「私に対するヤジで安倍晋三という人の本質が見えた」辻元清美議員が「総理の妄想」を指弾 ~終戦の日、「リベラル結集」を掲げた集会で 2015.8.15

記事公開日:2015.8.27取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山)

※8月27日テキストを追加しました!

 「総理から『早く質問しろよ!』とヤジられた時、これで流れを変えられると思った。安倍晋三という総理大臣の本質が見えたから。『自衛隊に犠牲が出るのでは……』と人の命の話をしている時にも、『大袈裟だよ』とさらにヤジを飛ばした。要するに、人々の命を守りたいのではなく、国家を守りたい。私から言わせれば、彼の妄想だ」──。辻元清美衆議院議員は、国会の審議から透けて見える安倍政権の傲慢さを厳しく批判した。

 2015年8月15日、東京・千代田区の日本教育会館にて、市民文化フォーラム主催による、「第51回 8・15集会『戦後70年ー安倍政権にNO!リベラル勢力の結集をー』」が行われた。各界の憲法学者、作家、メディア関係者らが、安倍政権に対する危機感を、それぞれの視点から表明した。

 琉球新報の島洋子氏は、辺野古をめぐる沖縄県と政府との協議について、「金で沖縄を納得させる動きは、通用しないだろう」と釘を刺した。さらに、沖縄の住民運動に比重を置く琉球新報の報道姿勢への批判に対し、「私たちが中立の名のもとに、政府と住民どちらの言い分も同じ比率で扱ったら、力の弱い住民の声は届かない。沖縄の人たちの利益に立った報道することが、私たちの責任だ」と述べた。

 衆議院議員の辻元清美氏は、今の国会の状態を嘆きながら、「ファシズムの匂いがする。一部の権力者がクーデターで、政治体制や社会の根本を転覆させようとしている」と指摘。「ウルトラ右翼な安倍総理や、その仲間が増えているが、これは(選挙で)国民が生み出したもの。有権者として、地元の国会議員、市会議員、県会議員の事務所に抗議に行ってほしい。これは必ず効く。地元の政治に責任を持ってもらいたい」と訴えた。

 東京大学名誉教授で憲法学者の樋口陽一氏は、戦後70年の日本の歩みを支えてきた憲法を、「みっともない憲法」だと罵詈雑言を浴びせるのは、保守のすることではないと断じ、「安倍政権は、憲法だけでなく、日本社会の構造そのものを解体する。文化や知の積み上げそのものを、全部壊すことにつながっている」と懸念を表明した。

 8月14日に発表された安倍談話について、作家の落合恵子氏は、「『繁栄は平和の礎』と言うが、平和が繁栄の礎のはずで、随分と失礼な話だ。すべて平和があってこそ。彼らの頭の中には経済的な論理しか入ってない。そして、まったく違った意味で『平和』という言葉を散りばめるペテン師である」と糾弾した。

 フランス文学者の海老坂武氏は、「集団的自衛権で、自衛隊の人が海外に出ていって死ぬかもしれない。しかし、安倍内閣の人は誰ひとり、戦場で死ぬことはないだろう。そういうことが一番、腹が立つ」と語気強く語った。

記事目次

■ハイライト

  • 発題者 樋口陽一氏(東京大学名誉教授・東北大学名誉教授、憲法学)/海老坂武氏(元関西学院大学教授・元一橋大学教授、フランス文学)/落合恵子氏(作家)/島洋子氏(琉球新報東京支社報道部長)/辻元清美氏(衆議院議員)/司会 内海愛子氏(恵泉女学園大学名誉教授)

「辺野古協議」──金銭で沖縄を懐柔する作戦は、もう通用しない

 沖縄では、8月10日から1ヵ月間、沖縄県と政府の集中協議期間ということで、辺野古沖でのボーリング調査が止まっている。島氏は、「先日、第1回目の協議があった。見えてきたのは、県と政府の考え方にかなりの距離があること。話の原点からして異なっている」と話す。

 政府の話は、普天間基地の危険性が指摘された19年前から始まるが、沖縄県のほうは、太平洋戦争の沖縄戦で壊滅的打撃を受けた際に、米軍が強制的に普天間を基地にしてしまったことが原点である。島氏は、「2回目の協議では、政府は沖縄振興策とUSJというテーマパーク誘致で懐柔しようとするだろう。だが、金銭で沖縄を納得させる動きは、もはや通用しない」と断じた。

 東京では、沖縄に関する「2つの神話」が信じ込まれていると、島氏は言う。ひとつは、「沖縄は基地で生活しているのだから、基地がなくなると困るだろう」という意見。しかし、「県民総所得の中で、基地から得られる収入は5%だ。基地従業員の給料、土地の賃貸、5万の軍人の消費。沖縄に落ちるお金はそれほど大きくない」と島氏は指摘し、このように続けた。

 「沖縄県民には、米軍基地は経済的メリットより、沖縄振興を邪魔している存在だ、という意識がある。ただ、本土ではそれを知らない人が多い。昔、米軍基地だったところが返還されて開発された結果、基地の頃よりも大きな経済効果を生んでいることが、目に見えてわかるようになってきた。

 沖縄中部の北谷町は、今、ビーチリゾートとして開発されている。基地の頃は3億円しか生み出さない滑走路だった。現在では『アメリカンビレッジ』と名付けられて、若者が多く訪れる街になり、直接経済効果は160倍、雇用は135倍になった」

 もうひとつの神話は、「普天間の抑止力神話」だという。島氏は、「沖縄は中国に攻められる、と真顔で言う人がたくさんいるが、アメリカの海兵隊の抑止力には懐疑的な声や、海兵隊不要論まで出ている」とし、日本にある米軍基地の73.8%が沖縄に集中しているが、仮に普天間飛行場がなくなっても、その数字は73.4%になるだけ。0.4%しか減らない」と指摘。

 「沖縄には普天間のほかにも、極東最大の空軍基地の嘉手納基地、北部訓練場、キャンプシュワブ、ホワイトビーチなど、数々の基地がある。普天間に反対したら、沖縄は中国に乗っ取られるという論理があるなら、そもそも在日米軍の抑止力とはなんだろう、という話になる。沖縄に基地を置く理由を、森本敏元防衛大臣が明言している。『軍事的に、必ずしも沖縄に基地を置く必要はない。沖縄に置くのは、政治的な理由だ』と」

力の弱い住民の声を取り上げることが、沖縄の地元紙の責任

 安倍政権が進める安保法制について、島氏は、「集団的自衛権の事例が、実は沖縄にある」と言う。1965年から始まったベトナム戦争である。

 「当時、沖縄は、まだ本土に復帰しておらず、米軍の爆撃機は沖縄の嘉手納基地から飛び立って、ベトナムに爆弾を落とした。ベトナムの人たちからは、沖縄は『悪魔の島』と呼ばれていた。今後、集団的自衛権の行使によって、日本全体が悪魔の島となるかもしれない。そして、相手の恨みをかって、日本の原発、沖縄の米軍基地、東京などが、テロやミサイルの標的になることは必至だ。これで、安全が高まると言えるのか」

 また、自民党議員の、「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」という発言には、安倍政権の驕りが現れているとし、「報道の自由が奪われたら、次は言論の自由が奪われ、行き着く先は戦争だ。私たちは、わずか70年前にその事例を経験したではないか」と訴えた。

 島氏は、「沖縄の新聞は、確かに住民運動に比重を置いた報道をしている。しかし、今、政府と沖縄で対立している中で、地元紙である琉球新報が、中立という名の下に、どちらの言い分も同じ比率で載せていたら、力の弱い住民の声は届かなくなってしまう。地元の新聞として、沖縄の人たちの利益に立った報道することが、私たちの責任だ」と力を込めた。

一部の権力者がクーデターで政治体制を転覆させようとしている

 次に登壇した辻元氏は、「今、国会の中では、一部の勢力が権力を乗っ取り、クーデターのようなことで、政治体制や私たちが守ってきた社会の根本を転覆させようとしている。立憲主義の、存立危機状態だ。そして、昨日の安倍談話に象徴されるように、過去の歴史認識を根底から覆そうとしている」と危機感をあらわにし、こう続けた。

 「ファシズムの間口というか、そういう匂いがする。戦争になる時というのは、だんだん苦しくなり、『しんどい。だから、もういいか』と多くの人が口を閉ざしてしまうのではないかと思う。その中で、いかに安保法制の問題点を突いていくか。

 安倍総理は最初、どこかで戦争があった時、赤ちゃんを抱くお母さんは、アメリカの艦船に助けてもらわなきゃいけない、という話をした。しかし、助けるどころか、アメリカの国防総省と国務省は、他国も含めて一切協定は結ばないし、民間人は助けないとルール化している。

 次に出てきたホルムズ海峡の機雷の話も、(イラン核合意で)衆議院で論破されて理由にならなくなり、今度は、アメリカ軍のイージス艦を守ると言い出した。『アメリカのイージス艦33隻を、日本の4隻がちょろちょろ守りに行くのか』と中谷大臣に聞いたら、『そういう時が、あるかもしれない』と言う。これも立法事実にならず、このように根拠がない状態でも、安倍総理は集団的自衛権行使に踏み切りたいのだ」

「私が総理大臣だから」──法の規範は、安倍総理の頭にはない

 安倍総理は、若手議員の頃からいろいろな委員会で、「集団的自衛権の行使を、少しだけなら認められないか」と質問し、その度に否定されてきたという。

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