前回の「岩上安身のIWJ特報!」、「岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏インタビュー(前編)」で語られた「日本銀行総裁人事の重要性」。アベノミクスの発動に伴い黒田東彦(はるひこ)氏が日銀総裁に就任したが、財務省あるいは大蔵省出身者が日銀総裁に連続就任するのは実に130年ぶりである。
現在の貨幣には金などの担保が何もなく、日本銀行の信用だけにもとづいて管理している。日本は日銀の独立性、日本円の信認を維持するために、財務省(大蔵省)出身者の日銀総裁への連続就任を130年封印してきた。日本銀行の信用が失墜すれば当然、日本円の信認も失墜する。日本銀行は政府と対等でいなければ信認は維持できないのである。
アベノミクスはそのタブーを破り、日銀を政権のコントロール下においてしまって金融緩和をしていると国内外にアナウンスしているようなものである。
そしてここに一つのスクープがある。日銀が発表した「わが国の自然利子率―DSGEモデルにもとづく水準の計測と決定要因の識別―」という論文である。この論文は英語と日本語で発表されたが、英語版は2018年3月に、日本語版は同年6月に発表された。日本人には知られたくない副作用があるから、日本語版を3ヶ月遅れで発表したのではないか、との疑いがわく。
「異次元金融緩和」というバズーカが全く効かない。「2年で物価上昇2%を達成」という目標は六度も延ばされ、いつまでもデフレ脱却ができない。アベノミクスは明らかに失敗である。しかし、失敗を認めずに、実はその裏で金融緩和の出口を模索しているという。表向きでは、政府はアベノミクスの「成功」を自画自賛し、景気の上昇を喧伝しているが、水面下ではひっそりと方向転換をはかる、というのは、実は日本経済はかなりの危機に直面しているのではないか。
金融緩和の副作用として国債暴落の恐れがあるが、一方で、マイナス金利で行きづまった地方銀行の苦しまぎれの不正疑惑、ブラック企業の台頭、少子高齢化の実態とはかけ離れた不動産操作が頻繁に起こっている。こうした事実に対して、国民はいまだに反応が鈍いのではないか。
前回に引き続き、日銀の詭弁、さらにアベノミクスの失敗の事実について、エコノミストの田代秀敏氏に問題の核心を解説していただく。