岩上安身によるインタビュー第6回 佐藤栄佐久福島前知事、収賄容疑で「冤罪」主張 ~地検特捜部の聴取を「恫喝まがい」と強く批判 2010.2.8

記事公開日:2010.2.8取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富田)

 いったん自白調書が作られたら、それが「虚偽」によるものでも、裁判で覆すことは非常に難しい──。

 佐藤栄佐久前福島県知事にかけられた収賄容疑は、前田建設工業がダム建設工事の受注で便宜を図ってもらった見返りとして、佐藤氏に賄賂を支払ったというもの。佐藤氏は一貫してこれを「冤罪である」と主張している。東京地検特捜部が描いたストーリーは次の通りだ。

 2000年1月、佐藤前知事は県の土木部長である坂本晃一氏を知事室に呼びつけ、双葉郡の木戸ダム建設工事を前田建設工業に発注するように勧め、実際に前田建設が受注した。

 前田建設は水谷建設を介して、縫製会社の三東スーツ(社長は佐藤前知事実弟の佐藤祐二氏)から8億7000万円という、相場よりも高い金額で土地を購入。その「過剰支払い分」が三東スーツから佐藤前知事へと渡り、選挙資金に充てられた──。

 2006年10月に東京地検によって逮捕起訴された佐藤氏は、2008年8月、東京地裁で懲役3年、執行猶予5年の判決を受けて控訴するも、翌2009年10月の東京高裁でも、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受ける。そして、2012年10月16日、最高裁判所第1小法廷は上告を棄却し、佐藤氏の2審判決が確定した。

 このインタビューは2010年2月8日、つまり2審判決後、最高裁の上告棄却前に、福島県内にある佐藤氏の自宅で行われたものである。佐藤氏は自身の潔白を訴えつつ、東京拘置所の取り調べ室で、なぜ虚偽の自白をしたのかなどについて明かした。

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特捜による「狙い撃ち」の可能性

 「この事案はやや複雑なので、当時の細かな状況説明から入ると、視聴者にはわかりづらくなる。そこで、最初に結論的なものをバンと言ってほしい。ずばり、佐藤さんの収賄容疑は、地検特捜部による単純なミスだと思うのか、あるいは、特捜部に狙い撃ちをされたと思うのか、どちらなのか」

 この岩上安身の問いに対し、佐藤氏は、「知事時代に、国とは衝突することが多かったことに照らせば、自分は狙い撃ちされたのではないかと思える」と応え、岩上安身が「では、誰が特捜に狙い撃ちさせたのか」とさらに迫ると、「考えられるのは霞が関だ。私は電力会社とずいぶんやり合ったが、やり合えばやり合うほど、国の側にある問題点が浮き彫りになった」と語った。

 知事就任2年目の1989年。福島第二原発3号機の部品脱落トラブルが発覚した一件では、佐藤前知事は東京電力を徹底的に非難した。前年暮れから異常を伝えるアラームが鳴っていたのに、1989年1月になって、ようやく県に報告があったためだ。

 そして2002年8月、経産省の原子力安全・保安院が県に送ってきたファックスの「福島第一・第二原発では、事故を隠すために長年、点検記録が改ざんされていた」との趣旨の文面に触れた佐藤前知事は、東電による改ざんの事実を早くに把握していた国が、ここまで報告を遅らせたことに激しく怒り、「東電と国は、同じ穴のムジナだ」と断じた。

 この原発の件以外にも、国が抱える問題点をいくつも指摘し、国に対し改善を求めてきたという佐藤前知事。「中には、私の意見に理解を示してくれる省庁もあったが、中央政治がからんでいる部分が多々あり、彼らの目に私は、自分の前方を遮る存在と映っていただろう」語った。

経世会と清和会

 佐藤氏は、「第1次安倍政権には、特に、にらまれていた公算が大きい」と述べる。この時の安倍政権は道州制導入を掲げて誕生したが、佐藤氏らが全国知事会で反対の意志を表明したことで、話が頓挫したためだ。

 これを聞いて岩上安身は、田中角栄氏(ロッキード事件)に始まり、竹下登氏(リクルート事件)、金丸信氏(佐川急便献金)、鈴木宗男氏(斡旋収賄)、小沢一郎氏(西松不正献金事件)といった「経世会(旧田中派)」の面々が東京地検特捜部の餌食(逮捕・失脚)になっていること、一方で「清和会」の面々(岸信介氏、小泉純一郎氏、竹中平蔵氏、安倍晋三氏など)は安泰であることを指摘した。

 そして、岩上安身は「清和会が検察と手を組んでいるという話は、前々からある。清和会の政治家たちにもスキャンダルはあるのに、特捜は捜査に入らない」とし、次のように強調した。

 「特捜部はもともと、GHQ(連合国総司令部)によって、日本国内で隠匿物資を探すために作られた組織だ。今なお、そのトップは米国で教育を受けている。外務省のインテリジェンスの専門家は『特捜は米国のスパイだ』とさえ言っている」。

 岩上安身は、検察の戦後の「ご主人様」は米国だと言う。「彼らが、この国の権力者に平然と歯向かうことができるのは、バックに米国がついているからだ」と訴え、日本という国を真の独立国家に変えながら権力者になろうとする経世会の政治家は、特捜部の標的になり、世に言う「親米保守」の、つまり米国への忠誠を誓う清和会の政治家は守られる、と力を込めた。

 佐藤氏は、「2006年に、自衛隊のイラク派遣に反対を表明した自治体は福島県だけだった。東京の声明は『慎重に対応すべき』であり、反対ではなかった」と語り、自分が狙い撃ちされるのも、むべなるかなだと思えてしまう、とした。

支持者を次々に恫喝

 木戸ダム工事発注をめぐる収賄容疑の件に話がおよぶと、佐藤氏はまず、2006年9月25日、実弟の祐二氏が、自身が営む三東スーツが土地取引を不正に行った疑いで逮捕されたのを受け、県議会が佐藤氏の辞職を求める声を高めたことに触れた。

 「議会は私に対し、道義的責任からすぐに知事を辞めてほしいという構えを見せた。議会を含む私の周囲が、私を追放する方向に固められていた印象だった」

 9月28日の県議会で、佐藤前知事の知事辞職が決まった。「その時点では、もうすぐ自分が逮捕されることになるとは、思いもよらなかった。なぜなら、良心に呵責をまったく感じていなかったからだ」。

 2006年10月23日、佐藤氏は東京地検特捜部に収賄の容疑で逮捕された。インタビューで佐藤氏は、自身の無実を証明するには、1. 実弟(祐司氏)が佐藤氏に対し、土地取引を行ったことを報告した事実があるか、2. 県の土木部長の坂本晃一氏が、佐藤氏から前田建設へのダム建設工事の発注を勧められた事実があるか、の2点を、当の2人の証言から検証することが有効と強調した。

 佐藤氏の主張は、2人の証言は検察によってウソの自白を迫られた虚偽であり、それに基づいて調書が作られた、ということだ。検察官による虚偽自白の強要は、祐司氏、坂本氏のみならず、この事案で東京地検に呼ばれた秘書や後援会幹部、さらには親族といった、佐藤氏の支持者にもおよんだという。

 「当人が企業経営者の場合は、検察官は『お前の会社をつぶすことなどたやすい』とプレッシャーをかけたようだ。もっとも、その当人は、ありもしなかったことは言えないから必死に抵抗する。すると、検察官は『何でもいいから私(佐藤前知事)の悪口でも言え、作り話でもいいから言え』と詰め寄ってきたという」。

 さらにまた、「検察官は、取り調べ中に相手の口から出た『もしも、佐藤前知事が、そういうことをやったとすれば許せないが』との言葉を捕まえて、「その『もしも』の部分を削って調書にしてもいいか、と迫ってきたとも聞いている」と語った。

自分ひとりで罪をかぶろうとした

 佐藤氏自身の東京地検による収賄容疑での逮捕については、「福島から高速道路で、東京へと移送された。初日と次の日の取り調べでは、担当検事とさんざん怒鳴り合った」と振り返る。

(サマリー執筆・2014年8月)

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「岩上安身によるインタビュー第6回 佐藤栄佐久福島前知事、収賄容疑で「冤罪」主張 ~地検特捜部の聴取を「恫喝まがい」と強く批判」への1件のフィードバック

  1. @megumegu1085さん(ツイッターのご意見) より:

    「経世会と清和会」歴史を見れば清和会が検察と手を組んでいるとしか思えない。→(再掲)2010/02/08 佐藤栄佐久福島前知事、収賄容疑で「冤罪」主張 ~地検特捜部の聴取を「恫喝まがい」と強く批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/12309 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/megumegu1085/status/520228671265570816

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