「今、北朝鮮と対話のできる人は猪木先生しかいないと思います。その猪木先生が、そういう対話の中で、訪朝するということがもし実現するならば、私は来いと言われればいつでもご一緒したいと思っています」
自由党代表の小沢一郎氏は、アントニオ猪木参議院議員とともに訪朝し、拉致問題や経済問題の解決に向け、北朝鮮側と話し合う用意があることを明言した。猪木議員は1994年以来30回以上訪朝し、朝鮮労働党幹部や政府要人とも関係を築いている。
2019年2月21日、東京都内で無所属のアントニオ猪木参議院議員が記者会見を行い、国民民主党と自由党の統一会派に合流することを発表した。会見には玉木雄一郎・国民民主党代表と、小沢一郎・自由党代表も同席した。
玉木代表は猪木議員の会派入りについて、「拉致、核、ミサイル、こういった北朝鮮との問題についても、これまでのアントニオ猪木先生の知見、経験、こういったものを生かしていただいて、少しでも前に進んでいけるように、その力を十分に発揮していただければと期待しているところでございます」と語った。これは、「自民党に代わるもう一つの選択肢」となることを目指している同会派にとって、安倍政権のもとで膠着状態を続ける拉致問題解決への大きなアドバンテージを期待しての発言だろう。
小沢代表は記者から猪木議員へ同会派入りをすすめた理由を聞かれ、以下のように答えた。
「日韓関係、日中関係、そして特に日朝関係、まったく政府は対話の窓口さえありません。そして日本政府・安倍政権は、米朝であれ、米韓であれ、米中であれ、世界中で何が進行していても、1人、まったく蚊帳の外。そういうことでは、日本の将来を考えたときは、いけないと、危ういと。
そういう意味で、特に北朝鮮との対話の窓口をきちっと持っておられる猪木先生が参加していただくということは、政府ができなければ、野党としてのもし役割が可能であれば、そういう1つの突破口ができたら、なおいいのではないかというふうに思っております」
また、記者から次の訪朝予定を聞かれ猪木議員は、「できるだけ早い時期に行きたい」と答えた上で、「小沢先生がもしお受けしていただけるんであれば、早い時期にそういう機会をつくりたいと思っています」と、小沢代表とともに早期に訪朝する考えを明らかにした。
2月28日にベトナム・ハノイで行われた米朝会談は、合意文書への署名が行われることなく、予定を早めて打ち切られた。安倍総理は3月5日の国会答弁でトランプ米大統領が金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との1対1会談で日本の拉致問題を提議したことを「成果だ」と述べた。しかし、現実には2002年に小泉純一郎総理(当時)が電撃訪朝し、5人の拉致被害者を連れ帰って以来、拉致問題解決の進展は見られないし、日本側が主体的に北朝鮮に働きかけたことはない。
一方、猪木議員は1990年にイラクのサダム・フセイン大統領が湾岸戦争に備え、在留外国人の国外出国を禁止した際に自費でバグダッド入りし、何も手を打てなかった外務省を尻目に、イラクの在留日本人全員を帰国させることに成功している。
小沢代表は会見の冒頭で「私は北のほうにつきましては何のチャンネルもありませんけれども」と語っているが、自民党時代の1990年9月、故・金丸信元副総理が社会党の故・田辺誠副委員長らと訪朝した「金丸訪朝団」に参加している。
小沢代表が猪木議員とともに訪朝し、拉致問題の解決の糸口をつかむことができれば、国民の大きな支持や期待が国民民主党会派へと集まるのではないか。