「『国家のための教育』だと自民党はとらえている」――。
今年2014年4月から小中学校に配布された道徳の教材、『私たちの道徳』。文科省監修の『心のノート』が全面改訂されたもので、中身は「我が国を愛し発展に努めること」など、子どもたちの愛国心を高めようとする内容となっている。
こうした教育方針に、思想の押しつけにならないか、国家に都合のいい子どもを作ることが目的なのではないか、といった懸念の声もある。
10月30日、永田町で市民団体「安倍教育政策 NO・平和と人権の教育を! ネットワーク」が「安倍政権『教育再生』の現在を考える ~何をめざす?『道徳教育』と『学制改革』~」と題した集会を開き、安倍政権の教育方針の狙いと『私たちの道徳』の問題点に警鐘を鳴らした。
- 俵義文氏(子どもと教科書全国ネット21事務局長) 「安倍政権の『教育再生』をめぐる情勢」
- 高田健氏(許すな!憲法改悪・市民連絡会)「集団的自衛権、憲法『改正』をめぐる動き」
- 世取山洋介氏(新潟大学准教授) 「教育再生首長会議の第5次提言『学制改革』の内容とねらい」
- 鶴田敦子氏(元聖心女子大学教授)
- 国会議員、市民など
戦争を担える人材と「経済」を担える人材をいかにつくるか
集会で、子ども教科書全国ネット21の俵義文さんは、「安倍政権の政策のひとつは、『日本を戦争する国にすること』」と分析。「そのために集団的自衛権行使可能の解釈改憲をして、日米ガイドライン改定の中間報告を出した」と指摘した。
さらに、「もうひとつは、日本を、世界で最も企業が活躍できる国にすること。大企業のための経済政策を進めようとしている」と述べ、「このふたつを担う人間、人材をいかに作るかということを、『教育再生』の名の下で進めている」と主張した。
戦争をする国の人材、そして、大企業のための人材。これらを安倍政権はどのように産み出そうとしているのだろうか。
「国を愛す」「国家の発展につくす」よう教える道徳の教科書
元聖心大学教授の鶴田敦子さんは、小中学校に配布された『私たちの道徳』について、「動植物の命は大切にするよう書いてあるが、人の命には言及がない」「『心のノート』にはあった『平和』に関するタイトルがなくなっている」などと指摘する。
また、『私たちの道徳』では、国内外の偉人伝といった読み物が46本、成功者、例えば野球選手の松井秀喜氏などの「格言」が127本掲載されていると説明し、「人物主義教育は一種の心理操作ではないか」と危機感をあらわした。
「『こういう価値に邁進したから松井がいた』というように、『成功の要因はその価値観にあった』としている。実現可能であると思わせ、励行へ導く。成功者の権威を借りた、価値の妥当性の補完ではないか」
さらに、労働を「権利」ではなく「義務」とする記載や、「目標に向かって頑張り続ける秘訣」などといった記述も『私たちの道徳』にはあり、中学生版になると、「郷土を愛す」「国を愛す」「国家の発展につくす」などといった「愛国心教育」も満載だと指摘。「国家のための教育だ」と批判する。
国民は、国家への義務を従順に果たせ――。
鶴田さんは、『私たちの道徳』からは、そうした期待が透けて見えると述べ、「戦争ができる国を受け入れていくことに繋がるのではないか」と懸念を示した。
公教育が「労働力」準備のためのものになる!?
新潟大学准教授の世取山洋介氏は、新自由主義に基づく教育改革が進行していると言う。米国などのグローバル都市では取り入れられている、学校体系の階層化を実現し、「人材育成」の観点から学校体系を改革するということだ。
英語で「Education as “workforce” preparation」。公教育が、「労働力」準備のための教育に一元化される、というのがポイントだ。
安倍総理は今年5月6日、仏パリで開催されたOECD(経済協力開発機構)閣僚理事会で、「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています」と宣言した。世取山氏は言う。
「安倍総理の言葉は大学人としてはショックな言葉で、我々は学術研究を行うために大学に行って、学術研究の成果を伝えるために教師をやっている。彼らは、それはもういい、端的に職業教育をやってくれ、と言っている」
文部科学省の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」では、例えば法学部は「憲法、刑法」ではなく、「道路交通法、大型第二種免許・大型特殊第二種免許の取得」などに力を入れ、工学部は「機械力学、流体力学」ではなく、「TOYOTAで使われている最新鋭の工作機械の使い方」を学ぶべきだといった提案がなされている。
「いかにものを作るか、効率的に進めるかを中心に教えるべきだ、としている。我々からすればふざけるな、と思う」と世取山氏は怒る。
日本における経済的徴兵制の可能性と米国の実態
安倍政権の考える教育改革は、奨学金制度の充実も狙っている。小学校の教育費だけ無償化し、さらに1〜2年、無償化の対象を下に下げようとしているが、肝心の高校、大学教育の無償化の検討はしていない。奨学金で補うといっても、結局は返済しなければならない借金である。
安倍教育改革が狙う「戦争するための人材、大企業のための人材作り」 道徳教材は「国を愛せ」「国家の発展につくせ」と記述 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/197526 … @iwakamiyasumi
人材とは、「人間という材料」を短くしたものだ。まさに国民を部品扱いしている。
https://twitter.com/55kurosuke/status/586138676238753792
安倍教育改革が狙う「戦争するための人材、大企業のための人材作り」 道徳教材は「国を愛せ」「国家の発展につくせ」と記述 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/197526 … @iwakamiyasumi
この過ちが残す禍根は国を揺るがしかねない。「教育は百年の計」ともいうではないか。
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国民は、国家への義務を従順に果たせ――。『私たちの道徳』からは、そうした期待が透けて見える
安倍教育改革が狙う「戦争するための人材、大企業のための人材作り」 道徳教材は「国を愛せ」「国家の発展につくせ」と記述 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/197526 … @iwakamiyasumi
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