「どこかで戦争が起こり、国民に相談することなく、政府が自衛隊を派遣する」――東京新聞論説委員半田滋氏が警鐘、無理筋の安保法案、現実味のない首相答弁を批判 2015.6.16

記事公開日:2015.6.24取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・青木浩文)

特集 集団的自衛権
※6月24日テキストを追加しました!

 東京新聞論説委員兼編集委員の半田滋氏を講師に迎え、集団的自衛権を考える超党派の議員と市民の勉強会(第15回)「安保法制を読み解く-安倍政権の狙い-」が2015年6月16日(火)、参議院議員会館で開かれた。

 「外国を守るために日本が戦争に巻き込まれるようなことはありえない」、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に参加することはこれからも決してありえない」

 このような安倍首相の発言に対し、半田氏は、こう警鐘を鳴らす。

 「しかし、今の安全保障関連法案はそれが全部できる。少なくとも、安倍さんは『それはしない』とおっしゃるかもしれないが、次の首相が出てきた時に、『この法律だったらできますね』と判断できる条項が全部並んでいる」

 その上で、「これらの法律が通って何が行われるのか。恐らく、ホルムズ海峡の機雷除去とか、海外からの邦人輸送艦船の護衛ではない」と半田氏は言い、「現にアメリカが行なっているイスラム国、イラク、シリアに対する空爆の支援。あるいはアメリカと共に行うかもしれない南シナ海における警戒監視活動。北朝鮮の核開発が進んだ際に、アメリカが行なうかもしれない北朝鮮攻撃に対する集団的自衛権の行使ではないか」と、主張した。

■ハイライト

  • 日時 2015年6月16日(火) 17:30~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

「砂川裁判で集団的自衛権は争点になっていない」――判決に直接つながっていない「傍論」部分を強調する政府見解

 2015年6月4日の衆院憲法審査会で自民党推薦の憲法学者、長谷部恭男早稲田大学教授を含む3人が法案を「憲法違反」としたことを受け、9日、政府は「なぜ集団的自衛権が合憲と言えるのか」、その根拠とするものを文書で提出した。

 その内容は、1959年の最高裁の砂川事件判決や、1972年の「自衛隊の自衛権行使が合憲」であるとの政府見解に言及したものだった。

 半田氏は「『何か変だな』と思うのは、砂川裁判というのは、米軍基地の拡張に反対した住民が施設の中に入り逮捕されたが、そもそも『米軍の駐留は憲法9条に照らして違憲ではないのか』ということが問われたもの。集団的自衛権は争点になっていない」と説明。「集団的自衛権は合憲」とする根拠に用いていること自体がおかしいことだと指摘した。

 さらに、今回の政府見解が強調している内容は、判決には直接つながらない「傍論」の部分だと半田氏は言う。

 「『わが国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然』という『傍論』部分を強調して、『その自衛権の中には、集団的自衛権が入っている』と、妙な三段跳びのような議論を元にして、『合憲だ』と主張している」と、政府の無理筋な見解を批判した。

「1972年の自衛権に関する政府見解」――「結論部分だけを都合よく変更」

 半田氏は「1972年の自衛権に関する政府見解」についても言及した。

 「72年見解というのは、1.『自国の存立のための自衛権行使は認められている』、2.しかし、『それは憲法上必要最低限度に留められている』、3.したがって、『他国を防衛する集団的自衛権は認められていない』と結論づけているもの」

 その上で、「しかし、『現在はわが国を取り巻く安全保障環境が悪くなっているのだから、最後の結論部分を置き換えてもいい』と説明しているのが9日の政府見解」だと解説。「1と2を前提とすれば、3は自ら導かれる結論。これを、国際環境などを持ち出して、最後の部分だけは自分たちの都合のいいように勝手に解釈を変えている」と、厳しく断じた。

「お試し改憲」に警鐘――「緊急事態条項が曲者」

 では、なぜ安倍政権は「こんな無理筋の法案を出して、無茶な議論を国会でやり、夏までに成立させようとしているのか」。

 その理由は、「安全保障法制の議論が長引き、法案の内容が相当問題だということが広まり、来年2016年7月の参議院選挙で与党に悪影響が出ることを避けたいから。この選挙でなんとしても3分の2議席を獲得し、改憲に着手したいからだ」と、半田氏は推測した。

 「ただし、いきなり9条改憲などを持ち出した場合には、国民の抵抗も強い。まず『お試し改憲』というのをやるのだと首相の側近が言っている」

 「『お試し改憲』とは、今の憲法に規定されていない『環境権』、いつまでも赤字国債を垂れ流していいのかという『財政規律に対する禁止状況』」、さらに「災害時に内閣に強い権限を与えていく『緊急事態条項』」という3本」だと半田氏は説明。政府は、これを2017年の通常国会で、まず第一回目のお試しとして改憲したいと考えていると解説した。

 しかし、「お試しだからお気軽に参加していのかと思うと、これはだいぶ違う」と半田氏は警鐘を鳴らす。

 「特に『緊急事態条項』というのが曲者。自然災害における内閣の権能の強化と言うと、東日本大震災等で、例えば道路に動けなくなった車が放置される。これは財産権の問題で勝手に車を動かせない。そこで、内閣に立法の権限を一時的に与えて、そのような災害派遣の際に、スムーズな復旧体制やその救命体制がとれたらいいのではないかと、そんなふうに考えがちだ。

 しかし、緊急事態というのは災害だけとは限らない。今議論しているような『安全保障法制の発動』ということも考えなければいけない。

 どこかで戦争が起こり、それが自国の存立を脅かす緊急事態であるから、国民に相談することなく、政府が自衛隊を派遣する。今回の法案では、国会の事前承認を必要としないものの中に『存立危機事態』、すなわち集団的自衛権の行使を認める部分が入っている。そういうものがスムーズに発動できる可能性があるものが、一回目のお試し改憲で出てくる可能性があるということも、注意しなければいけない」

安倍首相が「他国の領土領海領空では集団的自衛権を行使しない」と言う不思議――過去14事例は全て領土領海領空内で行使

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入よりご覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「どこかで戦争が起こり、国民に相談することなく、政府が自衛隊を派遣する」――東京新聞論説委員半田滋氏が警鐘、無理筋の安保法案、現実味のない首相答弁を批判」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「どこかで戦争が起こり、国民に相談することなく、政府が自衛隊を派遣する」――東京新聞論説委員半田滋氏が警鐘、無理筋の安保法案、現実味のない首相答弁を批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/249462 … @iwakamiyasumi
    詭弁を鋭く突く半田氏。当然、マスコミでは報じない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/613640925256888320

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です