「東京電力の企業体質に問題があることを表している」~第44回原子力規制委員会 2014.2.26

記事公開日:2014.2.26取材地: テキスト動画
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 2014年2月19日10時30分より第43回原子力規制委員会が開催された。東京電力で福島第一H6タンク漏洩、敷地境界線量増大、柏崎刈羽のウォーターロッド曲がりなどといった事故が続発していることから、田中俊一原子力規制委員長は、「東京電力の企業体質に問題があることを表している」と、東電を厳しく批判した。

■全編動画

  • 日時 2014年2月19日()
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

議題1 独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律の施行に伴う原子力規制委員会関係法令等の制定について

 この日の委員会では、合計7つの議題があがった。まずは、規制庁から、独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)の解散、規制委への統合に伴い、関連する規則、告示、指針、訓示の改正や廃止についての報告があった。政令についてはこれまでの委員会で報告されている。

 規制委および規制庁に新設される”長官官房”や”人材育成センター”といった部局に関することや、JNESに委任していた業務を規制庁が実施するように変更し、JNESの記述を削除するなどと報告された。法律に関する事務的な内容の報告であり、異論もなく承認された。

 事務局担当者は法律文にあるJNESの記述を削除することを「技術的な改正」と説明。これに対し更田委員が「我々(技術屋)の世界ではそれは事務的と呼ぶ」と感想を述べ、苦笑を誘った。

議題2 原子力規制委員会防災業務計画の修正について

 2つ目の議題として、これまでJNESの業務として記載していた内容を規制委の業務として記載するように変更、修正するとの報告があった。これについても特に異論なく承認された。

議題3 緊急時対策支援システム(ERSS)における運用マニュアルの改訂について

 続いて、ERSSの維持、管理業務をこれまでJNESが行っていたが、解散統合に伴い規制委が行う業務となるため、それに伴うマニュアルの変更、修正について報告があった。

 ERSSは原子力発電所の温度、圧力等のセンサーで読み取ったデータを1分毎に伝送している。センサーから伝送路、監視モニタまででの範囲について、故障等トラブルが発生した場合の切り分け、対処手順が例として示された。

 更田委員は、ERSSのようなシステムを今後どのように運用し続けるかについても議論が必要だ、と意見した。事業者が運用するSPDSは、さらに詳しい情報が採れるが、一方でm緊急時に事業者と規制当局と同じ画面を見ながら対処する必要もあり、ERSSも必要だろうとされている。ERSSありきではなく、SPDSとの関係で利点や欠点についても検討することが重要と述べた。 

※SPDS: [原文表記]:Safety Parameter Display System [日本語]:原子炉安全状態監視装置

議題 4 中国電力島根原子力発電所保安規定変更認可申請(1号炉の高経年化技術評価等)の認可について

 4つ目の議題は、中国電力島根原子力発電所の保安規定変更認可申請についてだ。2014年3月28日に運転開始以後40年を経過する島根原発1号炉は、昨年2013年9月27日に保安規定変更認可を申請している。その後、現地調査や補正申請を経て、審査結果がまとまり、認可について委員会に諮るものだ。

 冷温停止状態を維持することを前提にした高経年化対策や、保安対策等について、中国電力は最新の知見を用いて的確に行っていると規制庁は判断した。

 更田委員より、島根2号炉の新規制基準適合性に係る審査申請が出ているが、基準値地震動Ssが変更になった場合は、1号炉についても見直すか、さらに、今回は冷温停止前提だが、新規制基準適合性に係る審査申請があれば、もう一度見直すのかと質問が飛んだ。中国電力の担当事務方はいずれも肯定した。他に異論は無く、保安規定の変更申請は認可された。

議題 5 東京電力福島第一原子力発電所敷地境界における実効線量の制限の達成に向けた規制要求について

 東電は、福島第一原発の敷地境界線量を1mSv/年未満にすることを目標としていたが、汚染水タンクやがれき等の増加により約8mSv/年まで増大することが予想されている。規制庁は、今後、状況を改善し、目標の1mSv/年まで下げるよう、段階的に時期と線量を区切り、東京電力に規制要求しようとしている。このことも議題に上がった。

 これについて、2015年3月末までに2mSv/年未満、2016年3月末までに1mSv/年未満とすることとする実施計画の変更を指示することが決定位sた。

 更田委員は「(WGで)ここまでまとめるのに二カ月かかった。これは規制の難しさを象徴している」と述べた。「廃炉作業を進める中、環境への影響を抑える必要があるが、押えすぎると廃炉作業が進まなくなる」と現場の難しさを口にしながらも、「決めてきたことを守れない状態が続いている」と苦言も忘れない。

 田中委員長は「今後の廃止措置について監視・評価検討会できちんとフォローするように」と指示した。

議題6 東京電力福島第一原子力発電所におけるH6タンクエリアのRO濃縮水貯留タンク上部からRO濃縮水の堰外への漏えいについて

 議題の6番目として、東京電力福島第一原発のH6エリアタンクからのRO濃縮塩水の溢水についての報告、状況説明がなされた。

 2月24日に開催された汚染水対策検討ワーキンググループでも事業者から報告があり、その際、更田委員は「まだ分からないことが沢山ある」と発言した。来週早々にも次回WGを開催し、東電から更なる報告を受ける予定となっている。

 このWGで受入れ側タンクの漏洩検知ができないことがわかり、更田委員は「言われたことをやっていないのは、大きな問題だ」と苦言を呈した。その上で、作業ミスが発生するのは仕方がないことだが、発生した時の対応がよくないと指摘した。

 大島委員は、「何らかの悪意があれば、セキュリティに大きな問題だ」と述べ、田中委員長は「悪意があること前提での調査は現場に不信感を生む」と異論を唱え、この事故の原因は「(安全文化に係わる)根が深い」と考えを示した。

議題 7 燃料集合体ウォータ・ロッドの曲がりについて

 東京電力柏崎刈羽原発の燃料集合体ウォータ・ロッドの曲がりが確認されたことから、規制委は、国内の全BWR炉について調査報告を求めた。今回、東電福島第一、第二、東北電力女川1号以外の全てのBWRプラントから報告を受けた。

 評価の結果、こうした事故を起こしたのは東京電力だけで、他電力会社では発生していないことが明らかになった。東京電力には、燃料集合体の設計部門と燃料の装荷を行う作業部門の間で、コミュニケーションが不充分であったこと、作業時にも十分な注意を払っていなかったこととの指摘がある。

 ウォータ・ロッドの曲がりは平成10年以前の作業で発生していながらも、平成24年まで発見されなかった。十分な調査をしていなかったことが原因だと規制庁は断定した。その上で、「関係者の意識の低さ」が表れていると指摘。更田委員は「東電だけに起きている。姿勢に問題がある」と批判し、田中委員長も「東京電力の企業体質に問題があることを表している」と述べ、より細かく指導していくよう要請した。

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