ウクライナ東部で再びウクライナ政府軍と反政府派の親ロシア派武装勢力による衝突が激化している。
昨年9月に結ばれた停戦合意も形骸化し、キエフ政権の公式見解では、すでに1200名の兵士と5400名の市民、合わせて合計6600名もの死者が出ているという。ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙は、「実際の死者数は約5万人だとドイツの情報機関は推定している」と報じている。
「停戦」とは程遠い状況だ。
ウクライナ東部で再びウクライナ政府軍と反政府派の親ロシア派武装勢力による衝突が激化している。
昨年9月に結ばれた停戦合意も形骸化し、キエフ政権の公式見解では、すでに1200名の兵士と5400名の市民、合わせて合計6600名もの死者が出ているという。ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙は、「実際の死者数は約5万人だとドイツの情報機関は推定している」と報じている。
「停戦」とは程遠い状況だ。
記事目次
事態を重くみたドイツとフランスが新たな調停に乗り出した。ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国首脳は和平実現に向け、2月11日にベラルーシのミンスクで会談する。
ここで一刻も早く戦火を止めるため、事態を打開する道筋を模索していかなければならないが、主張は真っ向から対立している。政府側はロシアが親ロ派に軍事支援していると非難するが、ロシアはウクライナに戦火拡大の責任があるとのスタンスである。
こうした過酷なウクライナ情勢で、混乱が続き、各国の関係がこじれていたほうが好都合な国がある。米国だ。
「内戦」とは言いつつも、結局、これまでロシアは自国の軍隊を出しておらず、ウクライナ政府も、さまざまな国から武器供与されたりはしているものの、戦闘を本格化してはこなかった。
しかし2月2日付の米紙NYタイムズは、複数の米政府当局者の話として、オバマ政権がウクライナ東部情勢の悪化を受け、ウクライナ軍への武器供与を検討していると報道。5日にはケリー国務長官がキエフを訪れ、ウクライナへの支援策について「あらゆる選択肢を検討している。防衛のための武器の供与もその1つだ」と発言し、殺傷能力のある武器供与を検討する考えを明らかにした。
本格的な戦争を望む米国の思惑が滲んだ。
米国の武器供与の検討を受け、ウクライナと、ロシア、ドイツ、フランスの首脳は8日、電話会談し、11日にベラルーシで首脳会談を行うことで一致。オバマ米大統領は9日、訪米したドイツのメルケル首相と会談した後、共同記者会見を開き、改めて「武器供与」もあり得ると強調し、外交努力が実らなかった場合は「政治、経済両面でロシアの孤立が深まる」と警告。11日を「最後のチャンス」との見方を示した。
さらに米国オバマ大統領は10日、ロシアのプーチン大統領に電話し、親ロシア派への軍事支援を続けるなら「代償」は重くなると警告した。11日の4カ国首脳協議にも触れ、「この機会をとらえることが重要だ」と念押しした。
会談が失敗に終われば、それは欧露を分けた戦争に直結する。日本にいる限りでは実感が乏しいかもしれないが、世界は今、「第三次世界大戦前夜」のような緊迫した空気が張り詰めている。
ウクライナ政府が親ロシア派と停戦合意したのが昨年9月5日。
私は9月11日、ドイツ・エアランゲンにあるニュルンベルク大学で開かれた「カタストロフィー、デジタルの公共空間、民主主義の未来」と題するシンポジウムに招かれたため(※)、ドイツ訪問し、ドイツ各地で取材にあたった。停戦からちょうど1週間が経ち、一段落した頃だった。
ドイツで取材して回ると、欧州では、ウクライナ情勢について、「プーチン悪玉論」といった単純化した見方が根強いことがわかった。「プーチンがまるで悪魔のように描かれています」と語ったのは、ライプチヒ大学のリヒター・シュテフィ教授(東アジア研究所日本学科主任)だ(※)。
「東ウクライナは、ロシア系住民が多い。石炭を掘る工業が盛んで、ロシア人というよりロシアから移動したウクライナ人がいます。しかし、ドイツの報道では、『ロシアへのあこがれ対EUへのあこがれ』と単純化されています。ユーロマイダンの抗議は、ウクライナの『独裁化』へのプロテストだった。本当は、民族やナショナリズムの問題が、複雑に絡み合っているのに、そのことが全然報道されていない」
ドイツ左翼党本部で国際関係を担当するオリバー・シュレーダー氏も同様の見方を示した(※)。左翼党は旧東ドイツに本部を置き、国会では野党第一党の地位にある。
シュレーダー氏は、プーチン大統領やロシアの立場を支持してはいない、と断わりながらも、「ウクライナ危機におけるロシア連邦の役割が、一面的なイメージで語られている。あまりにも一方的に、すべての責任がプーチン大統領に転嫁されている」と指摘した。
一方的にプーチン大統領を悪魔化してきた、そんな鈍感な欧州各国も、「第三次世界大戦」がリアリティを増し、今になって本格的に危機感を持ち始めた。米国を外して4カ国で協議し、平和的解決の道を探ろうという姿勢からも、それは見てとれる。
そんな中、複雑化するウクライナ情勢をいち早く見極め、「プーチン悪玉論」という単純な見方では解決しないと指摘していた人物がいた。
元バイエルン州行政裁判所裁判官で、新裁判官協会の同盟代表者の元メンバーである、ペーター・フォンナーメ氏だ。そんなフォンナーメ氏がIWJに寄稿してくれた2本の論文を、【特別寄稿】としてここに掲載する。
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TELEPOLIS
2014年3月15日
ウクライナ:ダブルスタンダードの好例…
…そして政治的解決能力の完全な不在
ペーター・フォンナーメ
かつてドイツ国民はミハイル・ゴルバチョフに、その結果ロシアに、きわめて友好的だった。ゴルバチョフなしにはドイツ再統一はありえなかっただろう。我々は感謝していた。第二次大戦の恐怖や心身の麻痺するような戦後時代を忘れることはなかったが、コール首相時代の末期、ドイツにとってロシアは尊重すべきパートナーとなった。しかしこの友好的な雰囲気は長続きしなかった。
アメリカの主導の下、ドイツ政府はふたたびロシアに対し何かとケチをつけるようになった。少なくとも、シュレーダー首相が新しい友人プーチンを完全無欠な民主主義者に列したときには、プーチンとロシアを批判するのが、かっこいいことになっていた。プーチンのほうも批判者の仕事をとくに難しくさせはしなかった。彼はひたすら自分の道を進んだ。そのやり方は民主主義的、模範的である西側諸国の価値観とはなかなか相いれないものがあった。
プーチンには、何をしようとすべからく悪の嫌疑がかかった。ロシアが介入したお蔭で、今にも始まりそうだった爆撃戦が回避された(シリア)ことも、きわめて危険だった紛争(イラン)が食い止められたことも、この見方をいささかも変えはしなかった。西側ではプーチンはいつまでも権威主義的な人非人とみなされた。
「プーチンの」オリンピック競技会については、始まる前から悪口を言われていた。ささいなことも意地の悪い見方をされた(オープニング・セレモニーの時にオリンピックの五輪が昇らなかった件を思い出してみよう!)。常ならばどこにでも顔を出すメルケル独首相は欠席することで、プーチンに「罰を与えた」。その他の面でも旧東独出身のメルケルやガウクにとっては、露独関係を良好に保つことは別に切実に心にかけるほどの問題でもないという印象を拭えない。
◇オバマとプーチン:誰がシェリフで、誰が悪党かは、いつもきまっていた
これに反し、世界的強国であるアメリカ合衆国の帝国主義的発現は、この国ではまず批判されないし、批判されるとしても、片目を瞑っているようなものだ。そうした発現の事実を正しい名で呼ばれたことはなかった。事実はなんだったのか、はなはだしい国際法違反だった。憤りの原因は戦争そのものにあるのではなく、戦費が多すぎるとか始めた戦争をきちんと終わらせる能力がないことだった。オバマとプーチン間で、万一、政治的な模範演技を行うことになっても、誰がシェリフで誰が悪党であるかは、いつもきまっていた。一方は民主主義と自由の側に立ち、他方は独裁と圧制の側に立っていた。
我々は長きにわたって、短絡思考、ダブルスタンダード、独善的偽善という文化の中で生きている。その利点は明白である。即ち、世界は単純なものだ、こちらは善、あちらは悪。ただし残念ながら、このような図式は単純すぎる。
◇権力の拡大戦略
実際には、西側陣営が1990年代(ソ連崩壊)以来、米国とNATOの指揮下、権力拡大戦略を強化し、その裏側でロシア撃退政策を執っていたのである。ここ数年の間に、EUは地政学的な地図の塗り替えに深く加担するようになった。
ドイツもまた経済力が増大するにつれ、慎重な態度をとる役割を忘れてしまった。最近、ある週末(!)の会談において、連邦大統領、外務相、国防相は、ドイツは再び世界の中で、以前よりも多くの責任を負わねばならないということで合意した。世界政策上の自国の重要性を感じる中で、ロシア人のさまざまな思いや歴史的にはよく理解できる危惧の念については、ほとんど考慮をしなかった。
旧東ドイツがNATOシステムの一部になったことは、ロシアにとって安全保障の構成を大きく変える深刻な問題だった。これは、ドイツの再統一についてのロシアの同意に関連して西側陣営が認めた確約とは相いれないものであった。ロシアにとってさらに好ましくないことに、旧東欧諸国のEU参入ばかりかNATOへの加盟までもが認められた。
旧ユーゴスラヴィアの一部も西側同盟のシステムに引き込まれた。シュレーダー元首相は最近、先に行われた爆撃は国際法に違反するものだったことを、自己批判的に認めた。ロシアの国境近く(チェコ、ポーランド)にはミサイル配備が計画されたが、むろん、事前の相談はなかった。ロシアの南方の隣国グルジアでは、西側陣営に旨いこと励まされたある冒険者が軍事的冒険の企てに誘われた(が、失敗に終わった)。
中近東諸国は、一部はありそうもない根拠によってアメリカの地政学的システムに一括りに束ねられた(アフガニスタン、イラク、リビア)。こうした措置の一歩一歩がロシアの首輪をきつく締めることになった。その上、ロシアに友好的なシリアでは凄惨な内乱が仕掛けられ、エジプトでは西側志向の軍事クーデターが再導入された。そのかたわら、アメリカの圧力にこれまでよく抵抗してきたイランに対しては宣伝色も濃厚に軍事的攻撃が準備された。
このような列挙の方法はおおざっぱで荒削りであるかもしれないが、過去四半世紀の間、グローバルな権力バランスがロシアを圧迫するように変化してきた様を概略で示すものだ。これを見れば、ロシア人の心を何年にもわたり極限まで苛立たせてきたことがわかるだろう。力を奪われたロシアの熊は、ソビエト帝国の崩壊後、ゴルバチョフ・イェリツィン時代の衰弱段階では、歯ぎしりしながら眺めているほかなかった。
◇ウクライナ:容認できない越境行為
(…会員ページにつづく)
NHKクローズアップ現代でも、ロシア高官へのインタビューの中で、高官はプーチンが悪玉扱いされている事や、どこの国が圧力に屈しているのかまた、日本に対して力のある国なんだからしっかりしろといった主旨の発言で、婉曲的にメッセージを送っているのが印象的だった。
後、ヌーランドだっけ?ある行動をとった事で、アメリカの工作が働いている事に気付いたロシア人だかウクライナ人だかが、カメラの前でその旨を話してたな。