2012年11月9日(金)14時より、東京都千代田区の村上正邦事務所で、「第48回 日本の司法を正す会」が行われた。今回のゲストは、前福島県知事の佐藤栄佐久被告。司会はジャーナリストの青木理氏が務めた。スピーチの中で佐藤被告は何度か、「日本の原子力政策と司法は劣化している」との言葉を口にした。
(IWJテキストスタッフ・富田/澤邉)
2012年11月9日(金)14時より、東京都千代田区の村上正邦事務所で、「第48回 日本の司法を正す会」が行われた。今回のゲストは、前福島県知事の佐藤栄佐久被告。司会はジャーナリストの青木理氏が務めた。スピーチの中で佐藤被告は何度か、「日本の原子力政策と司法は劣化している」との言葉を口にした。
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この会の趣旨は、自分は冤罪であると主張する人などから話を聞くというもの。冒頭、ゲストである佐藤栄佐久被告の「有罪」が確定したことを、主催者側の男性が改めて伝えた。補足として、有罪が確定するまでの流れを示しておくと、次の通りである。
佐藤被告は福島県知事在任中に、福島と柏崎刈羽の原発で損傷やトラブルが隠されていた事実を知り、原発問題を巡る国の粗放ぶりを強く批判、プルサーマルの受け入れ拒絶で国と激しく対立したことでも有名だ。その佐藤氏が2006年に身に覚えのない収賄罪に問われ、知事を辞任し逮捕されたとあって、「これは官僚が佐藤氏の失脚を狙い捏造した事件だ」との疑惑が広がった。だが、この10月16日、上告審で東京高裁は佐藤被告に対し、懲役2年、執行猶予4年の有罪という最終判断を下したのだった。
佐藤被告は、司会の青木理氏からマイクを渡されると、16日の夜に発表したコメントを交えながらスピーチを始めた。「この事件は、そもそもでっち上げ。私と弟は突然逮捕され、東京拘置所の取調室で、東京地検特捜部の検事から身に覚えのない自白を迫られた」。
その上で、自身の逮捕は国の原子力政策を批判し続けた自分を狙い撃ちにした「国策捜査」によるものだったとの認識を改めて披露。「プルサーマルを実施した福島第一原発3号機を含む3つの原子炉が、福島原発事故を受けてメルトダウンするに至り、私の懸念は思ってもみない形で現実のものになった」と語った。
そして2010年に起きた大阪特捜部主任検事によるフロッピー改ざん事件を引き、「特捜部の、無理なストーリーを作っての強引な捜査手法が白日の下にさらされることになった以上、私の事件は洗い流され、無罪判決がいい渡されるべきだった。今回の東京高裁の判決は理解できない」と述べた。
続けて「私と弟の収賄を認めながらも追徴金はゼロ、つまり(東京高裁は)賄賂の金額はゼロと認定としたことになる。自分はいわば『賄賂なき収賄罪』で実質無罪である」と主張し、「市民にとってラストリゾートであるべき司法が原子力政策同様に劣化している」と、強い口調で言った。さらには「犯罪に一切関係のない人が、なぜか詳細な自白をする事例が目立つ。これは司法が、警察や検察の捜査・取り調べを追認する役どころに退化してしまったためだ」とも語った。
佐藤被告のスピーチが終了すると、出席者全員での討議に入った。その中で、KSD汚職事件で服役の経験がある、元労相の村上正邦氏は「国民が司法に安全性を求められなくなっている現状は、日本に内部崩壊が始まっていることを意味している」とし、「三審制があるといっても、実際はないに等しい」と話した。
村上氏が「検察官と裁判官の間の人事交流(刑事部門は今年度から廃止)の歴史が、司法の公正さを害している」と指摘すると、別の参加者が「人事交流は(検察官や裁判官の視野拡張の効果よりも)弊害のほうが大きいと思う。裁判官の側に、検察官は嘘をいわないだろうとの思い込みが存在し、証拠に対する見方が甘くなるのではないか」と説明を加えた。
その後は、なぜ佐藤被告は「賄賂なき収賄罪」で有罪にされたのかについて意見が飛び交った。ある参加者が「裁判官と検察官が裏で手を組めるのだとしたら、何だってできてしまう」と発言すると、ほかの参加者は概して同意を表明した。