新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム(沖縄・名護)「辺野古が唯一の選択肢」に立ち向かう ―安全保障・経済の観点から 2017.12.11

記事公開日:2017.12.19取材地: テキスト動画
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(取材:IWJ沖縄中継市民 文:花山格章)

特集 辺野古
2018年11月11日、テキストを追加しました。

 「海兵隊の海外移転で最初に合意した2006年当時から大きく変化したことは、日本政府が自衛隊の中に、海兵隊と同じ組織を新規編成したこと。それにより、陸・海・空の3自衛隊が他の地域にない強力な抑止力を持つことになった。そのため、(米軍の)31海兵遠征隊が残る理由も、限りなく小さくなっている」

 東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏は、在日米軍の「抑止力」について、このように指摘した上で、「辺野古基地建設は、2012年の米軍再編のひとつ前の、2006年バージョンに従った古証文通りの公共事業に過ぎない。辺野古に基地を受け入れる必要はまったくない」と明言した。

 2017年12月11日、沖縄県名護市の名護市民会館で、新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム「『辺野古が唯一の選択肢』に立ち向かう ―安全保障・経済の観点から―」が開催された。

▲新外交イニシアティブシンポジウム「辺野古が唯一の選択肢」に立ち向かう

 元内閣官房副長官補でND評議員の柳澤協二氏は、「抑止力と地理的優位性、という言葉が出てきて思考停止して、安全保障の中身の議論にならないのはおかしい。抑止は『相手が仕掛けてきたら倍返しで、それが嫌なら手を出すな』という脅しの論理。互いが、より強くという悪循環にはまる。抑止という力ずくでやっていくのか、それとも和解で戦争の恐怖から解放される政策を柱にするのか。国民の選択が問われている」と説いた。

 元沖縄タイムス論説委員でND評議員の屋良朝博氏は、海兵隊の撤退に関して、「政治交渉で条件闘争ができるかどうか。たとえば、日本の予算で、海兵隊に必要な輸送力となる高速輸送船を提供する。(撤退しても)沖縄にいればもらえる『思いやり予算』はあげる。批判はあるかもしれないが、それでも、基地があると必要な周辺対策費が不要となり、日本は得をする。それで(米軍人絡みの)殺人事件や訓練の被害が減り、辺野古の海はきれいなままになることを考えると、どちらが得か。そういう議論をしてもいい」と話した。

 ND事務局長で弁護士の猿田佐世氏は、ワシントンでのロビーイング活動を通して、次のように確信したと語った。

 「アメリカは、沖縄の声を聞こうと思えば聞ける。軍隊はフレキシブルに対応できるから。逆に、基地を作りたい時の言い訳もできる。だからこそ、沖縄の権利が侵害され、環境汚染されている状況を、『沖縄の声』として届けなければならない。戦略的な戦いが求められている」

記事目次

■全編動画

  • 挨拶 稲嶺進氏(名護市長)
  • 基調報告 「やんばるの魅力と観光」 平良朝敬氏(一般財団法人 沖縄観光コンベンションビューロー会長)
  • パネルディスカッション 柳澤協二氏(ND評議員、元内閣官房副長官補)、屋良朝博氏(ND評議員、元沖縄タイムス論説委員)、半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)
  • コーディネーター 猿田佐世氏(ND事務局長、弁護士)

2030年、沖縄の観光客は1742万人を予想。海上輸送、ロープウェイ、ホテル建設などで名護の発展も見込める

 まず、沖縄観光コンベンションビューロー会長の平良朝敬氏が、「やんばるの魅力と観光」と題して講演した。

 「沖縄の観光が2030年にどうなるかを予測した。1742万人の来場者が予想される(2017年は957万人)が、交通面で那覇からの渋滞が頭を悩ませる。時間、燃料のロス、いろいろな問題がある。これを解消するのが海上輸送だ。450名乗りのジェットホイルで、那覇から海洋博公園まで結び、1日8往復すると年間190万人を運べる。ジェットホイルは1隻約30億円だが、大きな戦力になる。

▲沖縄観光コンベンションビューロー会長 平良朝敬氏

 次に、ロープウェイ。名護から海洋博公園まで約10キロをロープウェイにする。これで年間120万人を運ぶことができる。おそらく、2030年に来場者は600万人を越える。名護とつながることで、観光客の名護での滞在時間も増え、それにより経済効果が上がる。また、ロープウェイは環境にも優しい。この費用に200億円が必要となる」

 さらに平良氏は、50年前にできた海中展望塔を、現在の環境に合わせてバリアフリー仕様で建て替えることや、仮にキャンプ・シュワブが撤退し、跡地に恩納村に並ぶホテル群(部屋数5100)と同規模のものが入れば、宿泊売上で343億円、飲食、お土産、宴会を入れると約500億円が見込める上に、約3万人の雇用も生まれる、と説明。「ここで収益が上がると名護市に税金が落ちる。いろいろな考え方があるかもしれないが、地域とともに発展していくことを考えると、こうしたことも可能である」と述べた。

 平良氏は、「現実の問題を重ねながら、こういう夢が描けるという提案だ。観光は平和産業。やはり、平和なくして観光は発展しない。平和があるからこそ、みんなが幸せになれる。ぜひ、夢を持って、子や孫のためにやりましょう」と力を込めた。

抑止とは「相手が仕掛けてきたら倍返し。それが嫌なら手を出すな!」という脅し。互いが「より強く」という悪循環にはまる

 次に登壇した柳澤氏は、「安全保障の理屈の話で『抑止力』という言葉が出てくる。そして、沖縄を見ると『地理的優位性』という言葉が出てくる。ここで思考停止して、安全保障の中身の議論にならないのはおかしい」と語り、こう続けた。

▲新外交イニシアティブ評議員・元内閣官房副長官補 柳澤協二氏

 「抑止は『相手が仕掛けてきたら倍返しで、それが嫌なら手を出すな』という脅しの論理。相手も、抑止されたくなければ強くなるし、強くなった相手を抑止し続けるならば、こちらがさらに強くならなければならない、という悪循環にはまる。

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「新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム(沖縄・名護)「辺野古が唯一の選択肢」に立ち向かう ―安全保障・経済の観点から」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    (再掲)新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム(沖縄・名護)「辺野古が唯一の選択肢」に立ち向かう―安全保障・経済の観点から― https://iwj.co.jp/wj/open/archives/407378 … @iwakamiyasumi
    自発的対米従属こそが基地脱却を妨げている。「辺野古が唯一」とは本当なのか?
    https://twitter.com/55kurosuke/status/958250642757201920

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    猿田佐世氏「アメリカは、沖縄の声を聞こうと思えば聞ける。軍隊はフレキシブルに対応できるから。逆に、基地を作りたい時の言い訳もできる。だからこそ、沖縄の権利が侵害され、環境汚染されている状況を、『沖縄の声』として届けなければならない」
    https://iwj.co.jp/wj/open/archives/407378 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1061794212398608385

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