2014年6月4日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。東電福島第一原発の凍土式遮水壁の工事作業員の被曝対策として、「鉛エプロンの効果は限定的。きちんと測定し、対策を立てて線源を遮断するほうが効果的かつ大事だ」という考えを示した。
2014年6月4日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。東電福島第一原発の凍土式遮水壁の工事作業員の被曝対策として、「鉛エプロンの効果は限定的。きちんと測定し、対策を立てて線源を遮断するほうが効果的かつ大事だ」という考えを示した。
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いわゆる吉田調書に「マネージャークラスも避難した」とあり、新規制基準ではどうなっているかと記者が質問した。田中俊一委員長は、人員、機材の確保、有効性確保、体制を審査の中で確認して、担保するように審査を進めているという。
その担保はどうするのか、吉田調書の非公開部分がわからないと、事故原因が究明できないのではないか、と記者がさらに質問を続ける。
田中委員長は、「公式に規制委の仕事をして1F(福島第一)については継続的に事故調査はしていく」と答え、「人間はそんないい加減な人ばかりではない」「シビアアクシデントについての対応を規制上求めているのだから、それ以上の議論をしてもしょうがない」と答えた。
震災時に、福島第一原発の外部電源を供給する変電所にて、液状化現象が発生したことから、変電所の安全確保はどうするのかを、フリーの記者が追っている。全国の変電所の管理は経産省の所轄だが、原発に関する変電所は規制庁の所轄になるという。
新規制基準では、外部電源がなくなったとしても安全性が確保できるようにというのが基本的な考え方だ。発電所内の電源は、耐震Sクラスで安全性を確保している。その上で田中委員長は、「全てのものが完全ということはありえない。大丈夫なように多重防護の考え方で安全確保している。福島第一の事故の反省を踏まえて対処している」と述べた。
東電福島第一原発の凍土式遮水壁の工事現場は、線量が0.3~0.8mSv/hと高く、年間20mSvだと時間が限られる。被曝対策として鉛エプロンの着用などが挙げられているが、田中委員長は鉛エプロンの効果に懐疑的だ。セシウムのガンマ線では鉛3cm厚で一桁逓減、エプロン1mm程度では効果が限られる。鉛エプロンの効果は測定、評価すれば良いことだとして、「何パーセント落ちるか評価すればすむこと。効果がないんだったら止めたらいい。そこはきちんと評価したほうがいい」との見解を示した。
4号機使用済み燃料プールからの燃料取出し時に対策したように、きちんと測定して、対策を立て、線源を遮断するほうが効果的で、大事だという考えだ。
工事現場は、規制庁職員は毎日のように行っているが、規制委員が行くと現場の仕事の邪魔になるところもあると考えており、タイミングを見て必要な時には行かなければならないとの思いを述べた。
政府で規制委の新委員の人選が公表されている。片山審議官は、環境大臣が人選するのを事務方として環境省職員である規制庁職員が支えるのはおかしな話ではないと言い、「今回の委員選定は環境大臣側が行ったもの」と説明する。
田中委員長は、「私は規制委員の選任には関与しない。何も聞いていない」と答えた。「民主党政権下でのガイドラインの適用云々ということについて、この場でお答えをするような性格のものではない。コメントは控える」ということだ。
日本原子力学会が5月27日に「関西電力大飯原発3、4号機運転差止め裁判の判決に関する見解」をリリースし、福島第一原発の事故に関して、「事故原因・・・根本原因まで明らかにしています」と明記している。
田中俊一委員長は、根本原因が究明されている確信はもっていないと答え、「学会がそこまで言うかどうかについて、私は何も申し上げることはございません」とコメントした。
火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は、「今の火山学の現状では、巨大噴火の予測は非常に困難」と明言していることに対し、田中委員長は、「質問の意味、藤井先生がどういう言い方をどういう意味で発言したかわからないので、コメントは差し控える」と述べ、自然現象なのでいかに把握できるかということが大事であり、島崎邦彦委員が中心に議論、評価していると答えた。