「これは言論弾圧そのものだ」――“潰さなあかん”と名指しされた琉球新報、沖縄タイムス両編集局長が海外プレス向けに会見! 自民議員発言にブルームバーグ記者「背筋凍った」 2015.7.2

記事公開日:2015.7.4取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・原佑介)

※7月4日テキストを追加しました!

 自民党による言論弾圧の動きには海外メディアも注視している。

 自民党の若手議員による勉強会「文化芸術懇話会」で、大西英男氏、井上貴博氏、長尾敬氏らが「沖縄メディアは左翼勢力に乗っ取られている。2つの新聞によって沖縄の世論がゆがんでいる」「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」などとメディアの弾圧を画策した。講師に招かれた作家・百田尚樹氏も「沖縄の2つの新聞は絶対潰さなあかん」などと煽った。

 日本外国特派員協会は2015年7月2日、自民党議員らに名指しされた沖縄タイムス、琉球新報の編集局長を招き、記者会見を開催した。

 司会のブルームバーグ記者、ピーター・ランガン氏は会見冒頭、「自民党会議での発言には『報道の自由』の危機を感じ、背筋が凍った」と語った。今回の問題発言に対し、日本外国特派員協会は「民主主義の基本となる『言論や報道の自由』を損なう発言や活動は繰り返されており、非常に危険なパターンとして現れている」との会長声明も発表している。

※日本外国特派員協会 会長声明 「与党議員会合における発言について(PDFファイル)」

■ハイライト

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

「言論弾圧は沖縄2紙にすべてのメディアに向けられるおそれがある」

 沖縄タイムスの編集局長・竹富和彦氏は「沖縄の世論は歪んでいる」との長尾発言について、「沖縄県民を馬鹿にした発言」だとして憤りを隠せない。

▲記者会見に臨む、潮平芳和・琉球新報編集局長(写真左)と武富和彦・沖縄タイムス編集局長

 「沖縄は、(国土面積の)0.6%の土地に74%もの米軍施設が集中し、戦後70年間、苦しみを背負わされてきた。『これ以上の苦しみは嫌だ』と声をあげたが、聞いてもらえない。辺野古新基地建設反対の住民の意思は固いにも関わらず、住民の意思を『歪んでいる』というのは、あまりにも無神経だ」

 続けて「沖縄には戦後、10以上の新聞社があったが、今日まで残っているのは沖縄タイムスと琉球新報だけ」と紹介し、その背景には沖縄の「民意」があると説明する。

 「それは米軍の圧政下でも、常に民衆側に立った報道をしてきたことが支持をされたから。沖縄は、新聞社が世論をコントロールしているのではなく、世論に突き動かされて新聞の報道がある。為政者に都合が悪くても、民意をしっかり受け止めるべきだ」

 竹富氏は「自民党による言論弾圧は沖縄2紙にとどまらず、すべてのメディアに向けられるおそれがある」とも指摘した。

 最後に、「沖縄タイムスの創刊メンバーが、『一方に圧倒的な力を持つ権力者がいて、一方には基本的人権すら守られない住民がいる。力の不均衡がある場合に客観、公正を保つには、力のない側に立って、少しでも均衡を取り戻すことが大事』と言っていた、この言葉は、本土復帰前の言葉だが、沖縄の状況は今も変わらない。今に通ずるものがある」と主張。

 「偏向報道」との批判に反論した。

「表現の自由、言論の自由を再生、強化する再出発の機会に」

 琉球新報の編集局長・潮平芳和氏は「政権の意に沿わないメディアは兵糧攻めにし、言論の自由を取り上げようとする。これは言論弾圧そのものだ」と非難する。

 「日本は民主主義国家を辞め、全体主義の国に一歩一歩進んでいる。マスコミを懲らしめるという発想自体が憲法尊重遵守義務にも違反し、二重、三重の憲法違反になっている」

 「沖縄メディアは左翼勢力に乗っ取られている」という発言に対し、「沖縄の2紙が世論を弄ぶような思い上がった新聞であれば、県民の支持を失い、地域社会から退場勧告を受けていただろう」と反論。「社会的弱者に寄り添う新聞がおごり高ぶることなどあろうはずがない」と断じた。

 そのうえで潮平氏は戦時中に立ち返り、新聞の犯した「罪」に言及する。

 「1940年、沖縄で3つの新聞が統合し、沖縄新報という新聞社が設立された。沖縄新報は国家権力の戦争遂行に協力し、県民の戦意を高揚させる役割を果たし、おびただしい数の住民が犠牲になった。戦後、沖縄の新聞は戦争に加担した新聞人の反省から出発し、『戦争につながるような報道は二度としない』という考えが報道姿勢のベースにある」

 さらに、「琉球新報は、一貫して戦争に反対するとともに、沖縄戦や米軍支配の経験を踏まえ、沖縄の自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配という普遍的な価値を日米両国民と同じく適用してほしい、平和憲法の恩恵をもたらしてほしい、という精神で日々の紙面をつくっている」と主張した。

 そのうえで、「軍事偏重の日米関係ではなく、国民の信頼と国際協調の精神に根ざした持続可能な日米関係を目指すべきだと主張している。これがなぜ世論を歪めていることになるのか不可解だし、偏向呼ばわりされるのは心外だ」と反駁。

 「今回の問題が民主主義の終わりの始まりではなく、この国の表現の自由、言論の自由を再生、強化する再出発の機会になればと考えている」と訴えた。

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「これは言論弾圧そのものだ」――“潰さなあかん”と名指しされた琉球新報、沖縄タイムス両編集局長が海外プレス向けに会見! 自民議員発言にブルームバーグ記者「背筋凍った」」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「これは言論弾圧そのものだ」――“潰さなあかん”と名指しされた琉球新報、沖縄タイムス両編集局長が海外プレス向けに会見! 自民議員発言にブルームバーグ記者「背筋凍った」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/251396 … @iwakamiyasumi
    世界から孤立しつつある日本。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/617426970389839872

@55kurosukeさん(ツイッターのご意見) にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です