「万端を差図せられた事実がある」 朝鮮国内のクーデターを実際に支援していた福沢諭吉~岩上安身によるインタビュー 第545回 ゲスト 帯広畜産大学教授・杉田聡氏インタビュー第2弾 2015.5.23

記事公開日:2015.5.26取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・平山茂樹)

特集 平成から令和へ天皇と日本の歴史を考える
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 「一身独立して一国独立する」――。安倍総理は2013年2月28日に行われた所信表明演説の中で、福沢諭吉の言葉を引用し、「自助自立」の重要性を強調した。

 しかし、安倍総理の言う「自助自立」とは、消費税増税によって家計を圧迫しつつ、法人税減税によって大企業を優遇し、社会保障費の削減で労働者を生きにくい状態に追い込み、外交面では集団的自衛権の行使容認によって米国への属国化を徹底させるというものだった。弱者をくじき、強者になびくという、偽りの「自助自立」である。

 こうした安倍総理の思想の起源は、どこに求められるのか。それは、安倍総理が引用した福沢諭吉に由来するのではないか。そう考えた岩上安身とIWJは、これまで、名古屋大学名誉教授の安川寿之輔氏や、帯広畜産大学教授・杉田聡氏へのインタビューを通じ、福沢諭吉が残した原典を徹底的に検証することで、その差別的・拡張主義的性格を明らかにしてきた。

 5月23日(土)、岩上安身は、杉田聡氏に2回目となるインタビューを行った。今回は主に、1894年の日清戦争から先立つこと10年、1884年に朝鮮で起こったクーデター・甲申政変に対する福沢諭吉の関与を中心に、話を聞いた。

 甲申政変とは、当時「親日派」として朝鮮王朝の転覆を狙っていた金玉均(キム・オッキュン)、朴泳孝(パク・ヨンヒョ)らによって起こされたクーデターである。朝鮮への進出を狙う日本は、彼らに接触し、クーデターを支援した。その支援者のうちの一人に、福沢諭吉が含まれていたというのである。

 時事新報の社主として、中国、朝鮮、台湾に対する日本の侵略を正当化する言説を数多く残してきた福沢諭吉。しかし、言論活動だけではなく、実際に刀や鉄砲を送るなど、朝鮮のクーデターを支援する行動を起こしていたのである。

 今回のインタビューでは他にも、福沢が残した数々の口汚い「ヘイトスピーチ」を取りあげ、「明治の時代精神」を代表するとされている知識人の知られざる実像に迫った。

■イントロ

  • 杉田聡氏(帯広畜産大学教授)
  • 日時 2015年5月23日(土)17:00~18:00
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

「賤しき女輩」「汚い賤業婦」…妾や芸妓を徹底的に差別した福沢諭吉

岩上安身(以下、岩上)「本日は、『天は人の下に人を造る―「福沢諭吉神話」を超えて』の著者である帯広畜産大学教授の杉田聡先生にお話をうかがいます。私たちは、今日の政治状況を考えるうえで、福沢諭吉を批判的に考えることが重要だと考え、2回目のインタビューをお願いしました。

 まず、前回の振り返りをしたいと思います。福沢の女性差別について、です。福沢は娼婦制度を廃止することに反対だった。そしてそのうえで、妾や芸妓を非常に差別していました。『賤しき女輩』『汚い賤業婦』『人間以外の醜物』という言い方をしています」

杉田聡氏(以下、杉田・敬称略)「福沢は、廃娼論が存在すること自体を否定します。遊郭がなければ、性犯罪や浮気が蔓延する、という理屈です。福沢が言いたいのは、『表向きは隠せ』ということ。娼婦のことを、社会の暗部に追いやろうとします。彼女らが欧米人に見られることを嫌っているのです。福沢が言う中等社会、富豪の社会に妾は入ってくるな、ということです」

岩上「奴隷を軽蔑しつつ、奴隷制は必要だ、と言っているようなものですね」

杉田「その通りですね」

岩上「他方、『たけくらべ』『にごりえ』『大つごもり』などといった作品を残した樋口一葉は、福沢諭吉とは対照的に、『何物ぞ、はかなき階級を作りて貴賎という』という言葉を残しています」

杉田「福沢のような社会的地位のある男を念頭に置いていたように思えます」

中国人、朝鮮人、台湾人に対して、罵詈雑言の限りを尽くした福沢諭吉

岩上「続いて、福沢による他民族差別の言説を見ていきたいと思います。清国に対して、『チャンチャン』『豚尾』『豚尾児』『豚屋』『孑孑(ぼうふら)』などと、ヘイトスピーチの限りを尽くしています」

杉田「当時の辮髪を差して、『豚』と呼んでいるわけですね。福沢の場合、こうした言葉が、漫言だけでなく、新聞の社説や著書にも出てきます。『豚尾の兵隊』『豚尾児』『豚尾奴』『豚尾兵と名づくる一種の悪獣』といった表現が出てきます」

岩上「他にも、中国人に対するヘイトスピーチはたくさんあります。『流民乞食』『彼(=支那)の国民の骨に徹したる淫欲の余毒』『半死の病人…豚狩り』などなど」

杉田「一方で、福沢は他の所で、『こんなこと言ってはいかん』などと、なんの反省もなく自己合理化していたりもします」

岩上「朝鮮人に対するヘイトスピーチもたくさんありますね。『儒教主義に飽満して腐敗を致したる』『上流は腐儒の巣窟、下流は奴隷の群衆』など」

杉田「朝鮮人に対しては、一貫して『腐儒』という言葉を使いますね。福沢の底流には儒教主義があるのですが」

中江兆民、植木枝盛… 「反福沢」的な言論人たち

岩上「こういう言説を見ていると、明治の時代精神とはこんなものなのか、と暗澹たる気持ちになります。そこで、福沢の他に、明治の言論人がどのような言説を残しているのか、見ていこうと思います。まずは、『東洋のルソー』こと中江兆民です」

杉田「中江兆民は、1882年の『外交を論ず』のなかで、福沢諭吉の『圧政もまた愉快なるかな』とは正反対のことを書いています。イギリス人やフランス人がインド人、トルコ人に対して無礼に振る舞っていることを批判し、『これが文明か』と問うています」

岩上「次に植木枝盛です。彼は私擬憲法『日本国国権案』を出した人物です」

杉田「敗戦時、米国は日本で芽生えた憲法案として、植木枝盛の『日本国国権案』を参照しています。これは、大日本帝国憲法と比べ、人権を重視した、素晴らしいものです」

岩上「自民党の憲法改正草案を本当に実現しようと、自民党はキャンペーンを始めました。この中で、天賦人権説を認めない、と」

杉田「これは、ホッブズ以前、17世紀に戻ってしまう内容のものです。ピューリタン革命以前のものですね」

岩上「自民党の礒崎陽輔議員は、『立憲主義なんて聞いたこともない』とツイッターに書きました。これは、知らないはずがないんです。オトボケをしているんですね。このままでは日本は、先進民主主義国の隊列から落伍してしまいます」

杉田「植木枝盛は、貧民差別に抗する文章を残しています。福沢が差別する人力車夫、百姓、馬子などを、『天下に至貴・至尊の神』と称えています。植木枝盛は大変頭がまわる人で、街頭で演説会をすると、1000人以上が集まるような人でした。

 植木枝盛は、福沢諭吉的な人物に対して、『下等社会を無学だの文盲だのと難癖つけて政治社会の継子にせんとすることは、正しく上等社会と称する一部の輩をして天下国家の政権を私せしめんとするものなり』と言っています。

 中江兆民は、妻が被差別民であったと言われています。『平民』や『新平民』という言葉を使わず、『新民』という言葉を使うべきだ、と言っています。『平民』というのは、貴族に対置される言葉なのです。

 中江兆民は北海道に移住した際、『西海岸にての感覚』という文章を残しています。この中で、アイヌの人々に対して横暴に振るまい、差別をする日本人に対する怒りを表明しています」

「道具立其他万端を差図せられた事実がある」~クーデターを支援した福沢諭吉

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「万端を差図せられた事実がある」 朝鮮国内のクーデターを実際に支援していた福沢諭吉~岩上安身による帯広畜産大学教授・杉田聡氏インタビュー第2弾 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/246694 … @iwakamiyasumi
    偽りの福沢諭吉を暴く史実。今まで「意図的に」隠されてきた?
    https://twitter.com/55kurosuke/status/603675379790929922

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