「成長という名の魔力」から自由になった経済活動とは? ――原発とエネルギーを学ぶ朝の教室で浜矩子・同志社大学大学院教授が講演 2014.12.27

記事公開日:2014.12.29取材地: テキスト動画
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 「恐れるべきものを恐れる、怒るべきものを怒ることが、大切なのではないでしょうか」

 「原発のない地球的経済」と題し、第54回を数える「原発とエネルギーを学ぶ朝の教室」が12月27日午前9時より、クレヨンハウス東京店地下一階レストラン「広場」にて行われた。

 脱原発、自然エネルギーへのシフトを実現していくために、メディアの情報をただ受信するだけでなく、自ら主体的に学ぼうとする市民を応援することをコンセプトにしている連続講座「原発とエネルギーを学ぶ朝の教室」。今回はエコノミストで同志社大学大学院教授の浜矩子氏が講演した。会場に詰めかけた参加者たちは、浜氏の漫談調の語り口に聞き入り、時に大きな笑い声が上がる一幕も見られ、歓声のあふれる講演会となった。

 安倍政権の経済政策を「アホノミクス」と呼ぶなど、持ち味のユーモアを交えながらの厳しい舌鋒は、原発政策批判のみにとどまることなく、与党による「大日本帝国」回帰への傾向を指弾するまでにいたった。

■ハイライト

  • 浜矩子氏(エコノミスト、同志社大学教授)/司会 落合恵子氏(クレヨンハウス主宰)

※以下、発言要旨を掲載します

安倍政権の「取り戻したがり病」――大日本帝国への回帰

浜矩子氏(以下、浜・敬称略)「今の世の中は、我々の怒り、大人の怒りをものすごく必要としている状況だと思います。猛烈なる幼児的凶暴性を持った人が突っ走ろうとしている、それに対して、成熟した、健全な、力強い大人の怒りが必要とされているのではないでしょうか。

 『アホノミクス』の大将は、非常に厄介な流行り病にかかっています。それは全地球的に流行っている病であり、『取り戻したがり病』です。安倍政権は登場した当初、どういうスローガンを掲げていたかというと、いみじくも、『日本を取り戻す』というものでした。

 どんな日本を、誰の手から取り戻すのだろう、と思ったものでしたが、中身がだんだんわかってきました。彼らが取り戻したがっているのは、『大日本帝国の日本』。それに向かって、富国強兵路線を突っ走っています。

 残り僅かとなった今年2014年の年頭所管で、安倍総理は、1700文字くらいの原稿を、8分ほどの時間で読み上げました。その間に『取り戻す』という言葉を3回も使いました。これは、1時間換算で実に21回も言っていることになります。『一に、強い日本を取り戻す。二に、強い経済を取り戻す。三に、誇りある日本を取り戻す』ということで、国民を総動員する大日本帝国の姿がうかがえます。

 原発というテーマをめぐって、推進派は経済を人質にして押してくることがあります。『感情だけで原発反対をするのは無謀だ』というように。言うべきことは二つです。第一に、経済と成長の関係、第二に、経済と人間の関係です」

「成長という名の魔力」――経済と成長の関係

浜「第一に、経済と成長の関係。『経済は成長しなければ話にならない』とはよく言われますが、成長という名の魔力に騙されてはいけません。

 成長という日本語には、進歩や進化、大人になる、という前向きなニュアンスが含まれています。しかし、安倍政権の成長戦略には、そうした(成長という語の持つはずの)質的なものが何もありません。

 そもそも経済において、成長という言葉を使い始めたのが間違いです。経済成長率、ではなく、単に『経済拡大率』と言えばいいのではないでしょうか。

 昨日よりも今日、今日よりも明日と、どんどん大きくなるということはありうるのでしょうか。中国でさえ、未来永劫大きくなるということはありません。まして、日本の場合、老骨に鞭打って、成長戦略を注入するということは、経済活動の健全性を壊すことになります」

「矩を踰えず」――経済と人間の関係

浜「第二に、経済と人間の関係はどのようなものなのでしょう。経済活動を営むのは人間だけ。言わば、経済活動は、人間であることの証であると認識する必要があります。本来ならば、そうした経済活動が人間を踏みにじったり、人間を不幸の淵に追いやることはないはずです。

 人を幸せにすることが経済活動の本質であるならば、現在問題になっているブラック企業など、人間を不幸にするような経済活動は、まったく逆の発想であり、経済活動と呼ぶことさえ、できないのではないでしょうか。

 では、人間の、人間による、人間のための経済活動であるためには、そのような条件をクリアしておくべきなのでしょう。そのヒントは孔子『論語』のなかにあります。

(…会員ページにつづく)

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