放射線に関する政府の全面広告・安全キャンペーンに科学者や医師が真っ向から批判 2014.9.15

記事公開日:2014.9.15取材地: テキスト動画
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(IWJ・松井信篤)

 『放射線についての正しい知識を』――8月17日付の全国紙に、政府広報・復興庁が全面広告を掲載した。これに対し、9月15日、「市民と科学者の内部被曝研究会」や賛同者11名が集い、政府広告の批判文書を作成したことに関する緊急記者会見とシンポジウムを上智大学で行なった。

■ハイライト

政府広告の文章、9割以上が「問題」

 道北勤労者医療協会・旭川北病院院長の松崎道幸氏は、政府の全面広告における文章の9割以上が問題だと指摘。政府広告では、原爆による被曝の遺伝的影響はなかったと言い切っているが、日米共同研究機関である公益財団法人・放射線影響研究所(以下、放影研)は、「あるかないかわからない」という意見であることを指摘した。放影研は、結論を導くためには今後、さらに長期間の追跡調査が必要との見解を表明している。

 また、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部は、被曝による遺伝子損傷の9割は第二世代以後に発現するとしていることから、松崎氏は、「遺伝学的に被曝の遺伝的影響は予測し得る」と主張した。

 鼻血に関して、政府は全面広告で東京大学医学部附属病院放射線科准教授である中川恵一氏の見解を掲載。中川氏は「放射線科医を30年間してきた中で、治療後に鼻血が出た方を1人も見たことない」と述べている。

 これに関して松崎氏は、煙草の煙の微粒子と放射性セシウムの微粒子は同じぐらいの大きさであると説明した上で、放射性セシウムはガンマ線だけではなく、ベータ線も出すと解説した。そして、ベータ線は人体の組織を壊すため、原発事故による放射線被曝で、鼻血をもたらす理論的可能性は存在すると主張し、疫学調査などが必要だと提案した。

 住民の自主的な甲状腺検査に協力してきた北海道がんセンターの西尾正道名誉院長は、この日のIWJによる中継動画を視聴しており、鼻血について、鼻の中にあるキーゼルバッハ部位に放射線が当たれば鼻血は出るが、放射線治療でキーゼルバッハに放射線を当てることはないと指摘。放射線が当たる面積を考えるのではなく、キーゼルバッハ付近に微粒子が付着しているかどうかを考えなければならないとコメントした。

 中川氏と西尾氏は共通の分野を専門としているが、西尾氏によれば、中川氏は実際に患者の治療をほとんどやったことがないという。

100ミリシーベルト以下の被曝でがんが増えるのは証明済み

 中川氏は、政府広告で「福島で被曝によるがんは増えないと考えている」と述べており、2014年2月に発表された政府情報でも、年間100ミリシーベルト以下でがんが増えているというデータは検出不可能となっている。このデータは放影研の原爆データに基づいており、政府が基準とした空間線量の年間20ミリシーベルトや、食品の基準である年間1ミリシーベルトの土台になっているという。

 一方、松崎氏は、年間1~10ミリシーベルトでも有意にがんは増えると分析している。松崎氏によれば、放影研の原爆データは、内部被曝をほとんど無視して計算しており、原爆による被曝の追跡も5年後に始まっていることから、過小評価なデータとなっていることを指摘した。

 それを裏付けるかのように、日本の原子力発電所労働者における放射線被曝データは、放影研の原爆データをひとケタ前後上回る発がんリスクを示している。このデータでは、20万人を約11年追跡した結果、年間10ミリシーベルトでがんによる死亡リスクが3%増加すると日本原子力施設労働者疫学調査が発表している。

 さらに、医療被曝でも年間100ミリシーベルト以下で有意にがんが増えるという報告が相次いでいるという。このような結果から、松崎氏は「(年間)100ミリシーベルト以下の被曝でがんが増えることは、科学的真実として証明済みである」と解説した。

 甲状腺がんについても、WHOは福島原発事故以降に増えるという予測を出している。ところが、これに対し日本政府は、増えないというスタンスを取っている。

 アメリカ政府は、9.11テロ後に発がん因子曝露について調査を行なった結果、がんの最短潜伏期間は、子どもの甲状腺がんに関して1年、大人では4年の最短潜伏期間だと公式見解を出している。ウクライナの小児甲状腺がんにおいては、過半数が年間100ミリシーベルト未満の被曝で起きている。松崎氏は、原発事故による放射線被曝の影響の多くが未解明であり、注意深く検診を続ける必要があると主張した。

内部被曝の特殊性を無視した研究体制を批判

 名古屋大学名誉教授の沢田昭二氏は「核兵器政策に従属した放射線被曝研究体制を正そう」というテーマで話し、1947年にトルーマン米大統領の指示で発足したABCCが広島と長崎で設置され、それ以降の原子力に関わる世界的な組織の研究体制について解説した。

 沢田氏によれば、当時ABCCが行なっていた初期放射線影響の研究は、いまだに続いているという。この研究は、内部被曝の特殊性を無視した研究体制で、研究データはIAEA、UNSCEAR、ICRP等、核政策に従属した国際的組織で使われていると指摘した。

 広島の原爆被爆者を研究した沢田氏は、紫斑・脱毛・下痢の3つの症状と外部被爆・内部被曝は関係があると指摘。下痢の発症率は爆心地から離れており、脱毛より多く見られて爆心地付近では小さい結果が出ていると説明し、爆心地付近は急性症状で、離れた所では放射性降下物による内部被曝を引き起こしたと説明した。

ストレス回避から被曝回避不要とされる実態

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「放射線に関する政府の全面広告・安全キャンペーンに科学者や医師が真っ向から批判」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    放射線に関する政府の全面広告・安全キャンペーンに科学者や医師が真っ向から批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/169142 … @iwakamiyasumi 患者の声に耳を傾けるという当たり前の感覚を持っていれば、安全キャンペーン等に協力できるはずが無い。この人達を応援します。https://twitter.com/55kurosuke/status/514893948662202368

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