「核爆弾を残したままの世界を、次の世代に渡せない。原発や核燃サイクルはやめるべき」──。
2014年2月8日、大阪府茨木市の市民総合センターで、講演会「大震災から3年 今私たちができること」が行われた。宮城県石巻市の水産会社に勤務し、東日本大震災後に茨木市へ移住した武藤北斗氏が、原発・核燃料サイクルの問題、被災地の模様などを語った。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
「核爆弾を残したままの世界を、次の世代に渡せない。原発や核燃サイクルはやめるべき」──。
2014年2月8日、大阪府茨木市の市民総合センターで、講演会「大震災から3年 今私たちができること」が行われた。宮城県石巻市の水産会社に勤務し、東日本大震災後に茨木市へ移住した武藤北斗氏が、原発・核燃料サイクルの問題、被災地の模様などを語った。
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武藤北斗氏は、冒頭で、自らが原発反対を訴えるきっかけとなった事柄について、次のように述べた。「映画監督の鎌仲ひとみ氏と話をする機会があった。アメリカがイラク攻撃に使用した劣化ウラン弾の周りで、子どもたちが遊んだりして、白血病になって死んでいく現実を知った。その劣化ウランはアメリカで作っていて、その工場では、日本の原発の燃料も作っているという。私たちが使っている、クリーンと言われている原発の電気は、どこがクリーンなんだろうか。クリーンじゃない部分が隠されて、イラクの子どもたちが苦しんでいる。それでいいのか、というのが私の出発点」。
武藤氏は、核について調べていく中で、「日本で核開発は、最終的に平和利用と言われている。しかし、核開発は、原爆という、人を殺すところから始まっている。今も、福島原発の事故で多くの人が苦しんでいて、まったく平和利用ではないと、今更ながら実感している」と述べ、「現実を知ると、原発や核燃サイクルを続けることは、結局、核爆弾の技術を持ち続けることにつながる。そういうことから手を切るためにも、核燃サイクルはやめなければならないし、核爆弾を残したままの世界を、次の世代に渡せない」との考えを示した。
さまざまな知識を得た武藤氏が、「最終的に許せない」と感じたのが、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場だという。「日本は核の平和利用を謳い、取り出したプルトニウムを原発に使う名目で再処理工場を作り始めた。私は、核の知識がない頃から、この工場には断固として反対してきた。なぜかというと、再処理工場から管を通して約5キロ先の海洋へ放射性物質を捨てるため、事故がなくても海が放射能汚染するからである。考えられないことだ」と憤りを表した。
「再処理工場の建設反対運動では、工場沿岸を利用する漁師やサーフィン仲間で『海と空に放射能を捨てないでほしい』と訴えたが、返ってくる答えは『海は広いから、薄まるので大丈夫』というもの。なぜ、捨てるのかと聞くと、『閉じ込めておくとお金がかかり、その間に事故が起きるとまずい』という。そのまま出せば大丈夫で、溜めておいて、何か起きるとまずいという感覚がわからない」と首をかしげた。
今後の再処理工場の動きに関して、「今は再処理がうまくいかず、止まっているが、いつ動き出すかわからない。ここで重要なのは、安倍政権は、核燃サイクルを、まだやろうとしていること。核燃サイクルをやることは、再処理工場もやるということだ」と指摘した。
そして、東北の復興に触れて、「私の知り合いも漁業を再開して、がんばりながらも、福島の原発のことでは、いろんな意味で悩んでいる。そんな葛藤を抱えながら、がんばっている状況で、また、放射能を出す再処理工場を動かす。これが、人間として許されていいのかと強く思う。東北の人たちだけでは止められない。日本全国が原発を止めて、再処理工場も核燃サイクルも止めなければ、東北の復興はできない。そのことを意識して、関西からも声を上げていくことが必要だ」と訴えた。
次に武藤氏は、自身が工場長を務める水産加工会社での取り組みに触れた。「日本の会社には、社員は縛らないときちんとやらない、という考えがある。だから、出勤の曜日も固定してしまう。しかし、働きたいから就職しているのだから、その気持ちをうまく生かすことが大事だ。わが社は、冷凍された魚介類を扱う加工会社で、フリースケジュールという自由出勤システムができた。社員が働きたい時に、働きたいだけ働くシステムである」と語り、働く人の気持ちを重視し、常識にとらわれない働き方を提案した。
続けて、最近起こった冷凍食品の農薬混入事件に関して、「会社のシステム、そのシステムを導入した背景、食べている人たちは何を選んで、何を要求しているのか。これらを考えていくことが、これからの日本にとって大切なことである。しかし、マスコミでは『監視カメラを付ければ』とか『服装がどうの』という話になっていた。そこではない」と述べた。
「あれは、働く人の心の問題であり、また、日本の食べ物に対する考え方の問題でもある。重要なのは、社員が気持ちよく働いて作った商品を、適正な価格で販売して、消費者に食べてもらうこと。これを続けていくことが大事なのである」と、食のあり方への考えも示した。