【岩上安身の「ニュースのトリセツ」】STAP細胞問題、小保方氏に「悪意」はあったのか(IWJウィークリー45号より) 2014.4.7

記事公開日:2014.4.7 テキスト動画
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 4月1日、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらが執筆した「STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)」の論文に画像の流用など不正があったとされる問題で、理化学研究所が調査結果の最終報告を公表する記者会見を行いました。理研は、小保方氏に「研究不正行為があった」と認定し、流用が指摘されていた画像について、「捏造があった」と認めました。

 他方、論文の共同執筆者であった、笹井芳樹氏(発生・再生総合研究センター副センター長)、丹羽仁史氏(発生・再生総合研究センタープロジェクトリーダー)、若山照彦氏(山梨大学教授)の3人については、「シニアの研究者でありながら、データの正当性と正確性について自ら確認することなく論文投稿に至っており、過失とはいえその責任は重大である」としたものの、「この改ざんを容易に見抜くことはできなかった」との理由から、一連の論文の不正には関与していなかった、とされました。

 この日の会見では、懲戒解雇など具体的な処分内容には触れられませんでしたが、不正と捏造が認定されたのが小保方氏一人であったことから、結果として理研は、小保方氏を「トカゲの尻尾切り」にするかたちとなったとみられています。

小保方氏の改ざん認定、STAP細胞論文で理研(朝日新聞、4月1日)

STAP細胞:小保方さん処分は1ヶ月後 理研(毎日新聞、4月1日)

研究論文の疑義に関する調査報告書 全文(理化学研究所)

研究論文の疑義に関する調査報告書 パワーポイント(理化学研究所)


▲理研が会見中に使用したパワーポイント

 4月1日当日は、石井俊輔・調査委員会委員長ら、理研の調査委員会による会見が10時半から1時間半、その後、野依良治理事長、竹市雅俊発生・再生総合研究センター長ら理研の会見が13時から2時間と、会見は合計で3時間半に及びました。IWJはこの会見の一部始終を、ノーカットで生中継しました。

記事目次

 この問題について私は、3月11日に出演したテレビ朝日の「モーニングバード」でコメントし、日本分子生物学会が「迅速な調査の公表を求める」という声明を出したことに触れました。背景には、昨年、大手製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究におけるデータの改竄問題が東京地検特捜部の強制捜査を招くまでに至ったことや、同じく昨年7月、東京大学分子細胞科学研究所の加藤茂明元教授が、東大の調査委員会によって43本の論文が不正であると断定されたことなど、近年、理系の学問の世界で不祥事が相次いでいることを紹介しました。

 昨年8月に日本分子生物学会が学会員に対して行ったアンケート調査によると、「自分の研究室で不正を見聞きした」と回答した人が1割、「研究不正の噂を聞いたことがある」と答えた人を含めると、不正の横行を見聞きした人は、なんと5割にものぼり、不正が蔓延している状況が浮きぼりになっています。その背景には、ひたすら競争し、勝ってしまえば、知的財産権の強化のために大金を得られるという、行き過ぎた成果主義が科学の世界にも取り入れられたことが背景にあると考えられます。こうした行き過ぎた成果主義により、世界的な傾向として、真理を探求するはずの科学界が腐敗しつつあるのではないか。今回のSTAP細胞発見をめぐる騒動は、そうした状況の一端を示すものではないかと疑われているのです。

 また、3月14日に、理研が調査の中間報告を発表した4時間にも及ぶ長大な会見を、IWJはノーカットで生中継しました。今回の3時間半に及ぶ会見と合計すると、IWJは7時間半にわたり、理研の会見を中継したことになります。

 3月14日の会見、4月1日の会見の両者とも、詳細なサマリーを掲載しています。他にもIWJでは、平山茂樹記者が、この間の経緯を振り返りつつ、大手メディアではなくインターネット上の匿名掲示板やTwitterアカウントで小保方氏の論文の不備が指摘されていった一連の流れや、iPS細胞の開発でノーベル賞を獲得した山中伸弥・京都大学教授とライバル関係にあったとされる笹井芳樹副センター長の存在に焦点をあてたブログ記事を発表しています。

 さて、4月1日の理研の最終報告会見を機に、今回のSTAP細胞を巡る「騒動」は、新しい局面を迎えることになりました。これまで一貫して沈黙を保っていた小保方氏本人が、理研の最終調査報告に対して真っ向から異を唱える反論のコメントを発表したためです。

小保方氏、理研と完全対決

 以下、4月1日、小保方氏が弁護士を通じて発表したコメントの全文を引用します。

 「調査委員会の調査報告書(3月31日付け)を受け取りました。驚きと憤りの気持ちでいっぱいです。特に、研究不正と認定された2点については、理化学研究所の規程で『研究不正』の対象外となる『悪意のない間違い』であるにもかかわらず、改ざん、捏造(ねつぞう)と決めつけられたことは、とても承服できません。近日中に、理化学研究所に不服申立をします。

 このままでは、あたかもSTAP細胞の発見自体が捏造であると誤解されかねず、到底容認できません。

 画像を合成し『改ざん』と認定されたレーン3の挿入について

 Figure 1iから得られる結果は、元データをそのまま掲載した場合に得られる結果と何も変わりません。そもそも、改ざんをするメリットは何もなく、改ざんの意図を持って、Figure 1iを作成する必要は全くありませんでした。見やすい写真を示したいという考えからFigure 1iを掲載したにすぎません。

 『捏造』と認定された画像の取り違えについて

 私は、論文1に掲載した画像が、酸処理による実験で得られた真正な画像であると認識して掲載したもので、単純なミスであり、不正の目的も悪意もありませんでした。

 真正な画像データが存在していることは中間報告書でも認められています。したがって、画像データを捏造する必要はありません。

 そもそも、この画像取り違えについては、外部から一切指摘のない時点で、私が自ら点検する中でミスを発見し、ネイチャーと調査委員会に報告したものです。

 なお、上記2点を含め、論文中の不適切な記載と画像については、すでにすべて訂正を行い、平成26年3月9日、執筆者全員から、ネイチャーに対して訂正論文を提出しています。

以上」

小保方晴子「調査報告書に対するコメント」

小保方氏に「悪意」はあったのか

 小保方氏の主張は、3点に整理できます。まず1点目、「理化学研究所の規定で『悪意のない間違い』であるにもかかわらず、改ざん、捏造(ねつぞう)と決めつけられた」としている点について。

 理化学研究所の内規「科学研究上の不正行為の防止等に関する規定」には、次のようにあります。

「第2条 この規程において『研究者等』とは、研究所の研究活動に従事する者をいう。
2 この規程において『研究不正』とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。
(1)捏造 データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること。
(2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
(3)盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること」

科学研究上の不正行為の防止等に関する規定(理化学研究所)

 小保方氏が主張するように、理研の規定には、研究不正について「悪意のない間違い及び意見の相違は含まない」というただし書きがついています。今回の論文の不正に「悪意」があったのかどうか、その点についてはたしかに、調査委員会の調査でも認定されてはいません。

 「悪意のない間違いだった」という小保方氏の反論に、理研の調査委員は答えられているとは言いがたいといえるでしょう。

改竄のメリットとデメリット

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