「どこからも当時の映像は入手できなかった」〜安孫子監督が圧力を示唆!? 「国策」原発に異議を唱えて“抹殺”された佐藤栄佐久元福島県知事――「『知事抹殺』の真実」製作発表記者会見 2016.10.12

記事公開日:2016.12.14取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材・文:城石裕幸)

 「当時のニュース映像を喉から手が出るほど欲しかったが、ほうぼうにかけあったが、映像を貸してくれるところは一つもなかった。福島県の地方局から言われたのですが、『このものに触れるな』というお達しが出ていたようです」

 2016年10月12日(水)、日本記者クラブでドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」の製作発表記者会見が行われ、「映画製作にあたって圧力や妨害のたぐいはなかったか?」というIWJ記者の質問に、安孫子亘(あびこ・わたる)監督はこう答えた。

▲映画監督・安孫子亘(あびこわたる)氏

▲映画監督・安孫子亘(あびこわたる)氏

 映画は、自民党参議院議員から福島県知事に転身し、地方色を生かした政策で5期18年にわたり県民の支持を得てきた佐藤栄佐久氏が、2006年9月、東京地検特捜部によって架空の「収賄罪」を作り上げられ、「収賄額0円」にも関わらず、有罪判決を受けるという前代未聞の事件を描いている。

記事目次

■ハイライト

「収賄額0円」なのに「有罪」 福島原発プルサーマル計画を撤回した佐藤栄佐久元福島県知事に下った不可解な判決

 佐藤栄佐久元福島県知事は、1988年から2006年までの知事在任中、郵政民営化や市町村合併、道州制など当時の国の方針に批判的であり、福島第一・第二原発へのプルサーマル計画導入には1998年に了承したものの、その後了承を凍結、見直しを発表した。さらに2002年の東京電力によるトラブル隠しの発覚後は国や経産省の政策を批判、プルサーマルの了承を撤回した。

 その佐藤栄佐久氏が2006年、実弟の競売入札妨害の疑いで知事を辞任し、その後佐藤元知事自身も収賄容疑で逮捕された。当時の土木部長に県内のダム工事の発注を前田建設に発注するよう要請。一方実弟が社長を務める実家の家業「三東スーツ」の所有する土地を、不正な土地取引によって相場より高額で、協力関係にあった水谷建設を介して前田建設が購入し、時価相当額との差額を佐藤元知事が受け取ったという容疑だった。

 過酷な取り調べは関係者を巻き込んで連日行われ、精神的に追い詰められて自殺未遂を起こした人物もあらわれ、いまだに意識不明のままでいる。

 2008年8月、一審の東京地裁の判決は懲役3年、執行猶予5年。2009年10月の二審、東京高裁の判決では懲役2年、執行猶予4年となった。この二審で「収賄額0円」が認定された。2012年10月、最高裁は弁護側、検察側双方の上告を棄却、高裁判決が確定した。

 最高裁判決が出る前の2010年2月8日と2011年3月20日(東日本大震災後、新幹線の止まったままの福島まで電車と車を乗り継いで自宅までインタビューに赴いている)、IWJ代表の岩上安身は、佐藤元知事にロングインタビューをし、事件や日本の原発政策についてお聞きしている。

 また、IWJは佐藤元知事の各地での活動も取材を重ねてきた。以下も、あわせてご一読いただきたい。

会見に登壇した佐藤元知事、「人間としても政治家としても、もうおしまい」逮捕時の絶望を語る

 会見には、「主人公」の佐藤元知事も登壇し、次のように語った。

 「収賄額0円なんですね。それが犯罪として成り立ってしまう。誰が見てもおかしいことが起きている。私は自分がその立場になるまでは、日本はそんな国ではないと思っていたが、現実にそういうことが起きている。そして逮捕されて東京に連れて行かれたときは、人間としても政治家としても、もうおしまいなんです」

 そして、「自分の貴重な経験を社会に還元したい」と話した。

 その上で、「今日は私にとりましては、あの巣鴨から出てきたとき以上」と喜びを表し、「これから本当の戦いが始まる。私なりに新たな戦いに進んでいかなきゃいけない」と決意を語った。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です