「平和への道は、加害と被害の歴史共有から」~差別と戦争責任意識を踏まえた稀有で貴重な近藤一氏の戦争体験証言~ 2015.3.21

記事公開日:2015.4.7取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJボランティアスタッフ 榊原千鶴)

※4月7日テキストを追加しました!

 亡くなった戦友と、我々の残虐なやり方で亡くなった中国の方を真に弔うためには、戦争放棄の憲法通りに、日本を「本当に戦争のない国」にしなければならない――。

 3月21日(土)、真宗大谷派名古屋別院主催「戦後70年 全戦争犠牲者追弔法要記念行事『〝戦争〟ってなに?』交流会」が東別院ホール(名古屋市)で開かれ、「不戦兵士・市民の会」東海支部代表世話人で名古屋大学名誉教授の安川寿之輔氏が、「差別と戦場体験証言と福沢諭吉について」と題して講演した。

 安川氏は、近藤一氏による戦争体験証言の確かさを解説するとともに、近藤氏が幼時より受けてきたアジア蔑視思想が、近代日本において福沢諭吉が切り開いた差別意識に通じるとした。

<記事作成にあたり、一部、当日配布資料を参考にした箇所があります>

■ハイライト

  • 上映 ドキュメンタリー「私は伝えたい!風船爆弾~学徒動員・女学生の証言~」(椙山女学園大学学生制作)
  • 上映・発表 「アジア太平洋戦争、中国の二つの戦場」(同朋高校放送部、「東京ビデオフェスティバル」最優秀賞受賞作)
  • 講演 近藤一氏(元陸軍兵士)「兵士が見た二つの戦場の実相」/聞き手 宮城道良氏(「不戦兵士・市民の会」東海支部事務局)
  • 講演 安川寿之輔氏(名古屋大学名誉教授)「差別と戦場体験証言と福沢諭吉について」
  • パネルディスカッション 近藤一氏/安川寿之輔氏/愛知県高校生フェスティバル/同朋高校放送部/「平和展」スタッフほか

近藤証言の確かさ

 安川氏は、近藤証言の確かさを次の4点に求める。

 1.「加害兵士」として 「国体護持の捨石作戦」とされた沖縄戦で、所属部隊が全滅に近い状態となるなか、捨てられた「被害兵士」としての近藤氏は、同時に侵略の「加害兵士」でもあった。近藤氏は、中国戦線で犯した「加害者としての罪業」を克明に語っている。

 近藤氏が戦場で体験した日本軍の加害行為は、以下でも語られている。

  2.「東洋鬼(トンヤンキー)」の罪業 近藤氏は、2003年11月東京高裁「慰安婦訴訟控訴審公判」の原告側証人として、中国戦線での所属部隊による金品強奪、強姦・輪姦等の目撃証言を行った。本証言は、旧日本軍による性暴力をめぐる訴訟中、元日本兵による初の法廷証言として貴重なものである。さらに近藤氏は、自身が提案した殺害方法によって中国人を殺害した「東洋鬼(トンヤンキー)」としての罪業をも証言している。

  3.教育による差別意識の醸成 近藤氏は、日本兵を、罪の意識を抱くことなく中国人を殺せる「東洋鬼」に仕立て上げるための初年兵教育として、中国戦線で日常的に行われていた刺殺訓練や、軍隊内の差別構造を具体的に語るとともに、小学校以来の中国人への差別教育を挙げ、戦争の元にある差別意識に言及する。

  4. 不問・封印される戦争責任 近藤氏は、戦争中の犯罪行為への謝罪、賠償といった戦争責任、戦後責任に真剣に向き合ってこなかった日本社会が、結果として、再び戦争に向かう現状を招いているとする。

近藤氏が考える平和への道

 近藤氏は、国民が加害と被害の歴史を共有することが平和への道であるとの信念から、95歳(2015年3月現在)になる今も、安川氏が世話人を務める「不戦兵士・市民の会」の会員として語り部活動を続けている。根底には、亡くなった戦友、残虐な方法により殺害した中国の人たちへの真の弔いは、戦争放棄の憲法通りに、日本を「本当に戦争のない国」にすることであるとの思いがある。

近藤氏と福沢諭吉に見るアジア蔑視思想

 一方、近藤証言から安川氏は、かつて自著『福沢諭吉のアジア認識 ― 日本近代史像をとらえ返す』(高文研、2000年)で解明した福沢による近代日本の朝鮮・中国などへの蔑視観形成が、近藤氏が幼時から親しんだアジア蔑視思想に通じていることを再認識したと述べる。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です