2014年7月30日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。緊急時作業員の被曝線量限度を、5年間100mSvをベースとして、状況に応じてどこまで引き上げられるか検討を開始する考えを示した。
2014年7月30日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。緊急時作業員の被曝線量限度を、5年間100mSvをベースとして、状況に応じてどこまで引き上げられるか検討を開始する考えを示した。
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7月30日の午前中に開催された平成26年度第28回原子力規制委員会にて、議題の終了後に田中俊一委員長より、緊急時作業員の被曝線量限度の引き上げを検討してはどうかと提案があった。
現在、緊急作業時の被曝線量限度を累計100mSvとして規制を行っているが、「それを超えるような事故が起こる可能性を完全に否定することはできない」、「その場合にも、必要な対応・処置をする必要がある」と委員長は考えている。
福島原発事故の対応で100mSvを超えた作業員が出ている実情や、IAEA等では500mSvを上限としていることなどから、いざという時に被曝線量上限を引き上げられるよう「検討をしておく必要がある」として、委員会や放射線審議会等で議論・検討することを提案した。
この提案に対する質問が記者から続いた。
田中委員長はこれまでにも、委員会で議題の議論の終了後に”提案”をすることが多々ある。「なぜ議題に載せていないのか」と記者が尋ね、それに対してこう回答した。
「まず、議題に載せるべきかどうかということをおうかがいしたということです。事前に委員会の中で委員同士で相談できませんので、ああいう形で提案したということです」
川内原発の審査書案が完成した直後ということから、このタイミングで提案した理由について、川内原発の再稼働が関係しているとも推測される。しかし委員長は、それは理由ではないと明言。
提案の理由として、(1)日本の放射線防護の基準が国際的に見てかなり突出しており、国際機関からも指摘を受けていること、(2)福島原発事故の状況を見ると、かなり具体的な問題点になっていることの2点を挙げた。「そういったことを踏まえて、きちっとしておいた方がいい」と考え、提案したという。
実際に福島第一原発では、何が問題になっているのか。委員長は「現実に100mSvを超えている人がたくさん出てきている。比較的ベテランの作業員の被曝量が多くなり、大事な所で働けなくなっている」。それが深刻になっているという。
現在の法律上、放射線作業従事者の被曝線量は1年間50mSvかつ5年間100mSvが上限となっている。田中委員長は、この基準は「動かすつもりはない」と明言している。
しかし、万が一の緊急時には、上限を上げることが必要になるかもしれない。そのために必要なことを予め検討しておこうというのが委員長の主旨だ。状況に応じて、どこまで引き上げられるかの目安を示したいという。ただし、具体的にどうなるかはまだ答えられる状態ではない。
今後、事務方から叩き台となる案を出してもらい、委員会や放射線審議会で議論される予定となっている。