労務管理をしていないから、勤務時間もわからない」
岩上「ものすごくハードな勤務の果てに死んだら過労死だけれども、過労死という概念が消えてしまうので、会社の責任は問われない」
田代「それどころか、いきなり会社の承諾なしに死んだから、損害賠償を要求されるかもしれない」
岩上「(笑)本当に鬼過ぎるんですけれども。『承諾なしに死ぬ』って何ですか。ひどすぎる。自殺の場合は特にそうでしょうね」
田代「芸能人がそうでしょう。公演の予定があるのにぽっくり死んでしまったら、当然損害賠償請求がありますよね」
岩上「免責はないんですか」
田代「契約次第だろうけれども、要するに『高度プロフェッショナル』というのは、そういったタレントですよね。大変ですよ、それは。
一つ確実に言えるのは、そういうことがどんどん起きるということです。二件目のシェアハウスも破産しました。ゴールデンゲインという会社です。すごい名前ですね」
岩上「黄金をゲットする。5月22日に破産。スルガ銀行は、5月15日に『シェアハウス関連融資問題』に関する経過報告を公表したということです」

▲2件目のシェアハウス会社倒産
田代「物件の所有者に購入資金を融資していたのがスルガ銀行だった。融資金額はなんと2035億円。顧客数では1258人だから、一人当たり1億円を超えていますよね。ばらつきはあるだろうけれども」
岩上「すごいな。2億ぐらい貸しているわけですね」
田代「破産した2社以外にも、自己資本残高を証明する通帳の偽造・改竄が行われたケースがあったといいます。これはある意味では、日本の資本主義の最大の危機ですよ。銀行にとって預金というのは借金なんですよ。債務なんですよ。それを改竄するというのはすごいことですね」
シェアハウス会社倒産は日本版サブプライムローン問題の端緒か!?地方銀行の破綻はメガバンクの破綻へとつながる!日本の資本主義の正真正銘の危機!!
岩上「これは日本におけるサブプライムローンじゃないですか。今までは安心して、余裕のある所得、資産、担保がある人に貸していた。つまりプライム(※84)な人に貸していた。それでは(ノルマ達成に)間に合わないから、サブプライム、つまり信用度の落ちる、稼ぎが少ない、あるいは稼ぐだけで資産を持っていない中間以下の労働者に貸し付ける」
田代「もっと言えば、まだ移民したてで、英語も満足に読み書きできない人に、『とにかくうちが金を貸す。3年間全く返さなくていい。3年経ったら返してくれ』と持ちかける」
岩上「『右肩上がりだから大丈夫だ』と。借りる側もビビりますよね」
田代「住宅が上がる一方だから、その時収入がなければ、融資が来れば、どーんと儲かると」
岩上「サブプライムローンの記事などいろいろ調べると、大きなストーリーしか書いていないんですけれども、もっと細部のディテイルのストーリーだと、貸し込んだ会社のトップセールスマンたちは『改竄していた』と書いてあるんですよ。一人一人の信用を上げる。そっくりなんですよ」
田代「でもアメリカでは、裁判で有罪になったのは借りた人なんですよ」
岩上「そうなんですか!?」
田代「改竄しようと何しようと、最後は本人が承諾してサインしているからということです。『これが私の残高証明で間違いありません』と書かされているわけでしょう。実は貸した側の、例えばリーマン・ブラザーズのような会社からは、誰も逮捕されていないのです。あくまで借りた人たちが刑務所に入るわけです」
岩上「銀行はずるいな。自己破産に追い込まれた人たちが刑務所行きということになってしまうんですか?」
田代「そうなってしまいますよね。たぶん、とても優秀な人たちが計画書を作ったはずですよ。絶対自分たちにリスクが発生しないように」
岩上「本人に『自分にはこれだけの残高証明があります』と、偽造で作らせておいて、サインして、『われわれは感知していない』と言ったら、勝てないですね。会社側は有能な弁護士を連れてこられるけれども、破産した個人、しかももともとは貧しい労働者階級に、そんな弁護士は連れてこられない」
田代「そう。しかもアメリカの弁護士は、優秀になればなるほど、ものすごい手付金を要求しますよね。だからもう勝ちようがないですよね」
岩上「この末端の具体的な事実が、非常にサブプライムローンに似ているということは、同等の問題が、マクロレベルで日本発で発生する可能性があるという兆しではないかという気がしますね」
田代「もともと日本の金融体系は、地方銀行が預金を集めて、それを都市銀行に運用してもらうようになっています。そして都市銀行はそれを運用して、運用益の上澄みを取っていくという形だったわけだけれども、今は地方銀行もどんどん新規の預金が減っていますよね。人口が劇的に減っているんだから」
岩上「当然ですね。預けていても金利がつかないですしね」
田代「そうなるとどうするかと。今度はメガバンクも、『うちだって困っているんだ。もう持ち込まれても困る』となりますよね。そうするとやはり危ない橋を渡らないといけなくなってしまいますよね」
岩上「うわあ、これは日本の経済が、アベノミクスのこの数年の間に、ものすごい勢いで腐り始めたということ」
田代「これは本当に、正真正銘、日本の資本主義の決定的な危機的事態ですよね。銀行が預金通帳を改竄するとなったら、預金通帳の金額は誰が信じればいいんですか」
岩上「信じられないですね。でも財務省が公文書を改竄しちゃう国ですからね(笑)。ひどい。冗談抜きにものすごいことになっています」
田代「銀行とは、結局建物ではなく、預金通帳及び融資契約書の集まりなんですよ」
岩上「そしてそれを厳格に管理する『信用』というところにあるわけですね。『盗んだりしませんよ。ごまかしたりしませんよ』という」
田代「でも考えてみると、預金通帳は複本がないですよね」
岩上「えっ」
田代「預金通帳は一つしかないじゃないですか。契約書はそういう勝手な改竄を防ぐために、二つ作って両方が保管するじゃないですか。それに割印をつけて、正本と複本は同じものだという証明をするわけでしょう。
でも預金通帳はそういうことはしたことないです。なぜかというと、銀行がこんなことをするとは思わなかったからです。でもそれは、『銀行が倫理的にひどい』という問題だけではなくて、これほどの名門銀行がここまで追い込まれたということのほうが重大なことですよね」
岩上「大変なことです」
(※80)スルガ銀行:
スルガ銀行株式会社。静岡県沼津市が本店の地方銀行。1895年(明治28)設立。(2018年9月8日時点で)全国130超の支店を持ち、預金残高は約3.9兆円で地銀中位規模。高金利の個人向けローンに注力し、業界でも異例の高収益となり、行員は大手行並みの高給、岡野光喜会長は2億円の高額報酬で知られた。
融資していた女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが破綻したことをきっかけに、融資のための数々の不正が内部調査で発覚した。
2018年5月15日に米山明宏社長が発表した概要では、融資残高は1258人分、2035億円。営業部門の相当数の社員により、審査を通りやすくするための通帳残高の改竄や、過剰融資をごまかすための二重契約書などの不正な手口が行われていたという。
5月22日には、「スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団」から刑事告発を受けている。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2GTRH7P)
(「スルガ銀行は、一体どこで道を間違えたのか」東洋経済オンライン、2018年5月31日【URL】https://bit.ly/2Ulh5VN)
(※81)城南信金ですら:
城南信用金庫は東京都品川区に本店を置く大手信用金庫で、みずほ銀行と提携関係にある。設立以来、2001年に任意合併で京都中央信用金庫ができるまで、全国の信金で預金量・貸出金量ともに1位を継続。2017年3月末時点で預金量・貸出量は全国2位。
2011年(平成23)4月1日、「原発に頼らない安心できる社会へ」というキャンペーンを開始。
IWJは2013年2月7日に当時の城南信用金庫の理事長だった吉原毅氏に対し、岩上安身によるインタビューを行っている。
またIWJは2017年5月20日に行われた、新宿区議会議員の三雲崇正弁護士と、城南信金の吉原毅相談役が講師として登壇する「山田正彦の炉端政治塾」を、配信している。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2M6fmQO)
(城南信用金庫【URL】http://bit.ly/2T5EpXr)
(IWJ「『金融とは健全な未来を作ること』拝金主義に陥った現代社会の問題や脱原発への想いを語る~岩上安身による城南信用金庫・吉原毅理事長インタビュー 2013.2.7」【URL】https://bit.ly/2NqyU3h)
(IWJ「『電力事業も農業だ!?』ソーラーシェアリングの可能性を城南信金吉原氏が講演!!~「原発ムラのせいで日本の経済力は大きなピンチに立っている!!」―山田正彦の炉端政治塾 2017.5.20」【URL】https://bit.ly/2BVLW3I)
(※82)中国の「ハイセンス」:
ハイセンスグループ(海信集団有限公司)。1969年に誕生した中国発の超大型電子情報産業グループ。海信電器と海信科龍電器の2つのグループ企業で構成されている。
「最高の技術、最高の品質、最高のサービスをもってグローバルブランドを創造する」を経営理念に、最新の通信技術と人工知能システム、デジタル・マルチメディア技術および家電、通信、不動産などの分野を網羅した多角化経営を確立。「海信Hisense」「科龍Kelon」「容声Ronshen」「東芝テレビTOSHIBA」など多くの商標を持つ。
東芝は2018年に映像事業「東芝映像ソリューション」の株式の95%をハイセンスグループに譲渡した。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2s8aXUJ)
(ハイセンスジャパン株式会社【URL】https://bit.ly/2F3R4GU)
(※83)中国の「メーデー」:
美的集団。1968年創業。中国の家電メーカー・グループ。エアコン、冷蔵庫、電子レンジなどの生活家電を製造販売している。日本国内では「びてきしゅうだん」「ミデアグループ」「マイディアグループ」と呼称が3つに分かれていて統一されていない。
1993年深セン証券取引所に上場。2016年6月30日、東芝の創業以来の基幹事業である白物家電事業の買収を完了した。
(Wikipedia【URL】https://bit.ly/2RatbnA)
(日本美的株式会社【URL】http://midea-japan.com/)
(※84)プライム:
1.最も重要であること。最も上等であること。2.一般に高所得者をいう。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2CPqmiP)
ブラック企業大東建託に見る犯罪まがいの闇。これもただの事件と捉えるのではなくアベノミクスの副作用と見るべき
岩上「一つ資料を紹介します。悪質サブリース業者の一例なんですけれども、『いい部屋ネット』でおなじみの『大東建託・営業マンの勤務実態』というものです。先ほど紹介した『週刊金曜日』の記事で、たぶん続編の下ですね。『大東建託の闇を追う 下』すごいですよ。キャッチコピーが『窃盗、放火、ハンマーで殴打 顧客を襲った現役社員の凶行』」

▲悪質サブリース業者の一例 「いい部屋ネット」大東建託・営業マンの勤務実態
田代「いや、すごい。ただやはり、これはすごくエネルギーがかかることだから、ここまで追い込まれたということがすごいですよね」
岩上「そうです。追い込まれてしまったんですね。もともとの本を書いたのは三宅勝久さんですが、これを書いて、大東建託から内容証明をもらっているそうです。大東建託はとんでもないブラック会社でしょうけれども、それでも訴状を送って来る前に内容証明を送ってきたんですから、まだ橋下徹よりましですよ(笑)(※85)。
橋下徹は、何も言わずにいきなり訴状を送りつけてきました。まず彼は言論人なんだから、言論対言論で言うべきだし、何の抗議も削除要請も謝罪の要求も一切ない。最低限、内容証明を送って、『これでもし削除しないのなら、1週間以内に本訴を起こす』と言ってくるのが普通じゃないですか。『それが通常だ』と、こちらが当たり前のことを書いたら、『そんなものは荒唐無稽』だって。もうびっくりしました。
そこをよく考えた上で大東建託のことを考えてみたいと思います。内幕本の中に書いてあることのごく一部ですけれども。『8時から深夜まで、毎日15時間以上の長時間勤務が常態化』。『会社は社員にPHSを所持させて常に行動を検知。外回り中でも家に立ち寄ることができない』。『少し寝たいな』などと思っても絶対だめだということです」
田代「たぶんPHSにGPSが入っていて、会社がそれを見られる仕組みなんでしょうね」
岩上「それから『建築営業の社員はたいてい1年以内で辞めてしまうため、3年いればベテランと呼ばれる』。『5年間勤めた営業社員が2007年、ついに自殺に追い込まれた』。
『大東建託静岡県藤枝支店・営業マン自殺事件』。大東建託藤枝支店の営業マン・山坂浩二さん(仮名)が、廃業した旅館の跡地にアパートと顧客Aさんの自宅用一戸建てを建てた案件で、無事契約を交わしたあとに問題が発生。自宅一戸建てに対して、金融機関が融資を断ったため山坂さんは再提案したけれども、顧客Aさんの負担する自己資金が770万円増えたんだそうです。解約を求める顧客と、キャンセルを拒否する会社の間で山坂さんは板挟みになってしまった。そして770万円のうち、360万円の肩代わりを会社から強制された。それで、山坂さんは、2007年10月4日に自殺した。享年42歳。これはいくらなんでもむちゃすぎませんか。
高度成長期でも、バブル期でも、それ以降の不況期でも、契約営業マンが売り上げ達成しないからといって、売れなかった商品を買い取れなんて、そんな残酷な話ないですよ。360万円なんて、この人の年収がいくらか知りませんけれども、それと変わらないと思うんですよ。それを会社から強制されたら、それはもう行き場がないと思うんですよね」

▲内幕本が告発する大東建託静岡県藤枝支店・営業マン自死事件
田代「ものすごい条件だったんでしょうね」
岩上「日頃厳しく管理されているから、こんなことを言われても『冗談じゃないよ。そんなもの払えるか』と言えないんでしょうか。法テラス(※86)でも行けばいいと思うんですけれども、そういう頭にならなかったんじゃないですかね」
田代「この日付を見ると、2007年10月4日ですが、この11ヵ月11日後に、リーマン・ブラザーズが吹き飛ぶんですよね。世界中でこういう現象が起きたということがわかります
岩上「このあと、もっと悪化しているという気がするんですよ。世界的に不況になるから、ブラック企業はもっと残酷なことをやり出す。最近では、とうとう顧客に暴力を振るうとか、殺人まで起こすとか、そういうレベルまで来てしまっているという話ですね。この案件はこの案件で、また後ほど詳しくうかがいたいと思います。
いずれにしてもこれは、巨視的に見た時に、ただの事件ものとして見るのではなくて、アベノミクスの副作用と見なければいけないということですね」
田代「まあ、そういうことです。黒田総裁が、異次元金融緩和を2年と短期決戦でおっしゃったのを、ずるずると引き伸ばされているわけじゃないですか」
岩上「その結果、こんなところまで来てしまったという話ですね」
(※85)まだ橋下徹よりマシですよ:
橋下徹元大阪府知事は岩上安身の削除済みリツイートを名誉棄損で訴えている。IWJでは記者会見や裁判報告集会などの詳細を特集を組んで報告している。
岩上安身はこの裁判でスラップ訴訟について言及。スラップ訴訟については、ジャーナリストの烏賀陽弘道氏にインタビューを行っている。
(IWJ特集「ネットにおける言論の自由を守る! 岩上安身が橋下徹氏からのSLAPP訴訟に応訴で立ち向かう!」【URL】https://bit.ly/2phE5H5)
(IWJ「スラップ訴訟!LEGAL TERRORISMの危険性を訴える!岩上安身によるジャーナリスト烏賀陽弘道氏インタビュー・パート1 2018.4.9」【URL】https://bit.ly/2POG1ao)
(※86)法テラス:
日本司法支援センターの愛称。2006年設立。総合法律支援に関する業務を迅速かつ適正に行うことを目的とした法人。
全国どこでも法的トラブルの解決に必要な情報やサービスを受けることができる社会の現実を目指し、総合法律支援法にもとづき設立された。民事、刑事を問わず、あらゆる法的な悩みを受け付けている。
(コトバンク【URL】https://bit.ly/2C0AAeN)
(法テラス【URL】https://www.houterasu.or.jp/)
需要が縮小しているのに節税対策としてアパートが急増している異常!他方で全国で急増する空き家!止められない「共有地の悲劇」の果てに日本はどうなるか!?
岩上「それでは、『アパートが急増している』一方で『急増する空き家』ということの背景を考えてみましょう。
人口減少下、住宅需要が縮小しているのに、節税対策としてアパートが急増しているというのですが、そのこと自体が異常だとしか言えないですよね」
田代「要は、長期における見通しがどうなっているのかと聞きたいわけですよね」

▲人口減少下、住宅需要が縮小しているのに、節税対策としてアパートが急増!
岩上「住宅需要を全く考慮せず、なんと毎年90万戸程度の新築住宅が量産されているそうです。その上ものすごい空き家があるんですね」
田代「そう、すでにね」
岩上「リフォームで十分に住めるんですけれども。2015年には相続税の増税が行われて、『一定規模の土地にアパートなどの住宅を建てることで、土地の評価額が大きく減損されるため、節税対策としてアパート建設が急増』したんですね。
『需要と関係なく、節税のためにアパートが建設される』。業者は新しい家を作り出さないと回っていかないですから、『(人口減で需要減とか)そんなことはもう知ったこっちゃない』ということで、周辺地域の空き家が増えようがどうしようが、賃料水準がるデフレ効果が生じるような新しいアパート建設を、野放図にやってしまっているということですね」
田代「経済学で言う『共有地の悲劇』ですよね。例えば村の中に共有地があって、そこに自分の飼っている牛などを連れていって、草を食べさせることがコミュニティーのメンバーの権利だとします。
毎日、1つの農家が1頭の牛を飼っていて、共有地に連れて行く分にはよかったわけですよ。でももし2頭連れていく農家が出てくると、別に料金請求されるわけではないから、『あそこは2頭連れていっている。俺も2頭にしてみよう』と、みんなが連れていってしまうわけじゃないですか。すると生態系の上で草が循環して成長できるという限界を超えて、全くの荒れ地になってしまう。それが『共有地の悲劇』という現象です。
それと一緒ですよね。結果としては賃料が減っていくということですよね。グラフを見てください。東京23区と、東京の市部、武蔵野市などですね。それから神奈川県、埼玉県、千葉県、首都圏のアパート空室率が上がっています。しかも、木造と軽量鉄筋、コンクリート造りの立派なものではなく、もう少し安いほうを見ると、2015年の前半から急速に上がっています」
2015年の相続税増税が招いたアパート空室率の急上昇!安倍政権の成長戦略の政策の失敗!神奈川県はすでに空室率4割に!
岩上「2015年、相続税増税の年ですね」
田代「需要を度外視してどんどんアパートが作られたのがわかりますよね。特に神奈川県がすごく上がっていますよね。埼玉県はそんなに伸びていないですけれども、千葉県、東京23区がこうなっていますよね」
岩上「郊外で人気のある所ですよね」
田代「興味深いのは、東京23区は最近少し空室率が下がっていますよね。これはいかに人口の東京への移動が激しいかということですよね。つまり神奈川や埼玉から、相当に東京に人口が移動しているわけですよね。首都圏でさえ、こんなことになっている。地方はどうなっているかということですね」
岩上「相続税を増税したということは、どちらかというと富裕層に手厚い安倍政権であっても、そこを厳しくして今の世代のうちに金を使ってくれということですね。