『新潮45』に掲載された差別と痴漢煽動表現てんこ盛りの小川榮太郎氏の記事!新潮社の佐藤隆信社長が声明を出すも謝罪はなし!安倍シンパの醜悪な文章による炎上商法を許すな! 2018.9.27

記事公開日:2018.9.27 テキスト
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(取材・文 IWJ編集部)

 『新潮45』2018年10月号に、LGBTの人々や性犯罪の被害者に対する差別表現や、性犯罪の煽動と言わざるを得ない表現が掲載されていた問題で、新潮社の佐藤隆信社長は昨日21日、「『新潮45』2018年10月号特別企画について」と題した声明をサイトで発表した。その声明文は以下の通り。

 「弊社は出版に携わるものとして、言論の自由、表現の自由、意見の多様性、編集権の独立の重要性などを十分に認識し、尊重してまいりました。

 しかし、今回の『新潮45』の特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」のある部分に関しては、それらに鑑みても、あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられました。

 差別やマイノリティの問題は文学でも大きなテーマです。文芸出版社である新潮社122年の歴史はそれらとともに育まれてきたといっても過言ではありません。

 弊社は今後とも、差別的な表現には十分に配慮する所存です」

▲新潮社本館(Wikipediaより)

 この短い声明文のどこにも謝罪の言葉はない。それどころか、「差別やマイノリティの問題は文学でも大きなテーマ」で、「新潮社122年の歴史はそれらとともに育まれてきた」として、自画自賛しているような表現まで含まれている。122年も「育まれてきた」結果が、痴漢の「触る権利を社会は保障すべきではないのか」と書かれた記事の掲載だったのか。『新潮45』を休刊(事実上の廃刊)にしたとはいえ、新潮社は、「今後とも」ではなく「今後から」差別や犯罪を奨励する表現には十分注意すべきであろう。

 『新潮45』2018年10月号で特に問題となっている記事は、『徹底検証「森友・加計事件」― 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(月刊Hanada双書)などで安倍総理を擁護してきた小川榮太郎氏による、「政治は『生きづらさ』という主観を救えない」という寄稿記事である。

 この記事で小川氏は、「LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だ」と、LGBTの人々を攻撃したあげく、「痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。彼らの触る権利を社会は保障すべきではないのか」と、性犯罪の煽動としか言いようのない主張をしているのである。

小川榮太郎がLGBTを貶めるために「SMAG」なる珍妙な用語を提唱!

 小川氏の記事に対しては、当然ながら多くの批判が噴出している。不適切な内容が頻出する当該記事であるが、ここでは小川氏の不謹慎さを示すものとして、以下の文を取り上げる。

  「LGBTの生き難さは後ろめたさ以上のものなのだというなら、SMAGの人達もまた生きづらかろう。SMAGとは何か。サドとマゾとお尻フェチ(Ass fetish)と痴漢(groper)を指す。私の造語だ。ふざけるなという奴がいたら許さない。LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だからである」

▲小川榮太郎氏(2016年4月1日、「放送法遵守を求める視聴者の会」記者会見より。IWJ撮影)

 ここで小川氏はSMAGなる造語を得意げに提案しているが、これはアフリカ南部の内陸国ザンビアで母体保護活動に取り組んでいる団体、Safe Motherhood Action Groups in Zambiaの略称にあたる。この小川氏の造語は、あまりにも悪ふざけがすぎるだろう。まっとうな伝統保守主義者にとってもいい迷惑に違いない。当然ながら、こうした愚劣で下品な用語がそのまま出版されている点で、新潮45編集部の責任も看過し得ない。新潮社は休刊で幕引きを図るのではなく、説明責任を果たす意思があるのだろうか。

Community mobilization by Safe Motherhood Action Group (SMAG) members(Japanese Organization for International Cooperation in Family Planning、2013年4月17日)

IWJは小川氏と新潮45に電話取材を試みるも、両者とも断固拒否!新潮45には電話中に突然切られる!

 LGBTや性犯罪の被害者に対する差別を声高に叫び、性犯罪を扇動する主張について、IWJは20日、小川氏に取材を試みた。

 IWJ記者が小川氏の事務所に電話したところ、電話口の担当者は、事務所のウェブサイトの問い合わせフォームに入力せよとの一点張り。さらに、「小川の言論に関わることなのでお答えできません」と返答したため、それならば本人に直接おうかがいしたいと伝えたところ、担当者の答えは「本日はおりません」と返答した。

 ここで引き下がるわけにはいかないので、改めて取材を申し込むために小川氏の在室時間を聞いたところ、「小川の在室時間は流動的なので」と意味不明な答えが返ってきた。多忙を極める国際的な人権団体のキャンペーン担当でもあるまいし、いったい何のために小川氏は事務所を構えているのだろうか。

▲『新潮45』2018年10月号(アマゾンより。なんと現在ベストセラー1位)

 小川氏の事務所が取材を頑なに拒否したため、IWJは翌21日、新潮45の編集部に取材を申し入れた。しかし、新潮45にも拒否された。そこで、「SMAG」なる造語が不謹慎である旨を伝えようとしたところ、IWJ記者が話している途中で、新潮45編集部側は一言も言わずに電話を切った。

 今回は小川氏への直接取材は実現しなかったが、IWJはこの件に関して徹底して追及していく。岩上安身は昨日21日、この問題を追及する意義を、次のようにツイッター上で訴えている。

 「破廉恥と戦うのは、躊躇を伴う。小川榮太郎の痴漢を奨励する言説ともなれば、誰もそんな愚論に構いたくない。だが、この痴漢のススメを書いた大馬鹿者は、安倍一強の権力に間違いなく結びついている。私たちは、かなり以前から直面しているこの事態、低俗と破廉恥の帝国主義者と戦う運命にある」

緊急事態条項をめぐって安倍シンパがテレビ報道の「公正・中立」を要求!? 手法も発想も安倍総理の引き写し!筋違いな暴言は看過できない!

 ここで、小川氏の政治的スタンスにも言及しておく。小川氏は安倍晋三総理のスキャンダルを否定する本を出し、さらには安倍政権による緊急事態条項の憲法への挿入を擁護するなど、安倍シンパとして知られている。

 たとえば次のような発言がある。小川氏は2016年4月1日、東京都内で開かれた「放送法遵守を求める視聴者の会」記者会見に際し、2016年3月18日の報道ステーションで扱われた「憲法改正の行方…『緊急事態条項』・ワイマール憲法が生んだ独裁の”教訓”」という企画をやり玉にあげ、公正・中立な報道ではないと主張した。そこで小川氏は、この番組が「ナチスの緊急事態条項と自民党による日本国憲法改正試案中の緊急事態条項を重ねあわせ、あたかも緊急事態条項を創設するとなると、ナチスのような事態が出現するような印象操作を執拗に繰り返した」などと発言している。

 一般論として、歴史的な事実を引きながら、現在にも共通の問題が孕まれているのではないか、と指摘することは、問題提起の段階としてはありふれた行為であろう。ただ、そうした重ねあわせ、類推の妥当性をめぐっては、様々な批判が起きることも自然であろう。しかしながら安倍政権を擁護するために「公正・中立な報道」などとの屁理屈を持ち出す小川氏の邪道なやり口は、到底看過し得ない。歴史修正主義的な立場から、NHKに圧力をかけた安倍総理と同種の発想が見え隠れすることも危惧すべき点である。もし問題だと主張するならば、歴史学的、憲法学的な根拠にもとづいて主張を展開し、議論すればよいはずだ。

 岩上安身は2014年11月12日に、元NHKプロデューサーの永田浩三氏にインタビューしている。永田氏は「安倍さんが2001年の事件当時、松尾総局長に対して『お前勘ぐれ』と言ったといいます。説得する言葉を持たないけれど権力は持っている。これが後の安倍さんを規定するものだと思います。同情というよりは、軽蔑に値する言葉使いですが」ときっぱりと語っている。

▲永田浩三『NHKと政治権力――番組改変事件当事者の証言 』
(岩波現代文庫、2014年)

 にもかかわらず、ドイツ政治史研究や憲法学の土俵で議論するのではなく、テレビ局の番組が「中立・公正」でないなどと強弁し、自由な言論に圧力をかける小川氏の姿勢は卑怯というほかない。「自由な議論」の基礎を守るためには、このような言論足り得ない暴言であっても見過ごすことはできない。

 この自民党の緊急事態条項案は、発令の規定も解除の規定もないままに、法律と同等の政令を出す権限を内閣に付与するものであり、国会の立法権を完全に侵害し、議会制民主主義の根幹を破壊することを可能にしてしまう、極めて危険な代物である。小川氏はこれを改憲でやることを支持し、テレビ局に圧力をかけたのだといってよい。

 IWJでは、緊急事態条項の問題を継続的に扱ってきた。ドイツ政治史に関しては東京大学の石田勇治教授に、憲法学の側面から早稲田大学の長谷部恭男教授に岩上安身がインタビューしている。ぜひ下記のURLよりご視聴いただきたい。

 『新潮45』の記事で一躍有名になった小川氏だが、これは小川氏個人の問題にとどまらない。『新潮45』は休刊となったが、安倍政権にすり寄って極右ビジネスで儲けようという魂胆、その結果野放しとなる安倍政権によって進められる危険な政策、そしてそれを肯定するかたちで炎上商法のための火種がまかれる、といったように「低俗と破廉恥」のループが回り始めている。この悪循環を止めなければ、これから前代未聞の事態が連続して、当然のように発生していくだろう。

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