安倍政権の「内閣は何でも決められる」政治を止める ~「立憲デモクラシーの会」シンポで山口二郎氏ら表明 2014.4.25

記事公開日:2014.4.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 解釈改憲で集団的自衛権の行使容認を目指すことに象徴される、安倍政権の強引なやり方は、立憲主義を軽んじた、いわば「政治の暴力」。このままでは、日本国憲法が無意味になる──。

 政治学や法学、社会学、哲学といった幅広い分野の学者ら総勢約50人が、こうした共通の危機意識の下で結成した「立憲デモクラシーの会」が、4月25日、東京都千代田区の法政大学富士見キャンパスで発足記念シンポジウムを開いた。

 基調講演で登壇した山口二郎共同代表(法政大教授)と愛敬浩二氏(名古屋大教授)は、安倍政権の、憲法による縛りを軽視する政治手法を改めて批判。「衆参のねじれ解消を後ろ盾に、『選挙で選ばれた以上、何を決めてもかまわない』という姿勢で憲法9条を変えてしまおうとする、安倍政権の暴挙に歯止めをかけねば、政治の原理が破壊される」と警鐘を鳴らした。

 最初にマイクを握った愛敬氏は、まず、「改憲派の人たちは、立憲デモクラシーという考え方が、人類普遍の原理であるとは見ていない」と発言。その証拠として、一昨年4月に発表された自民党改憲草案では、基本的人権について定めている97条が削除されていることを指摘した。

 愛敬氏は「自民党は改憲草案に関するQ&Aをホームページ上に設けているが、97条を削除した理由は一切示されていない」とも述べ、国民への説明を行わないまま、肝要な条文を平気で削り取ってしまうところに、今の自民党の立憲主義観が表れているとした。

 その上で、自民党改憲草案づくりで中心的役割を担った参議院議員の礒崎陽輔氏(総理補佐官)の発言に言及。「礒崎氏は97条の削除について、『日本の憲法に西洋の歴史を書かなくていい。市民革命の話など書く必要はない』としている」と述べ、礒崎氏の無理解を激しく非難した。

 また、安倍晋三首相についても、「今年2月3日の衆院予算委員会の答弁で、『憲法は国家権力を縛るもの、という考え方があるが、それは王権が絶対的権力を握っていた時代に主流的だった考え方だ』と語っている」とし、「安倍首相は、立憲主義を知らないのではなく、立憲主義を目の敵にしているのだろう」との見方を示した。

■ハイライト

  • 総合司会 齋藤純一氏(政治学、早稲田大学)
  • 開会挨拶 奥平康弘氏(立憲デモクラシーの会共同代表、憲法学、東京大学名誉教授)
  • 基調講演
    愛敬浩二氏(憲法学、名古屋大学)「立憲デモクラシーは『人類普遍の原理』か?」
    山口二郎氏(政治学・法政大学)「民意による政治の意義と限界-なぜ立憲主義とデモクラシーが結び付くのか?」
  • シンポジウム「解釈改憲をどうとらえるか」
    司会 阪口正二郎氏(憲法学、一橋大学)/パネリスト 毛里和子氏(中国政治、早稲田大学)/青井未帆氏(憲法学、学習院大学)/大竹弘二氏(政治学、南山大学)

自民党改憲草案は、世界の潮流を無視

 「立憲デモクラシー」について、「その核心は、国家権力が暴走しないように縛りをかけること」と説明した愛敬氏は、「そういった価値観は、第2次世界大戦後は、グローバルな了解事項だ」と強調。立憲デモクラシーの観点から憲法を見ると、1. 硬性憲法(96条導入で通常の法律より改正を難しくする)、2. 裁判的方法による人権保障、の2つの特徴が浮かび上がってくるとした。愛敬氏は、後者について、「近年、議会から司法へと権力を移すのが世界的流れ」と述べ、1998年に英国で制定された人権条約や、2008年にフランスで行われた憲法改正が象徴的事例だ、と話した。

 その上で、「自民党の改憲草案を読む限り、『裁判による人権保障』には関心がないようだ」とした愛敬氏は、次のように語った。「安倍首相による『立憲デモクラシーは、国民主権を採用した国には不必要』とか『市民革命を経験していない国は、立憲デモクラシーとは無縁』といった発言を、外国語に翻訳したら、世界の有識者は違和感をもって受け止めるだろう」。

安倍氏と橋下氏に共通する「驕り」

 「選挙と多数決だけで、民主主義が構成されるわけではない」──。開口一番、こう口調を強めたのは、次なる登壇者の山口氏。「国民の多数意思が大きな間違いを犯した事例は、1930年代のドイツを筆頭に山ほどある」と指摘し、「だからこそ、国民の多数意思の代表者ともいえる政治家の権力に、縛りをかけることが大切だ」と力説した。

 その一方で山口氏は、「選挙結果に、すべての民意が反映されるとの見方は間違っている」とも述べ、当選者が「自分は民意の体現者である」と理解することは間違いだと強調。今の日本で、その「間違い」を犯しているのが、安倍首相と橋下徹大阪市長だとし、「彼らは、自分が推し進める改革は、国民が求めているものと誤信している」と話した。

 山口氏は「彼らは選挙戦の際、有権者に対し、当選後の自分の行動をすべて予告したわけではない」と指摘し、「いったん選挙が終わってしまえば、次の選挙まで国民に出番なしというのが、安倍・橋下流デモクラシーの定義だ」と強調した。

 そして山口氏は、安倍首相の私的諮問機関で、集団的自衛権と日本国憲法の関係性の研究を行う「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で、座長代理を務める北岡伸一氏(国際大学学長)の発言を問題視した。

東京新聞での「北岡伸一氏発言」を痛烈批判

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「安倍政権の「内閣は何でも決められる」政治を止める ~「立憲デモクラシーの会」シンポで山口二郎氏ら表明」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    基調講演がサマリーにまとまっていますが、後半のシンポジウムも興味深いです。
    毛里先生のお話は中国の考え方が2000年代からかなり変わり、国家利益が前面に出てきていると指摘。

    四種類の二国間関係として
    ①友好・協力の関係(ロシア) ②普通の関係(独・仏 ) ③新型大国関係(米国) ④対抗の関係(日本)
    日中関係においては長期トータルな対抗関係にするために、別々のイシュウ(価値・歴史問題、パワー抗争、領土利権)を絡めることを日中で行っている・・とも。

    GDPのグラフを見ると、日中の関係が友好ならば燦爛とするのですが、
    日中の対抗関係とTPPは、アジア共同体の構築を阻害しているようにも思えて、もったいない!

    10年ぐらい前にベトナム・カンボジアを観光した時に、すでに中国の人件費が高くなっているということで工場の移転が始まっていて、地元の若い人たちが、「外国企業で働くために外国語を勉強しています。」と、外資の参入を歓迎しているような感じでした。飛行機の乗り換えターミナルにビジネス風の欧米人が多いのにも驚きました。

    ペリーが琉球に来航時に地下水源を調べていた話もIWJで知りましたが、欧米の戦略に圧倒されます。

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