2013年12月10日、大阪府堺市役所の市政記者室において、阪南大学准教授の下地真樹氏ら、堺市の復興資金流用をチェックする会の、「堺市に対して復興資金の返還を求める陳情についての記者会見」が行われた。
震災がれきを受け入れていない堺市が、東日本大震災の復興資金86億円を受け取り、ごみ処理施設新設に使用した問題で、同会は流用された復興資金の返還と、この資金が被災地・被災者の復興のために使われるよう国に意見書を書くことを求めた陳情を、堺市議会に提出した。陳情者の女性は「返還してほしい、という声は岩手県内でも広がっている。そのためには住民監査請求や、その先のことも考えている」と決意を語った。
- 日時 2013年12月10日(火)
- 場所 大阪府堺市役所 市政記者室(大阪府堺市)
交付金流用は、そもそも違法だ
会見の冒頭、陳情者は、堺市が受け取った復興資金、約86億円の返還を求める陳情を出したこと、岩手県の住民からの要望書が、今日、堺市議会の議員全員に届いていることを報告し、「岩手からの要望書は、宮古や盛岡の住民を中心に合計13団体と個人170名の署名が入ったもの。流用された復興資金の返還と、このお金が被災地の復興のために使われることを求めている」と述べた。
続けて、堺市が受け取った復興資金(循環型社会形成推進交付金)の交付資料を示して、「ここには『結果として、がれきの受け入れができなくても、交付金の返還が生じるものではない』との表記がある。堺市は『だから、もらっておく』と言うのだろうが、そもそも、この表記自体が、東日本大震災復興基本法に違反している」と指摘。「結局、震災復興に関係ないことに交付金が流用されてもよい、と官庁が認めていることになる。この部分を、もっと究明すべきだ」と主張した。
ミスではなく、意図的に流用されている?
同席した下地氏は、「とても被災地支援にはつながらないだろう、と思えることにも、たくさんの交付金が使われている。堺市の件は、その一例だ。震災後の復興施策全般について、構造的な問題がある」とし、「ちょっとミスをして、というのではなく、かなりの悪意をもって、役に立たないことにお金が流されているのではないか」と疑問を呈した。
記者から「実際に堺市に交付金を返還させるとなれば、いろいろな影響が出ないか」と問われると、陳情者は「交付金を返還したら、堺市は財政的に困るのではないか、などの誤解が生じているが、不安に感じる必要はない。環境省は『通常枠の交付金と引き換えにしてほしい』と言っている。返還することは可能だ」と答えた。
また、今後の見通しについて、「今回の陳情が採択されるかどうかは、わからない。しかし、返還してほしいという声は岩手県内でも広がっている。そのためには住民監査請求や、その先のことも考えている。絶対にやり抜くつもりだ」と力を込めた。
環境省の思惑は何だったのか
下地氏は「少なくとも、この件について重大な責任があるのは環境省だ。堺市の場合は最初から、震災がれきを受け入れる可能性も、検討する予定もなかった。にもかかわらず、環境省は『この復旧復興枠で補助金申請をするように』と、圧力とも思えるようなメールを再三にわたって堺市に送っていたのだ」と明かして、次のように述べた。
「現在は、住民が直接、環境省に対して訴訟を起こすという枠組みがない。つまり、日本では行政の責任を問う枠組み自体が、未熟で不備がある。これについても、世論に訴えていきたい。いずれにしても、どこに責任があるのか、可能な限り追及する」。
これは、重大な事実だ。ぜひ、追求して欲しい!