大手紙による情勢調査によれば、公示前の2議席獲得が微妙な情勢となっている社民党。福島みずほ副党首は、今回の選挙戦において、「格差是正」、「戦争をできる国にしない」、「脱原発」、「TPP参加反対」の4点を公約に掲げていると語る。
2012年末の政権交代以後、与党の圧倒的多数の議席を背景として、特定秘密保護法の強行採決や、解釈改憲による集団的自衛権行使容認など、様々な施策を行ってきた第2次安倍政権。社民党は、その安倍政権の、具体的に何が問題であると考えているのか。残りわずかとなった選挙戦の戦い方も含め、12月12日、岩上安身が話を聞いた。
- 日時 2014年12月12日(金)20:30~
- 場所 社会民主党本部(東京・永田町)
「安倍さんの、安倍さんによる、安倍さんのための解散」
岩上安身(以下、岩上)「今回の総選挙は売られたケンカのようなものだと思いますが、社民党の政策について教えてください」
福島みずほ氏(以下、福島・敬称略)「安倍政権の経済政策は、強気を助け、弱気をくじくものです。8%への消費税増税が、景気を悪くしました。社民党は、5%に戻すことを公約にしています。
安倍政権の問題点としてあげられるのが、派遣法の改悪をはじめとした、労働法の規制緩和です。非正規雇用が拡大し、正社員への道が閉ざされてしまいます」
岩上「自民党は、配偶者控除を廃止する、ということを言い始めています」
福島「安倍政権が言う『女性が輝く社会』というのは、国民から絞りとるだけ絞りとる、という考え方が貫徹されたものです。死ぬほど働ける女性は、死ぬほど働かせる、ということでしょう。
安倍政権が、出生率の向上について努力目標を設定していますが、非正規雇用の拡大、格差拡大をしてしまっては、意味がないことなんですね。安倍政権は、亡国の政策をやっているんです。
集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍政権は、戦後最悪の政権です。今回の解散は、安倍さんの、安倍さんによる、安倍さんのための解散です。来年(2015年)の国会で関連法案が出される前に、選挙をやって信任を得てしまおうということです」
現実化する明文改憲
岩上「大手紙の報道によると、自公で3分の2超え、と言われています」
福島「明文改憲が現実化してきています。安倍総理は、立憲主義という憲法の基本が分かっていません。国会では『私が最高権力者だ』と言いました。しかし、最高権力者こそが、憲法を守らなければなりません。
ナチス・ドイツが全権委任法を作り、すさまじい弾圧が起きました。今回の選挙は、安倍さんに全権委任をさせないことが必要です。そのためには、少しでも社民党を躍進させていただきたいと思います」
岩上「与党の圧勝を許す責任は、野党にもあると思います。沖縄では、辺野古新基地建設の問題に関連して、『保革共闘』が実現しました。社民党と共産党は仲が悪いままですけど、垣根を乗り越える必要があるのではないでしょうか」
福島「今回、社民党は、ゼロではないのですが、民主党、生活の党と棲み分けをするようにしました。社民党としては、自民党を勝たせない、という布陣をしいているつもりです」
岩上「共産党とはどうなんですか。小沢一郎さんは、共産党はどこもかしこも立てるから、自民党の補完勢力になっている、と話しました。これほど憲法が危機であるという時に、それでも共産党との垣根は超えられないのでしょうか」
福島「いずれにしろ、現職の議員は、事務所もあって秘書もいて、という状況で選挙をやります。安倍総理は、雪国の人が最も動きにくい12月を狙って、解散をしたんだと思います」
原発、TPP、辺野古新基地建設について聞く
岩上「原発に関しては、いかがですか」
福島「安倍政権は、脱原発に踏み込みません。今日(12月12日)、鹿児島に行ってきたばかりなんですが、鹿児島4区から、川内原発の再稼働に反対する候補者を立てています。ぜひ、国政に送ってほしいと思います」
岩上「TPPに関しては、いかがですか」
福島「格差是正ということとつながっています。新自由主義には反対、ということです。地域創生と言いながら、地域を破壊するTPPを推進することは間違っています。
安倍内閣の最大の問題点は、国民の声を聞かない、ということです。辺野古新基地建設に反対する翁長雄志知事が誕生したのに、基地建設をやめる様子はありませんね。民主主義を理解しない、戦後最悪の内閣だと思います」
岩上「JAは、民主党がTPPを推進したということで、自民党を支援しました。ところが、自民党は手のひらを返して、TPP交渉に参加しました。自民党は、JAを解体して株式会社化する、と言い出しました。それでもJAは、自民党支援を変えずにいます」
福島「そこは、長いものに巻かれろ、ということではないでしょうか。農協も、良い意味での改革は必要でしょう。しかし、TPPに参加すると、日本の農業は壊滅します。JAは、『お代官さま、勘弁してください・・・』という精神構造になっているのではないでしょうか」
社民党は、自衛隊を「合憲」と認めるのか
お話から、貴党の現状は社会的弱者、少数者への暖かい視点をもつ政党と思います。
いくつか要望を。
1.民主党に労働組合が提携政党を変えたので、非正規雇用や派遣労働者、専業主婦、小規模農家など
に支持層を拡大してほしい。
2.解釈改憲に反対し,現在の憲法を平和主義の観点から今後考えていく。憲法改正も辞さない。
関連して、非武装中立案など、村山政権以前の考えに戻すことはない。
3.社会主義も社会民主主義も日本は根付いていいないし、革新地域政党として残るかというと、全国ではたちゆかない。花形はいるが他の革新政党は概ね高齢化していると聞く。社民党は若者の意見に耳を傾け、また、アメリカの民主党支持者と対話を持ってほしい。
4.北朝鮮の拉致問題については、旧社会党時代の対応について批判するところは批判してほしい。
5.共産党の機関紙にかつての自民党政治家や、知識人、有名人のインタビューが載る。社民党もかつての「政敵」自民党政治家、
知識人、有名人のインタビューを「臨時増刊号」でとってほしい。どんどん記事を公開して、活動家でなく知識人を社民党から出馬してほしい。
6.欧州型の社会民主主義を日本社会で実現するためには、わかりやすい理念だけでなく専門家に政治経済について論じる場所を提供することで「難しい問題に専門家が集結して問題解決に当たる党」へとぜひ変わってほしい。
7. さいごに。農業従事者やJAを「お代官」問答にたとえるのはいかがなものか。確かに悪代官は菜種と農民を搾り取りました。支持固定層「市民」と、農業従事者およびJAは今の社民党にはまだ縁遠いんでしょうね。