TPP交渉は現在、日米では農産品などの関税撤廃を巡って難航している。その溝を埋めるべく2月18日、大江博首席交渉官代理とカトラーUSTR次席代表代行が、都内で実務者協議(いわゆる日米並行協議)を始めた。甘利大臣は17日の記者会見で、この協議で「カードを互いに何枚か切る」と語り、米国に対して譲歩案を示す考えを示した。
18日8時50分から行われた閣議後の記者会見では、この譲歩案について記者から質問が集中した。
(IWJ・佐々木隼也)
特集 TPP問題
TPP交渉は現在、日米では農産品などの関税撤廃を巡って難航している。その溝を埋めるべく2月18日、大江博首席交渉官代理とカトラーUSTR次席代表代行が、都内で実務者協議(いわゆる日米並行協議)を始めた。甘利大臣は17日の記者会見で、この協議で「カードを互いに何枚か切る」と語り、米国に対して譲歩案を示す考えを示した。
18日8時50分から行われた閣議後の記者会見では、この譲歩案について記者から質問が集中した。
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「早期妥結のためには、聖域5項目の一部の引き下げもやむを得ないという認識か?」と記者から問われた甘利大臣は、「日本側が米国側の主張に一方的に歩み寄る、ということは断じてない。双方が歩み寄るというのが大原則」と語った。
さらに日本側が「聖域」と位置づける「コメ」や「砂糖」「牛肉・豚肉」「乳製品」「麦」などの重要5項目586品目については、「全て微動だにしない、ということでは交渉にならない。5項目に関するタリフラインが一つも現状から変わらないと思っている方はおられない」と語り、聖域を譲歩案として差し出す可能性を示した。
「聖域は守る」と公約に掲げて衆院選に勝利し、政権交代を果たした安倍政権。その後の自民党の決議や、昨年4月に衆参両院農林水産委員会が採択した決議でも、「農産品5項目などの聖域確保を最優先する」「確保できない場合は撤退せよ」としている。「決議を尊重する」として交渉に当たっていたはずが、ここにきて平然と決議違反、公約違反を行おうとする安倍政権の姿勢に、国民や農業団体などからは多くの批判があがっている。
IWJは会見で、譲歩案を示す場合にその項目に関わる利害関係者や農業団体などに、事前に説明、協議、やり取りを行う予定はあるかどうかを聞いた。甘利大臣は「具体的に『これをこうしますけどどうですか』、ということについて関係者と詳細な協議をするということは、少なくとも事前には予定していない」と、きっぱりと否定した。
さらに甘利大臣は、「そのような協議はどこの国もしていない」と付け加えた。しかし、マレーシアでは首席交渉官が野党や市民団体へ説明を行い、今後の交渉方針を協議している。また米国でも、600の企業アドバイザーは交渉の中身、草案テキストを見ることができ、議会議員も制限付きながら草案テキストを見ることができる。国民の代表である国会議員はおろか、直接利害に関係する業界ともほとんど協議を行わない、というのは参加国の中でも異例ではないか。
最後に、「TPPはメダルで言うと金メダルを取れそうか?」と問われた甘利大臣は、「世界中のどの国も金メダルをとれません。世界中のどの国も入賞をいたします」と語り、「なかなか良い表現だ」と自画自賛した。しかし、利害関係者や多くの国民の声を無視して、多国籍企業や一部の人間だけの利益になる条約に入ることが、果たして「入賞」と言えるのだろうか。