木村草太氏、安保法制の違憲性を詳説!「政府は軍事権を付与されていない」~集団的自衛権「合憲派」を論破するポイントを伝授 2015.8.15

記事公開日:2015.8.27取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※8月27日テキストを追加しました!

 「戦争法案と言われて怒る人たちがいるが、怒るぐらいなら、『世の中には必要な戦争だってある。よって、戦争法案を整備しておく必要がある』と堂々と反論すればいいのではないか」——。

 全国各地で終戦の日の記念行事が開かれた2015年8月15日、東京・九段では、平和遺族会全国連絡会が主催する集会が、約170人の参加者で満席となった。ゲストスピーカーの憲法学者、木村草太氏(首都大学東京准教授)が、約90分かけて安保関連法案の違憲性をレクチャーした。

 2015年6月4日の憲法審査会で、3人の憲法学者がそろって「安保法案は違憲」を表明して以来、この法案への反対の声は、日本全体で日増しに強まっている。ただし、一般市民においては、理論武装した上で「違憲」を主張できる人は、そう多くないのも現実である。

 そんな中、安保法案と日本国憲法の関係をきちんと学びたい人たちにとって、この日の木村氏の講義はうってつけの内容となった。行政権、外交権、軍事権の3つから法案の違憲性を指摘するなど、緻密ながらも明快な議論が特徴で、集まった市民らは独特の「木村ワールド」に引き込まれた。

 出色だったのは、集団的自衛権を合憲と主張する相手を論破する勘所が示された部分だ。木村氏の見方は、その相手の理解が生半可だからこそ合憲視できる、というもので、「『憲法73条(内閣の職務)に書かれてある権利の、どれで集団的自衛権行使を合憲とするのか』と問い詰めると、大抵の場合、相手はイチコロだ」といった指摘がなされた。エセ論者は「具体的回答」を求められる論戦にはめっぽう弱い、ということである。

■ハイライト

  • 基調報告 西川重則氏(平和遺族会全国連絡会代表)「『安保法制』から靖国神社問題へ」
  • 講演 木村草太氏(憲法学者、首都大学東京准教授)「『安保法制』と憲法」
  • 日時 2015年8月15日(土)9:30〜12:00頃
  • 場所 日本キリスト教団 九段教会(東京都千代田区九段北)
  • 主催 平和遺族会全国連絡会

自民党の「本質」を見抜け

 集会は、木村氏同様、安倍晋三内閣の面々の憲法習熟度の低さを問題視する、主催者代表の西川重則氏のスピーチで始まった。

 西川氏は、安倍政権が2014年7月に行った、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定ついて、「解釈改憲」自体は安倍政権の専売特許ではない、とした。

 「1955年11月15日に、保守政党に位置づけられる自民党が結成されたが、見落とせないのは、その際に示された党の基本方針で、そこには『現行憲法を自主的に改正する』とある」

 憲法改正は自民党の党是、というわけだ。西川氏は、「自民党は、改憲を実現させるために結成された政党だ、とさえ言える」と指摘した。

 その上で、「今、安倍首相に退陣を求める声が高まっているが、それだけでは不十分」と力説。「(自民党は)われわれが願わない方向へと日本を導いてきた」と言い重ね、日本の戦後を総括する視座に立ちつつ、自民党の本質を見抜くことが肝要だと訴えた。

 西川氏は、安倍政権を倒すには、国民は憲法に習熟しなければならないと主張する。「しっかりした法的根拠の下に、『戦争絶対反対』を叫ぶ必要がある」と主張し、安保法案をめぐる、これまでの国会審議での、安倍政権の面々の答弁の酷さを指弾。「お盆休み明けに審議が再開される。多くの国民が(安倍首相らの)憲法習熟度を判断する目線で、彼らの答弁を吟味することを望みたい」と話した。

不戦は世界の共通理念──ただし「例外」がある

 休憩を挟み、木村氏の講演が始まった。木村氏は、「憲法の観点から、今回の安保法制をどう評価できるか、という立場で論じてみたい」と切り出した。

 「国際法上、武力行使が厳格に規制される気運が高まったのは、20世紀に入ってからのこと」とした木村氏は、19世紀には、国家間の債権回収で戦争が始まることがあり得たと言及した。「(巨額の対外債務にあえいでいる)今のギリシャに武力行使がなされないのは、20世紀における国際法発展のひとつの帰結と言える」とのコメントには客席が沸いた。

 木村氏は、国際連合憲章でも、あらゆる武力行使は違法とされていると指摘し、日本の憲法9条が異質ではないことを強調する。

 「9条を海外に輸出すべきだ、という発言を耳にすることがあるが、中国や北朝鮮を含む200ヵ国近くが国連憲章(国際条約)を批准しており、わざわざ9条を輸出しなくとも(不戦は)国際法の原則となっている」

 では、なぜ、戦争が起きるのか──? 

 木村氏は、国連憲章上、3つの例外が容認されると指摘する。当該するのは、42条と51条で、「侵略国家が登場した場合、加盟国全体で、その侵略を阻止しようという発想から生まれたのが国連。つまり、42条にある国連安保理決議で対応措置が必要と判断されれば、侵略国相手に、国連軍や多国籍軍への参加(非義務)という形で、武力行使が許されるのだ」と説明する。

 ただ、国連決議が行われるまでには日数がかかりやすいため、待っている間にどんどん攻撃されるリスクがある。その点を補うのが、51条にある各国の「自衛権行使」を認める条文だ。

 「被害国が反撃する『個別的自衛権』と、第三国が被害国の防衛に力を貸す『集団的自衛権』の2つのルールが存在する」

「他国防衛」容認の憲法条文は存在せず!

 木村氏は、1. 国連安保理決議、2. 個別的自衛権、3. 集団的自衛権──の3つの例外の中では、集団的自衛権がもっとも危ういことは、国際法学者も認めているとし、「安保理決議を経ることなく、当該する第三国の判断だけで紛争に介入できるため、乱用につながりやすい面がある」と述べた。

 日本国憲法と武力行使の関係について、木村氏は、「9条1項で、国際紛争の解決のための武力行使を禁じており、2項で軍編成の権利や交戦権を持たないとしている」と述べ、9条をめぐる見解は、1. あらゆる武力行使を禁じている、2. 9条1項で「国際紛争」としているため、いわゆる「侵略戦争」を禁じている──の2つに大別されるとしながらも、「2. についても、9条2項で『軍隊を持ってはいけない』としているため、『9条は(侵略戦争以外でも)武力行使を認めない』というのが、国民レベルを含めた一般的な見方だ」と語った。

 日本政府はこれまで、自衛隊の編成と個別的自衛権の行使の合憲性を、憲法13条が政府に課している、「国民の生命を保護する義務」に見出してきたが、一方の他国防衛に関しては、「例外を許容する条文は、現行憲法の中には見当たらない」と木村氏は言う。

 「外国の防衛を援助するために、武力行使を行う義務を、日本政府は憲法上、負っていない」

「集団的自衛権行使=合憲」論者を、いかに打ち負かすか

 「憲法は、日本政府に行政権と外交権を委ねている」とも指摘する木村氏は、個別的自衛権の行使は「行政権」の範疇にあると指摘。一方の「外交権」については、「国同士が、お互いの主権を尊重しながら関係をとり結ぶものだが、軍事は、相手国の主権を制圧して実力行使を行うもの。つまり、相手国への空爆は外交努力ではない」とし、他国防衛を援助する集団的自衛権の行使は「軍事権」の行使でしかない、と解説した。

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