エイミー・グッドマン氏「我々は沈黙させられている」~第33回国際シンポジウム「グローバル化時代にデモクラシーを再生できるか?」 2014.1.18

記事公開日:2014.1.18取材地: テキスト動画
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(取材:IWJ 赤間一欽、記事:IWJ 野村佳男)

 新自由主義やグローバル化の席巻によって、これまで先進的な民主主義国家といわれてきた国々はどうなってしまうのか──。

 新しい時代の民主主義や政党政治のあり方を考えるシンポジウム「グローバル化時代にデモクラシーを再生できるか? 代議制の危機を超えて」が、1月18日、上智大学四谷キャンパスで行われた。上智大学と国際基督教大学が共同で開催している本シンポジウムは、今年で33回目を迎える。

 先進国では、「グローバル化」というスローガンのもと、多国籍企業が市場を支配し、企業エリートが国家権力を欲しいままにしている。日本でも、TPPなどの自由貿易圏の拡大が進む一方で、社会的弱者や敗者の排除が問題化している。さらには、政治やマスメディアが機能不全に陥り、民主主義や基本的人権が脅かされている。

 午前の基調講演では、英ウォーリック大学名誉教授のコリン・クラウチ氏、米国の独立メディア「デモクラシー・ナウ」代表でジャーナリストのエイミー・グッドマン氏が登壇。それぞれ欧州と米国の立場から、市民運動の意義や独立メディアの役割などに触れ、デモクラシー再生への方策を訴えた。

■ハイライト

※英語からの通訳はついておりません。ご了承ください。

ナショナリズムと結びついた安倍政権の危険性

 クラウチ名誉教授は新自由主義の台頭について、「純粋に新自由主義を信奉する勢力は小さいが、宗教団体や右翼イデオロギーと組むことで勢力を拡大している」と語り、非常に不健全な動きであると分析した。

 また、日本の政治状況に関しても、「似たようなことは自民党にも言える」と述べ、ナショナリズムと結びついた自民党安倍政権の危険性を指摘した。

 なぜ、このような政治状況が生まれてしまったのか。クラウチ氏は、「大企業の利益や支配が高まって、政治を動かすようになり、政治が非民主主義的になっている」と問題を提起した。政治制度は機能していても、実際は少数の政治家と企業エリートで決められている、という現実を見る必要があるという。

 新しい民主主義を再生するには、「企業の力にどう戦うか」が重要になると、クラウチ氏は語る。市場経済と言われるが、「企業の力は市場ではなく、実際は政治の力だ」と述べ、規制緩和によって権力が企業に集中し、経済格差や不平等が高まっている現状に警鐘をならした。

 グローバル化によって、多くの国や人々が経済活動に参加し、生活水準を高めることができたという事実をあげ、「グローバライゼーションは敵ではない」と加えた。しかし、規制のないグローバル化は、自由な資本の移動を生む一方、それができない労働者層が犠牲になり、不平等を拡大するという構造を明示した。

 また、医療、教育、福祉の民営化は、「受益者の代わりに政府が民間のお客になるという、おかしな仕組みを生み出す」と語り、政治権力のからんだエリートだけが関わる市場は、真の市場主義ではないと、「民営化で経済が良くなる」という産業界の主張を論破した。

 クラウチ氏は、このような社会的悪影響、民主主義の弱体化に対して、「政治のイデオロギーではなく、よりフレキシブルで非公式的な活動が必要」だと主張。「強大化する企業の力に対抗するには、政治的イデオロギーを超えて、互いの必要性を認め合うことが大切だ」と訴えた。

市民の声を伝える「独立メディア」の役割

 続いて登壇したエイミー・グッドマン氏は、全米でラジオ局を運営していた頃から、現在の「デモクラシー・ナウ」での取材実績に至るまで、独立メディアは大きな影響を与えることができるという、数多くのエピソードを紹介した。

 グッドマン氏は、「メディアは、支配者に対する『例外』にならなければならない」という、本来のジャーナリズムの精神を強く訴えた。「メディアは権力に対するチェックバランスである」という、一貫した信念がある。

 またグッドマン氏は、広島・長崎への原爆投下について触れ、「マッカーサー将軍は『日本への攻撃を報道してはならない』という規制を発令していた」と述べ、オーストラリアのメディアが初めて原爆の惨劇を世界に報じた際、米国民は大きなショックを受けたと語った。

 そして、「当時の米メディアは、『放射能の影響はない』など、米軍が望むような記事を書いた」と語り、ニューヨークタイムズのローレンス記者が、そのようなプロパガンダ報道でピューリッツァー賞を受賞した事実を紹介した。

 グッドマン氏は、「戦争は、常に引き金を引く側から報道されるが、引かれる側から書かれることはない」と語り、イラク戦争の報道でも真実を伝えなかった米大手メディアの姿勢を批判した。

 最後にグッドマン氏は、「サイレントマジョリティー(沈黙する大多数)は沈黙しているのではなく、沈黙『させられて』いる。マスコミが一般市民に恐怖を与えているからだ」と語り、マスコミは、草の根の人に声を与えなければならないと主張した。

新自由主義とナショナリズムに「ハイジャック」された民主主義

 続いて上智大学グローバルコンサーン研究所所長の中野晃一氏が、安倍内閣を始めとする、世界的なトレンドとしての「新右派」の動きを分析した。

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