スクープ!「連合」内部から異論!「野党共闘進めていくべきだ」~安倍政権への「歯止め」が必要だと訴える「自治労」にIWJが直撃取材!明らかになる連合内の「温度差」! 2016.10.27

記事公開日:2016.10.30取材地: テキスト独自
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(取材・文:原佑介)

 敗戦に終わった衆院補選の「戦犯」と目されている、民進党最大の支持母体・連合。

 連合は「野党共闘」を明確に否定し、民進党に単独での選挙戦を要求した。東京10区では、野党4党の党首クラスが合同街宣を行ったことに「話が違う」と猛反発。候補者本人が連合の意向に従って、この合同街宣に参加しなかったというのに、連合は選挙事務所からスタッフを引き上げさせ、選挙戦終盤にも関わらず、「応援を控える」と宣言した。明らかな「見せしめ」である。

 また、新潟県知事選では、連合新潟は「脱原発候補は応援できない」ことを鮮明にし、「泉田路線」の継承を掲げて無所属で出馬し、民進党を除く野党3党の支援を受けた米山候補を応援しないどころか、あろうことか、対立する自公推薦候補を「支持」した。

 さらに「自主投票」を決めた民進党に対しては、「野党共闘から米山氏にオファーがあるらしいが、その動きは抑えてほしい」と申し入れたことまで、IWJの取材で明らかになっている。

 民進党執行部の陰に隠れていたが、連合の「正体」が明らかになるにつれ、連合への批判が集まり始めている。

 しかし連合は、10月26日、そうした批判に対して開き直るかのように、与党側へのさらなる傾斜を見せた。

 連合・神津里季生会長が自民党幹事長・二階俊博幹事長と会談し、両氏は政策面で意見交換していくことで一致したというのである。

 この会談は、民進党を牽制する狙いがあるとみられているが、これでは連合が「民進党の応援団」とは、到底いえない。「民進党の応援団」を装った、実際には「自民党の別働隊」が、自民党と連携しつつ、野党分断のために謀りごとをめぐらせている構図にしかみえない。

 他方、これまで民進党に譲歩し続けてきた共産党も、いつまでも黙ってはいない。

 共産・志位和夫委員長は翌27日の記者会見で、民進党に対し、「連合の要求に従う道か、共闘に真剣に取り組む道を選ぶのか。前向きな決断をしてほしい」と牽制。衆院選における野党共闘については、「相互推薦にならなければ選挙協力はできない」とも語り、衆院補選のような「一方的な候補者取り下げ」には応じない構えを鮮明にした。

 これは当然の主張であろう。厚かましい要求をしてくる連合と民進党執行部に対して、あまりにも、共産党はじめ、自由、社民も「お人好し」過ぎた。

 「解散風」が吹くなか、このまま選挙に突入すれば、衆院補選の二の舞いになることは確実である。野党側の早急な立て直しが求められている。

 民進党単独で選挙に勝てないことは今回の補選で改めて明らかになった。野党共闘の拒否は安倍政権を利するだけで、民進党にとっても、共産党にとっても、市民にとってもプラスにならない。

 連合の言うとおりにしていたら、利益を得るのは安倍政権だけである。もちろん、本来であれば民進党を応援する立場にある連合にとっても同様に、マイナスでしかないはずなのである。民進党が衰退し、自滅してゆく方向に、連合は率いていくというのだろうか。

 だが実は、連合の内部は複雑で、必ずしも野党共闘を否定する組合ばかりではない。連合に加盟する組合の中でも、とりわけ、主に公務員から構成される「自治労(全日本自治団体労働組合)」は、野党共闘に拒否反応を示す連合・神津会長らと意見を異にしている。

 今年の終戦記念日に今後の運動方針について会見を開いた自治労・川本淳中央執行委員長は、夏の参院選における野党共闘を評価しつつ、「1人区で推薦を見送った地方連合会もある」と指摘。「独裁化に向かっている安倍政権に対し、もっと連帯して闘うべきだったのではないか。(連合は)もう少し胸襟を開いてもいいと思う」と注文をつけた。

 「戦犯」である連合の内部にも真っ当な意見があるとして、この会見は今、改めて注目を集めている。

 連合の正式名称は、「日本労働組合総連合会」。1989年に結成され、現在、51の産業別組織が加盟しており、加盟組合員は公称で686万人にものぼる。うち85万人の組合員を抱える自治労は、160万人のUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)に次ぐ2番目の規模を誇り、連合内での影響力は決して小さくないとみられている。

 IWJは今回、野党共闘に前向きな姿勢を示す自治労に取材を申し込み、自治労会館本館で企画局長・高柳英喜氏に話をうかがった。

 高柳氏はIWJのインタビューで、衆参両議院で改憲勢力が「3分の2」を占めたことで「政治状況は新しいステージに入った」と指摘。安倍政権に対する「歯止め」が必要だとし、「『野党共闘を進めていくべきだ』という自治労の意見は、連合に臆せず言っていくつもりだ」と明言した。

連合と自治労で「温度差はある」!自治労は「野党共闘すべきという考え方」

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――さっそくですが、衆院補選の結果をどう受け止めていますか?

高柳英喜氏(以下、高柳氏)「自治労としてまとまった総括をしているわけではありませんが、予想通りの結果かもしれません。残念な結果に終わったのは、間違いありません。

 原因は、東京と福岡でそれぞれ違うと思いますが、東京の場合、小池百合子人気は大きかったでしょう。福岡では、自民が分裂したのに勝てなかったのは残念ですが、福岡では民進党も弱っている。それもあって勝てなかったと思います」

――今回は参院選と違い、公認候補で単独で闘いました。共闘していれば結果も少し違ったのでは?

高柳氏「勝てたかは別ですが、もう少し野党共闘をがっちりやれていれば、違った結果はあったと思います。分析もできていませんが、今よりも票を伸ばしたと思います」

――連合は野党共闘に消極的で、これに対して自治労は野党共闘をやっていくべきだと発言されています。連合とは温度差を感じますが。

高柳氏「連合との温度差はあります。連合は『基本政策』の一致、もしくは『目指すべき国の姿』が一致していないところで、共闘や政策協定を結ぶべきではない、という考えのようです。 

 ですが、与党勢力が国会の3分の2をおさえ、野党側が弱っている『一強多弱』が続く状況では、特に小選挙区制度を踏まえると、より集まって野党共闘すべきだというのが自治労の考え方ですので、そこは連合とはちょっと違いますね」

――そうした自治労の方針を連合に伝えて、「より野党共闘を深めるほうに舵を切っていこう」と訴えたりしているんですか?

高柳氏「次の衆院選も間近に迫っていると言われていますが、その中で『野党共闘を進めていくべきだ』という自治労の意見は、連合にも臆せず言っていくつもりです。それが連合全体の意見になるかは、また違うと思いますが」

衆参3分の2で政治状況は「新しいステージに入った」〜自治労が考える「野党共闘すべき理由」

――自治労が「野党共闘すべき」と主張する理由を教えてください。

高柳氏「安倍政権に対する『歯止め』というのが最大です。参院選で『3分の2議席』問題が争点になり、現に参院選で衆参ともに(改憲勢力が)3分の2を超えました。政治の状況は『新しいステージ』に入ったと思うべきです。

 その一方で、民進党単独では支持率も上がっていません。野党側が『新しいステージ』の中でのどういう存在感を出していくかを考えれば、やはり野党乱立では勝ち目がない。これはどうみても客観的な事実です。

 なので、良い・悪いではなく、今や共産党は野党第2党ですし、一致できるところは一致してやるのが自然の流れだと思っています」

――具体的に安倍政権のどういった部分に危機感を覚えていますか?

高柳氏「安保法制に見られる独裁的な採決や、憲法も無視するやり方でしょうね。これまでに作り上げてきた政治のありかたとは、別の方向に進めようとしている。それはもう間違いないと思います。今までの政治とは違うレベルで考えなければいけない。

 経済政策、アベノミクスも全然成功しているとは言えず、金融政策も失敗しています。最近では働き方改革など、労働者の方を向いているようなことを言っていますが、経済界中心にものを見ているのは間違いない。

 格差問題もありますが、基本的には国民を見ていません。貧しい者を切り捨てる方向で政治経済が動いています。これをなんとしても変えていかなければいけません」

「目先の1勝1敗にこだわっていかないと、民進党は10年後に政党として存在しているかどうかが危ぶまれる状況」

――連合の神津里季生会長などは、民進党が単独で挑んだ『衆院補選モデル』で時期衆院選にも臨むべきだと明言しています(※)。しかし、このやり方は通じないことが今回の補選ではっきりしたと思いますし、市民もこのやり方を望んではいないのでは?

※連合の神津里季生会長は10月11日、仙台市内で記者会見し、次期衆院選の野党共闘の在り方について、同日告示された衆院東京10区、福岡6区の補欠選挙がモデルになるとの考えを示した。

高柳氏「神津会長がどういう言い方をしているかは別として、共闘するからには共闘する姿を一定程度以上、見せないといけないと思います。共闘しているのか、していないのかわからないかたちでは、わかりづらい。

 『共産党と一緒には、絵に写りたくない』というのも、相手がある話ですから、そんな都合よくはいかないだろうというのが普通の感情だと思います。

 今回の補選がモデルとなるかは微妙な気がします。今の民進党の現実からみれば、弱いものは弱い、これが実態です」

▲共闘をアピールする野党4党の党首(2015年8月30日国会前)

▲共闘をアピールする野党4党の党首(2015年8月30日国会前)

――連合東京の小林政治局長にお話をうかがったときに、「野党共闘せずに勝てますか?」と聞きました。すると、「目先の1票、1議席よりも民進党の10年後を考えています」と。「目先の1勝にこだわるやり方ではない」とおっしゃっていました。これは候補者を応援する市民の思いとも乖離していますし、この考え方で選挙戦を強いるのは不当な介入であるとの批判もあがっています。

高柳氏「目先の1票でなく10年後、というのもそのとおりだとは思いますが、今の民進党の現状は、目先の1勝1敗にこだわっていかないと、もしかしたら党が10年後に存在しているかどうかが危ぶまれる状況です。選挙は毎回真剣に臨み、一番勝てる方法でやっていくしかないはず。私どもの感覚でいえば、10年後といっても政治は移り変わるものです。

 『連合の介入』という意味で言えば、それはどちらかというと民進党が判断すべきことではないでしょうか。

 連合東京としては、民進党の衆院補選では、思ったものとかたちが違うので一線引かせてもらう、ということにしたようですが、民進党が、『連合東京が動いた・動かない』だけですべて左右されるような政党だとしたら、それは民進党のほうが弱すぎる、という気がします。

 『連合としてはこういう立場だ』と意見するのはかまわないですが、それをひとつの意見として踏まえたうえで、民進党が党としてどう判断して行動するかということだと思います。そのへんが、もしかしたら民進党はぶれているのかもしれません」

連合は「脱原発候補」を応援できる? 「連合が脱原発でまとまるのはなかなか難しい」

――新潟県知事選は特に顕著でしたね。

高柳氏「そうですね」

――候補者を擁立せず自主投票を決めたのに、選挙戦終盤では、ほとんど民進党として米山候補を応援したようなものでした。そして無事に当選したにも関わらず、野田佳彦幹事長が連合会長に謝罪するという、よくわからない状況になりました。

高柳氏「野田幹事長が謝罪したのは、『事前の話と違う』ということでしょう。新潟県知事選でいえば、民進党が候補者を出すかどうかを、連合新潟は待っていた。

 そして『候補者を立てない』と決めたことで、だったら付き合いもある森民夫さんを支持しよう、と決めたんですね。にも関わらず、最後には蓮舫代表までもが米山候補を応援した。それは信義則に反する、ということで野田幹事長が謝ったのでしょうけども」

――米山候補は『泉田路線継承』を訴え、原発再稼働にはかなり慎重姿勢です。仮に民進党が米山候補を立てていたとして、連合新潟は、あれだけ再稼働に慎重な候補者を素直に応援できたのでしょうか?

高柳氏「民進党候補だったとすれば、連合新潟との間で政策協定を結べればありうることだったと思いますけどね」

――脱原発を掲げる候補はやはり連合として応援しづらいんですか?

高柳氏「そういうのを嫌がる民間の労組はありますね」

――自治労は?

高柳氏「うちは脱原発の意見なので、脱原発を掲げる候補は問題ありません。ただ連合全体となると、『(脱原発候補では)現場が立つ瀬がない』というような、電気、電力関係の産別もあるので(電力総連など)、連合として脱原発でまとまる、というのはなかなか難しいかもしれません」

自治労は根強い共産党アレルギーをどう棚上げしたか〜「共産党と安倍政権、どちらが問題かといえば安倍政権」

――連合の影響力はすごく大きい。「連合は衆院選をどうするんだ」と、市民もかなり気にしている。連合は公称686万人の組合員がいて、うち自治労の組合員が85万人と、なかなか多いですよね。影響力を発揮し、連合の方針に影響を与えられないものでしょうか?

高柳氏「衆院選に向けて、連合としてどういう姿勢で臨むかの議論は始まっています。ですから、そういう中で自治労は意見を言っていくし、『野党共闘はネガティブに評価すべきものでなく、ポジティブに考えるべきだ』と、曲げることなく主張します。しかし、連合全体の意見になるかは別問題です」

――それが連合全体の意見にならなかったら?

高柳氏「現実に、連合も野党候補に推薦も出さない、というところまで極端なことをするかは微妙なとこだと思います。政策協定を結べれば推薦を出すとか、そういうことはあると思う。民進党とは考えが違っても、です。連合も『野党共闘は一切ダメ』と言っているわけではないですから。ただし、ネガティブに評価しているのは間違いないですが」

――労働運動の歴史を踏まえれば、「共産党アレルギー」があるのもわかりますが、逆に、自治労はなぜそこを乗り越えられたのでしょう?

高柳氏「乗り越えたわけではありません。80年代の終わりに、私たちは連合結成をめぐって、いわゆる共産党系の組合が20何万人も脱退した事件(※)があって、我々も傷を負ったわけですよ。ですから、『共産党アレルギー』があるかどうかといえば、あります。

 しかし問題は今、現実にある国政の状況をどうみるか。選挙で野党が乱立するわけにはいかないという、シンプルな理由です。自治労として共産党とお付き合いするしないは別の話で、選挙でどう勝ち抜くか、そして安倍一強政治にどうやって穴を空けていくか。大きな視点でみるしかないと思っています」

※民間連合は88年2月から官民統一をめざして、総評の中心である官公労、旧同盟系の友愛会議全官公との首脳会談を開始。民間連合と官公労の統一が決定したが、総評系の自治労・日教組などでは反主流派がこの統一に反対して分裂。これらは反連合の全労連(共産党系)に参加することとなった。民間連合と官公労の統一大会は89年11月21日開かれ、連合(日本労働組合総連合会)として、約800万人の組合員が集まって発足した。

――自民党・下村博文幹事長代行は、参院選の結果にもとづき、衆院選でも野党共闘が実現すれば、「与党は86議席減る可能性がある」と言っています。野党としては共闘しない手はないと思いますが、「共産党と安倍政権」を天秤にかけたときに、連合と自治労では逆の結果になるのかな、という印象を受けました。

高柳氏「それはそうかもしれないですけど(笑)。共産党と安倍政権、どちらが問題かといえば安倍政権だと思っていますけれども」

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