安倍政権は7月1日、解釈改憲による集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使により、実際に血を流すことになるのは、安倍総理でも安保法制懇のメンバーでもなく、現役の自衛官である。
その自衛官を管轄する防衛省が、今回の閣議決定に対し、内心、異を唱えているのではないか――。そのようなことを思わせる出来事が起った。防衛省のホームページに、1日の閣議決定後も、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されないと考えています」とする文言が残されていたのである。
(IWJ・平山茂樹)
安倍政権は7月1日、解釈改憲による集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使により、実際に血を流すことになるのは、安倍総理でも安保法制懇のメンバーでもなく、現役の自衛官である。
その自衛官を管轄する防衛省が、今回の閣議決定に対し、内心、異を唱えているのではないか――。そのようなことを思わせる出来事が起った。防衛省のホームページに、1日の閣議決定後も、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されないと考えています」とする文言が残されていたのである。
防衛省のホームページには、「憲法と自衛権」について解説したページに、以下のような文言が記載されていた。
「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているとされています。わが国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然です。しかしながら、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています」
しかしこの記載は、7月7日15時に削除され、現在は「記述を修正しています」との注意書きが書かれたのみの状態となっている。
IWJがこの間の事実経緯について防衛省に取材すると、広報課の担当者は、7月1日の閣議決定後も集団的自衛権の行使が許されないとする記載が残っていたことについて、「単純なミスだった」と説明した。
「更新が遅れたのは単純なミスでした。防衛省の記者会を含め、各種報道機関から質問があり、それを受けて削除しました。ホームページを更新したのは、7月7日の15時半頃です」
防衛省のホームページの更新は、広報課が管理しているという。今後の更新のスケジュールについては、「現在作業をしているところなので、いつというのは回答できる状況にありません」とのこと。今後、閣議決定の内容に則し、集団的自衛権の行使を容認する内容に書き改められると考えられる。
ところで、インターネット上で防衛省が公開する2013年度の『防衛白書』にも、集団的自衛権に対する政府見解を述べた箇所がある。2013年度版『白書』の公開は続いており、HPからは抹消された内容がほぼ同じ文言で残されており、現在でも閲覧が可能である。
その時々の防衛方針を示した公的刊行物である『白書』に対して、後から修正や削除が加えられることは考えにくい。今後も、2013年度版『白書』は、その内容が変更されないまま、インターネット上に残り続けるのだろう。
逆に言えば、2014年度の『白書』に、政府見解の変更が明記されるのは確実だと思われる。2013年度版『白書』は、2014年7月1日に起きたことの重大さを裏づける史料として、後世の歴史家たちに、これからも参照され続けることになるのではないか。
閣議決定後、わずか6日間だけ残っていた「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」との文言。この文言が削除されたことは、日本が憲法上の縛りをなりふり構わず捨て去って、「戦争の出来る国」へと変貌しようとしていることを象徴している。
役所の怠慢か、良心による抵抗か。後者である事を切に願う。
自衛隊にも分別ある人は大勢いる。彼らが上官に物申せるよう背中を押してあげたい。