我々の今後にとって重要な文書であり、しかも目の前にあるにも関わらず、マスメディアが見て見ぬふりをして、一切触れようとしないものがある。米国から日本への露骨な指示書。その米国の指示に添って日本を動かす計画書である。これは、陳腐な陰謀論のお話ではない。
たとえばCSISの「第三次アーミテージレポート」。あるいはヘリテージ財団「クリングナー論文」。そしてもう一つが、我が安倍総理が英文で発表した「セキュリティ・ダイヤモンド論文」だ。このどれもが、英文でネットで発表され、我々の眼前にあるのに、日本の主要メディアは、素知らぬ顔をして、正面からまともに取り上げようとしない。
「第三次アーミテージレポート」については、我々は仮訳をオープンにしている。
その内容についての注解は、「岩上安身のIWJ特報!」第75・84・85号において行った。ここには原発の維持、TPPへの参加、辺野古の新基地建設、集団的自衛権を行使してホルムズ海峡へ自衛隊を出せ、等々、米国の国益のために日本が実行すべき、とされる政策がずらりと並べられており、実際、民主党・野田政権から自民党・安倍政権に至るまで、米国のオーダーを忠実に履行していることがわかる。
また、日中間の尖閣諸島をめぐる激化するきっかけをつくったのは、2012年4月16日の石原慎太郎東京都知事(当時)の「尖閣を都が購入する」という発言だったが、この発言が行われた舞台は、米国のヘリテージ財団で、その準備にも関わった同財団の上級研究員で元CIA職員のブルース・クリングナー氏は、「この日中間の対立は、米国にとって死活的に重要ないくつかの政治的目的を達成する絶好のチャンスである」というレポートを、同年11月14日に発表した。日中間の対立を煽り、米国が漁夫の利を得るという戦略の構図を、ぬけぬけと明らかにしているのである。
そしてもうひとつの論文が、「セキュリティ・ダイヤモンド論文」である。2012年末の第二次安倍政権発足直後、英文で「プロジェクト・シンジケート」というサイトに掲載された、「アジアの民主主義 セキュリティ・ダイヤモンド」という、安倍総理の論文である。この論文を掲載した「プロジェクト・シンジケート」には、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ氏や、マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏、ゴールドマン・サックスのジム・オニール氏(GSアセットマネジメント会長)とピーター・サザーランド氏(GSインターナショナル会長)など、錚々たる人物が名を連ねている。
これは、第2次安倍政権の今後の安全保障政策を決める、いわば「グランドプラン」だ。この論文の中で安倍総理は、冒頭から、「南シナ海は、中国の海になっているかのように見える」と対中国脅威論を過剰なまでに煽り、そのうえで、「オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイヤモンドを形成」して、中国を南シナ海から排除すべきだ、とまで主張している。驚くほど、高圧的で、敵対的な論文である。書いているのが在野の評論家などではなく、日本の政界の「最高指導者」と自認する人物の論文であるから、見のがすわけにはいかない。
この衝撃的な論文を、安倍総理はなぜか英語でのみ寄稿し、日本語の文章ではどこにも発表しなかった。
きわめて不自然なことと言わなければならない。世界に向けて英文で日本の地政学的戦略――それも隣国との間に緊張と対立を呼ぶセンセーショナルな論文――を発表しておきながら、国内にはアナウンスせず、しかも、こうした安倍内閣の内外へのアナウンスの使い分けをよくよく心得てのことか、日本の主要メディアは、この論文の内容を翻訳して一般の日本国民へ伝えようとしてこなかったのである。この気味の悪さはいったい何ごとか。安倍政権と記者クラブメディアのべったりとした慣れ合いは、どこまで根が深いのか、と呆れざるをえない。
この論文の邦訳は、本来であれば、プロジェクト・シンジケート叢書の第2弾にあたる『世界は考える』の中に収録されるはずであったという。ところが、我々のもとに版元の土曜社の編集部から、献本が送られてきたが、安倍論文は収められていなかった。担当編集部に問い合わせると、英文で全世界に読まれたはずの論文を、邦訳で本にまとめるに際して、安倍総理サイドが論文の掲載を承諾しなかったという。日本語で、広く日本国民に読んでもらいたいとは思わなかったらしい。いや、読んでもらっては困る、と考えたというべきか。
これはしかし、日本国民にこそ、日本語で広く読まれるべきである。自国のトップが、すぐ隣に位置する大国に対して、ケンカ腰で何を仕掛けようとしているのか、日本人自身が知り、その是非を判断すべきである。中国に対する無謀ともいえる「封じ込め」政策を自国のトップが目論んでいるなら、それは主要メディアが積極的に明らかにし、国内での議論の俎上に上げるべきではないか。中国に対して攻撃的な姿勢をとれば、中国も身構えて、日本に対して攻撃的な姿勢をとる。その反動や反発のリスクを負わせられるのは、我々国民なのである。
IWJはいち早くこの論文を独自に邦訳し、2013年7月30日にメルマガ「岩上安身のIWJ特報!」第95号でお伝えした。
しかし、もう一度この論文を掲載しなければならない時がきている。なぜならば、このグランドプランは、すでに完全に肩すかしをくらっているからだ。
安倍総理の呼びかけ虚しく、各国が雪崩を打ってAIIBに参加
今年の3月31日、世界に衝撃が走った。
AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立に際して、日米をのぞく世界の主要国の大半が参加を表明したのだ。日米両政府が必死になって参加しないように説明して回っていたにもかかわらず、である。
アジアの発展途上国におけるインフラ開発のニーズ増大に応えるために創設が提唱されたAIIBに対し、日本は、既存のADB(アジア開発銀行)が存在するという理由で、3月末、参加を見送った。ADBは、日本と米国が中心となって運営している機関で、歴代の総裁には、日本の財務省出身者が就任している。日本がAIIBへの参加を見送った背景には、米国の意向と、財務省の抵抗があった。
しかし、日本の意向とは逆に、AIIBに対しては、今年3月上旬にG7の中でイギリスが参加表明をしたのを皮切りに、フランス、ドイツ、イタリアといったEUの主要国が参加を表明。ブラジル、ロシア、インドといったBRICs諸国、さらにはASEANのインドネシア、ベトナム、シンガポールなど加盟10カ国すべてが参加することになった。日本は、米国とその意を受けた外務省、そして省益に固執した財務省の意向に従った結果、世界の中で孤立することになったのである。
このAIIBショック、日本の主要メディアではいかにもたいしたことのないような御用報道が繰り返されているが、どうとりつくろっても、狼狽は隠せない。
中国が「この指止まれ」と言ったときに、イギリスを筆頭に米国の最も重要な同盟国やヨーロッパの主要先進国、ロシア、ブラジルなどの急成長をとげるBRICs諸国、そして「セキュリティ・ダイヤモンド論文」の中で、日本とともに中国を「封じ込める」ダイヤモンドを形成するはずのインドやオーストラリアといった国々、さらに韓国、東南アジア、中央アジアなど、中国を太平洋でぐるりと取り囲む諸国が加盟を表明したのである。「中国封じ込め」どころか、世界の主要国がこぞって、中国が資金を提供する国際金融機関の創設に加わるというのだから、安倍構想など話にならない。
何よりも米国の同盟国の中で唯一、「尻尾」でありながら「胴体」である米国をふり回すことのできるイスラエルまで、中国の突き出した人差し指に飛びついた。
国際金融機関の創設は、学校のクラス内の人気投票ではないが、あえて例えると、「中国君」の呼びかけに対して、日米が頑なに拒み、他のクラスメートに加わらないようにと呼びかけて回ったのに対し、「中国君」の人望や人気(あるいはもちろん仲間になることの利益)の方がはるかに大きく、「中国君」の仲間になることを選んだ諸国が多かったことを端的に示す。
クラスの「番長」たる「ジャイアン」「米国君」は、面目を失ったが、「中国君」とは経済的なつきあいが深いので、片手では拳を握りつつ背中に隠し、もう一方の片手を開いて差し出して、「仲良くしよう」とひとまず握手を求めている構図である。真に恥をかいているのは、「ジャイアン」に小判ザメとしてつき従った「スネ夫」こと日本の従属ぶりである。
いったい「スネ夫」は、何の「戦略」があって、対米従属一辺倒に傾いているのか?
安倍総理は、自身の掲げた「中国封じ込め」という見当違いの野望にそって、集団的自衛権の行使容認を含む安保法制を、強硬に進めている。
これも非常におかしな話だ。中国が日本にとって切実な軍事的脅威であるというなら、日本周辺の守りを固めなくてはならない。ところが、集団的自衛権の行使を前提に改定された日米ガイドラインとそれに対応する一連の安保法制では、自衛隊の出動範囲に地理的制約をなくし、全世界、地球の裏側までも米国につき従っていく話になる。戦力は分散され、日本周辺は逆に手薄になってしまう。こんな詐欺めいた話があるだろうか。「中国の脅威」という話で釣っておいて、日本の自衛隊に「ホルムズ海峡の機雷掃海」に行かせるという話なのである。
それが根本からおかしい。いかがわしい。今こそ、この論文、安倍総理の呆れた、肩すかしの野望を、多くの国民が知るべきだろう。安倍総理は、世界と時代を見る眼がまったく曇っている。
米国は、訪米した安倍総理に、4月29日、連邦議会上下院両院合同会議において、演説を行わせる「栄誉」を与えた。しかし、その演説の内容たるや、歯が浮き、鳥肌が立ち、目も耳も覆いたくなるような代物だった。米国へのあられもないこびへつらいと、自己陶酔とが入り混じった内容で、しかも、日米間で交渉が行われているTPPについて、次のように述べている。
太平洋の市場では、知的財産がフリーライドされてはなりません。過酷な労働や、環境への負荷も見逃すわけにはいかない。
許さずしてこそ、自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、根づかせていくことができます。
その営為こそが、TPPにほかなりません。
しかもTPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があることを、忘れてはなりません。
ここで安倍総理は、図らずも、TPPには単なる経済連携協定を超えた、「安全保障上の大きな意義がある」と語っている。TPPにより、日本と米国を主軸とした、経済的・軍事的ブロック圏を、太平洋上に作るべきだ、と米国側に呼びかけているのである。TPPが単なる自由貿易圏の構想ではないことは明らかである。
ここで、日米同盟の仮想敵国として、安倍総理の念頭にあるのが、中国であることは間違いない。
「日本の孤立」の原因となった安倍総理の野望、その呆れた論文の中身とは
先に述べた通り、IWJでは、この論文の邦訳を独自に作成し、2013年7月に発行したメルマガ「岩上安身のIWJ特報!」第95号の中で、解説を加えながら、この「セキュリティ・ダイヤモンド構想」を紹介した。しかし、購読者用の有料コンテンツだったため、その全文を目にすることができなかった方もいたかもしれない。
TPP妥結が目前に迫り、中国がAIIB創設を提唱し、日本が集団的自衛権行使容認によって対米従属を深めている今、改めて、この「セキュリティ・ダイヤモンド構想」の全文を公開する。安倍政権が唱える対中国脅威論が、いかに荒唐無稽で、日本の国際的孤立化を招くものか、ぜひ、ご一読いただきたい。
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◆Asia’s Democratic Security Diamond
◆アジアの民主主義 セキュリティ・ダイヤモンド
In the summer of 2007, addressing the Central Hall of the Indian Parliament as Japan’s prime minister, I spoke of the “Confluence of the Two Seas” – a phrase that I drew from the title of a book written by the Mughal prince Dara Shikoh in 1655 – to the applause and stomping approval of the assembled lawmakers. In the five years since then, I have become even more strongly convinced that what I said was correct.
2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、私は「二つの海の交わり」─1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコーが著わした本の題名から引用したフレーズ─について話し、居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て、私は自分の発言が正しかったことをますます強く確信するようになった。
Peace, stability, and freedom of navigation in the Pacific Ocean are inseparable from peace, stability, and freedom of navigation in the Indian Ocean. Developments affecting each are more closely connected than ever. Japan, as one of the oldest sea-faring democracies in Asia, should play a greater role in preserving the common good in both regions.
太平洋における平和、安定、航海の自由は、インド洋における平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。互いの発展はこれまで以上に結びついている。アジアにおける最も古い海洋民主国家たる日本は、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。
Yet, increasingly, the South China Sea seems set to become a “Lake Beijing,” which analysts say will be to China what the Sea of Okhotsk was to Soviet Russia: a sea deep enough for the People’s Liberation Army’s navy to base their nuclear-powered attack submarines, capable of launching missiles with nuclear warheads. Soon, the PLA Navy’s newly built aircraft carrier will be a common sight – more than sufficient to scare China’s neighbors.
にもかかわらず、ますます、南シナ海は「北京の湖」となっていくかのように見える。アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく南シナ海も中国の内海となるだろうと言うように。南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原子力潜水艦を配備するに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母が日常的に見かけられるようになるだろう。中国の隣国を恐れさせるに十分である。
That is why Japan must not yield to the Chinese government’s daily exercises in coercion around the Senkaku Islands in the East China Sea. True, only Chinese law-enforcement vessels with light weaponry, not PLA Navy ships, have entered Japan’s contiguous and territorial waters. But this “gentler” touch should fool no one. By making these boats’ presence appear ordinary, China seeks to establish its jurisdiction in the waters surrounding the islands as a fait accompli.
これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、日本が屈してはならない理由である。確かにこれまで日本の接続水域および領海に進入してきたのは、軽武装の中国巡視船であり、中国海軍の艦艇ではない。だが、このような“穏やかな”接触に騙されるべきではない。これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。
If Japan were to yield, the South China Sea would become even more fortified. Freedom of navigation, vital for trading countries such as Japan and South Korea, would be seriously hindered. The naval assets of the United States, in addition to those of Japan, would find it difficult to enter the entire area, though the majority of the two China seas is international water.
もし日本が屈すれば、南シナ海はさらに要塞化されるであろう。日本や韓国のような貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は深刻な妨害を受けるであろう。両シナ海の大半は国際海域であるにもかかわらず日米両国の海軍力がこの全域に入ることは難しくなるだろう。
Anxious that such a development could arise, I spoke in India of the need for the Indian and Japanese governments to join together to shoulder more responsibility as guardians of navigational freedom across the Pacific and Indian oceans. I must confess that I failed to anticipate that China’s naval and territorial expansion would advance at the pace that it has since 2007.
このような事態が生じることを懸念し、太平洋とインド洋をまたぐ航行の自由の守護者として、日印両政府が共により大きな責任を負う必要を、私はインドで述べたのであった。私は中国の海軍力と領域拡大が2007年以降も同様のペースで進むであろうと予測できなかったことも告白しなければならない。
The ongoing disputes in the East China Sea and the South China Sea mean that Japan’s top foreign-policy priority must be to expand the country’s strategic horizons. Japan is a mature maritime democracy, and its choice of close partners should reflect that fact. I envisage a strategy whereby Australia, India, Japan, and the US state of Hawaii form a diamond to safeguard the maritime commons stretching from the Indian Ocean region to the western Pacific. I am prepared to invest, to the greatest possible extent, Japan’s capabilities in this security diamond.
東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の最優先課題としなければならないことを意味する。日本は成熟した海洋民主国家であり、その親密なパートナーの国々もこの事実を反映すべきである。私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイ州によって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するひし形(ダイヤモンド)を形成することにある。私はこのセキュリティーダイヤモンド(ひし形安全保障)に、出来る限り最大の力を注ぐつもりだ。
My opponents in the Democratic Party of Japan deserve credit for continuing along the path that I laid out in 2007; that is to say, they have sought to strengthen ties with Australia and India.
対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化しようと努力してきた。
Of the two countries, India – a resident power in East Asia, with the Andaman and Nicobar Islands sitting at the western end of the Strait of Malacca (through which some 40% of world trade passes) – deserves greater emphasis. Japan is now engaged in regular bilateral service-to-service military dialogues with India, and has embarked on official trilateral talks that include the US. And India’s government has shown its political savvy by forging an agreement to provide Japan with rare earth minerals – a vital component in many manufacturing processes – after China chose to use its supplies of rare earths as a diplomatic stick.
その二国のうち、(世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端にアンダマン・ニコバル諸島を擁し、東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として使うことを選んで以後、インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。
I would also invite Britain and France to stage a comeback in terms of participating in strengthening Asia’s security. The sea-faring democracies in Japan’s part of the world would be much better off with their renewed presence. The United Kingdom still finds value in the Five Power Defense Arrangements with Malaysia, Singapore, Australia, and New Zealand. I want Japan to join this group, gather annually for talks with its members, and participate with them in small-sized military drills. Meanwhile, France’s Pacific Fleet in Tahiti operates on a minimal budget but could well punch above its weight.
私はアジアの安全保障を強化するため、イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。海洋上の民主主義のためには、日本の世界における役割は、英仏の新たなプレゼンスとともにあるほうがより賢明である。英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとの五カ国防衛協定に価値を見いだしている。私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、小規模な軍事演習にも加わらせたい。一方、タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、いずれ重要性を大いに増してくるであろう。
That said, nothing is more important for Japan than to reinvest in its alliance with the US. In a period of American strategic rebalancing toward the Asia-Pacific region, the US needs Japan as much as Japan needs the US. Immediately after Japan’s earthquake, tsunami, and nuclear disaster in 2011, the US military provided for Japan the largest peacetime humanitarian relief operation ever mounted – powerful evidence that the 60-year bond that the treaty allies have nurtured is real. Deprived of its time-honored ties with America, Japan could play only a reduced regional and global role.
とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。米国のアジア太平洋地域における戦略的再編期にあっても、日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、米国もまた日本を必要としているのである。2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、ただちに行なわれた米軍の類例を見ないほど大規模な平時の人道支援作戦は、60年かけて培われた日米同盟が本物であることの力強い証拠である。
I, for one, admit that Japan’s relationship with its biggest neighbor, China, is vital to the well-being of many Japanese. Yet, to improve Sino-Japanese relations, Japan must first anchor its ties on the other side of the Pacific; for, at the end of the day, Japan’s diplomacy must always be rooted in democracy, the rule of law, and respect for human rights. These universal values have guided Japan’s postwar development. I firmly believe that, in 2013 and beyond, the Asia-Pacific region’s future prosperity should rest on them as well.
私は、個人的には、日本の最大の隣国たる中国との関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。しかし、日中関係を向上させるために、日本はまず太平洋のもう一方の側との絆をしっかりと固めなければならない。なぜなら最終的には、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根ざしていなければならないからである。これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。2013年以降、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。
【岩上安身のニュースのトリセツ】「対中国脅威論」の荒唐無稽――AIIBにより国際的孤立を深める日本~ 安倍総理による論文「セキュリティ・ダイヤモンド構想」全文翻訳掲載 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/251637 … @iwakamiyasumi
安倍政権の「本音」がここにある。
https://twitter.com/55kurosuke/status/617425255145979904
安倍の論文や米国議会での演説が英語だった点についてだが、ライターが米国人だという単純な理由ではないだろうか。《安倍総理サイドが論文の掲載を承諾しなかったという》のも、そもそも元になる日本語の文章が存在しないからではないか。もしも安倍が自身で論文を書いたのならば、発表論文以外に日本語で同じ理論展開の論文が存在するはずなので英文で発表した論文だけ隠す必要は全くない。米国議会での演説でも原稿に演技について指示が書いてあったし、日本の国会でも原稿に指示が書いてあった写真が撮られている。どちらも他人が書いた原稿で本人は指示に従って読んだだけではないのか。だからと言って、総理大臣ともあろう人間は責任を逃れることは出来ない。日本が戦争に負けた場合には戦犯である。
《2012年4月16日の石原慎太郎東京都知事(当時)の「尖閣を都が購入する」という発言》も米国のヘリテージ財団で行われたが、同財団で書いたシナリオではないだろうか。彼も安倍と同じで戦争に負けた場合には戦犯であることには変わりは無い。
日本で“愛国”や近隣諸国を敵対視する人間には、どうも結果責任に於いて国益を損なうことが最初から認識できている“饅頭怖い”人ばかりなのではないか。安倍や石原慎太郎を見ていると普通の常識的な大人ならばそう判断すると思う。いくらなんでも小説をよく読むような人はそれくらいの想像は出来るので、小説を書く石原慎太郎は判ってやっている可能性が甚だ大である。確信犯だということだ。
安倍晋三現首相の論文は、日本と中国とあいだの友好関係が、南シナ海における中国の覇権主義による武力的脅威に変化しる、これに対応するために日米同盟を軸に英仏豪印諸国が一致団結する必要があることを論じている。
問題点を6つあげ指摘したい。
1.南シナ海を「北京の湖」と表現している。
安倍論文は、中国政府が南シナ海を「北京の湖」と考えているに違いないという総理の猜疑的確信に基づいてそう主張する。これについて、2013年に在東京の英字紙は安倍総理が「北京の湖」と表現したことを不気味であるとし、中国がそれ相応の脅威を実現するには膨大な軍事予算と軍事技術開発と使用が必要であると示唆し現実性に乏しいことを指摘している。
・THE DIPLOMAT:The South China Sea: “Lake Beijing”,January 07, 2013
http://thediplomat.com/2013/01/the-south-china-sea-lake-beijing/
ちなみに、「北京の湖」で検索してみると実際の北京の観光案内に幾つもあたるが引用した記事もまた簡単に出てくる。
2.安倍論文は南シナ海における中国海軍の航空母艦配備により、公海の艦船航行ができなくなることを強調する。
これまでも南シナ海における中国の脅威を論じたものがあったが中国が経済大国になる前で、中国海軍の装備が足らない状況をも指摘していた。実際現在の中国海軍に航空母艦が配置されたとしても単独で南シナ海を武力制圧するのは至難の技で潜水艦と組み合わせても日本の自衛隊やアメリカ海軍と広範囲に相対時したり、大小の民間艦船の航行を海域すべてで妨害できるかというと疑問である。
3.中国・台湾・ベトナム間の南沙諸島の領有問題がニュースにもなるが安倍論文では問題にしていない。
南シナ海全域が中国により海上封鎖されることだけをもっぱら想定している。この論文は「シーレーン」防衛の観点から、その是非はおいても全く言及がない。安倍論文は私たちが知る現実的な外交防衛を扱わないことにおいて非現実的である。
4.「ダイヤモンド・セキュリティ」という、題名と図は本文と乖離している。
図は本来、論文の内容を説明するものであるが、安倍論文の図が何を示すのかが論文からは理解しがたい。安倍論文は南シナ海について論じていて、論文の内容から図が浮かばないし、反対に図を説明する文章も見当たらない。図はかなり鋭角をもつ四角形を用い国を分断する形をしている。「ダイヤモンド」とは、この図の四角形の名称であろうが、高級な食事にメディア関係者と贅沢三昧の日々を送っている安倍首相が、宝石のダイヤモンドを図につける感覚には疑問符がつく。与えらえたものについては判断できるが、自ら構想したときには実にお粗末なものを提示してしまうのではないか。「ダイヤモンド」には、国境線はもちろん、空路、海路、緯度経度。歴史上の分割いずれにも近似したものがみあたらない。たとえば眼前の脅威に対して有翼動物が翼を広げて威嚇することがあるがもっとも近似しているのではないか。本論文における安倍総理の想像はそのようなものであろう。これは推定であるが、図を説明する文章が以前はあり論文発表の段階で安倍総理が削除し図だけが残った可能性がある。
5.インドにおける演説がもとであるがインドには南シナ海に直接利害関係がなく批判する相手が誰もいない。
安倍論文が英文で書かれインドで好評であったという。インドを選んだのは、まず、インドの対中国感情の悪さである。これはIWJで伊勢崎賢治東京外国語大学大学院教授の指摘に教えられることが多々あるが伊勢崎教授は中国がスリランカ内戦の調停、パキスタンにおける港の建設と、中国の平和調停と軍事目的使用意図に触れられている。中国のインド周辺への進出は事実であるため、アラビア海、ベンガル湾二つの海に日本の軍事支援が必要としているようである。インド接近のもうひとつの理由は、安倍晋三首相の祖父岸伸介元首相が就任後最初に訪問したのがインドであったことである。
6.いたずらに中国脅威論を展開しようとしてインドやアメリカの一部の者の賛辞を得ようとする意図があったのであろうが、まったく現実的具体的とはいえない。本論文は荒唐無稽で猜疑的なアジア太平洋解釈に基づく文章の寄せ集めである。
追記
翻訳にあたられた方々へ。日本語訳の労に感謝いたします。
追記2
安倍首相は2012年に論文について再論しています。
・PRPJECT SYNDICATE:Asia’s Democratic Security Diamond,DEC 27, 2012
http://www.project-syndicate.org/print/a-strategic-alliance-for-japan-and-india-by-shinzo-abe
追記3
外務省は平成18年の「自由と繁栄の弧」構想をもって公式見解として、安倍論文は個人的見解とするでしょう。
中国を仮想的として現在あるのはインドとの「対中国・戦略的パートナーシップ」です。
・「ひろがる外交の地平~日本外交の新機軸~」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/free_pros/pdfs/shiryo_01.pdf
同じ内容は平成19年の外交青書にも記載されているそうです。
・平成19年(2007年)版外交青書(日本外交の新機軸(「自由と繁栄の弧」の形成))
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/free_pros/index.html
・平成19年8月22日のインド国会の演説「二つの海の交わり」(Confluence of the Two Seas)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/19/eabe_0822.html
ダイヤモンド・セキュリティが発想のもとにあることは否めないと思います。
余談ですが演説の中で「極東国際軍事裁判で気高い勇気を示されたパール判事は、たくさんの日本人から今も変わらぬ尊敬を集めているのです。」の沢山とはパール判事の日本無罪論を信奉するひとたちのことですが、「たくさん」かというと、この前の菅官房長官と五十歩百歩と思います。
このパートナーシップは続いて今年2月も飛行艇の取引があります。
・インド、日本の海自飛行艇を購入へ 対中国・戦略的パートナーシップ強化と印メディア報道
http://newsphere.jp/politics/20150227-3/
安倍論文は現実的に形を変え継続していると思います。
安倍総理による論文「セキュリティ・ダイヤモンド構想」全文翻訳掲載 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/251637 … @iwakamiyasumi この衝撃的な論文を、安倍総理はなぜか英語でのみ寄稿し、日本語の文章ではどこにも発表しなかった。これがどういう意味をもつか考えてほしい。
https://twitter.com/55kurosuke/status/887784815465857024
中国の軍事力で南シナ海の完全封鎖は今は無理でも将来的には可能なのでは?軍事費の伸び、装備の拡充は目を見張るものがあります。そして今は完全封鎖は無理ですが、日本は1隻の航行妨害にもあいたくないのに現状の中国なら何時でも難癖つけて妨害は可能です。中国共産党に人権や法の支配の概念が無く信頼に値しない存在である限り、備えはしておくべきだと思います。逆に何故中国を信用して備えなくても良いのかちゃんと説明して欲しい。勿論歴史上世界一の侵略国家は米国なので、絶対に信頼出来るかと言えば無理ですが、領土を奪われる様なトラブルは極東の国々が起こしているので、まずはそちらが重要だと思います。