安全保障関連法案の撤回を求め、立憲デモクラシーの会の学者ら9名による記者会見が2015年6月24日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開かれた。
「集団的自衛権行使容認は憲法違反」――この会見には、6月4日に行なわれた衆議院憲法審査会で安保法案に「違憲」を突きつけた憲法学者の長谷部恭男早稲田大学教授、小林節慶応大学名誉教授も出席、注目を集めた。
今年2015年は戦後70年、天皇機関説事件から80年。1935年、天皇機関説を提唱した憲法学者の美濃部達吉に対し、軍部や右翼らの排撃が激化したことと同様の事態が、現在、憲法解釈の論争の下で起きている。
「学者の立場、学問の観点から憲法違反の疑いがある法制に対して批判をするということは、職業上の義務」だと、立憲デモクラシーの会共同代表の山口二郎法政大学教授は語る。同会は会見で、安保法案の撤回を求める声明文を発表した。
憲法、政治、日本文学、社会科学など多くの学者で結成された立憲デモクラシーの会は、暴走する政府と対峙し、法案可決に歯止めをかける姿勢だ。
- 立憲デモクラシーの会「安保関連法案の撤回を求める声明」(2015年6月24日)
出席者(席順)は、小森陽一 東京大学教授(日本文学)、中島徹 早稲田大学教授(憲法学)、高見勝利 上智大学教授(憲法学)、小林節 慶應義塾大学名誉教授(憲法学)、樋口陽一 東京大学名誉教授(憲法学)、長谷部恭男 早稲田大学教授(憲法学)、石川健治 東京大学教授(憲法学)、千葉真 国際基督教大特任教授(社会科学)、山口二郎 法政大学教授(政治学)。
- 日時 2015年6月24日(水) 13:00~
- 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
天皇機関説事件――「学問が弾圧されてから戦争で国が滅びるまでわずか10年だった」
※以下、発言要旨を掲載します。
山口二郎氏「立憲デモクラシーの会は、昨年(2014年)の集団的自衛権行使容認の閣議決定の前に結成されまして、一連の憲法9条の解釈変更による自衛隊の活動の拡大について憲法上、また政治学上疑義があるという立場から様々な批判的発言を繰り返してまいりました。
このたび通常国会に安保法制関連諸法案が提出されたことを受けまして、6月6日に東京大学法学部において、京都大学名誉教授の佐藤幸治先生のご講演、樋口陽一先生、石川健二先生、杉田敦先生によるシンポジウムを行いましたところ、会場の定員が700名だったところに1400名の方がおいでになり、大変な盛況でございました。
今回の安保法制をめぐる政治過程において憲法学者の発言が非常に大きな影響を与えている。これは、近年の日本の政治にはない現象であります。
そのことを受けて、自民党の高村副総裁は『憲法学者は憲法の字面に拘泥する』とか『学者の言うことを聞いて平和が守れるか』とか『学者は憲法擁護義務を負っていない』とか様々な学者に対する批判、攻撃をしておられます。
私ども、学者の立場、学問の観点から憲法違反の疑いがある法制に対して批判をするということは、職業上の義務だと考えております。
今年は敗戦から70年ですが、天皇機関説事件から80年という年でもあります。つまり権力によって学問が弾圧されてから戦争に負けて国が滅びるまで、わずか10年だったという事実を私たちは重く考えております」
立憲主義と民主主義「黙っていて予定調和が成立するわけではない」
樋口陽一氏「私たちの会は、立憲デモクラシーの会と称しております。立憲主義とかたやデモクラシー、民主主義。これは決して予定調和の関係にあるわけではありません。
極端に押しつめれば、デモクラシーは語源通りデモス『人民の支配』であります。国民が権力になるということです。他方、立憲主義は、そのような国民の支配すら一定以上の制約に服さなければならないということです。この二つの柱の間で決して黙っていて予定調和が成立するわけではない。どこで緊張に満ちた均衡点を見つけるのか――。
他国の議会で自国の提出していない法案の時期を限っての成立を約束するという、これは国民主権が前提としている、その国民が作っている国家の主権にも無頓着な流用ではないか」
合憲派の西修教授らとの公開討論の場を要望――「学術的に決着がつく」