2020年に東京で開催されるオリンピックのために、新しい国立競技場が建設されようとしている。国際コンペティションで建築家ザハ・ハディット氏の案が選ばれ、建設準備が進められているが、環境面やコスト面で非常に多くの問題が残されている。6月13日、この問題について建築家らが会見を行い、新国立競技場の建設について、再検討するべきと主張した。
(取材:IWJ 松井信篤、記事:IWJ ゆさこうこ)
特集 新国立競技場問題
2020年に東京で開催されるオリンピックのために、新しい国立競技場が建設されようとしている。国際コンペティションで建築家ザハ・ハディット氏の案が選ばれ、建設準備が進められているが、環境面やコスト面で非常に多くの問題が残されている。6月13日、この問題について建築家らが会見を行い、新国立競技場の建設について、再検討するべきと主張した。
■ハイライト
建築家で東京大学教授の大野秀敏氏は、コスト面について指摘した。工事に約1600億円かかると試算されている新国立競技場は、2011年のロンドンオリンピックや2008年の北京オリンピックといった過去のオリンピックと比較しても、非常に高い工事費が見込まれている。ロンドンオリンピックは約760億円、北京は約180億円の工事費用だった。
新国立競技場にそれほど多くの費用がかかる理由について、大野氏は、この競技場が複数の機能を持つように作られるためだと説明する。陸上競技、サッカー、そして音楽コンサートが行われるように作られている。サッカーのスタジアムとするためには日光が必要だが、雨天でも音楽コンサートが行えるように屋根がなければならない。このために、新国立競技場には、開閉式の屋根をつけることが計画されている。音楽コンサートは公共イベントと言うよりは、ビジネスである。そのために多額の税金を投入して施設を作るべきなのか、大野氏は疑問を呈した。
建築家の森山高至氏は、一週間前に出された基本計画案が大きな問題をはらんでいるとし、二つの点で建築基準法に違反するのではないかと指摘した。
ひとつは、屋根である。建物における構造体のうち、屋根や柱は不燃性にしなければならないと定められているが、今回計画されている屋根は不燃性ではないのだ。
もうひとつは、土地面積に対する建物制限をオーバーしている点である。新国立競技場の建設が予定されている敷地は人工地盤と呼ばれる広場で、周辺より8メートルかさ上げされている。森山氏は、その人工地盤を含めたエリア全体が建築物と考えられるため、法的に定められた基準をオーバーしている可能性があると主張した。
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