「特定秘密保護法は憲法21条(表現の自由)の侵害だ、という裁判を起こされると、国としてはまずい。だから、自民党は憲法21条を『公益のために表現の自由は制限できる』という内容に変えようとしている」──。
2014年4月27日、新潟市のガレッソホールで「特定秘密保護法の撤回を求める新潟県女性の会」の第2回学習会と街頭行動「特定秘密保護法は憲法違反!施行されないために何をしたらいいの?」が行われた。
日弁連秘密保護法対策本部事務局長の齋藤裕氏が、諸外国の例を交え、特定秘密保護法のはらむ危険性について講演を行い、その後、参加者らが新潟駅前で、替え歌やリレートークなどで秘密保護法反対を訴える街頭行動を行った。
護法と憲法改悪、動きはリンクしている
- 学習会 講師 齋藤裕氏(弁護士、日本弁護士連合会秘密保護法対策本部事務局長)
- 街頭行動 替え歌路上ライブ/リレートーク
- 日時 2014年4月27日(日)13:30~16:00
- 場所 ガレッソホール(新潟駅万代口)(学習会)/新潟駅万代口前(街頭行動)
- 主催 特定秘密保護法の撤回を求める新潟県女性の会
秘密保護法の反対運動は「8月のパブコメ募集」が山場
齋藤裕氏は特定秘密保護法の現在について、「法律はできた。しかし、その法律は骨組みでしかないので、肉付けする作業が進められている」とし、「ひとつは、情報保全諮問会議での議論だ。この会議では、保護の対象になる特定秘密の基準と、法律の運用に関して議論している。ここには有識者といわれる人たちが参加しており、座長は渡邉恒雄氏(読売新聞グループ本社会長)だ」と話した。
「そのほか、学者や弁護士などが入っている。渡邉氏にはあまり期待はできないが、いろんな学者が参加しているので、情報保全諮問会議は意見が出る会議になっている。ただし、あくまで諮問会議なので、政府が、この会議の言うことを聞くかは、別の話である」。
「国会では、特定秘密保護法の運用をどうするか、という議論がなされている。ここで自民党は、国会が機能しないような仕組みを作ろうとしており、公明党は、自民党より多少ましなものを目指している。民主党や共産党は、特定秘密保護法には完全に反対だから、具体的な議論はしていない」。
齋藤氏は「こうして、着々と進められているが、法案成立後の自民党や公明党の議論、あるいは政府における議論を見ても、この法律の危険性は払拭されていない。したがって、政府などの動きを踏まえながら、その都度、問題点を捕まえて声を上げていく必要がある。一番重要な時期は、特定秘密保護法の肉付けができて、パブコメ募集が出される8月頃。これに対して、どう反対意見を集中するかが極めて肝要である」と指摘した。
国会によるチェックシステムは機能しない
特定秘密保護法の問題点について、「刑罰で、特定秘密の漏えいや取得を抑止することになっているので、特定秘密が絞り込まれているのかどうかが問題になる」と齋藤氏は指摘する。「もうひとつは、適正評価制度において、国民のプライバシーや思想信条が調査されてしまうのではないか、という不安がある。これらの問題は、秘密保護法ができる前から訴えられていたが、今、どうなっているか。政府は秘密保護法の審議の過程で、秘密の範囲が不当に広がらないように、国会や第三者機関が監視すると言っていた。しかし、国会が監視する議論については不十分だと言わざるを得ない」と断じた。
この点に関して、齋藤氏は諸外国の制度との比較を語った。「外国の国会における秘密の監視委員会は、行政に対して、すべての情報を要求できる。ところが、日本の場合は特定秘密保護法10条があり、行政機関が、国会に特定秘密を提供するかしないかの最終判断権を持っている。だから、国会がチェックしようとしても、政府が『出さない』と言えば、チェックできない」。
「特定秘密保護法自体が、国会で運用をチェックできない形にしている。国会が特定秘密を入手できない問題点があるので、国会で立派な特別委員会を作っても機能しない。公明党も、この10条の改正に言及していない。今の特定秘密保護法のもとでは、いくら国会に委員会を作っても機能しない」と述べた。
こうした点を踏まえて、齋藤氏は「アメリカなり、外国の制度を参考にすれば、今よりましな運用になるが、それでも限界がある。そういう意味で、政府が提案している秘密保護を適正化する方策は、きわめて不十分である。今の段階で、自民党は、外国で運用されているチェック策でさえ導入しようとしていない。だから、私は特定秘密保護法には反対である」と述べ、特定秘密保護法を施行することは許されないとの考えを示した。
秘密保護法と憲法改悪、動きはリンクしている
憲法との関連については、「自民党の改憲草案の第9条の2(国防軍)は、軍事審判所を作る、となっている。軍事審判所は軍事秘密を漏えいした軍人や公務員の裁判を行う特別な裁判所である。これは、要するに特定秘密保護法で捕まった人の裁判をする、特別な裁判所を作るということ」と述べて、次のように続けた。
「なぜ、特別な裁判所が必要かというと、日本の今の憲法では、裁判は公開である。そうすると、特定秘密保護法で裁判にかけられた場合、法廷の中で特定秘密がバレてしまう。そうなると、法律ができても、なかなか起訴できない。起訴すると、法律で守ろうとしていたものが秘密でなくなるからだ。そこで、公開原則をなくすのである。これが、改憲草案第9条の2である。憲法を変えて、裁判を非公開にして、特定秘密保護法でどんどん裁判にかけて、強い法律にしていくことを考えているのが、今の自民党である」。
齋藤氏は、特定秘密保護法による「知る権利」の侵害に関して、「『知る権利』は、憲法21条で保障されている。しかし、憲法21条は万能ではない。人権は侵害してはいけない。表現の自由があっても、人のプライバシーや名誉は守らなければいけないのである。ところが、特定秘密保護法は、『国益』という人権ではないものによって、『知る権利』を制限しようとしている」と危惧する。
「そういう意味では、特定秘密保護法は憲法21条(表現の自由)の侵害だ、という裁判を起こされると、国としてはまずいことになる。だから、自民党は憲法21条を『公益のために表現の自由は制限できる』という内容に変えようとしている。特定秘密保護法は、悪法だが、今の憲法がある限り、暴走できない仕組みがある。しかし、政府は憲法を変えて対応しようとしている。したがって、特定秘密保護法に反対する運動は、政府が狙っている憲法改悪を見越してやらなければいけない」。