日本国憲法9条が2014年4月、ノーベル平和賞候補にノミネートされた。
日本が再び戦争をする国になることを危惧した神奈川県在住の主婦が思いたち、集めた署名をノーベル委員会に送り、ノミネートに至った。ノーベル賞受賞者は個人、もしくは団体に限られるため、憲法9条を保持し、戦後70年間、戦争せずにきた「日本国民」を受賞者に指定した。授与されれば、9条の存在は改めて世界に広く知られることになる。
この動きに賛同し、ノーベル委員会に授与の陳情などをした60名の超党派議員のうち、民主党の小西洋之議員、田城郁議員、近藤昭一議員、日本共産党の吉良よし子議員、無所属の阿部知子議員が7月22日、外国特派員協会で会見し、今後の取り組みと安倍政権による解釈改憲への受け止めについて語った。
世界中の人の平和的生存権を保障した日本国憲法
小西議員は会見冒頭、「解釈改憲の閣議決定は、憲法の所有者である国民が不在のもと進められた」とし、「立憲主義や法の支配を破壊するクーデター行為だ」と、安倍政権を強く批判した。
その上で、「日本国憲法が『平和憲法』である理由は、憲法9条と解釈指針になる前文にあって、これで日本国憲法は世界で例のないものになっている」と平和憲法の中身を紹介した。
「憲法の保障する『平和的生存権』のポイントは、『全世界の国民が戦争から命と尊厳を守られなければいけない』と宣言しているところにある」
平和的生存権とは人権のひとつで、憲法前文にある「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」の部分が「平和のうちに生活する権利」を定めているというものだ。
「しかし、集団的自衛権は、日本国民に命の危険がないにも関わらず、他国の市民を殺傷するという行為。『平和的生存権』と、どう考えても矛盾する。平和的生存権の考えにしたがって、日本は米国と軍事同盟を結びながらも朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争に参戦することがなかった」
閣議決定した今だからこそ9条にノーベル賞を
小西議員はさらに、憲法前文の「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」を引用し、「日本の国民主権は、ただの国民主権ではない。国家が勝手に戦争を犯して国民を殺すことがないように定めた特別な国民主権だ」と説明。「全世界の国民の平和的生存権を宣言し、国家が戦争を勝手に起こすことは許さない、と書いた憲法は、世界中の憲法の中で、日本だけだ」と述べた。
「つまり集団的自衛権を、国民投票を行わずに実現することは、憲法前文にまともに違反する。さらに前文には、『日本国民はこれに反する一切の憲法を排除する』と明確に書かれている」と述べ、憲法に反した閣議決定は無効であるとの考えを示した。
最後に、今後について、「我々はむしろ、閣議決定した今だからこそ、9条の所有者である日本国民に対してノーベル賞を授与してもらいたい。10月に授与されたなら、憲法をハイジャックされている国民にとって大きな励ましになり、世界平和のための大きな力になるだろう」と期待を込め、「我々国会議員で今一度、ノーベル委員会に陳情をし、チョムスキー氏などの世界中の有識者と連携しながらやっていきたい」と話した。
日米同盟も同時にノーベル賞?
質疑では、タイム誌の記者が「日米同盟がなければ、冷戦下で日本の憲法が守られていただろうか。もしかすれば、今とは違う国になっていたかもしれない。そういう意味で、『日米同盟』もノーベル賞を授与されるべきとは考えられないか」と質問した。
これに吉良議員が反論した。
授賞式には日本国民を代表して安倍首相が出席するだろう。