またも「軍の独走」を疑わせる、新たな防衛省の「内部文書」が明るみに出た。
内部文書は「統幕長訪米時のおける会談の結果概要について」と題したもので、日本共産党・仁比聡平議員が2015年9月2日の参院特別委で示した。
文書によると、昨年末に行われた衆院選直後の2014年12月17日、訪米した河野克俊統合幕僚長は、米国の国防副長官、統合参謀本部議長、陸軍参謀総長、海軍作戦部長、空軍副参謀長、海兵隊司令官らと会談した。
その際、レイモンド・オディエルノ米陸軍参謀総長(当時)から、「現在、ガイドラインや安保法制について取り組んでいると思うが、予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?」と問われた河野統幕長は、なんと、「与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」と回答したというのである。
自衛隊のトップが、米軍上層部に対し、単独で、まだ安保法案の中身も定まっていない時期に「2015年夏に安保法案が成立する」との見通しを先行して示していたのだ。シビリアンコントロール(文民統制)が問われる問題である。
先月の参院特別委でも、同じく共産党の小池晃議員が防衛省の秘密文書を暴き、すでに安保関連法案の成立を前提とした自衛隊の「日程表」の存在を明らかにしたばかり。小池議員の提示した文書では、「8月に法案成立。2月に法施行」とスケジュールが先取りされていた。また、自衛隊を「軍」と定義し、自衛隊と米軍の運用を調整する「軍軍間」の調整所を設置するとも明記されていた。
仁比議員は、「夏までに成立する」とした統幕長の発言について「大臣はどんな報告を受けているのか」「統幕長は勝手にその認識を米軍に示したのか」「この文書は存在するのか」と問いただしたが、中谷防衛相は「突然の質問で、防衛省で作成したか否かも含めてコメントできない」などと回答を避けた。
国民、国会を無視し、日米両政府間、もしくは「軍軍間」で一方的に物事を進めようとする安倍政権の体質が改めて浮かび上がった。
以下、仁比聡平議員の質疑の該当部分の文字起こしを掲載する。
仁比聡平議員、質疑文字起こし
仁比議員「河野統合幕僚長は、昨年の12月17日、18日に訪米をされました。米統合参謀本部議長や陸海空海兵隊の幹部、あるいは国防省幹部と会談し、日米同盟の深化などについて、意見交換をされたと思いますが、これ、どなたたちと会われたんでしょうか?」
中谷防衛相「はい。河野統幕長は昨年10月に就任をいたしました。昨年12月に訪米をいたしまして、米国防省および米軍幹部と会談、この情勢等について、対談をいたしました。会った人については、ワーク国防副長官、デンプシー統合参謀本部議長、オディエルノ陸軍参謀総長、ブリナート海軍作戦部長、スペンサー空軍副参謀長、ダンフォード海兵隊司令官、スイフト海軍作戦部統幕部長と会談を実施いたしておりますが。
この時につきましては、ガイドラインの見直しの作業とか、その時の進捗状況など、様々なテーマについて意見交換を行いましたが、新ガイドラインや平和安全法制の内容を先取りするような会談を行なったというような事実はなく、公表資料で公表する内容を限定したというご指摘は当たらないものでございます」
仁比議員「今、大臣がおっしゃった今後の進め方という日程表でですね、統幕文書で、8月法案成立とされていることが聞かれもしないのに、大臣がおっしゃるほど国会無視だと。大問題になってきたわけです。
私の手元に、独自に入手をいたしましたこの統幕長訪米時の会談の結果概要を報告する防衛計画部の文書がございます。
河野統幕長は、12月17日、オディエルノ米陸軍参謀総長との会談で、オディエルノ参謀長から、『現在、ガイドラインや安保法制について、取り組んでいると思うが、予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?』と聞かれて、統幕長は、『与党の勝利により、来年夏までには終了するものと考えている』と述べているんですね。これなんですか?
政府は、あれこれ弁明してきたけれど、大臣が分析・研究などを指示したという閣議決定の翌日からさかのぼって、実に昨年12月、夏までに、と述べているわけではありませんか? 大臣はどんな報告を受けているんですか?」
中谷防衛相「はい。そのご指摘の資料につきましては、わたくし、確認をできておりませんので、この時点での言及は控えさせていただきます」
仁比議員「そんな報告も受けずに、さきほど聞かれもしないのに、先取りしてやっているようなことはないなんて、そんな答弁したんですか? それ、虚偽でしょ? 12月のね」
鴻池祥肇委員長「仁比君、質問続けてください」
仁比議員「12月の、総選挙の投票日のわずか2,3日後の訪米です。法案の具体的検討も、あるいは与党協議もなされていないはずのそんな時点に、来年夏までに、と決まっていたんですか? それとも、統幕長は勝手にそんな認識を米軍に示したんですか? どっちですか? 大臣」
中谷防衛相「はい。今、ご質問いただきましたけれども、ご質問をいただいている資料がですね、いかなるものかは、承知をしておりません。その点も含めまして、コメントすることはできないということでございます」
仁比議員「大臣、確認しますけれど、この『統幕長訪米時“の”おける』って、間違っていますけども、『統幕長訪米時のおける会談の結果概要について』という件名の提出年月日、26年12月24日付の報告書、これ存在するでしょう?」
中谷防衛相「あの、突然のご質問でございまして、ご提議いただいている資料がいかなるものか、承知しておりません。防衛省で作成したものか否かも含めまして、コメントすることはできないということでございます」
仁比議員「この内容について、私は数々の疑問がある。けれども、そんなご答弁では、と質問できないじゃないですか。委員長、これ事実を確認して、させていただいて。文書の存在について、確認をしてもらいたいと思います」
鴻池委員長「今の、私への? 私への内容ですか? 何を確認するんですか?」
仁比議員「改めて、申し上げます。この、私が今申し上げている統幕長の訪米に関する報告書、これの存在を確認していただきたい。今、確認をしていただきたい」
鴻池委員長「大臣の答弁では、確認できていないという答弁でしょ? そうでしょ? 止めてください」
<速記止め>
鴻池委員長「中谷大臣」
中谷防衛相「はい。ご指摘の内容等につきましては、委員会の事前の資料にも入っておりませんし、ものについても、確認できませんので、今すぐにお答えすることは困難でございます」
仁比議員「私の手元に、このように存在をしております。この存在をいつまでになら確認できますか?」
中谷防衛相「はい。ただいまご質問をいただいたばっかりでありまして、その資料もわたくし、まだ拝見しておりません。また、それを拝見させていただいたうえで、判断してまいりたいと思います」
仁比議員「委員長、この文書の存在と、先ほど申し上げた統幕長の発言の内容の事実の確認について、防衛省から理事会に報告いただけるようにご協議願いたいと思います」
鴻池委員長「この件に関しましても、後の理事会において、協議をいたします」
仁比議員「この中身について、時間がなくなってきましたので、重大な一つの問題について、伺っておきたいと思います。
政府が、沖縄の在日米軍基地の自衛隊との恒常的な共同使用を検討しているのではないかという大問題は、沖縄県民には一切知らされず、国会でたびたび取り上げられてきた問題です。
3月3日の衆議院予算委員会で、我が党の穀田議員が、防衛省の二つの内部文書に基づいて、キャンプハンセン、キャンプシュワブを含めて、具体的に検討しているのではないか?と質問したのに対し、大臣は、『いずれにせよ、代替施設における恒常的な共同使用というのは考えておりません』、総理は、『もちろん報告も受けておりませんし、まったく考えておりません』と答弁しているんですね。
ところが、河野統幕長はどうか? 辺野古への移転やキャンプハンセン、キャンプシュワブでの共同使用が実現すれば、米海兵隊と陸上自衛隊との協力が一層深化すると認識している。これにより、沖縄の住民感情も好転するのではないか、と。こう、この一連の会談のなかで述べているわけです。
自衛隊と米軍のトップ同士では、総理や大臣の国会答弁とは関係なく進めているということなのか? それとも、内局や大臣もこうした統幕長の考えを知ったうえで、3月の国会の答弁をしたというのか? これ、明らかにすべきですよ。
大臣、いったいどっちなんですか?」
中谷防衛相「はい。3月での答弁等につきましては、私が答弁した通りですね、共同使用ということについては、政府としては考えていないということでございます。
なお、日米間につきましては、恒常的にですね、いろんな問題等については、率直な意見交換は実施をいたしておりますので、また、その内容等につきまして、どのようなものであるかどうか、また確認したうえで、答弁させていただきます」
仁比議員「時間がきましたから、委員長に一つは先ほど来、私が示しております文書の委員会への提出について、理事会の協議をいただきたいということと、それから、ご許可いただければ、今ここにありますので、大臣に手渡したいと思いますが、よろしいでしょうか?」
鴻池委員長「よろしいです」
仁比議員「戦争法案は断固廃案ということを述べて、私の質問を終わります」
ゼネラルコントロールな(怒)
と言うよりも、安倍自民党自身が軍隊の一部だってことだな(怒)