ドイツ・フランクフルト近郊のアーノルズハイン村で3月3日から開催されている「脱原発から再生可能エネルギーへの『エネルギー転換』を求める国際会議」の2日目となる3月4日、日本から参加した、おしどりマコ氏、日本基督教団の岡本知之牧師、神宮寺(禅宗)の高橋卓志氏、妙心寺(禅宗)の則武秀南老師などの講演が行われた。
この日は、プロテスタント教会バーデン教区環境委員のアンドレ・ヴィッティホスト・ミューマン博士の講演から始まった。ミューマン氏は、緑の党がドイツでどのように活動を行ってきたのか、その道程について語った。
ミューマン氏は、ドイツでの原子力関係の物資が、ドイツ国内を通ることに反対する、核物資が線路を通ることを止めるために、人間の鎖を作ったことや、バーデン・ヴュッテンベルグ州で初めて、緑の党が勝利を収めたことについて報告。
「ドイツでは脱原発運動の長い歴史がある。運動では政治的な力を持つことが大切。辛抱強くいることが大事だ。『原子力エネルギーの安全使用に関する道徳審議会』では、政府に助言をすることが可能だ。審議会はメルケル首相によって設立され、産業界、政治、NGO、キリスト教会から17人で構成されている。
ドイツでは、メルケル首相が2022年までに原子力発電を段階的に廃止すると宣言した。福島での原発事故がなければ考えられなかった、ドイツの強い判断だと思う」
- 日時 2015年3月4日(水) 日本時間17:00〜(現地時間9:00~)
- 場所 ドイツ・フランクフルト郊外アーノルズハイン村、マルティン・ニーメラー牧師記念会議場
- 主催 ヘッセン・ナッサウ福音教会およびクアヘッセン=ヴァルトエック福音教会のエキュメニカル(世界教会)・センター(フランクフルト)
イスラム教のモスクにソーラーパネルを設置する活動
NOURエネルギー代表取締役社長、経済工学修士のタンジュ・ドガナイ(ダルムシュタット)氏は、NOURエネルギー社がイスラム教のモスクにソーラーパネルを設置する運動を進めている活動について述べ、イスラム教の教えについて紹介するとともに、ドイツにおけるイスラム教徒らの置かれている現状について話した。
「イスラム教では、アラーと社会、自然、平和が大切。子どもが正しく教育されることも大事だ。イスラム教では、環境と神の言うことを聞かなければならない。お祈りをするときには、きれいな水で自分を清めることが重要で、1日5回のお祈りを行う。
断食を行う。メッカには一生に一度、巡礼をすることが義務になっている。植物を大切にしなければならない。我々の義務は、責任を持って行動すること。アラーが創造した環境のバランスを保つことが重要。
アラーは、地球の万能な存在だ。我々はあくまでもこの世の飾り、と言える。毎日の生活の中で自分の責任をどう果たしているか試されている。アラーは何も奪ってはいけない。子ども、女性、植物、悪事を行ってはいけないと言っている。祈りの場の人の邪魔をしてはいけない。
ドイツでのイスラム教のコミュニティは公共のものではなく、プライベートなものと考えられているため、ドイツに住むイスラム教徒にとっては経済的に苦しい状況だ」
震災後の日本の状況――福島第一原子力発電所から流れ続ける汚染水問題
次に、おしどりマコ氏が、現在の日本の現状について講演を行った。
「原発事故以降、抑圧的な雰囲気になっていると思う。映画『A2-B-C』について話したい。当初、日本では上映を取りやめさせられた。不安を煽るという理由だった。
特定秘密保護法など、平和にも圧力がかかった。去年(2014年)、平和美術展を企画していた市民団体が『平和』という言葉には左翼的で政治的なイメージがあるから平和という言葉を取るように言われた。
他にも、憲法を守りたい、9条を守りたい、そのために政治家になりたいという話を書いた小学生が、先生に、政治的な話だから、文章を書き直せと言われた。その子は結局、キャンプに行った時の話に変えさせられた。
東電が、汚染水を海に流し続けていることを今年の2月に認めた。今でも東電はいろいろな問題を数年後になってやっと認める状況が続いている。
2012年、2015年に日本で大きな国際会議があった。ある研究者が私の席に来て、『日本で原発事故が起こっても、今後アジアに原発を輸出することは決まっている。福島で汚染水が流れ続けても、住み続けているということを記事に書け』と言われたので、それをそのまま記事にしたところ、その研究者から連絡が来た。その時に研究者と話した会話の音源を持っていると伝えると、もうその研究者からは連絡が来なくなってしまった。
他にも、いろいろな研究者が私のところへ来て、『日本では原発の再稼働の問題があり、30km圏内の避難とセットになっている。飯舘村は30km圏外で汚染され、避難指示がなかったという話は、再稼働に影響があるから、その話には触れないように』と言われた」
おしどり氏は、今の日本が不誠実で溢れていることを訴えた。
続いて、飯舘村の小学校の職員をしていた愛澤卓見氏が、飯舘村の現状について講演した。愛澤氏は、「飯舘村の初期被曝の話がタブーになっている。飯舘村の被曝を過小評価したい人たちがいる」と話し、初期避難の対応の遅さを問題視した。
日本では討論が成り立たない理由――日本における言葉の空洞化、西洋と日本の討論の違い