尖閣諸島の接続水域にロシアの軍艦と中国の軍艦が続いて航行。中国に対してのみ大騒ぎして警戒を強めるものの、ロシアに対しては外交的配慮からトーンが明らかにダウンしている。整合性がまったく取れていない。
※NHKニュース(@nhk_news)アカウントのツイート(2016年6月9日 4:10)
https://twitter.com/nhk_news/status/740863517163552772
安倍政権は、ロシアに対しては警戒心を解くような素振りを見せ、その一方で、中国に対しては「軍事的衝突も辞さず」といわんばかりの攻撃的姿勢を見せてきた。
番記者とのオフレコ懇親会の場で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの。だから、やる(法案を通す)と言ったらやる」と安倍総理が発言した、という記事が2015年夏、週刊現代に掲載されたこともある。
※戦争やる気満々安倍オフレコ発言ぜんぶ書く「仮想敵国は中国」「橋下の本当の評価」「慰安婦問題は3億円あれば解決できる」 (週刊現代 現代ビジネス 2015年06月29日)
安倍総理の、このオフレコ発言が事実であるならば(可能性は高い)、あまりに無防備で短絡的である、という他はない。中国と本気で敵対するとき、他の国々はどう動くか、まったく念頭にない。世界には自国と、中国という敵と、米国という味方と、3カ国しかプレイヤーがいないかのようだ。
中国とロシアは同盟関係を深めている。米国によるウクライナでのクーデター工作以降(2014年2月のユーロマイダン騒乱)、米国はロシアをG8から追い出し、結果、ロシアは中国へ急接近、天然ガスのパイプラインで40兆円ものプロジェクトを組むなど、軍事的にも経済的にも深い関係に。
かつてのように、中露間は離反していて、その間に突け込むことができるという関係ではない。それは70年代のニクソンショック以降の後期冷戦時代の話。安倍政権の、あるいは安倍総理の脳内の世界地図は、その時代から一歩も進んでいないように見える。
ここには中露が離反していて欲しい、という願望も入り混じっているのであろうが、あまりに国際政治に疎すぎる。何でもかんでも米国頼み、米国様の言う通り、という、米国隷従を続けた結果、本当に現実が見えなくなっているのだろう。ロシアをなめすぎている。背中を見せていい相手ではない。
政府は、かつては北方の守りを固めていた自衛隊を、南方重視に編成し直している。安倍総理が口走ったように、中国と戦争するなら、中国の同盟国であるロシアとも戦争の可能性があり、日本列島を南北からはさみうちにされる可能性がある、などということに思慮が及んでいると思えない。
頼みの綱は米国だけである。その米国は平気で同盟国を裏切る。トランプの「もっと金を出せ。出さなければ米軍を引き上げる」という発言は、米国に頼りきりで、そのくせ虎の威を借りた狐のごとく、中国に喧嘩で張り合おうとする安倍政権の、足もとを見透かした計算づくのゆすりたかりである。
米国はいざというときには日本を守らない。この事実は、春名幹男氏へのインタビューを見てもらえればよくわかる。米国の公文書でしっかり裏付けられた事実だ。
- 「米軍は日本を守らない!」という事実が米公文書によって明らかに! 政府が日米新ガイドラインに施した翻訳上の姑息な仕掛けとは!? ~岩上安身によるインタビュー 第608回 ゲスト 『仮面の日米同盟』著者・春名幹男氏 第1弾 2016.1.28
- 東アジアで5回の核戦争を起こそうとした米軍を押しとどめたのは、日本の市民の「反核運動」だった!岩上安身による直撃インタビュー 第622回 ゲスト 『仮面の日米同盟』著者・春名幹男氏 第2弾 2016.3.5
- 『仮面の日米同盟 米外交機密文書が明かす真実』~米軍が再び日本に核を持ち込むという密約をスクープ!~岩上安身によるインタビュー 第651回 ゲスト 国際ジャーナリスト・春名幹男氏 第3弾 2016.5.26
また、参院選で沖縄選挙区から立候補予定の伊波洋一氏のインタビューもご覧いただきたい。米国は核戦争へのエスカレーションの可能性がある中国との直接対決は避け、その代わりに日本を鉄砲玉にして、中国にぶつけ、ほどよいところで第三者として割って入るシナリオを描いている。
- 【沖縄県知事選スペシャル】「アメリカ流非対称戦争」への準備が進む中の知事選〜岩上安身によるインタビュー 第471回 ゲスト 元宜野湾市長・伊波洋一氏 2014.10.17
- 【饗宴アフター企画第6弾】沖縄が、日本が、「最前線の戦場」にさせられる! 米軍の戦略に乗せられる日本 「オール沖縄」が、米軍基地を拒む理由~岩上安身による緊急インタビュー 第500回 ゲスト 伊波洋一 元宜野湾市長 2014.12.20
- 「中国のミサイル1400発で日本は一度壊滅させられ、中国に花を持たせて戦争を終結させる。それが米国の戦略」~岩上安身によるインタビュー 第600回 ゲスト 伊波洋一・元沖縄県宜野湾市長 2015.12.21
この「オフショアコントロール」と呼ばれるシナリオを描いたハメスという海軍上がりで国防大学の教授を、日本の防衛省はわざわざ招聘し、教えを請い、自衛隊の幹部が読む「海上自衛隊幹部学校戦略研究」に、「これが答えだ」というタイトルでハメスの論文を掲載している。
ハメスは、日中間の戦争の終わらせ方を、中国のプライドに配慮すること、中国沿岸部のインフラを傷つけず、戦後すぐに使えるように保存することを、条件にあげている。中国のプライドもインフラも守る。日本のプライドもインフラも守るとは一言も書いていない。そして戦場は日本である。
さらに、矢部宏治氏のインタビューをご覧になっていただくと、旧安保条約の原案の段階から、日本を再軍備させる場合は合衆国政府の支配下に置くこと、日本の軍隊が海外で軍事行動を行う場合は米軍の司令官の指揮下におく、という構想のもと自衛隊が作られ、安保が結ばれたことがわかる。
- 「戦後再発見双書」プロデューサーが語る、日米関係に隠された「闇の奥」~岩上安身によるインタビュー 第475回 ゲスト 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』著者・矢部宏治氏 2014.10.13
- 国際社会の「敵国」であることを自ら望む日本の病〜岩上安身によるインタビュー 第478回 ゲスト 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』著者・矢部宏治氏 第2弾 2014.11.2
- 岩上安身によるインタビュー 第648回 ゲスト 『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』著者・矢部宏治氏 2016.5.20
さらに孫崎享さんのインタビューをご覧になれば、日露間を引き裂く北方領土問題は、米国のダレス国務長官の強引な介入のもと、「作られた」のだということがわかる。日本とロシアの間に永遠のつまづきの石を置いたのだ。尖閣も同じことである。
- 「日本の国益を真剣に考えた人たちがいたことを伝えたかった」アメリカとの隷属関係を断ち切ろうと奔走した政治家とは? ~岩上安身によるインタビュー 第237回 ゲスト 孫崎享氏 2012.8.23
- 北朝鮮の核実験問題や、尖閣問題で米国に翻弄される日本! 権力者は事実をねじ曲げ、国民は右傾化、日本は再び戦場に!?~岩上安身によるインタビュー 第275回 ゲスト孫崎享氏 2013.2.14
日本は東アジアで隣国と和解できず孤立し、米国に依存する他に選択肢はなくなる。DV男に依存し、あげくその共依存関係を「愛」と錯覚するまでに至る。ストックホルム症候群そのものだ。核の拳二発で参ったし、今度はその核の拳を、己れを守ってくれる「核の傘」とありがたがる。
正気を失うと、人も国家も現実を直視するのを諦める。自分だけが狂気の幻想に浸るだけなら止めはしないが、周りを巻き添えにするから、度し難い。本日、News23のアンカーだった岸井成格氏の講演の記事をアップした。現政権とメディア、とりわけテレビの現状に激しく怒っている。
岸井氏によれば、テレビの政治報道量は2005年の郵政選挙の時の5分の1に落ちているという。国民を一定方向に誘導するテレポリティクスのおいては放映時間が勝負を決める。当時、テレビのコメンテーターとして僕はスタジオにいながら「これはテレポリティクスだ」と指摘した。
が、現在の状況は、テレポリティクスですらない。そもそもテレビは報道番組ですら肝心の政治の情報を報じない。NHKしかり、報ステしかり、News23しかり。ベッキー、清原、舛添。「緊急事態条項」の危険性や、中露米の関係や、日米同盟の虚構性にどれだけ時間を割いたか。
国の運命を決める改憲のかかった重大な選挙を前にして、テレビは国民に肝心な情報を与えない。国民を誘導する、のではなく、疎外する。これは国民に対するネグレクトである。国民は自分たちが虐待されているという自覚を持つべきである。