ドイツのほぼ中心に位置するフランクフルトから車で北に40分ほど離れたアーノルズハイン村で3月3日、「脱原発から再生可能エネルギーへの『エネルギー転換』を求める国際会議」が開幕した。この国際会議のサブタイトルは、「宗教諸団体は気候保護に向けてどのような貢献ができるか?」と題され、キリスト教、仏教、イスラム教など世界中の宗教家が一堂に会した。
国際会議は、3月3日から3月6日まで行われる予定。IWJは3月3日から3月5日まで中継配信を行う。
会議を運営している一人、エキュメニカル・センターのマルティン・レップ博士は、「この国際会議はヨーロッパとアジアの架け橋として、原子力反対の方々が集まっている」と述べるも、原発をめぐる開催地ドイツの状況について、こう語る。
「ドイツは脱原発を実現させようとしているが、メルケル首相が決定した脱原発は、選挙で自分達の票を集めるための動機だったと思う。脱原発がメルケル首相の本心ではないと考えている」
レップ氏は、日本の状況についても言及した。
「福島原発事故後、日本は秘密保護法の制定を含め、全体主義の方向へ向かっていると感じる」
世界教会評議会(WWC)で平和教育と軍縮担当役員を務める、ヨナタン・フレリックス氏は、マーシャル諸島の問題について述べた。
「マーシャル諸島では、86万人の方が核実験の影響を受けている。被曝を受けた人たちは、賠償金が欲しい訳ではない。同じようなことが行われてほしくないのだ。しかし、アメリカはその訴えを拒んでいる。核兵器・原子力発電を止めるために、再生可能エネルギーを中心とする社会にするためのスタート地点だと思う」
ドイツ福音教会(EKD)環境委員でハイデルベルク大学プロテスタント教会総合研究所(FEST)教授のハンス・ディーフェンバッハー博士は、今後のエネルギー政策の課題について語った。
「我々は、現在核廃棄物の処理方法が未解決のまま、原発を使い続けている。代替エネルギーを選ぶ場合、コストを考える必要がある」
その上で、ディーフェンバッハー氏は、レップ氏が述べたメルケル首相の脱原発の決定に対する考えについて、次のように反論した。
「メルケル首相が脱原発を自分の選挙の利益のために行ったという考えがあったが、メルケル首相は物理化学者で、福島原発事故の3日後に脱原発を表明している。選挙のために脱原発をした訳ではないのではないか。
福島の事故後、経済学者も含めて、脱原発のためにどのようなコストがかかるのか、ということに関する会議がたくさん開かれた。結果的には、コストを取るか、リスクをとるのかということだと思う」
メルケル首相の脱原発の表明については、ドイツ国内でも意見が分かれているようだ。また、異なる意見を持つ者同士が、堂々と国際会議の場で互いに自己主張し、意見し合える土壌もドイツにはある。果たして、同じような議論を日本でも行うことができるだろうか。