公正な税制を求める市民連絡会(準備会、仮称)の記者会見が2015年1月20日(火)、東京弁護士会5階で行われ、呼びかけ人の宇都宮健児弁護士や、反貧困ネットワーク世話人の赤石千衣子(ちえこ)さんらが発言した。
貧困、格差が拡大化するなかで、非正規雇用が増大し、一方で社会保障費が削減されている実態を報告。日本の税制における問題点を指摘し、税制のあり方について提言した。
(IWJ・細井正治)
※1月27日テキスト追加しました!
公正な税制を求める市民連絡会(準備会、仮称)の記者会見が2015年1月20日(火)、東京弁護士会5階で行われ、呼びかけ人の宇都宮健児弁護士や、反貧困ネットワーク世話人の赤石千衣子(ちえこ)さんらが発言した。
貧困、格差が拡大化するなかで、非正規雇用が増大し、一方で社会保障費が削減されている実態を報告。日本の税制における問題点を指摘し、税制のあり方について提言した。
記事目次
■ハイライト
※以下、発言要旨を掲載します
宇都宮健児弁護士(以下、宇都宮・敬称略)「皆さんご承知の通り、貧困、格差が拡大してきており、昨年(2014年)7月、厚労省が発表した日本の相対的貧困率は、2010年時点で16.1%、子どもの貧困率が16.3%、ひとり親家庭は54.6%となっています。
政府が発表したのは2度目で、最初に発表したのは民主党政権、全体16.0%、子どもは15.7%、ひとり親家庭が50.8%だったので、いずれも悪化。特に全体と子どもは過去最悪。ひとり親家庭も二世帯に一世帯が貧困化」
宇都宮「これらの背景の1つに非正規雇用の拡大があり、昨年(2014年)11月時点で初めて2000万人を超え、38.2%にも及んだと12月に総務省が発表しました。
非正規労働者は低給の上、昇給、場合によっては賞与もない、不安定な雇用。年収200万円未満の労働者が7年連続で1000万人を超えています。
正規雇用を含む労働者全体の実質賃金も97年をピークに下がり続け、貧困化の結果、当然、生活保護も増えるわけです。それを、さらに悪化させているのが社会保障制度の改悪ではないかと思います」
宇都宮「第二次安倍政権誕生の翌2013年通常国会で、生活扶助基準を3年間で670億円削減すると決めました。過去にも切り下げが自民党政権で2度、2003年が0.9%、04年が0.2%行われましたが、安倍政権の今回の切り下げは平均で6.5%、最大で10%と前例のない引き下げ。
その一方で、引き換えに安倍政権は防衛費を11年ぶりに400億円も増額しています。このような傾向は今も続いており、来年2015年度予算案でも、生活保護の住宅扶助と冬季加算の切り下げと防衛費増額を盛り込んでいます。
昨年の通常国会で6月18日、地域医療・介護総合確保推進法が成立していますが、これは介護保険の自己負担を一定所得以上は1割から2割に倍増し、また特別養護老人ホームを中重度、具体的には要介護3以上に限定して軽度は外す、つまり負担は増やし給付は減らす。
社会保障サービス削減の理由として『財源がない』、その確保のための消費税増税、ということで元々、民主党政権では税と社会保障の一体改革関連法として決めたのに、安倍政権になって昨年4月から、8%に(消費税が)増税されながら生活保護ほかは改悪されています。
それから、『子ども貧困対策法』が2013年6月19日に成立し、その具体化のための大綱が昨年8月29日に閣議決定されていますが、有識者会議で最も提案されていた児童手当の充実や(従来の要返済型ではなく)給付的な奨学金の創設も『財源の裏付けがない』という理由で見送られました」
宇都宮「安倍政権は昨年2014年末、消費税増税を2017年に延期するとして解散総選挙しました。それでも結局は増税するわけですが、低所得者や中小企業には大変厳しいのです。
一方、例えば日産のゴーン氏は9億9500万円も報酬をもらっているそうですが、それだけ日本で使うわけではないでしょう。それなのに、大企業や富裕層は優遇されてきています。
2月15日のシンポジウムの基調講演者である富岡幸雄氏が著した『税金を払わない巨大企業』に詳述されています。例えばトヨタ自動車、欠損金繰越制度で、豊田章男社長就任以後、利益は出ているのに、リーマンショック時の欠損金の繰越で一度も納税しておらず、ようやく昨年3月期決算で6年ぶりに法人税を納めました。
一方で消費税というのは、私達がモノを買う時だけではなく、トヨタ自動車に下請けが部品を納入する時にもかかってきます。他方、自動車を完成品として輸出する時は輸出先で消費税がとれないので、国からトヨタ自動車に還付金が払われています。
毎年1500~2000億円。消費税を一銭も払わない企業が税金だけ毎年還付してもらう、税率が上がれば還付金額も引き上げられる。ある意味、輸出企業保護税制とも言えます」
宇都宮「富裕層も所得税が80年代初めは75%だったのが今は40%(2015年から45%ですが)、大幅な引き下げ。また証券優遇税制。株式は多くの国民はもっていないが、所得税住民税合わせて20%、つい最近まで10%。しかも他の所得と合わせてでなく分離課税が認められています。
こうして大企業や富裕層は利益を溜め込んでいますが、十分な課税がされているかといえば、消費税導入・増税の1989年(3%)・97年(5%)の直後に法人税、所得税の引き下げがなされ、今回(8%)も法人税実効税率35%の引き下げが進められています。
今まで我々が社会保障拡充を求めてきたのですが、結局『財源不足』を理由に返り討ちにあってきました。この税金の問題は我々が弱く、あまり検討してこなかった分野ではないでしょうか。
財源、税制は国民主権の問題であり、向き合い発言していくべきです。今は政府税調と自民党税調が毎年決めていますが、国民に開かれていません。決め方、集め方、使われ方も、それを徹底的に監視をし、オープンにさせていく。
そして税制改革の提言、といった運動が必要だということで、この会が立ち上がってきました。
最近ベストセラー『21世紀の資本』を書いたトマ・ピケティ氏も、資本主義を放置すると格差が拡大するため、資産課税やタックス・ヘイブンへの課税強化が必要だと、我々と同じようなことを言っています。
『税制』が大事なのだと、貧困や社会保障の問題に取り組む団体、消費者・中小企業団体にも広く伝えていき、市民運動、国民運動に参加を呼びかけていきたい」
(…会員ページにつづく)